本山らの Presents 第八回 本山川小説大賞 大賞は水瀬さんの「CQ」に決定!

 

 

 

 平成30年7月25日から9月9日にかけて開催されました第八回本山川小説大賞は、選考の結果、大賞一本、金賞一本、銀賞三本、特別賞として本山らの賞一本、有智子賞一本が、以下のように決定しましたので報告いたします。

 

 

大賞 水瀬 「CQ

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受賞者のコメント

まずは闇の評議員の皆様、またレビューや⭐︎を頂きました読者の皆様、ありがとうございます。
いつ結果出るのかなーみたいなこと言う度に大澤先生から「勝ち確気取りでイキりやがって」(意訳)みたいな牽制を受けまくっていたので正直ここ数日は結果気にしないようにしてたんですけどもらえるならありがたく頂きます大賞やったぜうれしー。
僕が現役でバリバリ小説書いてたのはもう十年近く前ですし、今更参入するのもどうなんだろう? みたいな気持ちはあったんですけど、色々タイミングも良くて勢いもあってCQ書いたら書けました。すごいですね。多分次はないです。
あと今一番心配なのは副賞のイラストのことで、自分で言うのも何ですけど魚のヒロインってどうやって描くんでしょうね? 大変そう。頑張ってほしい。
そんな感じです。
ありがとうございました

 

 

 大賞を受賞した水瀬さんには、副賞としてeryuさんによる表紙イラストがそのうち贈呈されます。好きに使ってもらっていいので勝手に出版してください。(検閲済)

 

 

金賞 神崎赤珊瑚 「サンライズ・コーストライン」

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銀賞 Veilchen 「女王と将軍と名もない娼婦」

 

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 金賞を受賞したVeilchenさんには、副賞としてソーヤさんによる表紙イラストが贈呈されます。(大人の事情により検閲済み)これは本大賞とはまったく関係のないソーヤさんが描いたイラストですが、かっこいいですね!

 

 

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銀賞 和泉真弓 「サッちゃん」 

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銀賞 君足巳足 「壱百日詣とプロポーズ」

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特別賞 

 

本山らの賞 紺野天龍 「八月のファーストペンギン」

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有智子賞 あさって 「海の底から愛を込めて」

 

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 というわけで、平成最後の夏を締めくくる伝統と格式のKUSO創作甲子園、第八回本山川小説大賞、本大賞史上最大最高レベルの大激戦を制したのは、水瀬さんの「CQ」でした。おめでとうございます!

 

 

 以下、恒例の闇の評議会三名による、全参加作品への講評と大賞選考過程のログです。

 

 

全作品講評

 

 みなさん、こんにちは。素人KUSO創作甲子園の看板をかかげて始まったモモモ大賞も今回で八回目となりました。やはりなんであれ続けていると偉いもので、前回くらいからプロ作家であったり、筆力のあるアマチュア作家さんなんかも参加してくれるようになってきていて、投稿作品の平均レベルが上がりつづけています。継続は力なり。しかし、そこはモモモ大賞。KUSO創作勢による下克上こそが醍醐味ですので、そういった展開にも大いに期待したいところです。

 さて、大賞選考のための闇の評議会ですが、今回もまたメンバーを刷新して、謎の狐娘さんと、謎のサブカルクソ眼鏡さんにご協力いただいております。

 謎の狐娘です。よろしくお願いします。

 謎のサブカルクソ眼鏡です。よろしくお願いします。

 議長は引き続き、わたくし謎の概念が務めさせていただきます。よろしくお願いします。

 謎の狐娘さんは新進気鋭のラノベ読みVtuberてきななにか、謎のサブカルクソ眼鏡さんは主に少女向けレーベルで本を出しておられるプロの作家さん、議長の謎の概念もいちおうは商業作家の端くれと、KUSO創作大賞の講評員にしてはなかなかの豪華メンバーとなっております。今回は女子力高めですね!(?)

 それぞれ独自に講評をつけた三人の評議員の合議で大賞を選定し、その過程もすべて公開しますので、ある程度の中立性と妥当性は担保できるものと思います。

 それでは、ひとまずエントリー作品を順番にご紹介していきましょう。

 

1. こむらさき 「液晶画面にご用心」

 モノホン大賞安定の一番槍、突撃隊長のこむらさきさんです。今回も一万字以上という下限制限もあるなかで、しっかり即日仕上げてきていて、まずはその圧倒的な進捗力が素晴らしい。ダメな部分をさらけ出して共感を呼ぶのってわりと難しくて、すこし配分を間違えるだけで不快感に変わりますし、情緒不安定な語り部って読むほうも不安になりやすいのですが、この作品はそのへんのバランス感覚がとても優れていて気持ちの良い没入感があります。こういう嗅覚というのは練習して身に付く類のものではありませんから、代替し難い非常に強力な武器です。ただ、本作品に限って言えばプロットじたいはひねりのないストレートなものなのでちょっと弱い。文章力と進捗力はもう充分。つぎは、しっかりとプロットや構成に取り組んでみましょう。これからの成長がますます楽しみな書き手です。

 一番槍! 早いですね……! 浮気かな? 浮気じゃないよ、プロポーズ! すれ違い・勘違いからの期待を裏切らないハッピーエンド。大人の恋愛のリアルな煩悶が描かれていて良かったです。しいて言うならもう少しひねった告白やプロポーズのお言葉が聞きたいかも…? ベタなのも良いですが! もう少し貴教さんのキャラが立つとより良いのではないでしょうか。しかし、総じてよくまとまってらしたと思います!

 読み切りのレディコミ! あるいは単発のテレビドラマ! という感じの、年下の彼氏の不審なふるまいが積み重なって疑念を呼んでいくラブストーリー。シンプルな話ですが、生きのいい文章で、興味を持って一気に読ませます。主人公の行動や心情に生々しいリアリティがあり、これ、出そうと思ってもなかなか出せない。実体験なのかもしれないけど、体験したことを誰でも、露悪的にならず、可笑しく表現できるわけではありません。そのあたりの勘がいいのだな。悪くいえば、勢い余って雑なところを残したままの文章でもある。試しに、推敲のときに「この長めの一文、ふたつに分けたほうが読みやすいのでは」ということを考えてみたらどうだろうか。結果「やっぱ分けなくていいや」となってもいいので。このドライブ感を残したまま文章の細部を研ぎ澄ませていけたら、ますますよい書き手になりましょう。

 

 

2. 大澤めぐみ 「空の底」

 結局だれからも指摘されなかったんですが、気付いていた人はいたんでしょうか? えっと、この作品は縛りプレイをしていて、本文中に語り部の「わたし」「俺」「僕」みたいな一人称が一切ないんですね。本文だけでは語り部の性別が確定しないようになっています。本大賞のレギュレーションが「女性一人称縛り」となっているので、モノホン大賞前提で読んでいる人はわりと素直に「なるほど、レズ不倫だな?」と認識していたようですが、そのレギュレーションは飽くまで作品そのものではない外部情報だから、通りすがりの方が本作を独立したテキストとして読んだ場合には、また解釈や見える風景が変わってくるんじゃないだろうかという試みです。

 さすがのクオリティとスピード! あと朗読者に対するちょっぴりの悪意……! すごい……読んでいて私も小説世界にぶくぶくと沈んでいく心持ちがしました。爽やかで、ほんのり苦くて、すっと溶けていくような読み口が心地よかったです。日常生活のディテールを緻密に描く手腕が光りますね。そして、レギュレーションがあることを生かして、物語を構築していくという試み、面白いですね。ハイコンテクスト小説!

「【重要】!!!!! 今回は女性一人称記述縛りです !!!!!」っつってんのに、主語が一度も出てこないまま16,000字を静謐な雰囲気のまま駆け抜ける話をドスンと投稿してくる肝の太さ、さすが異能のプロ作家である。まず、ひとつの季節の終わりを描いた青春小説として素晴らしい。細かいエピソードやふるまいから、詩織の「あまりがんばらなくても心地よく生きていける女のひと」という雰囲気が見事に立ちあがってきます。そして、主人公の性別がわかる描写が最後までないところがすごい。女子だと思って(そりゃそう思うよね)読んだひと、男子だと思って再読してみてください。コーヘイやカエの印象もがらりと変わるはずです。「ルールに合わせて女性だと思ってくれてありがとう、あなたがルールを守らせてくれました」と、小説が読者に微笑んでいる。きれいで、こわい微笑みだよ。野心的な企みが結実した作品です。

 

 

3. 海野しぃる 「こわいはなしの作り方」

 三番手は邪神任侠のしぃるくんです。進捗パワーは素晴らしいですが、なんていうか、アレですね。もうあらすじを読んだ時点で頭が痛いというかなんというか、本当にこれ読まなきゃダメ? みたいな気分になりました。なんでしょう? 闇の評議会を狙った荒手の精神攻撃かなにかでしょうか? 本山をモデルにした語り部がしぃるくんをモデルにしたキャラクターのところに創作のアドバイスを求めにいくという地獄のような開幕スタートダッシュでトリプルリーチ!!!! といった感じです。せんぱぁい、じゃあないんだよ。ただオーソドックスな物語としての起承転結はうまいことまとまっていて一定の水準以上ではあり、これを短時間で書き上げる地力はたしかなもの。けれど、裏を返せば作品としての独自性をパロディキャラだけに頼っているということでもあるので、そこを抜いて評価すれば良くも悪くも「うまいことまとまっている」に留まります。

 プロによる全力夢小説……ずるくないです!? それでいてしっかりとホラー小説でもありKUSO小説としての勢いのあるオチもあり、読んでいて楽しかったです。きいろ先輩好き→のらちゃんかわいいよのらちゃん→う、裏切りやがって~~~→背筋の凍る展開→エクスカリバー!! と展開の緩急に実力を感じました。よし! 書こうかな! という気分にさせられる読後感でした!

 ライトノベルの布教に努めるバーチャルユーチューバー・本山らのさんを登場人物のモチーフにした「らのノベル」ですね。作者ご自身をモデルにしたキャラクタを一番かっこよく書くという正直さにビビりました。他にも実在の人物をいろいろネタにしており、それがわからなくても読めるようには書かれていますが、やはり楽屋落ち感は強い。それならいっそ、淡々と実話怪談風に進めていったら恐怖感がより増すと思うし、この作者の筆力なら十分に可能なはずです。だから、あえてこう書いたのだよね。小説としての完成度より、本山川小説大賞というお祭りを盛り上げる爆竹を放りこむことを選んだのだと、私は受け取りました。

 

 

4. 紅哉朱 「スクールガールデンプシーロール

 開幕スタートダッシュが気持ちいい、勢いのある作品です。タイトルの語感もなんかいいですね。ポップなんだけど軽薄ではない文体のバランスがとてもよくて、文章力じたいは非常に高いです。軽快な会話劇でポンポンと進んだ直後にダッと設定の説明に相当する地の文が続いてしまうので、ここは適宜会話などに分散しながら世界観を提示していけたほうが高度だったかな? 自作の別作品の外伝ということなので、そちらを読んでいると感想がまた違うのかもしれませんが、この作品単体で読むとちょっと展開が早すぎてポカーンとしてしまいました。それと単純に、文字数に対して取り回す規模が大きい。二万字までって本当にタイトなので、物語を区切って特定のイベントのフォーカスしたほうが短編としてのまとまりはよかったでしょう。

 スライム娘との夏の思い出。綺麗な色に染まる森山さんが目に浮かびました。高校最後の夏休み、二人だけの秘密。好きですね。また、特に喧嘩シーンのテンポ感が良かったと感じました。魔法少女や少し「ずれ」た世界であるという設定がもっと物語に深く関わってくるとより良いのではないでしょうか。

 謎の災害「ずれ」により、人外の魔物との共生が日常となった現代日本が舞台の青春小説。こういう「ここを異界にする」設定、好きです。かったるい日々に倦んだ少女のセキララな述懐を饒舌な一人称で描いていくスタイルは、多くのひとがやりたがる定番ではあるのですが、文章はかなり気を配って引き締めているし、ロー・ファンタジー的な世界観をかぶせることで独特の味わいを増しています。森山のビジュアル、美しいね。「リリカルマジカルキルゼムオール」という作品の外伝ということで、独立作として楽しめるように留意されてはいますが、主人公の鬱屈の種や、エンディングに篭められた想いは、やはり本篇を読んでいないと充分に受け取れないところはある。シリーズの一部である作品をコンテストで扱う難しさを感じています。

 

 

5. 賤駄木さんbot 「Paint it Blue.」

 んっと、これもなにか別のコンテンツからの派生なんでしょうか? ひょっとするとわたしのほうに必要な情報がないだけかもしれませんが、正直よく分かりませんでした。「世界が青く見える」という独特な症例が設定として登場するのですが、特にそれがプロットてきに生きている感じでもなくて、たんに「気が狂っている」の一形態っぽく留まっているのがすこし残念です。いわゆるチェーホフの銃。物語に登場した独自の要素は、後半でちゃんと機能してほしい。あと、単純に文章表現としてところどころ引っかかりを感じるので、もうすこし滑らかなほうがいいですね。音読しながら推敲すると良いですよ。

 世界が青く見えてしまう男の子に恋をした女の子の話。詩的な雰囲気が感じられる作品でした。佐久間が私に抱いている感情の流れや思考など、もう少しわかりやすく描写したり掘り下げたり、もう少し二人の関係性にフォーカスしてみてはいかがでしょうか。

「世界が青く見える」という少年・佐久間に惹かれて過ごした高校時代を、主人公の女性が回想するというスタイルの青春小説。佐久間のことを理解したいと願い、内側に少し入り込めたと思ったら、また新たな謎が立ち塞がる……そんな、気にかかる相手に近づいても近づき切れないもどかしさが、ていねいに描かれています。実直な文章は好ましくはありますが、この内容なら、気障なくらいのフレーズがもう少し欲しい気もしました。鮮烈な場面も、わりと淡々と流れてしまう感じがある……。ボカロ曲「青く塗れ」のノベライズ的な作品とのことで、この歌への「ラブレター」としては、もらったボカロPが嬉しくなるようなよいものでありましょう。単独の小説としては、作者がオリジナルの展開をもっと加えて、作品の強度を高める余地が残されていると思います。

 

 

6. 海野しぃる 「鬼女の泪」

 しぃるくんの二作目です。一作目がKUSOオブKUSOって感じでしたが、こちらは真面目に取り組んでくれたようでなにより。本人も言っている通り京極堂を意識した感じのミステリーホラーですね。実は依頼人が自ら望んで霊障を引き起こしていたのだ! というフリップはアイデアとしてとても良い。男装の麗人と女装少年の助手という組み合わせもバディとして魅力的なので、このふたりの掛け合いでぐいぐい牽引しながら同時に必要な情報を提示していけると、もっと楽しいと思います。ただの掛け合いで終わらせず、軽い会話の中で事件に関する重要な情報を提示していくみたいな。まだ文字数にも余裕がありますから、単純にもうちょっと書き込んでもよかったかな。すこし駆け足な印象。

 タイトルや概要のおどろおどろしさに反してコミカルな掛け合いも楽しいミステリ作品でした。男装女子な探偵さんと男の娘の助手ちゃんという組み合わせは最強……! ただ、重厚な設定が見え隠れする割には軽く物語が閉じられてしまった感じもあり、少し拍子抜けでした。もう少しお得意なホラー要素なども入れてみたりして、物語を深めていただくと良いのではないでしょうか。

 古本屋を営む男装の麗人と、その助手の「男の娘」が、死んだ恋人の霊に悩まされている男の悩みを解決する伝奇ミステリです。多くない文字数で、二転三転する事件の真相を展開しつつ、探偵コンビの突飛なキャラクタ性も鮮やかに印象づけている。作者の本来の筆力が発揮された好篇です。こういうのを待っていました。安心安心。京極夏彦百鬼夜行シリーズ」の影響を台詞や設定にあえて露骨に出しているのは、好みが分かれるところではないでしょうか。このようなコンテストでパスティーシュ作品には高いハードルを課さざるを得ず、そこを超えたかというと……。これほどの完成度なのだから、独自の内容を拓いた作品として仕上げてほしかった気持ちもあります。

 

 

7. 偽教授 「トライアングル・ジェミニ

 前回から参加の偽教授さん。今回はゴシックな西洋風の舞台設定ですが、やはりこういう時代がかった堅い文体のほうが馴染みます。この虚飾といっていいほどの盛り盛りに荘厳でゴージャスな文章は余人がそうそうに真似できるものではなく、たしかな才能でありましょう。序盤から中盤のグイグイと引き込んでいく展開も悪くないのですが、後半にかけてちょっと性急かな。惜しい。もったいない。やはり、次の課題はちゃんとしたプロットづくりと計画的な執筆でしょうか。いちど読者に歩み寄ったエンタメてきな起承転結やオチというのがしっかりとあるものを書くと、わりと簡単にポンとバズッたりするんじゃないですかね? 器用なタイプなので、それができるだけの力はすでに持っている方だと思います。

 耽美な文体が光る作品でした。感情を共有する双子の美少女という設定も良いですね。改稿後のエンディングはより幻想的でエロティックになっており良かったです。強いて言うなれば、もう少し物語に起伏、緩急があるとよりエンタメ的に皆を楽しませる作品になるのではないでしょうか。退廃的なムードの描写のクオリティは高いので……!

 吸血鬼とその花嫁候補である双子……感覚共有能力を有する姉妹の複雑な三角関係に、吸血鬼の過去の三角関係がしだいに絡んでくる(だからこの題名なのだね)パラノーマル・ロマンス小説です。この分量で、長篇も支えられる複雑なプロットをテンポよくさばいていく手つきがすばらしい。生硬なところがある文章も、異世界の種々を説明するうえで、ムードが高まるよいほうに作用していると思います。こういう題材ですと、もっと描写に淫し、自分で自分の考えたシチュエーションに酔いしれるくらいの熱気があるほうが好みという方もいらっしゃるでしょうが、このスピーディさは、逆に得がたい個性だ。好みです。まだ文字数も余裕があるので、単純に挿話を増やして、キャラクタの魅力をより高める余地はあったかもしれない。

 

 

8. 豆崎豆太 「ガールズ・ミーツ!」

 ずいぶんと長いことゴリラ界を彷徨っていた豆崎さんですが、ようやく現世に戻ってきたようです。題材がナウくていいですね。メッセージ性も現代的で、まっすぐな主張にも納得できます。それだけに、ほぼなんの寄り道もなく真っ直ぐスーンと一気にオチまで走ってしまったのは勿体ない。ミニマルで完成しているとも言えますが、まだまだ文字数に余裕がありますし、もうちょっとエピソードを挟み込んでもいいでしょう。句読点が異常に少ない序盤の石版芸は意図したものではあるのでしょうけれど、途中でちょいちょい素に戻りがちで息が続いていないし、現状では特に効用もないので無理してやることもないかもしれません。普通に読みづらいというデメリットのほうが目立っています。やるのであればなんとなくではなく、前のめりでガーッ!! っといきがちで視野狭窄的だった主人公が、よつばちゃんとの交流でだんだん視界が開けていくごとに句読点が正常化していくとか、そういう変化をつけて意図を乗せていったほうが効果的です。

 私の好み狙い撃ちですね……! メガネで白衣で年上のバ美肉おじさん……好きです! ストーリーもきれいにまとまっていて、素敵な読後感でした。強いていうなら、もう少し「エモさ」が欲しいかもしれません。ディティールに凝る、例えばただ甘いジュースとだけ描写するのではなく、具体的に名前を挙げてみるなどすると、実在感が増すのかもしれないな、と思いました。

 体育会系少女と美少女バーチャルユーチューバー(中身は保健室の冴えない男性教諭)のなんでもないような、でも心にちょっと灯がともるような交流を描いた青春小説。読了してまず「この作品、手触りがいいな」と思いました。少し考えて、文字数とお話の規模がかっちりと釣り合っているからだ、と気づいた。今回の「1万字以上2万字以下」という条件って、意外と難しいと思っています。数千字で終わりそうになってつぎ足したり、3万字も余裕で行きそうになって詰めこんだりしたひと、複数いらっしゃるのでは。とんがった饒舌体だけど、作品が伝えるメッセージは健やかです。「かわいいものが好きということに、男も女もない、似合うも似合わないもない、好きならいいのだ」という現代的な正しさを、主人公ふたりがお互いに認め合う。読者の心にも灯がともる、いい短篇です。

 

 

9. たかた ちひろ 「五感恋愛」

 第六回の大賞受賞者、たかたちひろさんです。さすがに大賞受賞者だけあって、根本的な文章力が非常に高く、つっかかりなくするすると読み進められ、ライオンズファンだったりインスタントのしじみ汁だったり、ほんのちょっとしたところでのキャラクター付けもかわいらしくて、なんだか親しみが持てます。ただ、五感で恋愛する女、というのがメインの設定なのですが、意外と普通というか、え? わりとみんなそんなもんじゃね? みたいな感じでそれほど突飛でもない。五感のうちのどれかひとつで毎回やられてしまうのだとちょっと考えものなんですけど、恋愛の始まりって突き詰めればわりとそういうインスピレーションだよな~みたいな。もうちょっと吹っ切ったキャラ設定にしてしまってもよかったかも。

 やばい……かなり好きでした! 大人の恋愛の煩悶がリアリティ溢れる筆致で描かれており、大変楽しませていただきました! ラストの恋に落ちた高揚感がありありと伝わってきて、良かったです……! 文章力が高く、登場人物も生き生きとしていて全体的に完成度が高い作品だったように感じました。

 声、匂い、手触り……五感のひとつが刺激されたら、あっという間に恋におちてしまう主人公。そのせいで「だめんず」とも果敢に付き合っては終わってしまうので、今度こそ長続きする恋人を作りたいと願うが…… 軽妙でビターなラブストーリーです。登場人物のリアリティが圧巻。「リアリティ出すぞ、これが人間のリアルだ!」と力んだ感じでなく、落ち着いた科白の端々に、その人物ならではの息遣いがにじんでいる。「五感の好さが先行してしまう」という主人公の特徴が、行動の軸となり、劇中でのガールズトークのトピックとなり、強いサスペンスを盛りこまなくても「じゃあ、最後はどうなるんだろう」という読者の興味を惹き続ける。この大げさすぎないひと匙が、物語の味を格段に引き締めるのです。

 

 

10. ボンゴレ☆ビガンゴ 「【ファイアドラム】〜異世界古道具屋のドロップダウンストーリー〜」

 落語ですね。こういう風に雛形をヨソから持ってきて要素をジャカジャカと入れ替えてドンと別の作品にしてしまうというのは創作法としては大いにアリです。ただ、本当に原型の固有名詞をジャカジャカ入れ替えただけで終わってしまっているところがあるので、どうせならここからさらにもうひとつ、この作品に固有のユニークな価値を提示できるとよかったでしょう。同じような試みとしては、第五回で既読さんが出してきた「ヤスデ人間」などが参考になると思います。あちらは「変身」と同じところから始まって、まったく別の希望を提示するという離れ業をやっていましたね。古典を今風にアレンジするというのもそれはそれで需要はあると思うのですが、良くも悪くも古典のアレンジに留まってしまっています。

 リズムの良い文章で、楽しく読むことができました。主人公のセリフ回しが好きですね。掛け合いもコミカルで楽しかったです。ただ、ストーリー展開には少し改善の余地があるかと思います。(なんとなくですが、絵本的なオチのつけ方だな、と思いました。)もう一捻りあると良いのではないかと思います。

 へっぽこな古道具ショップが薄汚れた謎の小太鼓を仕入れたことから騒動が巻き起こるさまを描いた、コミカルなファンタジー作品です。一人称の口語体、科白中心の描写、ドンドンという擬音のリフレイン……副賞の朗読をあからさまに見据えている。狙いを隠さないだけのことはあり、音読したときの滑らかさを大事にした筆致は巧みです。タグを見ると「火焔太鼓」という落語の翻案らしいので、試聴してみましたが……これって、ファンタジーの要素を剥がせば、わりとそのままの内容じゃありませんか。何か精妙な仕掛けがあるのかもしれませんが、落語の素養がない私にはわからなかった。すいません。たぶん、読者の何割かもわからないと思う。わかるように書くか、わからないひとはわからなくていいと思い定めるかは、作者の志向によりましょう。

 

 

11. 姫百合しふぉん 「Silene」

 石版です。麗しく妖しい盛り盛りスーパーハイカロリーないつもの安定のしふぉんくん。わたしはもういい加減しふぉんくんのこの石版芸には慣れ親しんでいるので、これだけでは別に驚きもしないのですけれど、相対的な話にはなりますが、今回わりと物語してますね。ただゴージャスな文を並べているだけではなく、ちゃんと展開があって、本人なりのそこそこの歩み寄りが見てとれます。飽くまでそこそこですけれど。たぶん言っても変わらないんですけどいちおう言っておくと、この作品においてはリーダビリティを敢えて犠牲にする石版芸はマイナス方向の作用のほうが強そうなので、単純に改行なりなんなりで読みやすくしたほうがいいんじゃないかなと思いました。これまでのしふぉんくんの作品の中ではかなり好きなほう。

 文章の奔流がすごい作品……。光るところのある描写も散見されるので、もう少し厳選・凝縮したらより良くなるのでは、と考えましたが、そういった読者への配慮度外視で好きなものを書くという姿勢もこういった場では一つの正解なのかな、とも思いますので難しいところですね……。ともかく、表現の美しさは素晴らしかったです。

 このラブストーリー、すごい。ページを開いて「うおっ」と声が出ました。改行がなく、句点も少なく、歌うように紡がれ続ける美麗で淫靡な言葉の連なり。この作者は、感想は求めているかもしれないけど、長所や短所の指摘は必要としていないのではないだろうか。だって、リーダビリティを増そうと思えば増せるはずです。熱に浮かされて垂れ流したのではなく、暴れ馬を乗りこなすような技前がうかがえるし、後半には社会とのかかわりや活劇の場面も出てきて、物語り、それを届けようという意志は感じる。でも、こう書くのだよね。「これ」を「このまま」で貫いてほしいとも思うけど……やはり、せっかくなのでもう少し入り込みやすい書き方をしてみてほしい。それでなくなる個性ではないはずです。

 

 

12. 阿瀬みち 「君の名前を借りました。」

 まずめちゃくちゃ文章がうまいですね。単純な文章力だけで言えば、すでに商業レベルだと思います。ただ、それだけになんだかつらつらとした内容で終わってしまったのが実に惜しい。どうなるのかな、どうなるのかなと先が気になって読み進めていったら、最後までとくになにもなかったみたいな。ストーリーラインで分かりやすい鼻先のニンジンがあるわけでもないのに、先が気になってどんどん読み進めてしまうというのは、これはもう単純な文章の感触だけのものですから、その点ではものすごい才能があると思います。あとは、ちゃんとエンタメてきなオチが用意されていれば100点満点です。

 登場人物の息遣いを感じられる良い作品でした。こういった女性一人称が好きなんですよね! キャラクターと文章は非常に良いので、あとはもう少しストーリー展開にスパイスを入れたら更に良くなると思います。物語が終わっても登場人物達の日常は続いていくんだろうな……と感じさせられる良作だと感じました。

 若くしてベストセラー作家になったものの、中年になった現在は引退状態のくうちゃんと、その幼馴染みの紗栄子。ふたりのつかず離れずの交流を描いた小説です。劇的なことは何も起こりません。くうちゃんの作品が映画化されるとか、紗栄子に刺激されて新たに筆を執るとか、ストーリーはあるんだけど、なんというか……それも含めた「生活」を追う筆致が落ち着いている。この作品は、地味なお話でも、魅力があれば「無」ではないという好例です。魅力というのは、文章力だけの問題ではなく……人間を、世界を、どう見つめ、どう触れているかということになりましょう。くうちゃんと紗栄子の感じること、話すことに、型どおりではない息遣いを感じるのは、ひとつひとつの感情やふるまいの善し悪しを、作者が自分の手で確かめてから言葉に起こしているからだと思います。

 

 

13. @dekai3 「魔法少女ブックマウンテンらの」

 すっかり常連さんですね。モノホン大賞が誇るKUSO小説枠です。あいかわらずのアイキャッチてきに挟まる半角擬音に味があって、それだけで癖になります。話の筋じたいは特にひねりのないどこかで見たことあるよ~な感じなんですが、ツイッターの話題を盛り込んだ設定や台詞まわしや、限界ラノベワナビ、ストーカーおじさんなどの強烈なキャラクター、なんだかんだいってわりと性格がアレな主人公、ここぞというときに放り込んでくる大きいおっぱいは正義など、全体にひどくて細かいクスクスわらいを稼がされてしまいます。肩のちからを抜いて気楽に読んでクスクスできる、お手本のようなKUSO小説でした。あと作中に大澤の小説も出てきたのでプラス1点です。

 本物川小説大賞らしいKUSO小説……! 勢いがあって楽しいですね。らのちゃんがんばえー! ハイコンテクストなギャグも多く、なかなか万人ウケは狙えない感じですが、わかる人にとっては楽しい作品なのではないでしょうか。序盤の情報量が多く、ややとっちらかった印象もあり、その辺りを丁寧に構成するとより良くなるかと思います。最終話の王道展開は好きでした!

 ラノベ大好き少女・本山らのが「魔本少女」に変身し、心が歪んだ小説読者のなれの果て「アンチ獣」を退治する! プリキュア仮面ライダーのような変身ヒーロー・ヒロインもののパロディ要素が詰まった「らのノベル」です。それこそテレビ番組の1話と7話と13話(最終話)を繋いだような大胆な構成ですが、見せ場の繋ぎ方が巧みであり、またコメディ要素が強いので「そーゆーもの」として違和感なく読みました。簡潔な文章も、作品が要請するノリに合わせた、意図的なものでありましょう。ただ、やはり……あらすじと設定だけの、未完成の「骨」という感じは拭えない。これをもとに「肉」をつけた完全版を読んでみたい気持ちがあります。

 

 

14. 芦花公園 「私をお空に連れてって」

 ジェネレーションX風味の人間無理系ホラー。なんと小説書き始めて三週間目(当時)だそうで、これは大変な才能だと思います。人間無理描写のディティールが素晴らしく、根本的な筆力も非常に高いですね。大まかに言うと「彼は狂っていた」エンドで、これはそもそも夢オチと並んでかなり読者の反感を買いやすいプロットなのですが(なぜ初心者ほどやりたがるのか)かなりうまくやれているほうでしょう。この手の話はいきなりどんでん返しに持っていくのではなく、読者に少し違和感を抱かせ何かはあるのだろうと身構えさせつつ、その予想を上回るどんでん返しを仕掛ける必要があるので、偽の真相に読者をミスリードするような引っかかりを仕込んでおくともっと高まるかも。最後は認識の狂っている人間の主観記述でなのでちょっと分かりにくいですね。4話のラストでバツンと切っちゃって真相に含みを残すのも手です。今後の成長が非常に楽しみな作者。

 インパクトのある冒頭一文からぐいぐい引き込まれていきました。そしてどんでん返し。少し情報の提示が唐突で(私の読解力不足もあるのですが)理解するために読み返して一度確認する必要があった点は少し残念でしたが、腑に落ちてからは仕掛けの見事さに驚嘆しました。細かい描写にもアメリカのスクールカーストのリアリティがあり、上手いな、と思いました。

 学園のマドンナ、アメリアが死んだ。心の友を「強要」されていた冴えない主人公は、決して彼女を愛していたわけではないが……それでも、アメリアを悼むためにある行動を開始する。洋画のようなサスペンス・スリラーです。淡々となされる人物描写がたいへん巧い。アメリアの趣味や行為について語ることで、そう語る主人公の人格や価値観、ひいては彼女たちを取り巻くスクールカースト的な環境も、自然と読者の頭に入ってきます。ギスギスした不穏な空気が途切れない、センスのある文章です。一方で、筋運びやどんでん返しの仕掛け方には、小説を書き慣れていないひとのような不親切さもあって、不思議な作者だね。すごい伸びしろを感じる。

 

 

15. ピクルスジンジャー 「焼肉とタバコと魔法少女と。」

 えっと、ちょっとよく分かりませんでした。なんか淡々とした叙述の中でポーンポーンと知らない話が飛び込んでくるので、えっ? えっ? となってしまって、驚けばいいのか、そういうものだと納得すればいいのかも判断に苦しみます。読み進めていけば分かるのかなと思っていたのですが、最後までなんだかよく分からないままに終わってしまいました。背後に膨大な設定があるっぽいのですが、ひとつの短編として必要のない部分はまるっと削ってしまってもよかったのではないでしょうか。とくにどこにも辿り着かない背後関係みたいなのが続くと混乱してしまいます。

 この作品の女性一人称の感じ、私は好きでした。キャラクターの語りであるという意識がしっかりあったのが好印象です。粗暴な言葉の選び方に反して常体ではなく敬体で記述するところが好きです。キャラの魅力を引き出す地の文だと感じました。ただ、世界観の説明不足なきらいがあり、肝心のストーリーラインにも集中できなかったのが残念です。単体の物語としての構成を考えていただけるとより良いと思います。 

 妖精の王国の女王が、かつて「魔法少女」だったころの厭わしくも懐かしい思い出を、やさぐれた口ぶりで回顧するという構成のお話です。職業としての魔法少女を描くお話は、流行を超えてもう定番なのだね。このコンテストにも複数、投稿されています。こちらの魔法少女は、地下アイドルや夜のお仕事のダーティな部分を煮詰めたような「賤業」という感じで、暴力と策謀にまみれた設定はおもしろく感じました。ただ、他シリーズの外伝という色合いがあまりにも濃く、これはさすがに、単体では評価しがたいところがある。せっかく初見の方々に自作をアピールする機会でもありますし、もう少し、いちから語り直すような親切さがあったらよかったと思います。

 

 

16. 鍋島 「さそり座の夜、あの屋上で」

 お、世界観先行型だな? という印象。広大な九龍城てきスラム建築空間を舞台にしたサイバーパンクSFてきなレズ。作者の性癖が丸出しの情景描写は良いです。序盤の引き込みかたとか、文字が現れては消えていてそれがヒントになっているなど、ガジェット単位でみるとものすごくワクワクする描写がいっぱいあるんですけれど、まだ完全にはカチッとハマッてないかも。うん? ってなって何度か読み直してしまいました。書いている人間はなにしろ自分で書いているのですべてを把握していますから、必要なフラグのうち、なにを説明してなにを説明してないかみたいなのを忘れがちで、読者を置いていってしまうことが稀によくあります。自分でもすっかり忘れたぐらいの頃合いで一度読み返してみると、自然と加筆修正箇所が見えてくるかもしれません。あと一歩で大化けしそうなので、ここで終わらせずにもうちょっと追求してほしい。

 この舞台設定とエンディング、好きです! 情景描写も良いですし、構成も的確だと思います。強いて言うなら、一つ目のObserver Lの部分などの世界観設定がややすんなり入ってこなかった感じがありましたので、短編ですからどうしても情報の密度を上げなければならないのは仕方ありませんが、そのあたりを丁寧に構成してみてはいかがでしょうか。ポエティックな描写が素敵でした! 

 アジアン・サイバーパンクだ! 九龍城めいたスラム街に咲く、記憶喪失のスパイとの運命の恋を描いた、ロマンティックなSFアクションです。個人的に好みの設定なので、評価が甘くなったり厳しくなったりしないように気を引き締めて拝読しました。とてもゴージャスな内容です。このジャンルに期待するものがあらかた盛り込まれている。スラム街の秘密が早くから明かされるのはもったいないような気もしますが、この分量であまり引っぱると、後半がキッチキチになるという判断でしょうか。そういった構成もよく考えられていて、この内容をこの分量に収めた作者の手腕が光ります。だから、この作品が物足りないという意味ではなく、さらによい形……2万字の制約を取り払った形で、この舞台のお話を読んでみたいと思いました。

 

17. 矢久勝基 「七度目の逢瀬」

 勢いのある一人称の勢いのままに、冒頭からドーン! ドーン! と唐突なイベントが連発するのでタイムスリップくらいは「まあ勢いでそれくらいはあるかもな」と素直に納得させられてしまいます。この勢いはなかなかのもの。で、行った先が700年前なんですが、ハハァンさてはお前ここを書きたかっただけだな? という感じでいきなり質感が高くなります。うん、書きたいものを書きたいがために物語の外枠を作るというのは創作メソッドとしては大いにアリ。ただ、現代編だと主人公の勢いを平然と押し返してくる勢いあるキャラばかりでバランスがとれていたんですけれど過去編ではなんだかみなさん大人しくてで、ちょっと主人公の勢いばかりが目立つかな? 過去編にも強めのキャラがいるともっとバランスがよかったかもしれません。勢いのままに走り抜けた感じの投げっぱなしのオチも悪くないです。

 パワフルな主人公が魅力的な作品でした! この元気の良さは嫌いじゃないです。そしてまさかの歴史物語……! かっちりと過去の人物の語り口が描写されており、主人公の語り口との対比が際立っていて良いと思いました! ストーリーについては、やはり、オチが気になりました。続きが気になってしまいます。タイムスリップものの定番、過去での行動が現代に影響を及ぼしているところを見たかったかな、と思いました。 

 平凡な少女に降って湧いた結婚話。わけもわからず状況に流されるうちに、少女は中世日本にタイムスリップしてしまう……という、スラップスティック・コメディです。長音と感嘆符を重ねたこの感じーーーーーっ!!!! 懐かしさを感じる文体だーーーーーっ!!!! 物語の雰囲気には合っていますが、もう少し控えて、ここ一番の場面で用いたほうが効果的かと思います。あと完全に連載の「第1話」であり、フレーバーではない解かれるべき謎が残ったまま唐突に終わってしまっているのが、コンテスト作品としてはマイナス点です。実質「未完」である。いちど主人公を現在に帰して、お話にひと区切りつけてほしかった。

 

 

18. ZAP 「ファミマのメロディの魔法の少女」

 これはKUSO創作ですね。そうそう、こういうのでいいんだよモノホン大賞っていうのは。基本的にはコメディタッチの勧善懲悪ものっていう感じでストーリーラインには特に捻りはないのですが、小道具がすべてファミリーマート絡みになっています。テンポも軽快で読みやすいですし、なにより、このKUSOみたいなワンアイデアで16000字をやりきる馬力はなかなかのもの。さらさらっと読んでわははと笑って、あとにはなにも残らないみたいな完全なKUSO創作で、これはこれでひとつのありようとして大好きなんですが、あともうひとつなにか「おっ!」と目を引くような展開なり台詞なりがあればさらに評価は高かったでしょう。

 わーい! ZAP先生の久々の供給だー! ご参加ありがとうございます……! 勢いとテンポが良く、明るく楽しくにこにこ拝読させていただきました! さすがです! 好きでした! 今後の活動も応援しております!(ただのファン)(ちなみに「ざるそば(かわいい)」は本物川的なインパクトと楽しさのある作品なのでおすすめです。)

 ファミマ。なぜファミマ。作者は心の底からファミマが好きなのか。あるいはトリッキーな題材として選んだだけなのか。余談ですが「お母さん食堂」のスープカレーはおいしいです。異世界に忽然と出現するファミマ。主人公の少女はそのファミマの店長。ちゃんとした支店で商品も適宜入荷する(どうやって?) さまざまなファミマのトリビアを織り交ぜながら、物語はあくまでも正調のライト・ファンタジーとして進んでいきます。違和を違和として強調せず、軽快かつ端整な筆さばきで、当たり前のこととして描いていくのが逆におかしい。こういうセンス、好みです。これは、なんというか……これ以上の意見を必要としない。これを完成形として、おいしく楽しく味わう小説だと思いました。

 

 

19. 修一 「わたしの砂糖少女」

 退廃的で背徳的でお耽美な雰囲気のアレ。やりたいことは分かりますし、かなりの程度まで成功しているとは思うのですが、まだすこし読者を置き去りにしてしまっているかな? ちゃんと読者を一緒に連れていけるともっと強いでしょう。その先は読者とのマッチングの問題なので、さらに深化していくか、もうちょっと間口を広げて一般ウケを狙うかはどちらが正解とも言いづらい。マッチングさえうまくいけば、このままでも好きな人は好きだと思います。個人的にはちょっとだけ挟まるSFっぽい説明的な部分はなしにして、完全に雰囲気だけで乗り切っちゃってもよかったかなぁという気はします。

 メルヘンでファンタジックな設定が冒頭部分で提示され、まず引き込まれました! 耽美な百合とこの上なくマッチした設定でとても良いと思いました。背徳的でデカダンスな関係性の描写に光るところがあると思うので、二人の対話をもっと読みたい! その辺りにより重点を置かれたりすると、個人的には良いのではないかと思いました。 

 研究者の父が作った「砂糖少女」のリリィを愛玩し、蹂躙するサラ。しかし本当に相手を支配しているのはリリィのほうであり…… 少女たちのいびつで甘い愛情を描く、耽美な奇譚です。とくに前半は、リリィとサラの関係性がねじれてゆくさまが淡々とした文章で描かれ、緊密なエロスが香り立っていて素敵でした。後半の探索行は、文章のちからで緊張感を持って読ませてはくれますが、物語の長くない分量を考えると冗長な感があります。それならば、リリィの真実が明らかになって破滅へと向かうラストにたっぷりと官能的な筆を割いてくれたほうが、この作品にはふさわしいのではないかと思いました。

 

 

20. ものほし晴 「高校ぐらい出ないとダメだよ」

 爽やかでちょっと甘痛い系のYA文芸できなノリですね。しっかりものの少年とぼんわりとしたお姉さんの組み合わせ。書きすぎないところに魅力がある作者で、これは希少な才能です。個別のシーンでは非常に描写力の光るところがある。でも、全体的なテーマ性はまだ作者自身の中でも煮詰められていないような印象を受けました。こう、一般常識的なところと自分自身の考えみたいなのがまだせめぎ合ったままで、結論は導出できていないみたいな。そのへんがぼんわりとしたままなんとなく妥当な道を選ぶのがこの年代のリアリティと言えて難しいところなんですけれど、もうちょっとシャキッとしたほうがエンタメかな? せっかくだからふたりの関係性のフリップも、もうちょっとくっきりとしたほうがいいかも。短編だと多少はキャラクターをカリカチャライズしてもっと強烈にしちゃってもいい気もします。全体的な読み心地は大変に気持ちよく、雰囲気加点でプラス1点です。

 はちゃめちゃに好きでした!! 物語全体の雰囲気がとっても良いですね! 私の心の弱いところを的確に突いてきます……オチとしては手垢のついたものですが、時を経て再会するエンディングがやっぱり好きなんです……ちょっとした冒険みたいなのも好きで……。文章の読み心地も申し分なく、優馬くんも魅力的! そして、大人と子供の中間である中学生の頃の心の揺らぎが見事に描写されていて、感服です。

 小説で「なんとなく」という動機に説得力を与えるのはなかなか難しいんですけど、この作品は、学校や家に「なんとなく」違和感をおぼえ、どこかに行きたいと思った女子中学生の窮屈な心持ちがきちんと伝わってきます。あまり内面のモノローグに頼らず、家出の旅のようすを客観的に描写し、深刻なテーマをあくまでも登場人物の体感の中で表現する、抑制された筆さばき……これは、物語ること、伝えることについて習熟したひとのものです。作者はとあるマンガ家の別名義であり、そのことが作品の評価に影響はしませんが、個人的な述懐として……構成や科白がすぐれているのはあの作者なら当然といえば当然ですけど、文章の緩急も小説をメインにやっているひとに引けを取らない出来栄えで、すごいと思いました。

 

 

21. いかろす 「とけあうふたり」

 お、なんかいい感じの青春ものっぽいじゃ~んって読んでいたら、いきなりパカッと変形して羽根が生えて「おおっ?」と戸惑っているうちにボーッ!! とジェット噴射で大気圏を突破してそのまま宇宙の果てまで飛んでいったみたいな急展開でしたね。そして最後はやっぱり愛だよ、愛(投げやり)。びっくりしました。まあ、この唐突さはこれはこれでアリなんじゃないでしょうか。わたし個人としては中盤くらいまでのすこし不思議レベルで踏ん張ってくれたほうが好みでした。

 うんうん、この甘酸っぱい青春の感じ、好きだなぁ……! と、にこにこ読んでいたら急転直下! 驚きましたが、個性的でそれもまた良し! 最終的にはまたラブストーリーとして着地するところも、上手いなあと思いました。SF的なスパイスのあるラブコメとして纏まっていたら、私のストライクゾーンど真ん中だったのですが、このトンデモ展開はやはり商業とかでは読めないと思うので、これはこれで場に適していて良いのかもしれませんね。 

 王道の爽やかな百合ラブストーリーと思いきや、そこに少し奇妙な要素が加わり、どうなるのかと読み進めていけば、中盤から「少し」どころではないSFへ変貌。それがただ「鬼面人を威す」ためのものではないところがいいですね。本格的な異能バトルが繰り広げられ、最後はちゃんとラブストーリー……宇宙的な愛の物語に帰着する。読み手の予想を半歩だけ裏切る、心地いい大転回を味わいました。小説を書き慣れた感じがある。ただ、この「半歩」を、読み手を置いてけぼりにしない長所と取るか。それとも、さらに踏み込んだサプライズを求めるか。迷うところです。迷う時点で、少し後者なのかもしれない。実力者であるがゆえの理不尽な期待、していいですか。

 

 

22. @sophia_aeon 「白と赤。青とカーテンの庭。」

 ウーン分かります厨二病、みたいな感じの要素が昇天ペガサスMIX盛りですね。こういった厨二病てきな要素って誰でも少なからず持っているもので嫌いな人ってあんまりいないと思うんですけれど、ここまで全部盛りでこられると少し食傷気味かも。エモで押し切るのは創作法としては全然アリなんですけれども、最初から全開でど派手にエモくこられると、ついていけずにポカーンとしてしまいます。物語としても出来事を抜き出すと本当に「最後にポッと自分の正体に気付き、外に出る」だけなので、たとえば自分の正体に気付くのを偶然のポッとにせずに、過程をちゃんとフラグ管理してそこに収束させていくなどすれば、もっと高まるかなぁ。

 幻想的な雰囲気が印象的な作品でした。やや描写がごてごてしているかな…と感じる部分もあり、語りすぎず、取捨選択することも大事なのではないかな、と思います。世界観に関しては、序盤で引き込むようなフックのようなポイントを加えることが出来れば更に良いのではないでしょうか。あと、すこし「――」が濫用されている傾向がある点が気になりました。 

 陽光すら毒となる虚弱体質のせいでカーテンを閉めた病室から出られない少女が、外を観たいと渇望し、部屋からの脱出を試みた顛末をつづる、幻想的なサスペンスです。主人公のささいな(しかし彼女にとっては大仕事である)行動をひとつひとつ描くことで、緊張感のある物語を構築しようとする意欲はよいと思います。大仰な比喩による絶望や自虐の嘆きに、ちょっと唐突な印象が。作者が描きたいであろう感情の極まった状態をいきなり提示されて、面食らってしまうところがありました。あと、少女が本当に吸血鬼だったというオチなのであれば、この病院は主人公をどうしたいのか(保護しているのか、生体実験などのために軟禁しているのか、など)がもう少し説明されると、設定にさらに深みが出てよかったです。

 

 

23. 水瀬 「CQ

 すごかった。すごいですね、これは。めちゃくちゃ面白いです。具体的にどういうビジュアルなのか説明がまったくなく、自分の想像力の限界を試されるような不親切な文章がひたすら続き、そのまま何も分からないままに終わるんですが、読み終わったあとでちゃんと納得感のようなものがある。普通だったら物語の焦点になりそうな大きな出来事がまったく無視されて、わたしと彼女、わたしの彼女への気持ちといったものすごくミクロなところに終始焦点が合っていて、それが一度もブレることがないのが気持ちいい。こういうのっけからの不条理系というのはネタだけで飛んでいって読者が置いてけぼりにされてしまいやすいのですが、これは設定とお話と文体のバランスがよく、不親切なのになぜか読者に対して世界が開かれているのがいいですね。暴れ馬をきっちりと抑え込む地力がものすごく高い。間違いなく大賞候補の一角ですが、これに表紙イラストをつけるのは大変そうだな。

「試験対策で彼女が魚になった」という書き出しに、疑問符がたくさん浮かぶも、ぐいぐい読ませてくる巧みな筆力……! 面白かったです!! 上手い……となってしまって講評を書くのに大変悩みました…曖昧なままでも物語を進行させられるという、文字表現だからこそ成立する良さがあると思います(どうやって水族館とか行ってるんだろう……?)。ぶっ飛んだ設定とそれを作品として落とし込む手腕、数々のキラーフレーズ、関係性の描写の丁寧さ……全体的にクオリティが高いと思いました!

 人間が別のモノになる「試験」を受けることになった……そうなっている世界で、魚になった恋人・たまこと、まだ何になるか決まっていない主人公・CQとの半年間を、抑制のきいたリリカルな筆致で綴っています。純文学的なマジック・リアリズムが炸裂した内容なのに、どうしてこんなに風通しがよく、読むひとをするりと受けいれてくれる小説なんだろう。寓話と呼ぶには地に足のついた生活感があり、SFと呼ぶには理にこだわらない静かな勢いがある。その絶妙なバランスに唸りました。いろいろな比喩や風刺を見いだして語ることは可能ですが、別にしたくないので、しません。講評の放棄でしょうか。ただ読んで、この不思議で健やかな世界に浸ってほしいというのも、賛辞のかたちだと強弁しよう。

 

 

24. 平山卓 「ガール・ミーツ・ガール!出会ってはいけなかった二人」

 なんてことのない日常系かと思わせておいて実は、みたいなやつ。やりたいことは分かるんですけれども、まだあんまり上手くはいっていないかな。意外な展開! っていうのはいきなりスポーン! と飛び出してしまえばいいわけではなく、事前に情報を提示しておかないといけないので、二回目に読んだときに「あ~! これ伏線だったのか~!!」ってなるようなフラグをちゃんと埋め込むようにしましょう。奥歯にモノが詰まったみたいな微妙な表現でドンと正解を置いちゃっていいです。構成ももうちょっと考えたほうがいいかな? 本来なら、そこは話のオチになる部分ではなくて起点になる部分なので、始まる前に終わってしまったという感じ。もうちょっと練り直してみてください。

 実は殺し屋な女の子達の物語。キャラクターは魅力的でしたのが、ストーリーの焦点がちょっと定まりかねているような印象も受けました。二人の関係性にか、それとも組織や父親との対立軸に焦点を当てるのか、もう少し練ってみるとより良いのではないでしょうか。女の子への愛が溢れ出す一人称には思わずふふっとなりました!

 元気いっぱいの主人公は同級生のミステリアスな柳瀬さんに激萌え&ガチ恋の真っ最中。ハイテンションな語り口で綴られる青春模様は、しかし、ふたりが抱える出自の秘密によって急転します。終盤で炸裂するサプライズの数々はビシッと決まっており、エンタテイメントの短篇を読む愉しみを味わわせていただきました。ただ物語が、そのサプライズの「従」であり、サプライズの「内側」におさまってしまっているような感じもある。ネタがわかったあともまた読みたくなる――このキャラクタたちにまた会いたくなるような、さらなる魅力の演出があるといいと思います。

 

 

25. 木船田ヒロマル 「つないだ手、のぼる朝日」

 ジャンルは現代ドラマになっていますが、お話のつくりとしてはミステリーてきですね。正直な感想を言うと、う~ん、イマイチでした。謎があり、その謎を解くという形式なんですけど、まず真相がイマイチ。普通にありそうな話で秘密にしなければならない理由も希薄ですし(専門のカウンセリングを受けろ)、その為の仕掛けにしては大がかりすぎます。前回の手品探偵でもそうでしたが、犯人(と便宜的に呼びます)の行動がどうにもコスパ悪すぎて、納得感に欠ける。真相と動機とトリックのバランスが悪い。かつ、意外な犯人も意外ではあるのですが、それがが明らかになることによって余計に気持ち悪さが増すかたちになり、オチでの主人公の反応にんん~~?? となってしまいます。仕掛けを動かすために物語を用意したけれど、うまく整合しきらなかったという印象が拭えません。多少の無茶があっても、もっとぶっ飛んだ真相があったほうが、まだしもチャーミングな仕上がりになったでしょう。

 謎のバイトをすることになった女子大生のお話。文章も読みやすく、いったいどうなるんだろうとどきどきしながら楽しく拝読いたしました!ただ、そういった基礎的なクオリティが高い分自分の中で勝手にハードルが上がっていたのか、オチの付け方はちょっぴり拍子抜けだったかな……という気がして惜しいな、とも思いました。 

 女子大生が「顔も名前もわからない状態で、依頼人と手を繋いで眠る」という不思議なアルバイトに挑む展開にわくわくさせられました。つかみはオッケー。でも明かされた謎の真相がちょっと平凡か。この理由で、これほどの財力と権力がある依頼者なら、普通に口が堅くて目隠しなどを受けいれてくれる相手を探せばいいのでは……と思ってしまう。例えば「手以外は愛せない」とか(吉良吉影だ)とんでもない理由のほうがいい。あと、この内容で1万字を支えるには、登場人物の日常を描き、内面を掘り下げる、リリカルな膨らみがもう少しあってほしい。そうでないのなら、3,000字くらいのショートショートで一気にサプライズを叩きつけるタイプのお話でありましょう。

 

 

26. 七条ミル 「独り身少女の高校生活」

 うーん、なんでしょう? ちょっと全体的にぼんわりとしていて、どこに注目して読めばいいのかがあまり分かりませんでした。なんか出来事はいろいろと起こっているんですけれども、全部フーンってなってしまうというか。もうちょっとエモくするかなんかして読者を話の先へと牽引していかないと厳しいかな。主人公がそういうキャラなのだとしても、ちょっと淡々とし過ぎていて起伏が感じられないです。同じ筋書きでも、書きかたを工夫するだけでもっと起伏は作れると思います。

 等身大の高校生達の日常。文章自体はひっかかるところもなくすっと入ってくるので、後はエンタメ的な強度をもっと増していくことができればさらに良くなると思います。キャラクターの書き分け(特に男子キャラ)であったり物語の緩急などに気を付けていければ良いのではないでしょうか。応援してますよ。

 文芸部のおとなしい少女が、部活仲間の少年に恋をする。だからっていきなり世界が輝くわけでもなく、小さな事件をはらみつつも淡々と流れてゆく少女の日常を綴ったお話です。「陽キャ」とか「陰キャ」とか、胸の大小とかをとても気にするあたりに、少年向けライトノベルの香りが漂います。そういうことが重要な季節というのはあるよね。基本的に坂本という「ザ・悪役モブ」のような人物の雑な茶々によって物語が動いていくところは、物足りなさを覚えました。わりと明快な色分けをしている文芸部員たちなので、もっと陽キャ陽キャっぽく、陰キャ陰キャっぽく、よくしゃべったり動いたりしたほうが、この物語の輝きが増すと思います。

 

 

27. 偽教授 「我、帝国を滅ぼせり」

 またすごいところからネタを引っ張ってきましたね。史実ものでもヨーロッパとか中国はちょいちょい見ますけれども中米は珍しい。まず、こういうところからネタを引っ張ってこれる引き出しの多さは単純に強みです。ただ、これはちょっと2万字までの規模じゃなかったかな? という感じ。現状では、かなりザザッとしたダイジェスト感がある。生涯を描くんじゃなくて、もっとどこか一か所にフォーカスしてディティールを詰めるか、逆に長編にしてしまったほうがいいかも。どっちかっていうと後者かな。たぶん、本来は普通に10万字以上の規模になるものだと思います。

 アステカ帝国が舞台の作品! エキゾチックな雰囲気を感じされられる作品で、新鮮な気持ちで拝読させていただきました。歴史物語ということで、やや仕方ない面もあるとは思うのですが、やや説明的であったり、馴染みのない固有名詞の連続するところがあったりする点は、エンタメとして考えた際にはマイナス要因にはなるかな、とも考えましたが、様々なジャンルに挑戦する試みは良いと思いました! 

 南米のアステカ帝国を征服したスペインの冒険家・コルテスの生涯を、彼に付き従い協力したアステカの娘・マリンチェの視点から描いた歴史小説。コルテスもマリンチェも史実の人物です。興味深く拝読しましたが、正直に申し上げて、考証や解釈をジャッジできる素養は私にありません。アステカ小説、まちがいなく生まれて初めて見た。おそらく私のような読者が大半であり、そのような人々にも「読み物」でなく「小説」として届けようとするなら、重要ないくつかの場面をピックアップして、マリンチェが参謀としてコルテスを支えるようすを描出し、キャラクタをより魅力的に立てるのがいいでしょう……ということは言える。あとはもう、作者の志向でありましょう。

 

 

28. ロッカー・斎藤 「婚約者は夏ドラゴン」

 終始いちゃいちゃしたままで終わってしまいました。近頃の乙女小説方面では、こういう一切危機がなく終始問答無用に愛されっぱなしのパターンのほうが流行っているという話は聞いたことがあるのですが、う~ん、微笑ましくはあるし、まあ需要もありそうなんですけれど一本調子な感じは否めません。やはり小説ですから、なんらかの事件があって解決するとか、山があって谷があるとか、そういうものも多少はあったほうが印象に残るのではないかなと思いました。わたしの感性が古いだけかもしれません。

 銀髪ロリBBAがとにかくかわいいーー!! そんな異類婚姻譚でした。いちゃこら。かわいいキャラクター造形と、それを成立させるためのファンタジックな世界観は素敵だな、と思いました。間に挟まれる回想シーンなどがやや流れをぶった切っているようにも見受けられたので、ストーリーとして一本何らかの芯を通すとより良いのではないでしょうか。

 少女とドラゴン(人間体は美幼女)の、人外×婚約×溺愛もの。割とシリアスな背景を感じさせつつ、ひたすら主人公カップルのいちゃいちゃの糖度を高めることに注力した内容は、少女向けライトノベルのトレンドでありましょう。かわいい。現代の日本だけど、ドラゴンに守られている……そのワンダーを日常として受け入れている町という設定は好みです。説明されるビジュアルが楽しく華やかで、きっとマンガやアニメで見てみたら心地いいだろうなと思い……そんな思いが浮かぶのは、プラスの意味ばかりではないのかも、というところもある。小説としては、もっとフェティッシュな描写を増やすか、ふたりの絆が深まる具体的なエピソードを足すかして、さらなる「圧」を望みたいです。

 

 

29. 山本アヒコ 「勇者にふさわしいあなた」

 すごく面白かったです。異世界転生召喚ものというテンプレに乗っかってツイストを決める芸はいろいろなパターンを見てきましたけれども、これはかなりうまくできています。召喚の魔法陣から一歩たりともカメラが動かないのも演劇的で、短編として上手にまとめるのに寄与していますね。最後までケロッとしている神官のナチュラルな倫理観や常識のズレ具合もブラックで風刺が効いていてとてもよい。ほとんど欠点はないんですけれど、全体のバランスで見ると冒頭がちょっと重くて後半が駆け足になっているかな? ひょっとすると全体の文字数じたいをもうちょっと削ってコンパクトに納めたほうが、もっと切れ味があがるかも。個人的には頭ひとつ抜けた高評価です。

 捻りの効いた異世界転生もの。短編コメディとして完成度が高いと感じました! 特に終盤にかけてはアイデアも良く、テンポ良く進行していき面白い。オチも心に爪痕を残していきました。強いて言うなら勇者さまが出てくるまでが若干冗長かな…と思いました。冒頭から「何かが違うぞ!?」と思わせられるともっともっと強くなると思います。面白かったです!

 魔王の脅威に対抗すべく異世界から召喚した勇者は、平凡だけど自信過剰で下卑ていて、なんだかとっても心配だけど、彼に頼るしか道はなく…… 「現代日本でダメな青年が、異世界や過去世界なら役に立つというものなのだろうか」という、転生ファンタジータイムリープもののツッコミどころをグッと掘り下げた作品です。同種のアプローチを試みた作品はすでにたくさんあるのかもしれませんが、この作品は思い付きのパロディに留まらず、「異世界転生もの」のお約束を踏まえなくてもSFとして楽しめる普遍性を備えていて、頼もしさを感じました。後半の展開もいい。呪いのようでいて、やはりこれは、うだつのあがらない青年にとって祝福だったのかもしれない……そんな余韻を残します。

 

 

30. 有原ハリアー 「隠す手札、明かす役」

 分かりませんでした。小説かくあるべしみたいなつまらない話をするつもりはありませんし、文字で表現されているものならばなんでも小説にはなり得るとは思うのですが、なんでしょう? こう、物語が読みたいですね。

 いきなり箇条書きの登場人物紹介から始まってしまうと、少々面食らってしまいます……。ルール説明なども物語として落とし込んでほしいかな、と。やりたいことは分からなくはないので、ただ進行を叙述するのではなく、もう少しエンタメとして昇華させられるよう再構成してみては、と思います。 

 恋人同士である王女と騎士のポーカー対決を描いた小説で、別シリーズの番外篇だと思われます。それ自体はまったく構わないのですが、単品としての完成度をここまで放棄されると困ってしまうというのが、コンテスト担当者としての辛辣な本音です。こういうゲーム対決を物語として成立させるには、ぶっとんだ特殊ルールだったり、登場人物の狂気だったり、エキサイティングな要素を入れるサービス精神がもっと要るのではないか。淡々と勝負の経過を説明するだけでは、エピローグの萌えるオチも響いてこない。あらかじめ、このキャラクタたちに愛着があるひと向けの作品でありましょう。

 

 

31. 双葉屋ほいる 「鮎子ちゃんとながいともだち」

 ながいともだちが掛け言葉になっていて、こういうタイトルにひとひねりあるのはすごく好きです。素早いロケットスタートから、そのままの勢いでポンポンポンと軽快にテンポよく読めて、ほどほどに笑いがあって事件もあって、爽快な解決とちょっとした伏線の収束と友情もあって、ボリュームに対してのまとまり感が非常によく、意外とやっていることのレベルが高い作品です。文章がこういうノリとテンションだと、話のうえでのちょっとした粗も「まあそういうもんか」と気にならないし、全体的にチャーミングな印象。あともうひとつ、なにか強く印象に残るポイントがあればさらに強そう。KUSO勢の中では頭ひとつ抜けた高評価。

 読んでいて楽しい作品でした! 独創的な設定や物語の緩急、キャラクターも生き生きとしていてよかったです!髪の毛かわいい。コミカルな語り口も好きでした。おトイレや変態さんの描写が……ちょっと読むのが憚られるので選べませんが(作品としてはとても楽しめるポイントだったのですけれど!!)本山らの賞を獲れるポテンシャルはありました。惜しかった……けれど面白かったです!

 謎のヘアスプレーで髪が意志を持っちゃった! 謎だけど起こっちゃったことは仕方がない! とりあえず学校行かなきゃ! という割り切った前提が、このスピード感あふれるコメディにはよいほうに作用していると思いました。とにかく、1,000字程度の短い章ごとに、かならず脱力ものの笑える出来事と、次の章への気になる引きがある。これは私の小説観なのですが、遺漏のない文章できちんと描けていても、その場面が「無」なのは好ましくありません。動きがない淡々とした内容でもいいんです。でも、読者の感情を揺さぶるとか、作品世界の匂いを伝えるとか、何かをもたらさなければ。この作品は、そのあたりがバッチリ。笑いとサスペンスをもたらし続ける、サービス精神を感じる作品でした。 

 

 

32. 左安倍虎 「魔王のいない朝がくる」

 童話カテゴリーになっていますが、質感としては王道のハイファンタジーという感触です。ん~、短編にしてはちょっと盛り過ぎた感じ。最終的には「正義も悪も曖昧な灰色の時代がくる」みたいなふんわりとした教訓めいたところに落ち着くのが童話ということかもしれませんが、そのふんわり具合に対して「今日を繰り返している」という設定は、ちょっと強すぎる。物語の中での位置づけは完全に「魔王を倒してじゃあ明日からどうするの?」という現実にみんなが向き合うためのきっかけに過ぎず全然主題ではないので、肩透かし感があるかも。もうすこし童話っぽく文体を調整できれば、強めの要素も「そういうもんか」とあまり気にならなかったかもしれませんが、文体がソリッドなぶん、大仰な設定がそのまま大仰に響いてしまうというのもありますね。普通にたき火を囲んでお喋りしているだけでも、自然とそういう話にはなりそうな気がするので、「今日を繰り返している」は、いっそなくても良かったかも。

 児童文学的な雰囲気も感じられるファンタジー作品。漢字の開き方などにもこだわりを感じられる丁寧な文章が好印象でした。それぞれのキャラクターも立っていて良かったと思います。強いて言うなら……最後のエピソード「灰色の聖女」で世界観の広がりを描写しつつもそこで終わってしまうのがもったいない、というか個人的にはその辺りも読んでみたかったと思いました。 

 ひとの願いを聞き入れるマジックアイテムが作動して「今日」がループしていることに、5人の冒険者は気づく。なぜ魔王を討伐した勇者たちは、自分たちでもたらした平和な「明日」を喜んで迎えられないのか……。ミステリ風味で展開される、静かなサスペンス・ファンタジーです。読み手に必要な情報――設定だったり、キャラクタの抱える鬱屈だったり――を的確なタイミングでもたらしてくれる過不足のない文章が素晴らしいですね。ひらがなと漢字のバランスにも味があり、ファンタジー世界のムードを表記のレベルからしっかりと支えています。完全にプロのレベルだと思う。意外な真相の「意外さ」は、ストーリーを根底から覆すようなすさまじいものではないのですが、私はそれもこの小説のほんわかと温かい美点とみなしました。

 

 

33. 逢咲あるすとろ 「造られた完璧少女の日常」

 うーん、なんでしょう? なんかこう、いろいろなものを置き去りにしたままハッピーエンドしちゃった感じがして「それでええんかい」みたいな印象は抱きました。無から創造した完全な人造人間ではなく、わざわざ「死体から造られた」という独自の設定を用意しているのに、最後までその必然性がなかったような気がします。せっかくそういう設定にしたのであれば、死体を流用しているが故の社会的なコンフリクトなども組み込んだほうが話に深みが出た気がしますし、たんに日常系萌えに走るのであれば、わざわざ読者にひっかかりを与えるような設定にすることもなかったのでは? みたいな。

 人造人間とその造物主の交流を描いたハートフルなストーリー。ヘタレなマスターも個人的に好みで、全体的に上手くまとまっているのですが、逆に言えば優等生的すぎてやや個性に欠けるところもあるかな、とも思ったので、もう少し尖らせても良いのではないでしょうか。 

 人造人間の少女(ツン)と創造主の青年(ヘタレ)の穏やかな日常を描くハートフルなラブコメディです。こういうお話で「読みたい萌え」というのは確実にあり、期待通りの「意外な真相」というのもある。そこをきちんと押さえられているのは美点ですが、悪くいえば「そこ」だけで、膨らみに欠ける。作者のオリジナリティ(流行りの言葉でいえば『性癖』)は大筋より細部にあらわれるタイプの内容なので、あまりにも当たり前すぎる印象が残ってしまいました。もっといっぱい少女と創造主のやりとりを重ねて、このふたりだけの個性を演出してほしいと思います。

 

 

34. 木船田ヒロマル 「サエコの審判」

 本当にビートルギアという遊びについて解説をしているだけで、特に物語と言えるようなものがないように感じました。面白そうではあるんですけれど、へ~、面白そうだな~で終わりみたいな。もうちょっとなにか、そこに絡めて物語のほうを駆動させてください。

「ビートルギア」というおもちゃの大会の観戦記。こういった玩具を売るための男児向けアニメ、テレ東の夕方とかによくやってますよね。今回女性一人称縛りがあったこともあり審判視点で描かれていますが、やはりこういったものの定番である参加者視点で描いた方が、大会のドキドキ感などをより印象付けられるかと存じます。 

 持ち主がカスタムして戦わせる昆虫型ロボット「ビートルギア」が流行している世界。ビートルギアには無知な女性が、大会を進行する羽目になった一日の様子を「ゲームセンターあらし」や「遊戯王」のようなホビーマンガのノリで描いたお話です。サエコの一人称で話を進めることで、ビートルギアに関する知識の足並みを読者とそろえるのは順当な選択ですが、そうなると、試合の様子を伝える言葉ももっとふわふわでなけれならないというジレンマが生じる。大会をめぐる人間模様と、迫力のバトルの双方を描くには、複数の視点ともっと長い分量が必要かと感じました。

 

 

35. バチカ 「どんぶり一杯の霊峰」

 無敵のおばあちゃんがひたすらラーメンに挑むだけの話です。なんか本当にひたすらラーメンに挑んでいるだけだったので、ちょっと肩透かし感はありました。お話においては基本的におばあちゃんが主人公だというのはいいのですが、語り部がただ出来事を観測しているだけになっていて、物語に特になんのコミットもしていないのが単調な原因かなぁ。語り部がこの出来事をどういう風に受け止めたのかとか、たとえば、これがきっかけでなにか考えかたを変えたとか、そういうのがないと、ただこういう出来事がありましたよ~というだけの話になってしまって、読んだほうもこのお話をどう受け止めればいいのか困惑してしまいます。

 おばあちゃん VS 山盛りラーメン! パワフルなおばあちゃんのキャラクターが好きでした! 出来事としてはただただおばあちゃんがラーメンとバトルしているだけではありますが、キャラクターの力でぐいぐい読まされました。良かったね……おばあちゃん……! 食欲をそそるラーメンの描写も二重丸です!

 どんな屈強な男も腕力で打ち負かす火の玉のようなおばあちゃんだけど、流行りの激盛ラーメンは食べきれなかった。年齢を考えれば当然。しかし、そういう「負け」もおばあちゃんは自分に決して許さない。ラーメンを完食するべく、おばあちゃんは周囲を巻き込む地獄のような訓練を開始するというスラップスティック・コメディなのですが……あの、すごいね、これ。ウェットな人間ドラマはいっさいなし。「グラップラー刃牙」に出てきそうなおばあちゃんの起こす騒動だけで17,000字を一気に読ませる筆力に脱帽です。「二郎系」ラーメンの描写に執念を感じるところがよい。お腹空いてきた。ひたすらおいしく、読んで「ごちそうさまでした」と手を合わせたくなる、そんな痛快作です。

 

 

36. すこやかな狸 「花魂」

 書きたいテーマみたいなのは伺えるのですけれど、まだちょっと、書く技術が追い付いていない印象。このテーマ設定でこの話の筋で強度のある小説にしようと思うと、もう小手先の工夫などではなく圧倒的な文章の地力でブン殴るしかなくなるので、ひたすら言葉の切れ味を研ぎ澄ますしかない修羅の道です。単純に文字数が少ないというのもある。丁寧にエピソードを積み重ねた結果として同じエンディングに到達するのであればまた印象も違うと思いますが、1万字ではさすがにちょっと駆け足で充分に共感できる下地が作れません。2万字でも厳しいかな? いきなり大テーマに取り組むのではなく、自分が持っている小テーマのうちのひとつにフォーカスして、ボリューム帯に合った短編を書いてみたほうがいいかも。

 ”私”の見ている世界とほんとうの世界について。はっきりとしたストーリーラインが見えづらく、ちょっと読者を置いてけぼりにしているような感覚を覚えました。しかし、こういう口語的な一人称や素朴な雰囲気は私の好みなので、今後に期待したいと思います。 

 草花が好きな女子が、ちょっと「人生の休暇」を過ごしている時期のことを描いたお話。書きたい感情や事柄があり、自分の中にあるそれらをできるだけ正確にあらわす、お仕着せでない言葉を探している姿勢がうかがえて好ましいです。ただ、未整理で、乱暴に放り出したような個所も目立つ。カッコ書きの科白を地の文に続けたり、改行して分けたりするタイミングが謎めいています。まだ小説を書き慣れていない感じがある。この作品を読んだ限りでは、わかられなくてもいい混沌を追究するというよりは、言語化しにくい違和感をわかり合えることを望んでいる作者なんじゃないかと思います。もしそうならば、洗練は要る。好きな作家はいらっしゃいますか。自分の小説とどう違うのか意識しながら読むと、ぐんぐん吸収できるものがあると思います。

 

 

37. 神崎ひなた 「平成最後の夏、私は最強の屍と出会った。」

 厨二病昇天ペガサス盛りシリーズです。やっぱみんな好きですよね、死。回想を除けばワンシーンで終わってしまうので、もうちょっとお話に動きがあったほうがよかったかなぁ。誰が屍だったのか? というところをタイトルで回収する仕掛けだと思うので、そこはなるべくクリアに決めたほうがいいですから、関係のない要素は削いだほうがよかったでしょう。平成最後の夏のことです。タイトルがもっと綺麗にハマッてたら加点がついていました。

「最強の屍」という言葉から連想されるような俺TUEEEバトルもの的要素は無く、どちらかといえば死生観にまつわる哲学的なストーリー。厨二心がくすぐられる言い回しが印象的でした。ただやはり、「最強の屍」という言葉の厨二力が高すぎて、やや浮いていたかな、とも感じました。全体的にロマンチックさを上乗せしていければさらに良いかもです。 

 急死した想い人を蘇生させることを願う主人公の前に、本当に蘇生術を使えるという謎の少女が現れる。死ぬとは何か、生き返るとは何か、生きるとは何か――哲学的な思索に彩られた幻想譚です。世界なんてくだらない、くだらなくないのは「くだらない」という思いを共有出来るあなただけ……という、青くさくも切実な想い。青春文学ですね。いろいろ唐突な展開で、書きたい科白を性急に繋いでしまったようなところがある。結果、題名にある「平成最後の夏」「最強の屍」という強いキーワードが、劇中であまり機能していないように感じました。コミカルな冒険譚を連想させるタイトルでもある。内容に合った、静謐な題名のほうがいいでしょう。

 

 

38. 鍋島 「GHOST & SIMPLEX」

 鍋島さんは二作品めですね。王道の邪道っていう感じの学園異能力もの。まず安定して圧つよめの文がいいのと、序盤の設定の見せていきかたが上手いです。主人公ふたりのキャラと関係性も良い。犯人と対峙してからのシーンもとてもアツいので、あとは犯人を突き止めていく過程にもわくわくがあると100点満点でしょう。真ん中がちょっと説明を読まされている感はある。終わりかたも、これでキッチリ終わる短編というよりは連載の第一話っていう感じなので、ご本人てきに思い入れがあるようなら、ちょっと修正してこのまま続けていってもいいんじゃないかなと思います。一作目もそうでしたが2万字制限がかなり息苦しそうなので、伸び伸びと長編を書いてしまいましょう。それだけの地力はすでに十分にあると思います。

 異能を持った教師と生徒のミステリ風味なバディもの。話を広げていくのに適しているような世界観を考えるのがお得意なのでしょうね。連作短編とかにも仕立てられるような設定だと思いました。謎解きパートは若干目が滑ってしまったので、もう少しコンパクトにまとめてみても良いのではないでしょうか。

 殺人犯の記憶や感情を追体験できる能力「鬼の目」を持った主人公の女子高生が、殺された者の霊を祓う「鬼切り」の青年教師をサポートして、事件の真相に迫る伝奇ミステリです。サスペンスを盛り上げる手つきに唸りました。この手の話の「どういうところ」をみんながおもしろがり、続きを気にして読み進めるのか、作者はきちんと把握して書いておられると思います。情報が提示される順番と速度が適切なのだ。よいテレビのクイズ番組を観ていて、もし答えがわかったとしても、CMをはさんだ解答編は観たくなるじゃありませんか。そういう巧さがある。おもしろかったです。 

 

 

39. アイオイ アクト 「境界列車」

 むうんぷりんせす……。エンデっぽい感じの、ちょっと不思議で寓意のある児童文学みたいな路線です。ものがなしいんだけれどカラッとしている、独特の空気感がいいですね。これは絵がついたら素敵だと思います。雰囲気加点でプラス1点。いちおうどんでん返し型のプロットではあるんですけれども、そこまでカチッとした造りではなくて、でもリアリティレベルの調整がうまくいっているから、あまり細かいところが気にならない。そこはせめて星ではなく月なのでは……? みたいな引っかかりをわざと作ってスルーしちゃうのもキャラクター描写として高度で良い。あまり尖ったところはないのですが、総合力は高いです。

 幻想的な列車の旅路。すこしふしぎな世界観は好みでした。掴みも上手く、文章力も十分。ショートショートとしてのまとまりがあって良かったと思います。さばさばした主人公のセリフにもくすっと笑える点が多々ありました。派手さはないですが、じんわりと染み込んでくるような作品でした。

 就職活動に心が折れた主人公は、人助けをして電車に撥ねられ――死後の世界を走る列車の中に飛ばされる。羊頭の謎の車掌に誘われ、主人公はその列車で働くことになります。さまざまな想いを抱えた乗客との交流を描くハートフルなエンタテイメントには進まず、主人公が自分の半生と客観的に向き合っていくお話です。最後まで読んで「ああ、こういうテーマだったのか」と得心しました。そうなると、前半の吉田とのコミカルなかけあいの場面が少し長く、このオチ――列車はナコのインナースペースであった――へと向かうための伏線がもう少し散りばめられていてほしい。ユニークなアイディアを提示していくなめらかさを増す余地があると思います。

 

 

40. @muuko 「パセリ」

 こちらも青春の葛藤と成長てきなYA文芸ノリですね。全体的に巧いです。ボリュームに対する収まり感がとてもよくて、書き慣れているなという印象を受けました。パセリがメタファーとして何度となく登場してきて、普遍的であるが故にある意味凡庸な青春の物語に一本の芯を与えていてそれは大変にいいと思うのですが、肝心のぱせりくんが「あれ? 意外といなくても話が成立するんじゃね?」っていう感じで、それほど物語にコミットしていないのが気になりました。せっかくだから、もっとぱせりくんも絡めたほうが納得感が高まると思います。

 こういった青春ストーリーは私のどストライクです! 主人公の心の機微やつかず離れずな段階のぱせりくんとの関係性など、丁寧かつ繊細に描かれていて好感が持てます。あとはやはり、その名の通りそっと寄り添ってくれるようなぱせりくんのキャラをもう少し掘り下げた描写が欲しいかな……と思いました。 

 ふつうの女子高生の、いいことも嫌なこともそんなに起こらないけど、それなりに気を遣って学校生活をサバイブしている様子をていねいに辿る、この感じ……ヤングアダルト小説の王道である。短いお話の中で、人間関係や各人物の心境にきちんと「変化」があるのがいいですね。いいひとだけど特別な存在感はない、名前の通り「つけあわせ」みたいな存在の同級生がキーパーソンになるのですが、その肝心のぱせりの魅力が少し弱い気がしました。へんに濃い感情で結びつかない、微妙な関係のすがすがしさを狙ったのだとは思いますが……「この料理(物語)、パセリがなくても成立してしまう」という印象もある。もう少しだけ、彼を魅力的で、不可欠な存在として言及してほしいと思いました。

 

 

41. 三文士 「超同棲時代」

 え、怖いなにこれ。男が最初から最後まで延々とクソなだけでまったく好感が持てませんし、そんなまったく見所のない男と同棲を続けている主人公にも一切共感できずに、なんだか気味が悪くて怖いです。ひょっとすると主人公にとって重要なのは名前だけってことなのかもしれないですけれど、仮にそうだとしても更にその理由が分からないので謎が深まり怖いです。狙ってやっているのだとしたら大したものですが、ウーン?

 クソ男と同棲し続ける主人公との会話劇主体の物語。正直なところ……この関係性やキャラクター、異文化すぎて怖かったんですけど、逆に言えば私を怯えさせるくらい良く描けているということで長所なのかも……とも……クソ男こわい……。オチが急展開だったように感じたので、どうして「カズヤ」に惹かれてしまうのかの説得力が欲しいと思います。

 ぶっちぎりのバカ男であるカズヤとの、頭蓋骨にひびが入りそうな日々をスケッチした掌篇連作です。ウザいな……カズヤ……スゴいな……カズヤよ……でも現実ってわりとこういうものではある……。おもしろいかそうでないかと訊かれれば、初期の戸梶圭太さんみたいなおもしろさがあるんですけど、やはり、まだ一人前の小説にはなっていなくて、地の文章に洗練の余地が大いに残されているという感想になってしまう。勢いのある会話を書く力はあり、叙述によるサプライズを仕掛けるサービス精神も持っている。それらを活かして、今後よい書き手になっていってほしいと思います。

 

 

42. 吉野茉莉 「私たちは、何に怯えているのか?」

 わたしは皆川博子さんを連想したのですが、ご本人てきには吉屋信子だそうで、でも分かりますね。時代考証が可能な記述全然ないんですけれど、イメージてきにはちょっと昔の閉鎖的なミッションスクールって感じで、このカテゴリーは根強い人気があります。倒立する塔の殺人とか、青年のための読書クラブとか、笑う大天使とかああいうやつ。その中でもちょっと鬱々としたほうの系統。たぶん書きたい雰囲気が先にあって、書きたかったことは完全に書けていると思うのですが、完璧な額縁だけがあって中身がないという印象。フレーバーテキストとしては100点なので、あとは中身を入れるだけです。一番困難な部分は既に達成しているので、たぶん、改修はむしろ簡単な部類でしょう。中身って意外となんでもいいんです。

 影のある美しさを感じられる雰囲気が素敵な作品でした。文章に色香があって幻惑的ですね。登場人物も魅力的で、敬体での叙述も作品の雰囲気を高めることに上手く寄与していて作品の雰囲気にのめり込むことができました。ラストのモノローグがとても好きです。

 女学生の寄宿舎で、月光の夜、飛び降り自殺が発生する。その最期を目撃した語り手の少女は、月の光に中てられたように事件の真相を追い求め、やがて犯人とおぼしき相手を追いつめるが…… 硬質な叙情が張りつめる、ミステリ風味の物語です。匿名性がすごいのが異質です。固有名詞がぜんぜん出てこない。登場人物の名前すら可能な限り廃され、出てもカタカナで表記され、この小説の主役は個々の人間ではなく、彼女らが醸し出す耽美なムードそのものであると謳っているかのようです。ミステリ「風味」でなく、ミステリとして書くこともできたでしょう。でも、その要素も「従」なのだよね。ふしぎな美意識が貫かれた異色作。好きです。

 

 

43. 犬子蓮木 「眩しい環の外側で」

 設定はすごいグッときました。これはあんまり思いつかないんじゃないかなって気がします。ひょっとして、実際にそういう症例があるのかな? でも、お話としては本当に生きづらさを感じながらも少しずつ生きているという感じで、地味さは否めない。主人公の異常さの描写はけっこうシンクロ率が高くて、本当にそんな人が居そうなしっかりとした質感があって、そこはとてもいいんですけれども、語りが淡々としているのでお話も淡々としがちで、ウーン。コンセプトてきにも、そんなに派手にドラマチックである必要はないとは思うのですが、やっぱり語り部が最後までひたすら受動的なのがアレかな。なにかは行動してほしかった。

 着眼点・キャラクター造形がとても良いと思います。私、歪んだ愛の物語が好きなんですよね。淡々とした描写ではありますが、だからこそリアルな質感を感じられるようで、私は好きでした。プロローグとエピローグの一文に伏線が忍ばせられていたら、ぐっと作品としてまとまりが出ると思います。読解力不足でしたらすみません。

 彼氏にどうしても恋愛感情を抱けない主人公。近所のお姉さんが結婚で引っ越すのを見送るとき、彼女は自分が愛せる対象の正体に思い至る。それは、同性……という展開と思わせるミスリードに、私は見事に引っかかり、提示された真相に驚きました。人間が嫌い、人間が怖い。安心して愛せるのは、うつくしい意志の結晶の象徴である「結婚指輪」だけという主人公の半生を、端正な文章で追う短篇です。固有名詞を排したことで寓話性が高まり、テーマの輪郭が太いところがよい。最初から最後まで主人公がじっと孤独に耐えているだけなのは、小説として寂しい気もしたけれど、そういう読者はお呼びでないのでしょう。届くべきひとに届いたらいいと思う。

 

 

44. 紺野天龍 「八月のファーストペンギン」

 始まりかたと終わりかたが非常に技巧的で書き慣れているなぁという感じを受けました。ボリューム感もとても適切で、2万字以内で終わらせるのにちょうどよいお話をちゃんと2万字以内で終わらせています。今回のモノンホホ大賞ではわりと盛って1万字以上にした人と削って2万字に収めた人に二極化していて、この適切なボリューム感というのは意外と高等スキルなのだなぁと思いました。寄り道しているようで、わりとすべての要素がお話を前に進ませるようになっているので、無駄がなくて読んでいて気持ちがいいです。技巧点でプラス1点。ただ、いい感じでまとまってしまっているというところはあるので、もうちょっとふたりのキャラとかで、なにか尖ったところを出せたらさらに良いかなぁ。

 好きです!!! 三十路のお姉さんの初恋! お相手はイケメン……の女の子! この2人の初々しい関係性がもうどストライクで、めちゃくちゃときめきました。作品としてのクオリティも高く、読後感も心地よかったです。地の文で描かれるはづきさんの心の揺れ動きや夏姫さんが心情を吐露するところなどなど、登場人物が生き生きと描かれていて演じてみたくなりました!

 売れない作家のはづきは、行きつけのカフェの店員に恋をした。しかし「普通でない」自分にとって、普通の感情を抱き、それを発露することは「普通でない」ことで……。みずみずしいラブストーリーです。一読して「なんて読みやすい小説だろう」と思いました。書きたいことを誰にでもわかりやすく伝えることに、しっかりと気を配った筆致です。それは「わかりやすいことを書く」というのとは、似ているようで違っているのだ。小説ならではのサプライズも仕掛けられ、なんで主人公はこんなに「普通」にこだわる性格なんだろう……? という疑問にも、きちんと解答が与えられます。はづきと同じく作者も、祈るように小説を書いていらっしゃるのでしょう。気持ちよくおもてなししてもらいました。

 

 

45. 今村広樹 「フラグメントとモラトリアム」

 いつものをやっても仕方がないので、小説のなりそこないではなく小説を書いてください。1万字を越えたのは偉いですね。

 二人の少女がサナトリウムで過ごした日々について綴られています。正直小説としての体を成していないかな…と思いました。「鳩羽つぐ」ちゃんみたいな映像作品として出力したらこの不思議な空気感が映えるかもしれませんよ。 

 猫と人間のハーフである短命な種族「白短種」の少女といっしょに、サナトリウムで主人公が過ごした日々のお話です。お菓子を作ったり、クイズを出したりという交流が描かれているのですが、その記述がキャラクタの個性を演出しない。どんなクイズを出し、どの問題に正解したり誤答したりするのかというところで起伏をつけ、彼女らのこれまでの人生や人となりを感じさせるようにしてほしい。冒頭に「僕がこれから書こうとするのは、小説になりそこねた断片にすぎない。高尚ななにかを求めてもらっても困る」とありますが、ほんとうにその通りではこちらも困るというのが率直な思いです。

 

 

46. 水偽鈴 「コスプレ探偵椎名ばべるの事件簿 多くの名前を持つお菓子」

 うーん、なんかちょっととっちらかっちゃっているかな。こういうのは事件の謎を追っていく過程で主人公のキャラクター性が明らかになってくるのが理想なんですが、いろいろな属性モリモリの主人公をご紹介するパートと、日常の謎を解くパートとが完全に分離してしまっていて融合していない。まず主人公のご紹介があって、とってつけたみたいに謎解きが入るという構造になってしまっていますし、主人公の盛り盛りの属性もとくに謎解きに必要な要素にはなっていないので、ふたつの要素をしっかりより合わせてほしい。

 日常のちょっとした謎を解決するコスプレ探偵さんの物語。探偵ものとして評価させていただくと、せっかくのコスプレ設定などが生かされていないように見受けられたり、謎解きそのものもトリックがやや淡泊な印象を受けたりしました。でも、このちょっとめんどくさい感じの主人公ちゃんの考え方などは好きですね。 

 学生モデルの椎名ばべるはアニメやコスプレが大好き。映画撮影の待機時にちょっとしたトラブルが起き、本当は芸能人でなく探偵になるのが夢だったばべるが、推理を働かせて揉め事を解決するお話です。文章の厭世的なけだるいムードがいいですね。ばべるの人となりが伝わってきます。肝心の「コスプレ探偵」の部分がおまけっぽくなってしまっているところは気になりました。「日常の謎」そのものはささいな規模でいいのですが、それが物語の中心にあり、登場人物にとってはけっこうな大ごとでなくては。お菓子に関する誤解が、もっと俳優やスタッフの士気や関係性に波紋を起こすような展開だと、よりおもしろい。

 

47. 逢咲あるすとろ 「物理少女フィジカル☆アリサ」

 バカっぽいワンアイデアの馬力で乗り切っていくタイプのお話で2万字はやっぱりしんどいですね……。二話目の途中くらいまでは「わはは」って感じだったんですけれども、最後までずっとこの調子だとさすがに胃もたれしてしまうので、どこかの段階でお話が旋回してほしかったかな。ちょっと一本調子かも。時事に対する社会風刺てきな欲求ももうすこし抑えて読者を楽しませることを考えましょう。個別の要素では光るところがあるだけに、惜しいです。

 悪と戦う少女の物語に社会風刺的なスパイスを盛り込んだ作品。熱さは十分! ただ、この展開なら魔法少女でもストーリーが成立するような……といった感じも受けたので、勢いに任せて書くだけではなく、構成や緩急にも気を遣っていただけると、更に良くなるのではないでしょうか。 

 主人公が謎の生物に任命されたのは、きらびやかな「魔法少女」ではなく、メリケンサックで悪党を撲殺する「物理少女」!? コレジャナイと思いつつ、少女は世間を騒がせる旬な巨悪に立ち向かう。直近のスキャンダラスなネタを果敢にぶちこんで風刺する、勢いあふれる魔法少女パロディものです。東京オリンピックに対する批判や改善策が多く盛り込まれ、これは作者の思いが生のまま反映されているのかと思います。そちらに比重が寄りすぎて、物理少女という設定ならではのおもしろさは提示しきれなかった感触がありました。そこも含めて、ナンセンスな一発ギャグとして受け止めればいいのかな。

 

 

48. 海野ハル 「竜の啼く季節」

 硬質な王道のハイファンタジーです。すごい密度があって、最後にちゃんとどんでん返しもあって、頭からおしりまで身がギッチリのスニッカーズのような2万字です。なんだ、やれば真面目なのも書けるんじゃないかと思ったんですけれど、よく読んだら意外とそうでもありませんでした。これたぶんわたしと、あとせいぜい数人くらいしか分からない、ものすごい射程の狭い身内ネタが仕込まれていて、わたしはすごいウケましたが、事情をなにも知らない人にとっては普通に良質なファンタジーでしかないでしょう。事情をなにも知らない人にとっても普通に良質なファンタジーとして成立しているのがすごいです。せいぜい数人程度を苦笑いさせるだけのネタを粉飾するために全力でこのガワを作る、このコスパの悪さは最高にモンホホ大賞って感じで嫌いではない。特に解説はしません。やっぱり、特定の誰かに向けた嫌がらせというのは最高の進捗エンジンですね。

 重厚感のあるハイ・ファンタジー。巧な文章力で、物語世界へと引き込まれました。一つ気になった点を言うと、キャラクター達の名前が風変わりで少し違和感を感じたのですが、きっと何かのもじりなのでしょうね…私には理解できない深遠なメタファーが隠されているのでしょう…しかし、普通に楽しむことができました。

 己の生き方を父である国王に認めさせるため、竜狩りに赴いた姫騎士。初冬の山で偏屈な案内人の狩人と語らいながら、彼女は己と向き合うことを余儀なくされる……という、正調のハイ・ファンタジーです。翻訳ファンタシイ(この表記を使いたくなるね)のような重厚さを出しつつ、読みやすさを失わない文章は貫禄たっぷり。話運びも、もたつかず、急ぎ過ぎず、巧みです。完成度はコンテスト参加作のなかでも屈指の高さでありましょう。だから、あとはもう……100点の作品をそのまま満点と評価するか、それとも70点の至らなさもあれば120点の凄みもある作品をチャーミングと思うか、というところ。文句なしがゆえに評価に迷うという、贅沢な悩みを味わっています。

 

 

49. こむらさき 「Special Bouncy Ball」

 こむらさきさん二作目。こむらさきさんは完全にモモモ大賞生まれモモモ大賞育ちなんですけれども、かなり普通に小説している小説を書くようになってきていて感慨深いです。そろそろ、こむらさきさんのレベルアップに合わせて講評の要求水準も上げていきますね。まず亀入さんのエピソードはそれ単体ではものすごい質感が高くて胃にギリギリくる感じでとても良いのですが、それとユリノとのロマンスがほぼ完全に別のエピソードで二本立てになってしまっているので、できれば一連の出来事として自然とふたつのエピソードが絡み合ったほうが一本の短編としての強度はさらに上がるでしょう。あと、せっかくスーパーボールをタイトルに据えて重要なキーアイテムにもなっているので、作品全体を貫く縦糸のように、メタファーとして各所で活用できるとさらに加点がつきます。そろそろ本当に大賞も狙える水準になってきていますので、最強短編を書いて狙っていきましょう。

 夏のボーイミーツガール。恋愛ものとしてもきゅんきゅんさせられましたが、途中の亀入さんのキャラクターが強烈で印象的でした。怖かった……そういった描写の筆力が非常に高いですね……! 二人の性別に関して一捻りあるのも良いですし、ユリノもイケメンでした……。また、本筋とは若干ずれますが、カクヨムって絵文字も使えるんですね。Web媒体ならではの表現という感じで本山的にポイント高いです。 

 シャイな主人公が「海の家」で働き、さまざまなひとと知り合って成長するひと夏の様子を描いた青春小説。「液晶画面にご用心」がレディコミなら、こちらは少女マンガですね。亀入さんという少女を生々しく描くことで「人間、嫌われるほうにも原因がある」というデリケートな内容に果敢に挑み、誠実な結論を出していると思いました。そっちに迫力がありすぎて、本筋のユタカとユリノの物語がかすんでしまったところはありますが、強いシュートがゴールバーに当たって外側に飛んでいってしまったような、前向きな欠点だと思います。たぶん「勢いでKUSOを投げるんじゃ~ウオアアッ!」という段階は、もう超越した作者である。今後は、ひとつの作品をもっと削ったりつけ足したりして、さらなる完成度の高さに挑んでほしい。 

 

 

50. @isako 「「文化」とは私たちの生活であり、営為であり、存在である。」

 めちゃくちゃ質感の高いディストピアものです。従来のフォーマットを刷新するような新奇性などはなく、どこかで見たような設定、物語ではあるのですが、それでもガツンとくる圧倒的な筆力。本当に筆力一本で圧してきている感じ。本大賞のために取得した新規アカウントのようで、作者の情報が一切ないのですが、怖いですね。ひょっとすると中身はどこかのプロかもしれない。女性一人称っぽさはないんですけれども、それさえもなにか狙った意図のようなものが隠されていそうな気がして、下手に講評するのが怖くなってしまいます。え? なにもないよね、罠とか。

 2万字きっかりにぎっしりと詰め込まれたディストピア小説。圧倒されました。この作品については特に私みたいな小娘がごちゃごちゃ考察したり講評したりするのは無粋なのではないかと感じます…ともかく、創作の力をこの上なく感じるような、心に爪痕を残す一作でした。

 厳しく思想や生活が統制された国で、主人公は黙々と工場で働き続けている。何を作らされているのかはよくわからないが、それは「文化」だと教えられている…… この物語で描かれている世界は比喩でなくいずれ来たる(もう来ているかもしれない)現実であろうし「これの何がいけないのか」と思っているひとも実は多いのではないか、そんな思いを抱きつつ息を詰めて読みました。指の傷という象徴を据え、小説として駆動させようという意志は篭められていますが、叶うならもっと起伏を……という講評は、あんまり意味がないかも。高密度の文体で叩きつけられた、平成最後のプロレタリア文学です。

 

 

51. Veilchen 「女王と将軍と名もない娼婦」

 なろうのほうで「雪の女王は戦馬と駆ける」という作品を書いている作者さんなんですけど、めっちゃ読んでました~ファンです。クソみたいな境遇で、あらゆる絡め手を利用して強かに生き抜く女性を描くのがものすごく上手な方で、本作にもその魅力が如何なく発揮されています。完全に副賞の朗読を狙いにきた女性の一人称語りオンリーの1万字で、まずこの縛りで1万字をきっちり牽引していく力が素晴らしい。驚くような仕掛けやどんでん返しがあるわけではありませんがグイグイと読ませてキャラも魅力的で読後のカタルシスも強い。めちゃくちゃ面白かったです。しかし、これを朗読するとなるとものすごく高い技巧が要求されますね……がんばれらのちゃん!

 一人称語りオンリーで妖艶な娼婦を生き生きと描いた作品でした。全体的にクオリティも高く、巧みな文章力でキャラクターの魅力を上手く引き出しているなあと感じました。文章に色気があって良いですね。二面性のある彼女を演じてみたくなりました……! 高い演技力が求められる気がしてなりませんが……。

 国を喪って落ち延びた女王は贋者ではないかという噂が臣下の間に広まっている。その真相は、そして彼女に去来する思いとは……。女王のひとり語りで綴られる謎に満ちた物語は、誰が善いとか悪いとかではなく、ただ平らかに、人間の浅ましさ、逞しさ、愚かさ、切なさ――さまざまな業を浮き彫りにします。濃厚な内容が1万字と少しでビッとまとまっている。このスタイルだと多少の説明くささは避けえないのですが、女王が将軍を言葉で弄るという状況で不自然さを感じさせない。朗読を見据えた「ひとり二役」の設定が物語の文学性と密接に絡み合っている。どこをとっても作者の実力が伺える、じつに巧みな筆さばきです。これは確かに、音声で聞きたい。

 

 

52. 和泉真弓 「サッちゃん」

 総合的な感触はとても良くて、巧い作者だと思います。雰囲気加点でプラス1点。系統てきにもわたしが好きなタイプの話だし、テーマ性もはっきりしていて終わりかたも納得のいく感じではあったのですが、なにか軽微なひっかかりを覚えていて、でもそれがなんなのか上手く言語化できなくてとても困っています。今回の応募作の中で一番講評に悩んだかも。ちょっと曖昧なアドバイスになってしまって非常に申し訳ないのですが、もちろん現状でも完成度は充分に高いのですけれども、感覚的にはなにか軽微な修正を加えるだけでもっとズドーン! と良くなる匂いがするんですよ。なにをどうすればいいんでしょうね? わたしも悩んでいます。

「はんぶんこ」をテーマとしてとある姉妹の関係性を描写する物語。私の好みでした。(ドロドロの三角関係になるかと思ってひやひやしたんですけど真っ直ぐなお話でした……よかった……)心の機微が丁寧に描かれており、現代的な装置の取り入れ方なんかもお上手で、全体を貫くテーマによって纏まりも出ている、良い作品だったと思います。各話タイトルも粋で良いですね。

 生まれつき難病を抱えた美貌の姉・サッちゃんはカルチャーへの感度が高く、冴子の「水先案内人」となっている。姉妹はお互いを替え難い己の半身と思っていたが、冴子に「サブカル男子」の恋人ができることで、その関係に転機が訪れるというお話です。ヴィレヴァンTwitterFacebook……これらの小道具って、使い方次第では作者本人の「闇」や「イキリ」みたいなものが透けて見えすぎて、物語の風味を損ねてしまう恐れがありますが、この作品の場合は冴子という人物の生活の実感に根差した扱い方で、厭味がない。人間の抱える屈託を平明な気持ちで見据え、品のある言葉でできるだけ正確にかたどろうとしている小説であり、多くの読者の心を打つのではないかと思います。よかったです。

 

 

53. アリクイ 「カラフルポップクレイジィランド」

 KUSO創作です。うーん、正直に言うと13000も費やすほどのネタではないと思います。筆者のほうも順当な笑いではなく苦笑いを狙いにいっているのだろうし、実際に苦笑いをしてしまったので狙い通りの効果を発揮してはいるのでしょうけれど、苦笑いさせてどうするのか? といった根本的な部分はちゃんと見つめ直したほうがいいでしょう。単純に、これ単独で成立するオチではなく前作を読んでいる必要があるというのも射程を短くしてしまっている要員なので減点対象です。しかしなんにせよ、これでなにかを書き上げるという経験は積めたわけですし、心配しなくてもアリクイさんにはもう書き上げるちからはあるわけですから、書き上げることそのものを目標にする段階はもう終わりです。次はその書き上げる力をつかって、どんなテーマの物語を書きたいか、ということをじっくりと考えてみましょう。

 導入は普通に良いと思ったのですが終盤にかけて加速度的にKUSO濃度が上昇していき、エンディングは「なるほど、わからん。」という感じでした……。えっと、まぁ好き放題やるのもまた創作の一つの楽しみ方ですよね。

 トラックに撥ねられて転生した異世界は、キッチュでビザールな「ドリィムランド」。元の世界に還るべく、主人公はドリィムランドを旅して女王様に会いに行くが……という前半の物語を一生懸命読んでいたのが虚しくなる、後半の超展開にすべてを懸けたギャグ作品です。これ、チンパンチって言いたいだけでしょ。その脱力感を狙ったのだと思いますし、狙い通りに脱力していますが、どうもそこに「してやられた」という幸福感がないんだよね(笑) 前半から細かくギャグを散りばめていくか、いきなり後半のテンションから始めるか、どちらかが望ましい。なんか、ふつうの講評ですいません。

 

 

54. 水瀬 「リバーズ・エッジ

 水瀬さんの二作目。やはり面白くて根本的な地力の高さが伺えます。ただ、CQと比較してしまうとやっぱCQかな? エモとトレードオフの関係にある概念をどういう語で指示すればいいか分からないんですけれど、まあ仮に「理屈」という語で指示するとして、そのエモ↔理屈のバランスでちょっと理屈のほうに寄ってしまったかも。基本的にはカチっと理屈を組んで納得させるというよりも、エモさでうやむやに乗り切っていくタイプの話だと思うので、もっとエモで押し通したほうがたぶんバランスは適正です。ちょっと崩れるともっとちゃんと理屈がほしくなってしまうんですけれども、そこは「そういうもんなんだな?」って納得させる必要があり、この作風は本当にここのバランスが命っていう感じがしますね。最後は唐突に読後感を狙いにきているところもあって、読後感いいんですけれども「読後感狙ってきたな……」みたいに冷静になっちゃうところがあるので、同じところに着地するにしても、もっと丁寧に導いてほしい気もします(強欲)

 夏の川縁での魔女との邂逅を描く物語。やはりこの文章の質感、好きですね…また、こちらは比較的エンタメノベル寄りな仕上がりだったように感じました。キャラクター造形も角が取れた感じで万人受けはしそうです。魔女さん好き。(単に本山さんがボクっ娘好きなだけかも)もう充分に筆力をお持ちであると考えますので、読者層のターゲットに合わせて作品テイストを使い分けなさると宜しいのではないでしょうか。2作とも楽しませていただきました。

 特によい結果も残せず部活を引退した少女。ふいに心を大きな不安と虚無がむしばむ最中、彼女は「台風を喚んでいる」という「魔女」と出会います。「CQ」もそうでしたけど、わからないことをわからないまま書いて、でも何がよくわからなくて怖かったりドキドキしたりするのかはちゃんとわかりながら読めるという、この文章の心地よさね。この魔女が何だったのか、彼女が言うことは真実だったのかどうか、すべては謎のまま終わっていきます。でも、投げっぱなしにされた気持ちにはならない。このような作品をポコポコと量産できるのなら、すごい書き手が隠れていたものだ……。余談ですが、サブカルクソ眼鏡としては、各章のこういう題名のつけ方、キュンと来ます。実は私も「ある証明」という章題をつけたことがある。 

 

 

55. 狼狽 騒 「OKちゃんとNG君」

 この話の主人公が誰だったのか、というのが二段オチになっているのはうまいなと思いました。けれど正直、暗号じたいは手垢のついたもので1万字を牽引できるほどのネタではないですから、出題→謎解き、の一本道では厳しいですね。そこに絡めてもっとお話を転がして、キャラクターの関係性などを掘り下げていってください。オチのために主人公がブランクの箱みたいになってしまうのは必然なんですけれど、美樹くんはもうちょっと描ける余地がありますし、探偵役も本当に探偵役として登場してそのままスーンと消えてしまったので、まだもっとなんとかできそう。

 非常にテクニカルな「らののべる」でしたね……!このギミックには感心しました。せっかくの美少女探偵先輩や美樹くんとの関係性をもっと掘り下げたものが見たいと思いました。また、傍点を濫用しすぎるとやや読みづらいので、ここぞというところだけに使うと良いかと思います。

 ラブレター(?)は暗号文。片想いの男子から仕掛けられた謎解きに奔走する少女を描いた学園ミステリです。まさか、こんなかたちで「らのノベル」が来るとはね……。本山川小説大賞ならではのユニークな作品ですが、この暗号のワンアイデアだけで1万字を転がすのは、やはり厳しいと感じました。主人公が右往左往する場面の多くが、とくにキャラクタを立てる要素も、謎解きの新たなヒントもない「無」になってしまっていて、このままでは半分の分量で書ける内容でありましょう。キャラクタの背景や、日常の愉快なやりとりを増やして、お話を華やかにするのが、内容を濃くする近道でしょうか。

 

 

56. あきよし全一 「眼鏡先輩へ愛をこめて」

 ライトでポップなノリからはじまって、会話にも軽妙さがあり、そこから一転して重いエピソードがあって、それを乗り越えてハッピーエンドっていう、理想的なライトノベルの型を踏襲していて、かなり完成度は高いです。キャラクター造形がわりとステロタイプなんですけれども、それすらも漫画の影響でステロタイプに振る舞っているというメタ構造で説明をつけていて隙がない。技巧点でプラス1点。全体にちょっとお上品にうまくまとまっちゃっている感じはあるので、もっとはっちゃけてもいいかなとは思うのですが、ここはこうしたほうがいいみたいな目立った欠陥はないです。あとは書けば書いただけ伸びると思うので、この調子で書いていきましょう。

 3人の女の子達が織りなす学園コメディ。適度に物語の緩急もあり、登場人物達の掛け合いもコミカル、エンディングもふんわりとした百合風味が私好みで、全体的によくまとまっているな、と思いました。あとは何か読者を惹きつけるようなフックとなるものを入れ込めればより印象深い作品となるかも……と思います。難しいですね……。

 美術部の実冬、彼女に突っかかってくる後輩の綾乃、綾乃が恋焦がれる部長の由香里、三人の少女が織りなす学園コメディです。コミカルな前半と、綾乃のぶっとんだ行動にもきちんと理由がつく後半のコントラストはよく利いています。ちゃんと緩急をつけたストーリーで、どこが悪いというところはないのですが……「ちゃんとすること」に精いっぱいであったような感触はある。各キャラクタの個性が光るエピソードをもう少し厚くすると、シリアスな種明かしの感動が増す。もっと書き慣れていけば、そういうところに気を配る余裕が生まれましょう。 

 

 

57. 起爆装置 「私の色」

 大澤めぐみの「清潔なしろい骨」のパクリですね。わたしがなにか仕掛けを見落としているだけの可能性もありますが、現状では「清潔なしろい骨」を超える価値をなにか提供できているとは思えませんし、様式てきに言ってもパロディでもオマージュでもパスティーシュでもなく、ただのパクリで終わってしまっています。パクるときはストーリーではなく構成とかエッセンスをパクるようにしましょう。換骨奪胎です。しかし、これを大澤めぐみが主催する小説大賞に放り込んでくる胆力はすごいですよね。なにを考えているんでしょうか? いやまあ、別にいいんですけれど、どうせなら起爆装置さんは佐藤友哉とかそのへんからパクってきたほうが相性はいいでしょう。

 どこかで拝読したようなストーリーライン……。歯に衣着せぬ物言いをさせていただくと「清潔なしろい骨」の下位互換でしかないかな、と感じてしまいました。読点を多用した独特の語り口で描かれていましたが、文章としての美しさも(私の主観ではありますが)上回ることは出来ていないかと思いました。(別作品を引き合いに出しての批評はしない主義なのですが、その禁を破ってしまった……)

 少女が男子に性的に蹂躙され続けて絶命し、そのあとも少女の視点で物語が続いて、世俗から隔絶した奇妙な安寧を得るという内容が、前回のコンテストに投稿されている「清潔なしろい骨」に酷似しています。あの作品に欠けていたものを埋めるものや、さらに盛って強化されたものも、特にないような気がする。習作ということなのでしょうか……? 仮に模倣ではなかったとしましょう。それでも、前半が気になる。凄惨な暴行の執拗な描写は、文章の迫力で読ませはしますが、それが象徴するべきもの(男女の業とか、人間の理不尽な心情とか)は薄く、ただの悪趣味に堕しかねないと思いました。 

 

 

58. 神崎ひなた 「魔王軍に一人残った参謀の私が勇者一行をまとめてDIE~どんな魔王城も私がDIY~」

 見下ろし型の2Dロールプレイングゲームのフォーマットということなんでしょうか。いろいろとメタなネタが突っ込まれているっぽくて、笑いを共有するには前提となる知識が必要っぽい。別の人が読むとまたまったく違った評価になるのかもしれませんが、わたしはそのへんのネタはちょっと分かりませんでした。表示に攻めたところがあるんですけれども、最初スマッホンで読んでいたのでまったく意味が分からなくてそのへんも難しいところですね。お話としては魔王とネチッコイの会話でほぼ進行しますので、もうちょっとふたりのパーソナリティを掘り下げたほうが全体的に質感が向上しそうです。

 魔王とその側近の会話劇主体の作品。メタ発言を多用するギャグやリズミカルな掛け合いをサクッと楽しむことができました。6歳魔王かわいい。二人がかばい合うところ好きです。今後のアドバイスとしては、ギャグのセンスや発想力をどんどん磨いていって欲しいです。あとこれ朗読不可能ですよね!?

 幼女の魔王を支える陰険な参謀がでたらめに強い勇者一行をあの手この手で倒そうとする、少し昔のテレビゲームの「ステージエディット」や「バグ現象」をネタにしたギャグ作品です。こういうパロディって、変に気遣ってメジャーなネタを持ってきてもわからないひとはわからないし、逆にどんなマニアックなネタでも誰かはわかるのですよね。優れたパロディは、元ネタがわからなくても「パロディの気配」だけで笑えて、進んで元ネタを調べたくなるものです。遠慮はいらないんだ。この作品は、手加減を感じました。もっと思い切りやったほうがいい。ぜったい誰かがついてきてくれますから。

 

 

59. 千羽 稲穂 「ニーナに欠けたもの」

 ちょっと分かりませんでした。言葉では伝えられないものを伝えるためにこそ物語があるので、分からないものをなんとか描き出そうとするその試みじたいはまさに物語の正道とも言えるのですが、まだあんまりうまくいっていないかな? 読者の理解を得るには大抵の読者がすでに持っている普遍的な経験にリーチして共感させるか、語り部に寄り添わせて経緯を追体験させることで同じところに到達させるかで、このお話の場合は後者のメソッドになるかと思いますが、その場合は読者を一緒に連れていってあげなければなりません。振り切ってどんどん前を走られると、結局なにも分からないままポカーンとしてしまうので、読後、なんとも言えない虚無を感じてしまいます。ひょっとすると虚無を与えるのが目的なのかもしれませんが、その場合も「なんのために?」という部分は自問するべきでしょう。

 エモさで押し切っていくような、詩的な文章の感触は悪くなかったのですが、小説としては、読者に対していささか不親切な作品だったな、という印象を受けました。演出の裏には何らかの思惑が隠されているのかもしれませんが、私にはちょっと読み取ることが難しかったです。しかし、映像の断片が浮かんでくるような情景描写は良かったと思います。 

 お気に入りのキーホルダー「ニーナ」と、どこかバランスを欠いた同級生の少年、紗綾。主人公の心を占めるふたつのモティーフを軸に展開される物語は、断片的で、不親切で、それは、わからないものをわからないまま書きつけようとしているからでありましょう。紗綾という少年の、理に落ちない奇妙な存在感は出ています。でも、文章にちぐはぐな部分が多々あって、不必要なところで内容を理解しにくくしている。わかったほうがいいところは、わかるように書いたほうがいいと思うのです。そのほうが、わからないままでいいところの印象が強まるので。

 

 

60. 刀を先に抜いたのは 君の方 「このひと頭おかしい」

 そうだね×1

 ひえっ……このひと頭おかしい……。あかんくなってらっしゃる。

 新垣結衣さんといえば堺雅人さんとダブル主演の「リーガルハイ」というテレビドラマがありましてその中で田口淳之介さんの演じる「草の者」というキャラクタが好きだったんですけど彼はジャニーズ事務所を辞めてソロミュージシャンに専念しているようだからもしドラマの第3シーズンがあってもこれまでと変わらず出演してくれるのかどうか……えっ講評。ああ講評ね。はい。怪文書ですね。オモシロカッタデス。以上です。

 

 

61. 枯堂 「ESCへようこそ」

 エクストリーム! ESCという新しいスポーツをテーマにしたスポ根もの! のはずなんですけれども、エクストリーム! するのが遅すぎです。エクストリーム! してからの筆致はものすごくいい反面、そこに至るまでの前半部分が冗長なうえに作者もウンウン悩みながら書いているのが伝わってきて、ちょっとかったるい。冒頭に出てくる飛ぶ女の子の描写がものすごく丁寧なのに、作中で果たしている役割は「真の天才」というただのシンボルなので、そこはもっとステロタイプを借りて流してもいいし、逆に主要人物であるはずのESCのメンバーは十把一絡げに「オタク」で描写が終わっていて、そういうバランスの悪さが目立ちます。作者が苦しんで書いているところって、やっぱり読者も読んでて楽しくないので意外と得るものがなかったりしますから、もっと早々にエクストリーム! できるような構成を考えたほうが書くほうも読むほうも楽しいかも。苦しんだら真正面から取り組むのではなく、お話の構成じたいを組み替えてしまうのも手ですよ。エクストリーム!

 エクストリーム! 好きです! やってみたいと思わせるような架空競技のアイデアも良いですし、爽やかなスポ根ものとして楽しめました! タイトルや小説の概要で架空スポーツものということを明かしつつも、なかなかその正体がわからないところにちょっとやきもきしたので導入でバーンと試合シーンを出すなど構成を工夫してみると更に良いかもです。後半にかけてどんどん良くなっているように感じ、読後感も良かったです! 

 高校時代、バレーに打ち込んでいた――つもりだったけど、じつは気持ちがからっぽだった主人公は、退屈な大学生活を打破したいと願い……という感じで始まるこの小説、行きそうな展開に行きません。地味にとても驚かされる作品でした。私の勝手な予想ですけど、ESCというユニークな競技のアイデアだけがあって、細部は書きながら考えていったのでは。序盤の悔恨の話が少し重たく、ESCも物語のいちばん太い軸にはならない。そのアンバランスさは、客観的に見れば欠点なんです。でも、そのふわふわしたところこそ、この小説の独特の味とも思える。軽やかだけど大事なところは外さない、基本的な筆力の高さのなせる業です。

 

 

62. ろ~りんぐ 「ほんの時々の、空想よりも素敵な現実」

 気取ったところのないフレンドリーな文体が読みやすくていいですね。サラサラっとなんの引っ掛かりも抵抗もなく最後まで読み進められて、それは良いことだと思うのですが、なんでしょう? 最後まであまりにもなんの引っ掛かりもなかったかな? もうちょっと、どこがこの作品の一番の山場なのかということを意識して、そこに向けてテンポを調整したりリズムに緩急をつけたりしたほうがいいかもしれません。なんてことのない日常の中に潜むドラマチックさの演出! みたいなのはわりとレベルの高いスキルなので、わたしも「こうすればいいよ」とはなかなか言えないのですが、いろいろと試行錯誤をしてみてください。やっていきましょう。

 空想好きな少女とバレー部の少年の爽やかな青春ラブコメ。他人の空想パートを少し削って、主人公とカケルの関係性にフォーカスしてみるのも良いかもしれないと思います。青春してるなー! といった感じできゅんきゅんさせられました!

 幼馴染みの異性がかっこよくなっても昔と変わらず自分といっしょにいてくれるというのは、永遠のドリームですね。幼馴染み、私にはいません。同様のコンセプトの青春小説はこの本山川小説大賞にもいろいろ投稿されていますが、この作品は「空想好き」というテーマが据えられています。あまり突飛な空想ではなく、わりと「人間観察」くらいのレベルにとどまっているのは、読んでいて共感しやすい美点でもあり、もっとぶっ飛んだ空想をして「えっそれが真相なのっ」みたいなおもしろさを求めたくもあり。ともあれ、地味になりがちな「傍観」の態度に、能動的な要素が加えられているのがよかったです。

 

 

63. 菊川睡蓮 「それでも私は。」

 すこし前にめちゃくそ流行ったわりと定番のネタなんですが、ちょっとまだふわふわとしていますね。ぜんぶが抽象的すぎて、ぼんわりとしたイメージしか掴めません。これ系はただでさえ手垢のついたネタですから、びっくりさせようと思ったらそれなりにカッチリ組まないと機能しませんし、ふたりの関係性に関しても抽象的なぼんわりとした説明が続くので感情移入しづらい。もっと具体的なエピソードを挿入し、ディティールを高めて読者を引き込んでいく必要があります。全体的に、さらに解像度をあげて書き込んでいったほうがいいでしょう。

 愛する人が救われる運命を求めてタイムリープする恋愛もの。文章には引っかかるところもなく、するっと読めるのですが、読者に作品を印象づけられるようなインパクトが少し足りないかな、と感じました。まだ字数にも余裕があるみたいなので、もう少しディテールを書き込んでも良いと思います。

 年下の少年に恋をしている主人公。彼女の重大な秘密がもたらす二転、三転のサプライズを描く恋愛小説です。「君の名は。」や「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」のような感じで、SF 要素によって感情の交流をドラマティックに盛り上げていく狙いはわかるのですが、肝心の「少年の死を回避するためのアクションの成功/失敗」があまり描写されず、その「前」と「後」だけが書かれている印象があります。やはりこれは「過程」のサスペンスがもっと必要な物語かな、と思う。これを下敷きにあちこちふくらませると、より読み応えのある小説に仕上がると思います。

 

 

64. 大村あたる 「好きにして」

 第二回本物川小説大賞の大賞受賞者、大村(あ)さんです。この人はずっと歪な愛のかたちみたいなのをテーマにしていて、今回も甘酸っぱ青春小説のガワを被せたフリークスって感じなんですけれども、あとはバランス調整でしょうかね? 試みは分かりますし、とても意義のあるものだとは思うのですが、本質的に水と油を混ぜようとしているわけですから、そこには高い技量が要求されます。理性は拒絶するのに本能は共感してしまう、獲得した社会性は醜悪だと思うのに本能は美しいと訴えかけてくる、くらいのバランスが最高ですから、嫌悪感↔共感とか耽美↔醜悪の比重をもっとうまくとっていければ美しい作品が仕上がるでしょう。テーマは固まっているようなので、あとはひたすら試行錯誤と研鑽です。やっていきましょう。

 上手いですね! 細やかな描写が素敵で、なんといいますか、物語世界の解像度が高いように感じました。文章力が高く、絵が見えるようでした。キャラクター造形もしっかりとしていて、息遣いが感じられます。まっすぐな恋愛に少しのフェティッシュなスパイスを加えた良作だと思いました。

 学校というくだらない檻の中で疑問を持たずふつうに生きていける子たちがわかんなくて嫌いだ――そんな思いを抱えた者同士の、わかりあえるわけじゃないけどコツンと心の触れ合う音が立つ、そういう青春文学です。この作品は文章が端整で、「いきなり髪を切る」「吐しゃ物を愛する」というキャッチーなエグみがある行動ふたつに焦点が絞れていて、鬱屈を吐露するだけではない、プロフェッショナルな出来栄えでした。うまいがゆえに……鮮やかにいち場面を切り取った「スケッチ感」が、物足りなくもある。これは賞賛です。もっと書き込んだものを読んでみたいという、実力者に望むわがまま。

 

 

65. ぶいち 「とあるババアの黙示録」

 ちょっとバランスが悪いかもしれない。メタてきな視点を持っていて平気で読者にも喋りかけてくる飄々とした文体なのですが、三人称視点てきな部分と一人称視点てきな記述が混在していて没入感を妨げている感じがします。ちゃんとキャラの中に入って、このキャラの目から見た場合にどういう書きかたになるだろうかというのを意識したほうがいいでしょう。肝心の出来事のほうも、語り部はただの観光客みたいに見ているだけでなんのコミットもしていないので、こんなすごいことがあったんですよ~、という話をされてもフーンとなってしまいます。主人公ですから、もうすこしなにか主体的なアクションをさせたほうが主人公っぽさが出ますよ。

 不死っ娘ロリババア異世界にトリップさせられ終末まで見守るお話。ロリBBA一人称がキュートで、グロテスクな描写の上手さとのギャップも相まって良かったと思います。もう少し主人公の感情の動きやグンソウとの交流の間にドラマがあると更に良くなるかも! と思いました。

 心は老婆、身体は美少女という不死の魔女は、さまざまな異世界に転生してしまう体質の持ち主。今度の転生先は荒廃した砂の世界だった。必死に生き残ろうとする人類を、魔女がじっと観察する物語。「ロリババア」が幼女に転生するというのは、カレーライスの上にシチューをかけるような不思議さがありますが、これは何かのシリーズものの一篇なのかな。そういう感じの設定である。「マッドマックス」的な世界の雰囲気はよく出ていて魅力的ですが、この短篇でこういう話にするなら、あまり世界観の解説は加えず「よくわからない災厄が訪れて人類はわけもわからず死んだ」という感じのほうが怖くて余韻があるかもしれません。 

 

 

66. 藤本晶太 「青く滲んだ桜の下」

 よく分からないふたりがなんだかよく分からない話をしているのをよく分からないなりに読んでいたらなんか終わって、最後までなんの話だったのかがよく分かりませんでした。今のままではどこに焦点を合せて読めばいいのかが掴めないので、まずはこの話でなにを書くのかというテーマをひとつに絞ったほうがいいでしょう。短編なのでひとつです。ひとつに決めたらそれ以外の要素はすべて捨てて、かつ、それをかなり早い段階で提示したほうがいいです。最初に「わたしは今からこれの話をします」と宣言してから話しはじめたほうが、読者にかかるストレスは少ないです。

 甘苦い百合作品。良くも悪くもふわふわしているような印象を受けました。依存関係からの脱却が主軸であると読み取りましたが、それだけで引っ張っていくにはテーマとして若干弱いかも、と思います。また、主人公が離れていく理由、ここまできっぱり決別する必要性にも、もう少し説得力が欲しいです。

 幼馴染みのりーちゃんとシノはお互いが大好き、学校は嫌い、家も空っぽ、でもふたりでいればそれでいい……そんな甘い百合を書きたい、のろけた会話を書きたい、いちゃいちゃする場面を最後まで書きたいという作者の正直な欲望を突き通した小説として私は読みました。このコンテスト、お題は「女性一人称」というだけなんですけど、なぜか百合作品が多いですね。その中で、この作品は真っ正直すぎるかもしれません。後半、彼女たちにとっては切実な選択による別れがありますが、それは、愛しているならいっしょに立ち向かえる苦難なのでは……と思ってしまいました。

 

 

67. くすり 「抒情詩」

 第三回本物川小説大賞の大賞受賞者、くすりちゃんです。コンチェルト何合目ですの!?(発作) 圧高めの文体とカチッとした質感を伴った描写力は健在でさすがなのですが、ちょっとつらつらとしていますね。怨念をそのままお出しするといやがおうにも質感は高まりますが、そのままお出ししても物語にはなりませんので、多少の加工は必要でしょう。自己陶酔てきな部分はくすりちゃんさんの売りでもあるのでそれは別にいいとは思うのですが、ちゃんと読者を引き込めないままに作者のボルテージだけが上がっていくと、作者と読者の温度差でタイフーンが発生してしまうので、グッとダイブしていくのと同時に高い位置から俯瞰する視点も保持していないとダメです。

 密度ある感情の吐露とポエティックな語り。エンタメ的な起伏などは捨て置いて、あるがままに叩きつけてくる姿勢は嫌いじゃないです。石版でも読ませる筆力がありますね。これはこれで一つの完成形を成していると思います。レギュレーションの存在を前提としたメタ的な視座から投げかけられるこの書き出し、好きです。

 華麗で陶酔的な文章が紡ぎ出すのは、劇団の中で混線し破綻してゆく恋愛模様。登場人物がイニシャルで書かれ、事実と行動を訥々と追っていく、実録風の書きぶりです。もしかしたら、実体験がか非常に色濃く反映されているのかもしれません。小説としての完成度はどこか放棄し、エモーショナルな勢いで押し切ってゆくところがあります。この作品は、これでいい。作者にとって重要な――どうしても書くことが必要な作品というのはあるのだ。ただ、それが読者にとっても必要とは限らない。この筆力が本来のかたちで活かされた「次の作品」に期待したいというのが率直な感想です。

 

 

68. @Pz5 「犬が死んだ話」

 ちょっとメッセージ性が前面に出過ぎている感じがして、胃もたれしちゃいますね。せっかくの小説ですから、登場人物が出てきて喋るばかりでなく、なにかの物語が動いていく中で無理なくメッセージ性を混ぜ込めたほうがちゃんと読者の心にも届くのではないでしょうか。思索や主題をそのまま登場人物に台詞として喋らせるというのは、創作のセオリーてきな話をするならなるべく避けたほうが良いです。人間、お説教くさいものには反射的に反感を覚えるので、もうちょっと暗喩や隠喩などの絡め手も使っていかないとなかなか響かないと思います。テーマは自分が語るのではなく、読者に見つけさせることを意識してください。

 個人的な嗜好ではあるので話半分に聞いてほしいのですが、ダッシュを多用した文章が苦手なんですよね。傍点や二重鍵括弧、ダッシュといった記号はここぞというところで使ってほしいです。塩梅が大事だと思います。哲学的なお考えが沢山盛り込まれていて、自己陶酔的かなと感じざるをえなかったです。もし人に読ませることを考えるのならば、物語としての緩急などを考慮した再構成が必要かと思われます。

 愛犬が亡くなったショックで心身が弱り、入院した主人公が出会ったふたりの男が、自分の死生観を滔々と語りだします。序盤の「犬が死んだ話」に生々しい手触りがあるぶん、中盤以降の「中二病的」な思索が、ちょっと空回りしている感じがある。もし中盤以降が真に書きたいものであるなら、導入から浮世離れしたトーンのほうがいい。個人的には、地に足のついたトーンのほうが、この話にはふさわしいと思っています。目の前で失われていく生命や、会社での卑俗な日常は、妖精のような男たちの観念よりきっと重たい。 

 

 

69. @isako 「人間のあなたはいつか、人間の私を食べる」

 この方も二作目なのですが、ほんと何者なんでしょうか? めちゃくちゃ面白かったです。二作出してきて二作とも飛び抜けて面白いというのは、もうそれだけで安定した地力を証明しています。モモモ大賞とかに参加している場合じゃないのでさっさと公募とかに出して名のある賞を取ってきてください。ていうか、実はプロなんじゃないですか?(2回目) 2万字規模のエンタメ短編小説として満足のいくようなスコーンとしたオチがあるわけではなく、そこが不満と言えば不満なのですが、そういった部分を差し引いたとしても圧倒的な文章力と描写力だけで面白いので恐ろしいです。単純な小説の巧さという尺度なら、今回のそうそうたる顔ぶれの中でも間違いなくトップレベル。短編よりも長編向きの人かもしれません。このまま続きを書いてくれたら読みます。

 なんかすごいものを読まされた……! という感じがひしひしとしました。今回の大賞では百合作品が多く見られるのですが、このカップルは独創性もあり、上手く描かれているなと思いました。この二人の道行きをもっと読んでみたいです。しかしながら、YouTubeでこれを朗読するとBANされる恐れが……。

 故あって魔物とのハーフにされてしまったシラノと、彼女を慕って同行しているミーア。ふたりの厳しくも温かい冒険行を描いた物語ですが……いやはや、驚きました。「『文化』とは私たちの生活であり~」の作者は、こんなに悠々とした筆さばきのエンタテイメントも書けるのですね。いわゆる「人間×人外もの」の一種であり、その手の物語に求める「萌え」と「泣き」の要素をしっかり満たしつつ、「愛情とは何か」という思索が根底に流れて、ふたりの運命に大きく関わる事件は起こらないのに、小さなクエストひとつひとつに意味がある。堂々たるハイ・ファンタジーです。これは続きも、前日談も読みたいな。ふたりの出会いと、旅路の果てを見てみたい。ご検討ください。 

 

 

70. 一田和樹 「空飛ぶ人喰いタクアン黙示録」

 先生なにやってんすか!? わたしは一田先生というとサイバーミステリーと告白死の印象がつよくて、尖った美意識と幅広い引き出しの人ってイメージなんですが、本作はタイトルのまんま、大量の空飛ぶ人喰いタクアンが襲ってくるB級パニックホラームービーてきなやつです。こういうのもあるんですね。さすがというかなんというか、襲ってくるのがタクアンであることを除けば普通にめっちゃ面白いパニックホラー小説の冒頭部分という感じでレベルが高いんですけれども、タクアンなだけで他は徹底的にシリアスなホラーであまりワハハと笑っちゃうようなシーンなどはないです。本当に怪物を示す語がタクアンに置換されているだけって感じ。B級ホラー感を徹底するなら、もうちょっとタクアンであることの温度差とかをフィーチャーしたほうがパリッとしそうな気はします。

 パワーのあるパニックホラー小説! さすがの筆力で、巨大タクアンが襲ってくる映像が目に浮かぶようでした。でもどうしてタクアンを選んだんですかね……? 色がかわいいから? タクアンというワードがかっちりとしたSFホラーの中で良い意味で浮いていて、面白かったです。タクアン怖い!

 こちら、ITサスペンスのあの一田先生ですか。何をなさっているのですか(笑) サメとかトマトとか、モンスターもいろいろいますけど、この作品は題名どおりの怪物が全世界をパニックに陥れます。人間の暗部を抉りだす数々のエピソードが絶妙に抑制の利いた描写で、かえって重たい余韻が残ります。ダークな展開を書きたい方々の参考になりましょう。スケールを広げるだけ広げておいて「やーめた」と放り出すのも、達人の遊びという感じで、肩透かし感はない。うまさの裏返しで、せっかくのバカバカしいモティーフなのにまったく笑えないのは欠点ですが、その無駄遣いが狙いなら、もう何もいうことはありません。 

 

 

71. 柚木山不動 「聖リリアンヌ女学院高等部料理研究部(仮)」

 カギカッコが一切ない独特の記述なんですが、そのせいでリアルタイム感がなくて全部が過去の回想っぽい雰囲気になってしまいますね。ほんわりとした雰囲気を出すにはいいかもしれませんが、平板な印象になってしまうのは致しかたなしという感じで、ウーンこれはどうなんでしょう。わりと主人公が透明なタイプで周辺に変人奇人が配置されているので、本来はその周辺の人たちを生き生きと描かないといけないはずなのですが、主人公のモノローグへの変換というワンクッションが入るせいですべてが薄い膜に覆われ柔らかくなっていて、ちょっとお話の構造とは相性が悪いかも。もっと直接的にハイテンションな奇人変人を書いたほうが元気に動きそう。一行目でポンと話の主題を置いてくれるのは分かりやすくていいのですが、その肝心の料理勝負にあまりドラマがなくて肩透かしな感じもします。

 いわゆる”ナマモノ”小説ですね…!?ご飯描写にとっても食欲をそそられました。飯テロ!りゅうきゅう食べてみたいです!とり天もトキシラズも美味しそう……。まんがタイムき◯ら的なほのぼの百合……という感じで私は楽しめました。

 高校の料理研究部に所属する主人公の、夏休みの帰省の様子、そして夏休み明けの部員との料理対決を描いた、ほんわかしたストーリーです。文章で読む「日常系萌えアニメ」という感じで、ほんとうに何も起こらない。途中でひとつ大きめの事件は発生するんですけど、それが本筋に影響するわけでもなく……うーん……。ただ、退屈な作品ということはなく、数々の料理の描写はおいしそうで、さらさらと心地よく読まさった(北海道弁)のは、文章の温かみでありましょう。またアニメに喩えれば「絵がかわいい」という感じ。ごちそうさまです。 

 

 

72. ぶいち 「理想の子供」

 うーん、分かります。みんな好きですよね、死。特にアマチュアの文書きに多いのですが、みんな好きなんですよ、なんかこういう系統の話。個性的であろうとして没個性化する悲劇っていうか。書く人はめちゃくちゃ多いのに受け皿はそう多くはないので、はっきり言って激戦区です。激戦区なだけに、お話の見せていきかたであったり文体であったりどんでん返しであったりミステリーてきなトリックであったり、そういう部分でもっとなにか頭が抜けたところがないと厳しいでしょう。自分が読んでもらいたいものを書くのではなく、読者が読みたいものを書くことを意識してください。書くことが自己満足で終わってしまってはダメです。

 よくまとまっていらっしゃって、文章にもとくに引っかかるところは無かったです。幼い子の視点からの叙述がかわいらしく、お姉さんのキャラクターも良かったです。ここからさらに何か一つ、捻りを加えるか何かすれば、読者の心に爪痕を残していけるのではないかと思います。

 物心つく前から父親の苛烈なDVが吹き荒れる家に生まれ育った主人公の女児は「そういうものだ」と暴力を受け入れて暮らしていたが、やがて母が殺され、そして主人公も……しかし、物語はその後も主人公の視点で続きます。前半は鬱々とした――そして、こういう物語の定番の――内容が延々と続くので、読み進めるのがつらいところがあります。この作品以外にもいえることですが、殺伐とした場面を書きつけられる力って、誇りたくなるものです。わかる。でも、その力=おもしろさではないのだ。主人公の小学校卒業くらいまではもう少し圧縮して、父親の新しい恋人と主人公の交流が始まる後半の内容に筆を割いたほうがいいと思いました。ここからの展開は個性があってよいと思います。

 

 

73. 双葉屋ほいる 「ワンオペ勇者は救世うつのようです」

 双葉屋さんも二作品目。一作目とはうってかわっての鬱系ファンタジーです。持ち味である安定したするすると読めるフレンドリーな文体はとても良いのですが、仕掛けじたいは昨今ではもう珍しくもないものになってきていますから、それだけで物語を牽引していくのはちょっと厳しいかな。お話の筋でもうあとふたつみっつはフリップが必要でしょう。お説教臭いものに対しては読者は基本的に反感を覚えますので、スンとメッセージを届けるためにはすこし工夫が必要です。社会風刺てきな欲求がちょっとストレートすぎる印象。

 寓話的なファンタジー。リーダビリティが高い文章で、勇者さま…おいたわしや…といった気持ちで読んでいました。公開法廷以降のシーンの語りからは、まっすぐにメッセージが伝わってきましたが、逆に言うとまだ少しエンタメ小説への昇華が足りないかな、とも感じました。 

 民衆の身勝手な期待を背負わされて心身ともに疲弊しきった魔物退治の勇者が、おのれに課せられた恐るべき使命を語りはじめるこの小説、根幹はシリアスだとしても、全体的なトーンは「ドラクエ1」などの基本設定――なぜ軍隊などを出さず主人公の単独行で片をつけようとするのか――を「あり得ない」とパロディ化する、コミカルな内容であることを予期させる題名ですが……ちがった。最初から最後までずっと重かった。題名詐欺である。人間のあさましさを静かに弾劾する、アンチ・ヒロイック・ファンタジー。重くて、おもしろかったです。 

 

 

74. 卸忍辱 「あさみどり」

 ちょっとお話が一本道かも。ただでさえ主要な登場人物が両方とも淡々としているのに、お話まで淡々としていると起伏が感じられず退屈してしまいます。もうすこし話の筋で展開なり旋回なりさせるか、キャラをもっと立てるかして緩急をつけたほうがいいでしょう。このお話を通じて自分がなにを伝えたいのかという部分を見つめ直して、そこにしっかりとフォーカスを合わせてください。悪いことだと分かっていてもやらずにはおられない芸術家としての性なのか、それとも居場所を与えられたことの心地良さなのか、むしろ背徳的であるからこその快感なのか、焦点の合わせかたによってどのようにでもなる話だと思いますが、現状ではそこがちょっとボケている感じがするので、全体的にシャキッとさせたほうがいいかな。

 この作品全体の雰囲気やキャラクターの関係性はけっこう好みです。本筋から脱線するような部分が、キャラクターに厚みを持たせるために機能しているというよりは、単に水を差す感じになってしまっていたのが少しもったいないですね。もっとドラマチックに、話の緩急をつけられると更に良くなるかもしれません。この”彼”、わたし好きです。

 画家を志していた主人公は、本物と見紛うような贋作を描くことばかり上手であることに屈折した思いを抱いている。そんな彼女の恋人が、ある相談を持ちかけて……という、才能とは何かを巡る物語。個人的に、私がよく題材にする内容なので、興味深く読みました。書きたいテーマや、理想とする人間の関係性が、作者の中で定まっているのはいいですね。基本的な表記のセオリーが(段落のはじめは一文字下げるとか)揺れているのは気になりました。あと、これは寓話というより、エンタテイメント性のあるストーリーなので、キャラクタの名前や出自は設定して出したほうが、読者もより物語に入り込んでテーマを受け取れるようになると思います。

 

 

75. 小早川 「WIND BREAKER」

 え? なんでしょうか、分かりませんでした。行間を読めとか言われても分からなかったので分からないです。別の自作のスピンオフということなのですが、これだけでは単独の短編小説として成立してないかも。作者の頭の中だけにある情報は読者には伝わらないので、ちゃんと不足なく本文に盛り込む必要があります。作者はなにしろ作者なので書き漏れている情報もナチュラルに補完して読んでしまって、そういうところに気付きにくいものですから、自分でもすっかり忘れた頃に読み返してみるといいかも。

 消えたマスターを追っていき、世界の真実が明かされる、という展開に途中まではとても楽しく読めたのですが、肝心のオチというか"WIND BREAKER"が何なのかといったところがちょっとよくわからなかったです……。エンディングも色々と放りっぱなしな気が……。コッチはめちゃくちゃかわいかったです。 

 23世紀の未来、会社員のカザネは産業医に薦められ、リフレッシュのために北欧旅行に出かける。そこで拾ったウサギ型のペットロボットが彼の運命を変える……というSF作品です。どうも、作者の脳内で出来あがっている世界を、文字にして書き起こすのが性急すぎるところがあります。次から次と新しいキャラクタが登場し、場面が切り替わりますが、そこに流れているムードや感情を把握するのが難しい。どうやら他作品のSFパロディのようで、もともと出てくるキャラクタたちに親しんでいなければ楽しめない作品なのかもしれません。私は読者として不適格のようです。すいません。

 

 

76. 今村広樹 「がーるふれんどえくすぺりめんと」

 だらだら喋らず小説を書いてください。読者はあなたの個人的なエクスキューズなどには一切興味がありません。いちど他の人たちがどういったものを書いているのかを読んでみたほうがいいのでは?

 人に作品を読んでもらうということは、その人の時間をいただくことだ、ということを心にとめて誠意を持って創作をしてほしいな、と思います。

 既存の小説は冗長でくだらない、自分がやっているソリッドな試みを評価しない読者もくだらない――そんな作者の嘲りと嘆きを託した会話劇が続き、だらだらと1万字を書くのがバカらしくて苦労したということが伝わってきました。私は、知的な企みを読者にわかりやすく伝えるというのは、ますます表現を研ぎ澄ますことであって、読者をバカにして程度を下げるということではないと思っています。

 

 

77. 大澤めぐみ 「柚木さんの完璧な世界」

 温泉に行きたい。

 ぐわー!(ジェンダー論をくらう音)まだまだ若輩者で勉強不足なので、浅い読みしか出来ていないとは思うのですけれども、ポリティカルにコレクトたらんと要請されるようになっていっている社会においての歪みを描写した作品……です。ステレオタイプな女性像を自ら望んで演じることは、男女平等の名の下に否定されうるのか、など考えさせられました。(小学生の読書感想文か?)世の中、世知辛いのじゃ。しかしこれを最終的に倒錯した百合小説に落とし込む手腕! さすがです!

 柚木圭子は先進的な正しさを貫く有能で完璧な上司。その部下の「わたし」は圭子を尊敬しつつ、旧来の価値観で求められる「女子」を演じることでサバイブしている。「お仕事小説」として順調に滑り出した物語は、後半で急転します。正しいことは大切だ。でも、正しさで幸せになれないひともいる。では、不幸なら正しさを捨ててもいいのか。また、不幸になる正しさを他人に強いてもいいのか……。あなたはどの登場人物を憐れみ、どの登場人物を畏れるでしょうか。「何か小説を通して社会に訴えたいことがあるなら、このくらいの密度と人物造形が求められるのではないでしょうか。1万字ぴったりでもこれだけできるよ」という、手ごわい「模範解答」だと思います。

 

 

78. 山本謙星:櫻鬼P 「サイバー=クルーの古書堂」

 プリンちゃんかわいい! 序盤から真相の伏線がきっちり張られているのは、ちゃんと物語全体を構想してから書いているっぽくて好印象です。文章力も必要十分で読みやすくていいですね。ただ、物語の起承転結てきな話をすると、転がそのままオチになってしまっている感じがするので、真相が明らかになってからのさて「どうしよう?」というところでもうひとつドラマがあったほうが収まりがよかったかなぁという気はします。ちょっと解決が簡単ですね。

 ビバ・バ美肉! まず題材にトレンド感があってポイント高いです。構成も、しっかりとした土台を感じさせるもので、好感を持ちました。強いていうなら、鏡花本・仕掛け本のくだりは、描写は素敵だったのですが、話の本題からちょっと逸れてしまっているなという感覚も受けましたので短編としてのまとまりを意識されると良いかな、と。古書堂白鷺ワールド行きたくなりましたけれども! 星子ちゃんも出ていてにやりとさせられましたよ!

 いまから十数年後の近未来、VRによるSNS空間で、大学生の主人公は仮想の古書店に巡り合う。データとはいえ稀書の宝庫、しかも店主はイケメン(アバターだけど)である「古書堂白鷺」を巡って繰り広げられる人間模様を描いたSFです。前篇の「古書の物語世界にダイブする」という展開から、そういう伝奇的なほうに進むのかと思いきや、後篇は古書店主の正体にまつわるサイバーなSFへ。個人的には梯子を外された感じがありましたが、これはこれで、ときには「温かみがない」みたいな不信を持たれがちな最新の情報技術を健やかに描く、未来への希望あふれる内容でした。いいエンタテイメントです。シリーズ化もできそうですね。 

 

 

79. 現夢いつき 「アイと不思議の扉」

 行きて帰りし物語の型ですね。6話完結で童話的な感じという予告どおりに、ちゃんと型にまとまったキュートでチャーミングなお話に仕上がっていて、計画に則って執筆できているようです。ふんわりとした文章の肌ざわりも良いですし、メタファーとしての前髪とハサミもちゃんとテーマに絡んでいてテクニカル。雰囲気加点でプラス1点です。すでに十分な技量はあると思いますので、あとはいかに既存の型を脱却して個性を出していくかが課題でしょう。唐突にゴリラとか出すといいですよ(無責任)

 メルヘンチックでほっこりする素敵な童話でした。一話一話丁寧に積み重ね、主人公の成長をしっかりと描き切っているところが良いと思いました。文章もキュートな一人称で読みやすく、キャラクターも可愛らしい。児童文学としての完成度は一定レベルに達していると思います。 

 長い前髪をママに切られるのを嫌がって逃げたアイは、謎の扉をくぐって次々と不思議な世界へと迷いこみ、旅路の途中で出会った魔法使いや妖精に大切なことを教わって、少しずつ成長していきます。作者が読者に伝えたいメッセージというのは、読者に直接発信するのではなく、物語の中でキャラクタが別のキャラクタに対して向けるものです。読者はそこから(勝手に)自分への教訓を汲みとるのだ。この物語はそこができているのがよかったです。課題としては、わりと既存の「童話らしさ」の型に収まってしまっている感じがあるところ。もっと幻想的なイメージで満たすのか、キャラクタをもっとはっちゃけさせるのか……。どうするかは、作者の志向によりましょう。 

 

 

80. 長月 有樹 「鉄腕エミリーの隣のワタシ」

 独特の言い回しにときどき光る部分がありますが、くどく感じられるところもあるのでもうちょっと洗練は必要かな。読者をびっくりさせてやろうというサービス精神は感じますし、無よりはずっと良いのでそのスタンスじたいは大事ですが、とりあえずびっくりさせれば良いというものでもありません。ちゃんと読者の興味を牽引しながら、ここぞというところでびっくりさせていきましょう。伏線をしっかり張り巡らせて、びっくりするけれども納得はできるくらいのバランスに仕上げてください。次は勢いを維持したまま、もっと丁寧にやってみましょう。

 テンション高めなこの文体、私は好きです。このまま伸ばしていきましょう!ストーリー展開についてはスピード感重視であれよあれよという間に出来事が起こっていってしまう感じでしたので、もう少し読者のことも考えて丁寧に進行することも考えた方がいいかもです。良い塩梅を探っていかれると良いのではないでしょうか。

 ある日いきなりレーザービームを撃てる義腕を装着してきたエミリー。このちからで世界を救うと息巻くが、田舎町でそうそう大層な事件は起こらず、友だちの「私」は自分の恋に忙しい……。確かに題名は「隣のワタシ」がメインなんですけど、エミリーのサイボーグ設定は物語の中心にならず、主人公とエミリーが織りなす三角関係のほうに筆が割かれていくの、大胆な作劇である。最後は妙にピタッと物語が着地するところも、おそらくあまり小説を書き慣れていない作者ですが、勘どころはいいのだと思います。この勢いを失くさないまま、文章も、物語の構成も磨いていってほしい。 

 

 

81. 亀馬つむり 「レイチェルとサトー」

 うーん? これはなにかオチてるんでしょうか? なんの説明もなしにいきなり喋りはじめるのはわたしもよくやる手法なのですが、さすがにちょっと不親切というか、必要な情報がちゃんと提示されていないように思いました。クトゥルフ神話のタグもついているので、ひょっとするとそっち方面でなにかオチがついているのかなぁ? 分かりませんでした。

 AIと青年の交流が描かれている、ということはわかるのですが、物語の軸がちょっとよくわかりませんでした。バーチャルYouTuberになりたいっていう話は結局どこへ行ったの?という感じで。とりとめがなく散漫な印象を受けました。何を描きたいのかはっきりと読者にも伝わるような構成を心掛けていただけると良いと思います。

 語り手のレイチェルは何らかの実験体で、研究室の中で暮らしているらしい。研究員のサトーと喧嘩して、ベストフレンドのメグちゃんにどうしたらいいか相談して――という状況は、読み進めていくと少しずつ明かされてきて、その「いきなりボンッと始まって、じわじわと見えてくる感じ」のおもしろさがこの作品の企みだとは思うのですが、いくらなんでも情報を出し惜しみしすぎだと思いました。恥ずかしながら、よくわからなかった……。何かの番外篇なのでしょうか。最後に「アーカム」という地名が出てくるので、クトゥルー神話ものなのかな。でもクトゥルーも詳しくないので、やっぱりわからない……。すいません。 

 

 

82. 青月@Vtuber 「黒ペンキの剥がし方」

 気だるげな終末てき雰囲気がとても良いですね。キャラクターと世界観と文体がビッ! と一致していて雰囲気加点でプラス1点。物語としてはあまり大きなピンチや困難がなく、ちょっと起伏に乏しいので、この雰囲気をスポイルしてしまわない程度にもうちょっと派手にしたほうがいいかな? 基本的には、語り部である主人公が主体的になにか決断をして成長する物語にしてしまったほうがエンタメとしてまとまりやすいと思いますが、この気だるげな雰囲気とは背反しやすいので上手にブレンドできると良さそう。面白かったです。 

 世界観やキャラクターに独特の風合いがあって良いと思います。一行目からぎゅん! と物語世界に引き込んで、「黒い空」を軸にしてエンディングまで持っていく感じ、短編としてのボリューム感が適正で、よくまとまってらしたと思います。強いていうなら雲の魔女と葡萄酒の魔女のキャラクターの書き分けがもっと欲しかったかもです。 

 空が「黒」で覆われ、太陽も星も見えない世界。街灯を管理する「灯師」を生業とする魔女のもとを、高名な「雲の魔女」が訪れ……というファンタジー作品。散りばめられた設定や固有名詞がロマンティックで素敵ですね。前半はムーディな描写が重ねられていて惹きこまれたのですが、後半、魔女たちが会して実際に動き出すと、作者の頭の中だけで出来ているイメージが文章に表れ切っていないような感触があった。魔女たちの行動原理も、わりと「おもしろそうだから」という感じであり、もう少し、このファンタジー世界ならではの理由づけ(使命とか、宿命とか)がされていると、より物語に酔わされたと思います。全体的な雰囲気は好きです。

 

83. 綿貫むじな 「いとしのリノリウム

 定番のバディものスペースオペラって感じですね。ストーリーラインにもキャラ造形にもあまり尖ったところはないのですが、作品全体を貫く「リノリウムという謎の物質を探す」という素っ頓狂な目的がスパイスになっていて、そこはとてもいいです。いわゆる逆叙述トリック状態になっていて、読者はそれが大したものではないと知っているのだけれど、作中人物にはそれが分からないというギャップでおかしみを生み出せます。現状はもののついでくらいのライトな目的になってしまっていますけど、根幹の設定にしちゃってもいいくらい。もっと他にもその設定に使い道がないか、いろいろと考えてみてもいいでしょう。スペースオペラとしてはわりと型どおりなので、説明的な部分はもっと大胆にカットしちゃっても問題ないかも。そのぶん、紙の本に執着する主人公とか、そういう独自な部分のディティールを高めたほうが質感はさらに向上しそうです。

 好きです!! このゆるふわっとした女の子2人のバディものとそれに合った絶妙な塩梅のSF濃度! 愛しいです! 世界設定の魅力、キャラクターの魅力、物語の緩急、どれも申し分ないと私の中では思います。本の虫なアイカかわいい。関係性も好きです。ずっとこの二人の道行を見てみたいと思わせられた、キュートな作品でした! リノリウム、語感が良いですよね。

 おっ、スぺオペだ! アイカとミトは宇宙の廃棄物回収業者。謎の鉱物「リノリウム」を求めてコンビが銀河を駆けるSFアクションです。エンタテイメントのツボを心得た筆致は、ハードSFというほど難解ではなく、読みやすくっておもしろい。都市でくつろぐ様子はわりと現代のものに近くて、いざ宇宙で暮らすとなるとそれがリアルなのかもしれないけど、ここでもう少し「SF~~」というムードが出る小物などが散りばめられると、より雰囲気が出るかと思います。あと疑問なんですけど、リノリウムって、なんかこう、例えば「ドリル!」みたいな感じの、定番のネタ用語なのでしょうか? 私は何か根本的なところを理解していないのかもしれないという不安がある。 

 

 

 84. 紅哉朱 「拝啓、地獄より」

 はい。やっぱりみなさん好きですよね、死。最初に提示されている謎は「子供ではなく、女の子でもなく、人間でもなかった」のはずなのに、ではなんなのか? という謎が結局置き去りのまま一本道で話が進んで終わってしまうんですけれど、書いている途中で忘れてしまったんでしょうか? 物語る以上はなんらかのこの作品に固有の価値を提示するべきだと思います。少なくとも、その意志は持ってください。人に胸糞の悪い話を読ませてそれだけで悦に入っているなら小説の体裁を借りた傾聴ボランティアに過ぎませんし、読者はあなたのカウンセラーではないので、ちゃんと楽しませる工夫をしましょう。

 めちゃめちゃ胸糞悪い話ですね。でもテンポ良い文章ゆえか、嫌だ嫌だと思いつつも目を離すことができませんでした。作者さんが目論んでいるような効果は与えられていると思いますし、何を表現するかは自由ですが、エンタテインメントとしては失格だと思うのです。せっかく文章力は高いのですから、何だかもったいないような気がします。

 とある殺人鬼の独白は、彼女を取り調べる刑事も色を失くすような内容。ひとりの女性の幸せなことなど何ひとつなかった半生を陰惨に描いたサイコ・サスペンス……なのかな。「呪いの文書」というのが正確な呼称かもしれません。恨み、憎しみ、敵意、嘲笑……負の感情だけでできた1万字です。主人公は、生まれ育ちがこうだからこうなってしまったのか、それとも、こう生まれついてしまったのか。主人公に作者の感情はどれくらい投影されているのか。ここをこうしたらいいという講評を最初から拒否した作品だと思いましたので、最初から最後まで拝読しました、とだけお伝えします。

 

 

85. 白里りこ 「なにやら廃校にとらわれた」

 どんでん返しのアイデアは良いですね。既存の型を借りることで細かいところをすっ飛ばしちゃうのも創作メソッドとしては全然アリ。偽のクエストで真相から読者の目をミスリードするのもやりかたとして正解です。どんでん返しの伏線はもっと自信満々に露骨に張ってしまってもたぶん大丈夫でしょう。隠すのと匂わせるののバランス調整って本当に難しいんですけれど、作者が簡単すぎるかな? って思うくらいで意外とちょうどよかったりします。現状ではまだちょっと唐突な感じがあるので、あからさまな正解が序盤にドンと置いてあるのに読者はうっかり見落としてしまうみたいな設計にしたほうが、もっと鮮やかにきまると思います。方向性などは間違えていないので、このままさらに洗練させて高めていってください。面白かったです。

 ホラーテイストな作品。どんでん返しは良いですが、真相が分かってからの解決がちょっとあっけなかったかもしれません。まだ字数もありますし、もう少しハラハラドキドキさせる展開を引っ張ったり、不気味でホラーな描写を膨らませてみても良かったかと思います。

 同窓生の三人組の女子が、謎のきっかけで廃校となった母校の中に閉じ込められ、脱出行に挑むというホラーものです。定番の内容ではありますが、定番をきちんと押さえて読者を楽しませるというのは、できそうで案外できないものです。イベントの並べ方、出し方が巧みである。上質なノベルゲームのテキストのようだ……というのは、美点でもあり、小説としては物足りないという短所でもある。もし全篇に「絵」がつくなら、これで過不足ないのですが、文章だけで読ませるなら、ちょっとあっさりしすぎでありましょう。キャラクタを濃くしたり、怖い場面とそうでない場面に文章量で緩急をつけたりすると、もっとよくなると思います。

 

 

86. 白黒淡 「きっと私は世界の中心の隣に突っ立っている。」

 終始モノローグで牽引するには1万字はちょっと規模が大きいですね。お話としても、テーマがそうなのだから必然ではあるのですけれど、主人公がなんの行動もせずに喪失を抱えて突っ立っているだけなので、物語てきなカタルシスは弱いです。このテーマで読者になにかを残すには村上春樹級の技量が必要になるので、主体的に行動させて成長させてしまったほうがお手軽なのはお手軽ですよ。どうしてもこのテーマで書きたい場合は、もう愚直に文章の切れ味を突き詰めていくしかない修羅の道です。がんばりましょう。

 モノローグで綴られた失恋譚。ストーリーは非常にストレートなので、もう少しキャラクターの個性や文章の魅力などの、他と差別化できるような一工夫が必要かも、と思います。難しいですけどね……。がんばってください!

 幼馴染みの子分みたいな男の子が成長するにつれて逞しくなり、自分の世界を広げ、彼を侮っていた主人公の好意はどんどん宙ぶらりんになっていくという、王道の青春失恋小説です。題名どおり「突っ立ってる」だけのことを描くお話ですから、偉ぶって、強がって、でも自分からは何も動き出せない、かっこ悪い主人公になるのは作品の必然でありましょう。でもこの子はちょっと、上からものを見たまんまで、感情移入よりも反感が先に立ってしまうかな……。だからって、ポジティブでゴリッパな子にすればいいわけでもないし、このバランスは難しい。私も実作においてトライ・アンド・エラーの連続です。 

 

 

87. @dekai3 「モンスター娘BBA、人間の赤ん坊を拾ってママになる」

 KUSO創作勢筆頭の@dekai3の二作目ですが、これはなかなか馬鹿にできませんね。千年を2万文字に収めるすさまじいパワープレイで、普通なら雑なあらすじになってしまいそうなものなのですが、書き飛ばすところと書き込むところの緩急がちゃんとつかめていて意外と無理がないです。本文としてつけ足すと浮いてしまいそうな部分をキャプションに逃がすというのもカクヨムの仕様をうまく使っていてポイントが高い。KUSO創作っぽいタイトルはミスリードのつもりなのかもしれませんが、本文にはKUSOっぽさがほとんどないので、これは妥当にそれっぽいタイトルでもよかったかなぁという気はします。面白かったです。 

 感動しました! 読み進めていくうちに、どんどんカンザンさんが好きになっていき、エンディングは切なくも美しく、良い読後感を得られました! アルラウネを主人公にチョイスするセンスも良いですし、その設定をしっかりと物語に活かせていらっしゃるところもポイント高いです。読み応えがありました! 

 題名どおり、魔物が人間を育てていく物語なのですが、劇中で経る時間の長さがすごい。千年(!)に渡る生々流転を短篇で書くとなると、どうしてもただの「あらすじ」に堕してしまう危険性があるのですが、そう感じさせない読み応えがある。よく「小説は説明するな、暑いことを『暑い』と書かず『灼けつく陽射しが地面に濃い影を……』と描写せよ」などと言うじゃありませんか。一面の真理ではありますが、結局「暑い」ということしか情報がないなら、その描写は「無」だったりもする。私は「説明で済ませられるのが小説の長所である」とも思っています。この作品は、説明と描写の使い分けが的確です。「魔本少女」で垣間見せた構成と演出の妙が、その真価を発揮した感じがあります。おもしろかった。

 

 

88. 不死身バンシィ 「マジックLOVEアワー・クライシス」

 満を持して登場の前回大賞受賞者、不死身バンシィくんです。ほぼ全学の女子生徒がたったひとりの男子生徒に告白するためだけにバトルロイヤルを繰り広げる! というクソバカ設定を、超常的な要素を使わず飽くまで現実ベースで理屈づけしているのはよく考えられていていいですね。でも、この「飽くまで現実ベースで」というところで本人が振り回されてしまったというか、リアリティレベルの調整に苦しんでしまったように見受けられます。超人的な活躍であらゆる女子生徒と運命的な出会いをしてしまう男だとか、原付木刀で襲ってくるヤンキーという時点で、現実ベースではあるもののギャグマンガ時空に足を突っ込んでいますから、戦闘シーンはもっとギャグっぽく振ってしまってもよかったかも。わりとしっかり格闘戦をやっているんだけれども、そのシーンに物語上での役割はあまりないんですよね。この重めの戦闘シーンが構成を圧迫して後半が駆け足になってしまっているので、そこは圧縮して細かい笑いを稼ぎつつ、透子ちゃんの描写に割いたほうよかった気がします。もう一周する時間的な余裕があれば完成度も上がったと思うので、やはり計画的な執筆が大事ですね!

 めっちゃ楽しかったです!! 突飛で独創的な設定で掴みはバッチリ、個性あふれるキャラクター達がぐいぐい動きまわり飽きさせず、ドラマチックな告白シーンにきゅんきゅんするエンディング…! 面白かったです! 透子ちゃんかわいい!!(のでもう少し透子ちゃんとミヤちゃんのパートも読みたかったです) 文章のリズムも小気味良いいですね。好きです!

 学期中は恋愛禁止、ただし夏休みだけは黙認という奇妙な風習がある高校で、終業式が終わるのと同時に、150人の女子が完璧男子の生徒会長への告白タイムを奪い合う。興味を惹く出だしからどういう展開になるのかと思ったら、カポエラ、喧嘩殺法、レスリング、柔道、空手……格闘女子たちが鎬を削るバトルもの! このコンテストではありそうでなかった内容、とても新鮮で楽しめました。ギャグとシリアスのバランスもいい。序盤の雰囲気からぶっとんだリアリティラインなのかと思ったら、いざバトルが始まるとわりとリアル路線で、格闘描写そのものはアイディアが凝らされていて好きなのですけど、少し物語のスケールが縮んだ感じがあるのは惜しい。「男塾」レベルの超人対決に振り切ってもよかったかもしれません。 

 

 

89. 秋永真琴 「ROCKSTEADY」

 手堅くうまいですね。ツンケンとした突き放した語り部のわりには、文章の居心地はどことなく良くて、書き慣れています。物語の型としては喪失からの再生になると思うので、どちらもしっかり描いて振り幅を大きくしたほうがよりカタルシスに結びつくのですが、喪失は「なんとなくブルー」くらいの感じだし、再生も「ちょっとやる気でた」という程度で、あまり劇的ではない。じんわりと染みとおる系を狙っているのでしょうから、劇的であればいいというものでもないですが、ちょっと動きが少ないかなぁ。作品が「ノスタルジーに浸ってないで初心にかえる」みたいなテーマを描いているのに、作品そのものは手堅く仕上げられてしまっているのも、批評性が高すぎるかも。せっかくのモモモ大賞なので、もっと攻めの姿勢があってもよかったかなとは思います。まずゴリラを出す意気込みが大事。

 良いですね。文章の読み味が素敵なのは言うまでもなく、前向きな読後感がじんわりと沁みて好きでした。強いて言うなら”溜め”の部分の分量がちょっと多いのかな?とも。3話目の輝く彼女達とのコントラストが明確で良かったのですが。「でも、あたしは心をつかまれた~」からの切々と訴えかけるようなモノローグに心をわし掴みにされました。派手さは無いですが実直で良い作品だと思います。

 成功を修めたバンドが解散してから、なかなか次のステージに踏み出せないミュージシャンの、転機となるある1日を描いたお話です。作者がこれまでカクヨムで発表してきた作品の延長線上にある内容なので、違うジャンルの作品も書いてみてほしいところでした。はい。あと、つつましく暮らしているという設定ではありますが、一般人ではない主人公なので、もう少し彼女じゃないと行けない場所、会えないひとが出てくると、物語のムードが増すと思いました。はい。 

 

 

90. ロッキン神経痛 「マッスルガンアームエーコ

 カクヨムコン大賞受賞者のロッキン神経痛さんです。これも世界観ありきって感じで、お話としてのツイストはあまりないですね。好きなものを好きなように書いてやるぞ~っていう姿勢が文から伝わってきて、肩のちからが抜けた伸び伸びとした筆致はそれだけでも魅力があります。ただ短編小説としてうまく落とすには、もっと主人公の葛藤や主人公とフジミの関係性を丹念に描いたほうがよかったかな。ちょっと気持ちが先走りすぎて描写が分かりにくくなっているところもある。ロッキン神経痛さんは考えすぎると手が止まるし伸び伸びとやると雑になるという困った性質があるので、とにかく雑に書いて、後から丁寧に手直しを重ねるやりかたがコスパは悪いですけれど最終的には合っているのではないでしょうか。叩き台としてはこれで充分なので、ここから推敲を重ねれば良くなると思います。

 まず世界観や設定が格好いいですし、ところどころにセンスある描写も散りばめられており、面白かったです。強いて欠点を挙げるなら、一つ一つの場面自体は面白いのですが、場面転換に読者を置いてけぼりにしている感じが少しあるかもしれません。強い女の子って良いですよね! 

 地球全体でAIロボットと人間の全面戦争が続く時代、サイボーグ兵士のエーコはめざましい戦果を上げているが、人間サイドから畏怖と嫌悪を浴びている少女だ……という、土煙と血煙の匂いがするSFミリタリー・アクション。膨大な設定を背後に秘めているような気もするし、意外と書きながら考えていったのかもしれない。どちらにしても、作者のフェティッシュな情熱を感じつつ、ただ「萌え(燃え?)」に淫せず、この話ならこのテーマだろうというところをきちんと埋め込んでいる誠実さがいいですね。長篇化や連作化ができる内容ですが……これはこれで、単体の短篇として完結しても、余韻が深くていいような気もしています。

 

 

91. 棚尾 「キメラだって恋したい~伴侶が欲しいキャリーちゃん~」

 だいたい半分くらいはヒトだと言い切っても良い。なるほど、ちゃんとフェアな叙述トリックに仕上がっています。周囲の人の反応やヴィクターの見た目などで、嘘を書かずに読者をミスリードしていく手腕も鮮やかで細部まで隙がなく、ふむオヌシ分かっておるな(誰?)ってなりました。わたしも叙述トリックは大好きなのですが、この水準でうまくキメられる人はアマチュアではあまり見かけないので、非常に強力な武器になると思います。文章の手触りもいいので、あとはキャリーちゃん自身の成長譚てきな部分もしっかり描いていければ150点でしょう。やっていきましょう。面白かったです。

 見事な叙述トリック! こういった文字媒体だからこそできる演出は本山的にポイント高いですね。女性一人称とは言われたが、人間女性に限るとは言われてないぜ! という感じで捻りを利かせるのは良いと思います。キャリーちゃんもかわいらしく、ほっこりするようなエンディングも私は好きでした。

「私」はマッドサイエンティストのフラン博士に作られた合成生物。ヒトと変わらない知性を持つ私は、孤独を晴らしてくれるパートナーを求め、研究所の来客を見定め始めます。ですます調の丁寧な一人称で、主人公の行動を丹念に追いかけ、「このお話はどういう帰結を迎えるのだろう」という興味をわかせてくれます。剽軽な題名とは裏腹に、実直で温かみのある展開は、このままでいいような、もっとダイナミックに事件が起こってもいいような。そこは一長一短ですね。この設定ならでは――そして小説ならではのサプライズもいくつか仕掛けられ、きちんと決まっています。 

 

 

92. 山森ねこ 「BBB作戦」

 キャプションには初投稿とあるのですが、文じたいは書き慣れている感じでとても読みやすいですね。序盤~中盤にかけてスキル持ちのメンバーをひとりずつ紹介していくオーシャンズほにゃほにゃてきな雰囲気で進んでいくので、それぞれのスキルが噛み合うような、なにかカチッとした仕掛けがあるのかと思ったら、これもバッと翼が生えてビョーンと天高く飛び立っていってしまった感じでした。なんていうか、真顔で冗談を言われているみたいで反応に困っちゃいます。バカな話をする場合は最初からバカで~す! てきなノリできてもらったほうが心構えはしやすいかなぁ。このへんのちぐはぐさも含めてジョークということなのかもしれませんが、ちょっと上級者向けです。次はしっかりとプロットを組んでから書いてみましょう。

 このバカバカしい導入は好きです。作戦自体よりも登場人物紹介の方に分量が割かれており、短編小説として見た時のバランスは悪いかなと思いましたが、キャラクターの魅力は十分に伝わってきました。話のオチが不思議な感じでちょっとすっきりしなかったので、もう少し練ってみてはいかがでしょうか。ABEサークルという設定にはときめきました。

 世界中からウマとシカが消失するという奇怪な事態に、主人公が所属する謎の部活の面々がこれまた奇怪な解決策で立ち向かってゆく、奇妙な手触りの青春サスペンスです。前半、物語を停滞させるほどの分量でキャラクタの能力や性格がみっしりと説明されてゆくので、やや強引でも一応現実的な真相が用意されている布石なのかと思いましたが、解決編はかなり観念的でマジカルな内容でした。そのアイディア自体は個性的でおもしろいのですが、リアリティレベルの「飛躍」を楽しむというよりは、置いてけぼり感があったかも……。そこに至るまでの展開も、もっとマジカルでスピード感があると、小説としての完成度が高まると思います。

 

 

93. 真里谷 「トイレは宇宙なり」

 妹と兄のトイレの扉一枚を隔てた極限の攻防戦! と思いきや、最終的にとんでもないところまで話が飛んでいきました。そうか、トイレは宇宙だったのか。ブン投げと言えばブン投げなので、これをそのまま短編小説として評価するわけにもいきませんが、中身のない会話だけで読者に読ませるセンスと手腕は光っていますし、KUSO文としては非常に水準が高く、面白かったです。

 これぞKUSO小説。絶対に朗読したくない。文章自体のリズム感や言葉の選び方には光るところがあるようには感じましたが……これを18歳の女の子に読ませて楽しいですか!?(楽しそう)

 トイレを占領する妹、早く譲ってほしい兄、ドア越しに交わされるふたりの大仰で衒学的な会話が延々と続くコメディ作品です。文章の緊張感を失わず、1万字を最後まで駆け抜ける筆力――その筆力の無駄遣いが、この手の作品には必要です。そこがちゃんと満たされていると思いました。後半に待ち受けるオチも、脱力もののオチャラケには走らず(それはそれでビシッと決まればとてもおもしろいんですけど)喩えるなら、巨匠のSF作家が若いころに書いたユーモア作品といった趣きが感じられて、実直である。全力投球のギャグをありがとうございます。 

 

 

94. Enju 「ダンジョン・アタッカーズ!」

 異世界ファンタジーもの、というかゲームファンタジーって感じですね。平易な文でキャラ同士の掛け合いを中心にサクサクと展開していく話が小気味よいです。物語の筋は最初に示されたダンジョン攻略という目標をひたすらこなしていくだけなので、本当に人がプレイしているゲームでも見ている感じで、王道展開ということかもしれませんがちょっと一本調子ではあります。もうちょっとツイストはほしかったかも。

 ダンジョン攻略譚。ダンジョンやパーティなどについての設定が多く、下手したらただの設定の羅列ともなりかねないところを、関係性で味付けして読ませるところは良いと思いました。王道で綺麗にまとまっていましたが、個人的にはもう少し独創性もあったらより良いのにな、と感じました。

 魔王も滅び、財宝もあらかた発掘され、危険に満ちた迷宮探検(ダンジョンハック)がエクストリーム・スポーツとして確立しているという設定、「目的がなく、経過だけ書く」というところを作品の個性に転化していて、したたかな良さがあります。その他にも、ファンタジーを書く上では時として安易さにもつながってしまう「テレビゲームっぽさ」を、いろいろ理屈をつけてうまく作品世界に馴染ませている。キャラクタもかわいく優しく、文章も読みやすく、いい意味で「がんばらなくても読める」のは作者の心配り。練達のエンタテイメントです。 

 

 

95. @scoriac-pleci-tempitor 「家族☆☆☆彡」

 話があっちにいったりこっちにいったりする独特の叙述のしかたなんですが、たぶんわざとやっているのだとは思うんですけれど、やっぱり分かりにくいので、もうすこし整理したほうがいいかもしれないですね。わりと一般的ではない反応を示す主人公なので、読者の共感をよぶには全体的にもうちょっと丁寧に描写していく必要があるでしょう。父や母についての記述がまだ抽象的なので、そこのディティールをもっと具体的なエピソードの積み重ねで描いていったほうがいいと思います。しばらくクーリング期間を置いてから自分で読み直して加筆修正してみるとよいかもしれません。

 感動的な家族ものですね!? はい。実直な一人称の語り口で、共感しづらいはずのキャラクター造形なのにスルスル入ってきました。序盤の構成はもっと素直なものにしても良いかもです。タイトルをもっと作品の雰囲気に合わせたものにすれば、より多くの読者さんにリーチすると思います。悔しいですけど謎に感動しちゃいましたよ。

 マニアックな嗜好を持つ母と娘、そこに嫌悪感を抱く真面目な父。微妙なバランスの家族は、いまさら崩壊したりはしないけど、ある出来事によって、娘の父への感情はしだいに変化してゆきます。作品が「これは別にちゃんとした小説を書こうという文章ではない」というスタンスで始まること自体はいいのですが、それって、破壊的な魅力への期待がかえって高まるワードでもあり、本当にただの言い訳では困る。この作品は微妙なラインかな……。ブログの記事みたいな書きぶりは、実録風の雰囲気が出ていて一定の効果はあるけれど、やはり、正統の小説に昇華してほしいという思いは否めない。いいテーマだと思うので。 

 

 

96. ろじ 「終わりの街」

 世界観とキャラクターが先行しているのですが、なるほどこういう世界観でこういうキャラクターがいるんだな? と把握したところで話が終わってしまって、物語的にはとくになんの展開もないように感じました。短編小説ですからお話を転がすことをしっかり意識したほうがいいでしょう。キャラクターを描きたいということなのかもしれませんが、お話がないことにはどんなキャラクターの属性も上滑りしてしまって「そうなんだ~」で終わってしまいます。一万字程度の規模で視点人物がコロコロと変わるのもセオリーてきな話をするならあまり望ましくありません。ひとりの人物にカメラを固定したほうが、手軽に全体としてもまとまりもよくなると思います。

 殺し屋の少女達のお話。好きなものを好きなように書いてらっしゃるんだな、という感じがしました。世界観設定やキャラクター達はかっこいいと思います。ストーリーとして軸を定めて起承転結などを意識して構成してみると、よりエンタメ小説としての強度が増すのではないかと思います。

 幾多の勢力が鎬を削るスラム街で、少女ギャングの首領が圧倒的な暴力で街を支配し平和をもたらそうと動きだすというファンタジックなノワールです。私、こういうお話が大好きなので、わくわくして読みました。主人公の独白めいた一人称の語りは魅力的で、仲間たちの個性も短い枚数でよく出ている。ただ……その個性的な仲間たちが各々活躍するアクションものには、ちょっとミスマッチな文体なのかな、とも。もっと内省的な、主人公の首領としての苦悩などを描く方向性に適した文体でありましょう。あとこれ、もしかしたら、無理に1万字で終わらせようとしていませんか。ラストの性急さに驚いた。その意味でもやはり、掌篇に適したストーリーではないのだ。2万字いっぱい使ったバージョンが読みたくなりました。 

 

 

97. ラブテスター 「劇団 誑・曝(たぶら・さら)の憂鬱」

 ふだんはしつこいくらいのゴージャスな文体のラブテスターさんですが、今回は文体のバランスはちょうど良いように感じます。ちょっと古臭い雰囲気があって、文体だけで勝手に70~80年代くらいの話なんだろうなと思って読んでいたみたいで、普通にアイフォンとかラインとか出てきてちょっとビックリしました。特にそういう記述があったわけではないんですけれど、なんでだろう? 全体的に、寺山修司とかそのへんの感性っぽいですよね。話の内容は「フーンそうなんですかー」という感じで、あまり上手に読者を引き込めていないように思いました。おしゃれな作品を書きたいということなのかもしれませんが、とくにおしゃれな作品のようには感じませんでした。エンタメしましょう。

 大学生達の男女関係の機微を描いた作品。彼女らの生活を覗き見ているように感じさせるような、生々しい大学生の恋愛を現代的な舞台装置を用いて上手く描かれていたと思います。しかし、やや物語の盛り上がりには欠けるかな…とも。劇団のネーミングセンス好きです。朗読は……無理ですねこれ! 

 昭和じみたアングラ感が漂う学生劇団の日常。自意識と愛欲を持て余した面々の錯綜する人間模様をさらにかき混ぜる小道具は、ラインのスクリーンショット。このミスマッチ感、いいですね。あえて狙ったのか、この作者が書くと自然にこうなるのか。かなり露悪的な内容ですが、硬質で端整な文章と、ミステリ的な仕掛けを施すエンタテイメント性が、ただ泥をぶつけるような作品にはしていません。その後のキャラクタたちを書いたエピローグは、青春の蹉跌を過去に押し流す無常さを醸しだす効果はあるけれど、これをなくすと主人公と先輩の愚かしくも優しい関係性に余韻が増したかな……と思ったり。悩ましいところですが。 

 

 

98. 猫猫猫(ねこさん) 「夏の終わりに誘われて」

 型としてはある日少女が落ちてきててきなタイプ。このパターンはだいたい秘密を抱えた女の子と関わりを持ったことで主人公がトラブルに巻き込まれていくって感じで物語が牽引されていくのですが、当の女の子にトラブルが未然に防がれているせいであまりドラマチックではなく全体的に淡白になってしまってはいます。女の子の正体などの諸々の設定が明らかになるにつれてチープな印象になっていく部分もあるので、そのへんはあまり語りすぎずにすこし不思議テイストで流してしまってもよかったかも。設定は100作って20だけ書くくらいが意外とちょうどいいです。

 ガールミーツガールなお話し。ちょっとセリフの分量が多いように感じたので、情景描写をもっと膨らませても良いと思います。二人の他愛ない掛け合いを見ているのは微笑ましくもありますが、やや単調かもです。物語を転がすことをもっと意識してみると良いのではないでしょうか。

 疲れたOLの主人公は、休日に街で「自分は神様だ」と名乗る不思議な女子高生と遭遇する。このふたりのいちゃいちゃが書きたい! という一点突破の強い思いが、終盤のなんでもない日常の風景描写に割く分量からも伝わってきます。その熱意が先走りすぎて、ふたりが打ち解けるスピードが速すぎるね。もうちょっと式は舞を警戒して、でも舞がすごくいい子だから不審に思いつつも惹かれてしまう……という段取りが多いほうがよいでしょう。もどかしいですか? でも、その前振りにも「萌え」を篭められたら、より小説らしくなってきます。

 

 

99. ボンゴレ☆ビガンゴ 「【夏が散る】」

 不必要な部分をすべて削ぎ落とすと「ツイッターで炎上させたら逆恨みされて殺されました。完」だけなので、15000字を牽引できるネタではないと思いますね。消防車の模写であるとか、小説投稿サイトに小説を投稿している話だとかは、この物語の中でどういう役割を果たしているのでしょうか。短編ですから、必要のないものはなるべく削ぎ落として、すべての要素が物語を前に進める役割を果たしているようにしたほうがいいです。底の浅い安直な社会風刺もただ反感を買うだけなので避けたほうが無難なのではないでしょうか? 読者は作者の主張になんてまったく興味がありませんから、自分ではなく物語とキャラクターを描きましょう。

 二人の視点から描く構成があまり機能していないように感じました。序盤のお話が特に伏線になっているようにも感じられなかったので、考えつくままに書くのではなく、一度プロットをたてて執筆なさってみてはいかがでしょうか。文章自体はスルスル入ってくるようなもので良かったです。中学の卒業式のシーンは好きでした。 

 大学最後の夏休み、疎遠になっていた古い友だちの真衣と久しぶりに再会した優衣の身に、突然のできごとが。そして物語は真衣の視点へと切り替わり、物語の全貌があらわになる……という「藪の中」スタイルの青春小説です。そのスタイルに期待される、作品世界の大転回を充分に堪能させてもらいました。文章が流麗なので読ませはしますが、各々の出来事が単発という感じで(消防車の絵のエピソードは何だったんだ)主人公ふたりの個性や関係性を演出する効果が弱いのは気になる。「それもまた人生のリアル」という小説ではなく、パズルのようなおもしろさがウリだと思いますので、そこはもっと「不自然」なほど繋げていったほうがいいでしょう。

 

 

100. 隱 🐸蓮秾 「アッパラパーな珪素生命体が悪意無く現地民をぶっ殺したり交流したりするおはなし」

 アッパラパーな珪素生命体が悪意無く現地民をぶっ殺したり交流したりするおはなしでした。これはこれでなんかちょっとクセになる。面白かったです。

 未知との遭遇。異文化コミュニケーションは面白かったです。珪素生命体による知性体遺物食レポとか読みたいですね。SFの上にファンタジー要素も盛るのはちょっとやりすぎなようにも思いましたが、それがお好きなのでしたら貫かれると良いでしょう。読者に状況を把握させるのをもうちょっと早めた方が良いかもです。 

 ワーッ! 本当に題名どおりのお話だ! 珪素生命体(高次宇宙生物?)サイドから見た現地民(人間)の様子、現地民サイドから見た珪素生命体の様子を描いた、それだけのお話! 異種のコミュニケーションの絶望的なズレがもたらす悲喜劇を楽しむだけのお話です! だから退屈かというとそんなことはなく、おもしろく読めてしまう確かな筆力があるので、その筆力で、ぜひ今後はもっと物語性が豊かな小説も書いていただきたい。あと些末なところですが「後ろ編」という表記、なんか好きです。

 

 

101. 夏鎖芽羽 「貴方の体温を君の体温で上書きする」

 オ……オチ~~~!!!! え? なに? すごいいい感じで読み進めてたのに! オチ! オチ~~~~~!!!! 文章じたいはとても上手なので次はちゃんとやってください!(怒怒怒怒)

 いわゆる少女小説的な恋愛ものとして上手く書かれていましたし、オチにも笑わせられました。しかし、キャラクター造形が私の好みを狙い打ちすぎていて、あざといと感じるのも通りすぎてちょっと…イラッとしました。ただ眼鏡とか白衣出しときゃいいってもんじゃないんですよ!

 教師との秘めた恋が終わった女子高生。新しい恋人はいるが、いまだ失恋の痛みは止まず……という青春恋愛ものです。まーね、この「君」の書きぶり、何か仕掛けがあることはわかりますよ。「幽霊かな?」とか、「イマジナリーフレンドかな?」とか、予想しながら読んでいきますよ。それは別に空前絶後の真相でなくてもいいんですよ。そこに確かな人の想いがありさえすれば、その小説は美しいんですよ。これ以上の講評は止しましょう。オチについて何を言っても「ハイッ、サーセンwww」と返ってくる、そういう小説だと思うので。 

 

 

102. 東風 「最後のほたる」

 型どおりの児童向け文芸という感じ。文章も読みやすくフレンドリーで、テーマにちょうどハマッていていいと思います。でもまだ話の筋もキャラクターもステロタイプの枠を出ていないので、次はもうちょっと独自性を出していけるといいかな。ミッション達成のための障害があまりなく難易度が低いので、達成のためになにか困難があって、それを主人公が主体的に行動することで解決していくような展開があったほうが主人公の成長を具体的に描ける気がします。それほど大きなものでなくても、たとえば引っ込み事案な主人公にとっては「人に道を尋ねる」程度のことが大きな困難で、勇気を出して知らない人に道を訊くとか、そういうことでもいいです。書いていれば自然と上達していくと思いますので、やっていきましょう。

 まっすぐな青春小説、といった感じで好感を持ちました。ストーリーも叙述もストレートで、胸に迫ってくるものはありますが、一歩抜きんでるには何らかの飛躍、もしくは文章の洗練が必要かもしれません。(抽象的ですみません)基礎的な力はお持ちだと思いますので、頑張ってください!

 唯一の親友である蛍と、ホタルを見に行くことになっていた清乃。約束を果たすべく、清乃は山に向かう。独りで、蛍との思い出を回想しながら――というお話。誠実な筆致は好感が持てます。ここが作者のいちばん書きたかったことだったら申しわけないのですが……このお話の肝にするのは「死」ではなく、何か他の「仲違い」や「別れ」のほうが、私はいいと思いました。現実の死はとてもショッキングです。主人公にとっては重大事です。でも「小説」にとっては、それで話が硬直してしまうということがある。不条理な事故ではなく、蛍との関係性のなかで、清乃に試練を与えてほしいと思いました。 

 

 

103. 加湿器 「JK侍、東へ歩く」

 設定の説明がキャプションにあるのみで、本文中では特に触れられていないのは改善したほうがいいかもしれません。キャプションは飽くまでキャプションですから、読んでいなかったとしても本文だけでするりと設定を飲み込めるようになっていたほうがいいでしょう。内容のほうはわりと普通に時代小説してしまっていてぜんぜん大人しく、JK侍という独自の設定がそこまで生きていないように感じました。もっと忍殺レベルでトンチキな雰囲気にしてしまっても良かったかも。

「JK侍」というワードにまずわくわくしました……が、言い方は悪くも、普通の時代物になってしまっていたのがちょっと肩透かしで惜しいな……!と。セーラー服というより、袴のビジュアルが浮かんできてしまいました。この時代がかった文体が新鮮で好きでしたので、時代劇としては楽しく読ませていただきました。

 セーラー服のJK(女子剣生)が刀を振るう、サムライパンクな伝奇アクション! なのですが――地味。あまりにも地味です。バイクが出てくるくらいで、せっかくの特殊な世界なのに、そうじゃなきゃ描けないものが少なすぎる。「この文化レベルでこの機械が存在するはずがない」といったような「じゃがいも警察」的な遠慮は、この手の作品には無用だと思っています。もちろんカッコよく理屈がつけられるならそれに越したことはないのですが、エキゾチックでロマンティックなムードのほうが大事である。もっとごった煮的なガジェットをいろいろ出してほしい。そこに興味がないのでしたら、正統な時代伝奇を志向したほうがいいと思います。 

 

 

104. 作家志望Vtuber「僕話火乃酉」 「デッドマンズ・キッチン」

 型としては行きて帰りし物語ですね。型どおりではあるのですが、謎の提示の仕方と、そこから明らかにしていくやり方はとても上手いです。最後をふんわりといいお話で終わらせずにちょっとイヤ~な余韻を残しているのは好き嫌いが分かれそうですが、まあ好みの問題でしょう。現状では骨壺がすごく脇役なので、序盤からもうすこししっかり印象づけておいたほうが最後がどんでん返しとしてバチッとキマッたと思います。やっていきましょう。

 構成がお上手ですし、世界観設定も良かったと思います。もう少し地の文の描写の密度を上げて、ミステリアスな世界観やキャラクターの描写を細かくするとより良いのではないでしょうか。また、これは好みの問題ではあるかもしれませんが、もう少し改行少なめで文字を詰めると、この媒体でのリーダビリティが上がると思います。

 あの世に旅立つ死者に最後の晩餐をふるまうという、奇怪なシェフとウェイトレスが営むレストランに誘われた主人公。訝しく思いつつ、味は確かな料理を食べるごとに、大切な追憶が浮かんできて……。主人公の回想場面にもミスリードを誘う仕掛けがあり、最後にさらに大きなどんでんがえしが待ち受けている構成、お見事です。読みながら若干の違和感をおぼえていたのですが、それがパーッと晴れるカタルシスを味わいました。こういうサービス精神は大事です。それでシリアスなメッセージが薄まるわけではないのだから。いろいろなパターンのお話を盛り込める設定なので、シリーズ化もできそうですね。 

 

 

105. 一田和樹 「あたしが安全日を正確に計算するのは父が避妊をしないせいだ」

 タイトルとキャプションでモロにネタバレしているので、そういう意味ではあまりびっくりしませんね。テーマは極限まで歪みながらも、それでもなお成立してしまっている親子関係みたいなところにあるのでしょうか。こういう系、今回のモモモ大賞にとても多いんですけれど、さすがに描写が具体的でぼんわりしていないので、同系統の作品の中では頭ふたつみっつ抜けています。やるならこれくらいやらないと、読者に傷すら残せません。ただわたしは低能なので、個人的にはもう一歩、エンタメてきにわかりやすくびっくりできるようなツイストがほしかったですね。

 普段絶対に読まないタイプの作品で、すごくダメージを受けてしまいました……。それほどまでにグロテスクな関係性を緻密に描かれていて……間違いなく小説作品としてのレベルは高いのでしょうけれども。作品の良さをスポイルするかもしれませんが、私個人としては、エンタメ的な希釈が欲しいと思いました。

 凄い題名ですが、中身はさらに凄い。家庭が崩壊し、娘は成長して結婚し、それでも関係は止まない。狂気が濃いのはどちらか、支配しているのはどちらか、判然としないまま、父娘は禁忌の性愛を止めません。こういう陰惨な性描写にみっしりと取り組むと、作者が自身の筆に酔いしれてしまう場合があります。それはそれで屹立する凄惨美を味わえばよいのですが、この作品はゴアな描写の先に立ち上がる、感情の捻転、関係性の倒錯を見据えている感じがあり、なんというか――読んでいて受けた衝撃が体内に滞らずに貫通していくような、一種の爽快感がありました。ハッピーエンドなんだな、と思った。

 

 

106. @Uraniwa_Rion 「福寿草を摘んで」

 なんかこう、ベタベタの読み切り少女漫画みたいな展開だな~これも何かの前振りなのかな~なんてことを思いながら読んでいたら、そのままベタベタの読み切り少女漫画てきな勢いでスコーン! とゴールインしてしまいました。別に軽いのが悪いってこともないんですけれども、普通なんかもうちょっと葛藤とかあるんじゃないかな~っていう気もして、それでええんかいみたいな釈然としない気持ちが残ります。福寿草はどこにいったんでしょうか? う~ん、まあこれはこれでいいのかな? こういうものなのかも。

 かわいらしいラブストーリーなのですが、キイロちゃんが報われない……というかちょっと舞台装置になりさがり気味だと思ってしまいました。私とお兄さんの間を繋ぐだけ繋いで、「死んだ人のことの話なんてもう聞きたくない。」って言われてしまうのはちょっと可哀想では…!? 気持ちの整理がつくのも早すぎないか? と思ってしまったので数年スパンを開けてもいいと思います。ことりちゃんのお兄さんについてもそうですが、人の死を描くならば、相応の重みをもって描いてほしいです。

 中学生になったばかりのことりは図書館で年上の素敵な男子と出会う。彼はことりに、妹の友だちになってほしいとお願いしてきて……という、少女マンガテイストのお話。冒頭の「比喩」について得意げに語るくだりなど、文章がちゃんと「まだちょっと幼い少女」らしい雰囲気を出していて、一人称の大事なところを掴んでいるのはいいですね。改善点としては、スポーツ少女だったことりが小説のおもしろさを知ったことがきっかけで始まった物語なので、その趣味にまつわる出来事がもっとあってほしい。ことりとキイロに共通の好きな恋愛小説があって、それを参考にデートの作戦を立てるとか。

 

 

107. 夢見アリス 「9-9(ナインオール)」

 あ? え? 終わったの? みたいなところで話が終わってしまったのですが、これでちゃんと当初の予定どおりに終わったんでしょうか? 最初から最後まで、いけすかない主人公がダルいわ~って言っているだけで特に変化も成長もなく、話の途中で終わってしまったような感じを受けました。基本的には主人公を困難に直面させて、なにかの決断をさせて、主体的に行動することで問題を解決させ、変化と成長を描いたほうが気持ちのよい短編に仕上がりますよ。あと、単純な誤字などがけっこう多いので推敲はしたほうがいいです。

 スポーツものかつ「才能」についてのお話、というテーマは非常に好きなのですが、ちょっとカタルシスが弱いかと思います。本文で「世界で一番退屈な勝ちゲー」と描写されていた通り、全く波乱が起きないまま退屈なものとして終わってしまったのが残念でした。現実ではこういったこともままあるかもしれませんが、これは物語なので! どんでん返していきましょう。

 聡明すぎるがゆえに、プロになれるほどではないと自分の卓球の才能に見切りをつけてしまった悠羽。「こんな自分」にすら劣る卓球部の仲間も見下して距離を置くが、部長の咲奈だけは何かと悠羽をかまいたがり……。才能というものの残酷さをリアルに彫りつけようとする青春小説は好みですが、この物語はほんとうに寂しい。主人公は何も変わらないまま終わっていく。そのダウナーなところが個性だし、明朗で希望あふれる内容にしてほしいわけじゃないけど――ただ、悠羽と咲奈の心境や関係に、何か変化がほしいとは思います。さらにマイナスの変化でも。現実を提示するシビアな物語にも、動きはあったほうがいい。石のように動かない物語の、そのたたずまいだけで他人に感銘を与えるのは難しいのだ……。

 

 

 108. 修一 「女子高生に銃」

 勢い全開のロケットスタートが気持ちいいですね。細けえことはいいんだよって感じでいろいろな疑問を置き去りにしてスパーン! スパーン! と物事が進んでいくんですけれども、せっかくいい調子できてたのに最後に変に理屈づけをして夢オチにしてしまったのはもったいない気がします。そのままバカっぽく勢いで駆け抜けちゃってもかえって気持ちよかったかも。勢いで細かい部分を読者に意識させないという試みは成功していますが、夢オチは基本的には読者の反感を買いやすいので避けたほうがいいですよ。着地を考えるのは9割過ぎてからでいいので、飛べるところまで飛んでみましょう。

 ゾンビアクションかと思いきや、夢オチでしっとりめのエンディング。掴みはバッチリでしたよ。学校生活のパートやカミサマの恋愛のくだりなど、質感は好きなのですが後半とのテンションの差がみられ、繋がりに違和感があるかもしれません。計画的な執筆が大事ですね。スピード感ある文体は好きです。

 隣人がゾンビと化して襲ってくるのが日常となった世界で、女子高生のりんはサイボーグの「カミサマ」とともに、タフだけどそれなりにゆるい日常を送っていたが……という、いまどきのゾンビものです。なぜひとはゾンビものを愛するのか、そこに何が仮託されているのか、などと考えながら読み進めていき、最後にぽかんとなりました。夢オチが絶対だめということはありませんが、これは、それまでの物語の説得力をふいにする、よくないタイプだと思うのだ……。意図的にVR世界に封じられていたとか、何か作劇上での理屈がほしいところです。

 

 

109. 神崎赤珊瑚 「サンライズ・コーストライン」

 うお~めっちゃ面白かった~! 大筋ではボニー(女)とクライド(女)なんですけれども「わたしの銃は六発なんだ」とか、撃った回数をぜんぶカウントしているところとか、端的でありながらも細やかなディティールがぜんぶ最高で、そういう丹念な積み上げがあるからこそラストの展開がしっかりと活きています。愛情と崇拝と失望がないまぜになった複雑な感情に読者をきっちり引き込んで納得させる手腕が見事。たったの14000文字でここまでキャラクターをしっかり描けるのはすごいですよ。キャラを立てるのに必ずしも文字数は必要ではないというのがよく分かります。わりと曖昧に「レズにしときゃええやろ」みたいな感じでレズにしちゃってる人が多いんですけれど、このラストはレズじゃないと映えないので必然性のあるレズで、最高に崇高なレズでした。ありがとうございました。

 はちゃめちゃにキャラクターが魅力的でした!!! ひたすらにかっこいい! 映像が浮かぶような筆致、痺れるセリフ回しやキラーフレーズ、心躍る世界観設定、巧みな物語の緩急、そして何より関係性の尊さよ…! 一文一文に鋭さがあって、凝縮感のある作品だと感じました。面白かったです。

 強盗を生業にしている女子コンビがノーフューチャーな人生を懸命に、鮮やかに駆け抜けるさまを描いたハードボイルドなロード・ノベルですが……えーと、この作者はプロの別名義ではないのでしょうか? えっ違うの? 痩せているけどみっしりと筋肉が詰まったダンサーの肉体のような文章によって、きびきびと表現される人間の暗部、切実な思いに唸りました。「おれの銃は六発なんだ」という、抜き出せばなんでもない台詞の格好よさ。名台詞って、これでいいのです。その前後の状況が極まっていれば。最後も素晴らしいよね。絶望ってやつは希望ってやつと表裏一体で、どうしても書こうとすると片側だけになりがちなんですけど(それは私もそうで、いつも試行錯誤です)この作品のラストのように両方を感じさせると、くそったれの世界はそれでもこんなに美しいと思わせてくれる……。評議員の立場を忘れて没入した小説です。

 

 

110. 十一 「幽霊たち」

 いきなり不可解な状況をバーンと叩きつけて物語を牽引していくのはなかなか上手い。でも短編にしてはどうにも話の展開が遅くて、これどうやってオトすのかなぁと思いながら読み進めていったら、話の途中で文字数上限がきてあえなく終了といった感じ。肝心の幽霊もほったらかしのままなので、これたぶんまだ起承転結の起のところですよね。ここで終わらせてしまうのはもったいないので、このまま続きを書いていってもいいと思います。現状のままのこれをひとつの短編小説として評価するのは厳しいですが、長編の導入部分としては充分に面白かったです。やっていきましょう。

 序盤の服を脱いで全裸で校舎を歩いていき進退窮まってしまうパートはフェティッシュで背徳感があって面白かったです。怒涛の設定開陳の後のエンディングにはちょっと尻すぼみ感が……というか単なる字数不足でしょうか。見切り発車で短編に無理やり納めるのではなく、長編でのびのび描いた方が映える作品なのではないでしょうか。

 授業中、おもむろに服を脱ぎ、全裸でトイレに向かう女子高生のようすを、逐一みっしりと描写するところからこの小説は始まります。のちの展開を考えると、この場面の分量が多いんですけど、書きたかったのでしょう。その後も、全体的に「書きたかった」場面をあえてゴツン、ゴツンと接続することで、日常って意外とこういうもんであるというリアリティを出すことを企図しているのかな、と思いました。不意に壮大なスケールの話へと飛翔し、同じ速度でまた日常へ帰ってゆく。でもさすがに、ちょっと散漫で「未完」っぽさがあるかな……。これが連作の第1話で、やがて大きな流れに収束していくのなら、気にならないという感じです。

 

 

 111. こやま ことり 「花の魔女はかく語りき」

 わたしが言うのもたいがいアレなんですが、さすがに序盤のこの石版ぐあいはちょっとしんどいですね。もうすこしリーダビリティに配慮して改行なりなんなりはしたほうがいいかも。後半になるまでひたすらモノローグで進んでいくせいで肝心のスズランのキャラクターがあまり見えてこない部分もある。もうちょっと早めにスズランとキキョウを絡ませたほうが良かったのではないかなと思います。全体のうちで説明てきな部分が占める割合が高いので、序盤からスズランを登場させ、説明的な地の文を適宜スズランとの会話に散らしながら読者に呑み込ませていったほうが、石版も軽減できるしよいでしょう。

 まさに”百合”といった耽美さで、没入させられました。まず、暗殺者として育成される少年少女達、という設定から引き込まれましたし、文体も好みでした。救いの無いお話のはずなのに、どこかすっきりとした読後感で、キャラ立ちも申し分ない上手さ。強いていうなら、もう少し改行するなどして読む際の見栄えも意識なさるとより多くの読者に届くと思います。好きでした。

 孤児の少年少女を集めて育てる暗殺組織が運営する学校。年ごろの彼ら、彼女らの間に情や愛が芽生え始めるのは必然だが、他人を本気で愛する人間は暗殺者として不適格。組織が仕込んだ「処刑人」をそうと知らずに愛した者から粛清されていく環境で、暗殺者候補生たちの疑心暗鬼は深まってゆく……。ですます調による耽美な文章で、錯綜する人間関係が描かれます。この設定で、こういう方向に物語が進んでいくのは意外でした。前半が冗長とも取れますが――私は必要だと思った。浮世離れした壮大な設定を丹念に下に敷くことで、愛と死が隣り合わせの刹那的でドラマティックな内容に説得力を与えています。「鬱展開」をさらに大きな「鬱設定」で覆って重苦しさを緩和するという力業である。酔いしれました。

 

 

112. ささやか 「ありふれた日常」

 カフカてきと言うか安倍公房てきというか、なんかそういう系の不条理日常系で、たぶんコンセプトとしてはこの不条理な世界観こそが主役ということなんでしょうけれども、やっぱりそれだけだとエンタメとしてはちょっと物足りないかな。序盤の引き込みちからはものすごくあるので、せっかくだからこの世界観の中でもうすこしお話を転がすことを意識したほうがいいと思います。わたしは低能なのでエンタメてきな展開がないと、つまりどういうこと? ってなってしまう。

 私たちの住む世界とは異なった倫理が支配する世界の「ありふれた日常」を描く物語。段階的な情報の開示が気持ちよく、設定の妙は楽しめました。個人的には、飯尾さんの伴侶についての話よりも食べて応援するアイドルについての話の方が、この様々な生物が入り混じって生きる世界観が活きているように感じましたので、そういった人と人外との交流を掘り下げた方が面白いかな、と思います。

 人体損壊。カニバリズム。動物との恋愛、機械との結婚。私たちの「常識」では異端とされる嗜好が市民権を得ている世界を生きる女学生を描いた、バッドテイストあふれる青春小説です。こういう内容ですと、ほんとうに「ありふれた日常」として抑えた筆致で描くか、ゴーシャスな文章で耽美に描くか、どちらかになると思うのですが、ちょっと定めかねているような感触がある。あと、主人公自身はわりと傍観者っぽさがあるので(『畜ドル』のイベントに参加したりはするけれど、自分で手は下していない)その世界の「常識」に沿った――私たちの『常識』では異常な――行動をためらいなくとるエピソードが、もっと欲しいと思いました。

 

 

113. 既読 「ねこのきもち」

 モモモKUSO創作勢のジェイガン、既読さんです。モモモ大賞初期は圧倒的な強さを誇っていたんですけれど、周囲のレベルが上がってきてそろそろ余裕かましてはいられなくなってきたかもしれませんね。でも大丈夫です。ジェイガンも頑張れば最終戦まで現役でいけます。既読さんにしては珍しく、そこまで捻ったところのないわりとストレートな恋愛ものなんですが、人間になるのがちょっと遅いかも。もっとさっさと人間になって、代わりに人間状態でのデートパートを厚くしたほうがよかったかもしれない。今回これだけたくさんの短編を読んでみて改めて思ったんですけれど、短編は基本的に話が動き始めるところを1行目にもってくるのが正解っぽいです。1行目でもう人間になっていて2行目ではカイムくんと外に行くくらいでも丁度いいくらいかもしれない。とはいえ、やはり安定してレベルは高く、面白いです。

 とっても可愛いメルヘンでロマンティックなお話でした!! チコちゃんがかわいくて愛おしくて仕方ありません……! 起承転結がかっちりあるこの形が童話的で心地よく、ねこパートも溜めとして機能しているように私は感じました。強いていうなら、VRゲームの部分はちょっとこの物語のほのぼのした雰囲気にそぐわないかも、と思いました。好きです!!!

 あたしはチコ。飼い主の彼ぴが好きだけど、猫の身ではできることに限りがあってもどかしい。そんなあたしに鳥のカイムくんが「人間の姿にしてあげる」と言ってきて……。設定だけなら、小説を書こうとする人間なら一度は思いつくものですが、このレベルで成立させられるかどうかは別である。書きたい場面だけを並べず、しかし「無」の場面も作らず――簡潔な文体も物語に合わせて選択したものであることが伺え、匠の技を感じます。彼ぴの「文化系の疲れた会社員」の雰囲気がリアルで泣ける……。マジカルなできごとにも過不足なく理由がつくお話なので、ドラゴン退治のアトラクションについても、わかりやすい説明が付記されるといいと思いました。 

 

 

114. 長月 有樹 「ロストボーイフレンド」

 序盤の勢いと文体はすごい好きです。中盤までの展開もスピード感があってすごくいいんだけれど、オチに向けての展開はさすがに唐突でスピード感が逆に作用しちゃってるかな。そこに収束するように、もっとしっかり伏線があったほうが納得感はでると思うので、ちょっともったいないかも。まだ字数に余裕はあるので、単純にもうすこし書き込んだほうがいいと思います。これで終わるのも惜しいので、思い出した頃にでも読み直して加筆修正してみるといいかもしれません。

 前作と同じく、エッジの効いた文体は好きです。女装バレする展開は個人的な好みどストライクでした。後半の急展開は…勢いで押し切られてしまったな、という感じ。もう少し描写を膨らませ、洗練させていくと良いと思います。肝心なところ(「再開した」になっていました)で誤字があってもったいなさもありますが、結末のビターな感じは非常に好きです。

 彼氏とひどい別れ方をして荒れていた主人公は、ゴシック趣味の女子に助けられ、癒されていくが、彼女には秘密があって……というお話が、荒々しい文章で推進していきます。はちゃめちゃなんだけど、こちらも「鉄腕エミリー」と同様、ときおりキラリと光る表現があり、妙にストンと物語の必然とする地点に着地するところがある。放り出したようなラストの切なさ、好きです。つぎは、おとなしめの主人公で、語り口も「フツーの小説」っぽくて……もしよかったら、そういうのも書いてみてほしい。そうやって「普段使わない筋肉」を鍛えると、このゴキゲンな路線の作風も研ぎ澄まされます。

 

 

 

115. 君足巳足 「壱百日詣とプロポーズ」

 うわー面白い! 最初から最後まで君と私がただただいちゃいちゃしているだけで山も谷も大してなくて物語も転がってないし主人公もひたすらウザくて全然共感できないんだけどすっごく面白い。なんだろうこれ不思議~? なにが面白いんだろう? たぶん完全に文体だけのものだと思うんですけれど、ほんとすごいですね。突飛だし唐突だしうっとおしいんだけれど、なんだかずっと親しくてしょーがねーなーって苦笑いしちゃう感じ。ここまで色んな人に「大きく物語を取り回しましょう」とか「山と谷を作りましょう」とか言ってきたのに、概念壊れちゃいますよ。でもこれは本当に例外なので普通の人が真似したり参考にしたりするものじゃないと思います。才能だなぁ。面白かったです。

 あ、やばい。とてもきゅんとしました。この文体、最初はあんまり馴染めなかったのですが、だんだんと引き込まれていってしまいました! また、日常の質感がとても上手く描けていらっしゃると思います。登場人物の息づかいが感じられるようで、この二人の関係性も好きで、とってもチャーミングな作品でした!

 わたしは夫が大好きでまた結婚したいから離婚して、再びプロポーズするまでの百日間、近所のお寺の百日詣に通うことにした……。ひとりの女性の突拍子もない、でも誰にでもこのくらいの突拍子のなさはあって、それでも生活は続いていく――そんな日常が描かれています。感情の赴くままポンポンと雑駁に語ってゆく一人称というのは、難しそうで意外と書きやすく、なんとなくシャレオツな小説っぽくなるのですが、気分よく筆に任せているとどうでもいい「無」の描写に陥ります。ここまで奔放でアクロバティックで、でもとっ散らかった感じはなく、教訓めいてもいず、でも生きることのゆるくなさと素晴らしさが痛快に滲み出てくるレベルには、なかなか到達しないよ。すごいすごい。参りました。題名の二語がちゃんと物語の軸になっているのも、作者の体幹の強さを感じさせて頼もしい。大好きです。 

 

 

116. 八重藤 直虎 「黄色い西瓜」

 1万文字で小学生編から日本代表編までやっちゃうのはさすがに欲張り過ぎじゃないでしょうか。とくになんのエクスキューズもなく視点人物が変わっていたりもして、ちょっと混乱してしまいます。これは小説というよりはまだあらすじとかプロットの段階ですね。いきなり大きすぎる構想を描いてもなかなか厳しいので、まずはどこかひとつのエピソードに焦点を絞って書いてみたほうがいいと思います。

 文章自体には疾走感があるようなもので、スポーツものを描くのに適していて良かったのですが、如何せん視点がころころ移り変わってしまう構成が読みづらく、いまいち没入することができませんでした……。一つの出来事にフォーカスして群像劇的に描くか、一人の人間の成長譚として描くか、情報の取捨選択が必要かもしれません。試合シーンの緊迫感は強く感じられて良かったです。 

 練習中に出されるおやつの黄色い西瓜――それが目当てでサッカーを始めた少女が、日本代表のゴールキーパーになって活躍するまでを、さまざまな人物の視点から描き出す小説です。断片的な情報から主人公のデカさを炙り出そうという形式は好きです。でも、そのもくろみを達成するなら、ほんとうにすべての章を(プロローグすら)主人公以外の視点で描き、実際の試合の精緻な描写も捨てたほうがいいでしょう。そこも描きたいのなら、この分量では足りないと思います。あとキャラクタの名前……遊びで入れただけで深い意味はないのでしょうけど、せっかくの作品がパロディめいて軽くなっちゃう恐れがあるので、個人的にはお薦めしません。 

 

 

117. 威岡公平 「感情教育マーケット」

 最後まで説明に終始してしまったなという印象。設定に見所がないではないのですが、読みたいのは設定の説明ではなく物語なので、その世界観の中でどういう話を転がしていくのかを考えてみてください。物語という語をもっと具体的に言うと、二者間の関係性とその変化です。厳密に言うとぜんぜん違うのですが、まずは物語とは二者間の関係性とその変化を描くものなのだと思ってしまったほうが色々と話は早いです。現状では最初から最後まで主たる登場人物がひとりだけでモノローグで進行していますので、もうひとりしっかりと形を持った登場人物を足したほうがいいでしょう。モノローグではなくダイアログで進行したほうが説明っぽさは軽減されます。

 世界観設定は興味深く、着眼点が面白いな、と思いましたがそれが明かされるまでの展開が遅いかな、と思いました。世界観の魅力をスタートダッシュで魅せつける勢いで書いてほしいです。文章も硬めで、題材に適していると言うこともできますが、もう少し柔らかさを加えた方が叙述するキャラクターの人間味も増すと思います。 

 脳移植が容易となって、自分の記憶や経験を他人が「インストール」することも叶うようになった近未来。自分らしく生きるために、旧来の「女らしさ」を売る者も、それを買う者も存在する――という、哲学的な命題を含んだSF作品。現代的で興味深い題材なのですが、文章がかなり生硬な上に、物語の全容がなかなか明かされない構成なので、読み進めるのに苦労しました。私がバカすぎる? ふつうの中バカだと思うんだけど、どうだろう……。そんな私としては、メインのネタをもう少し早く明かし、その状況下で生きているふたりの様子を順次追いかけていってもいいのかな、と思いました。それで作品の雰囲気を損ねるということはない。 

 

 

118. 大村あたる 「境界歩きの千鳥足」

 はい、この時点で締め切り30分前です。これ以降の人は全員、次回から計画的な執筆を課題にしましょう。のっけから不可解な状況に不可解な状況をどんどん重ね掛けしていく手法でぐいっと読者を引き込んでいくのはとても上手いと思うのですが、これは短編小説と言うよりも長編小説の冒頭部分ですよね。これ単体で短編小説として評価することはできませんが、ものすごく面白いので普通に続きを書いちゃってもいいんじゃないでしょうか。大村さんは変に斜に構えた別の作品よりも、こういう素直なトンチキコメディっぽい路線のほうが適性に合っているかもしれませんよ。

 1話目からヒキが強く、徐々に設定が開示されていく展開に引き込まれました。コミカルな掛け合いも楽しく読むことができました。個人的な好みとしてはラバーズくんとの交流にもっと重きを置いた配分でも良かったのでは、と思いました。ライトなSFといった感じで、設定も色々と話を広げていけそうなものも多いので、続きも読んでみたいですね。

 酔った勢いで変なものを拾ってくる癖がある主人公。今度拾ってきた大きな卵は、ひと晩あたためるとメイドが孵ってきて……。非日常的なできごとを日常的なこととして淡々と綴るユーモラスなSFです。小出しにされる情報から、じつはふつうの現代世界ではなく、そして主人公がもっともぶっとんだ存在であることが、少しずつ明らかになっていく「勿体つけ方」が巧みです。ストレスがかからず、喉ごしのいいサプライズを味わえる。同種の作品を書かれる方々の参考になると思います。連作の「プロローグ」っぽい終わり方は、少し物足りないけど、未完成という感じはしない。よい短篇でした。

 

 

119. あさって 「海の底から愛を込めて」

 面白かった~。取り扱っているテーマじたいはとても重いはずなのに、ギャグのセンスがよくて細かい部分で笑いを稼いでいくのであまり重さを感じさせません。話を転がしながら読者に無理なく設定を呑み込ませていくのも上手ですし、APTなんとかとか受付嬢とかのキャラクターの立っていてとてもいいです。ついつい説明的になってしまいがちなSF勢には良いお手本になるでしょう。ラストはちょっと取ってつけた感がなきにしもあらずなので、もうすこし洗練の余地はあるかもしれませんが、総合力で頭ひとつ抜けた高評価です。

 ライトに読み進めさせつつ、徐々にシリアスな展開に読者を沈めていくような構成が巧みでした。コミカルな冒頭からは予想していなかったしっとりとしたエンディングに、色々と考えさせられるようなお話でした。キャラクターも個性的で生き生きとしていて良かったです。

 AIが最良のカウンセリングをしてくれる治療機関に通わされる主人公。「そんなもんいらない」とあの手この手の奇行で診察をひっかきまわすが、膨大な問診データを保有するAIにとってはどれも予測の範疇で――というコミカルなSF作品が、読み進めると変貌していきます。就職活動に苦心する主人公は、何に苛立っているのか。心とは何か、命とは何か。シリアスな問いかけを増しつつ、語り口は軽妙さを失わない。不思議な小説です。地味に、このコンテスト屈指の不思議さかもしれない。いきなり梯子を掛け替えられたような不快感がなく、物語が変転するたびに深いところに連れていかれるような心地よさに浸りました。 

 

 

120. あさぎり椋 「いつかライド・オン・シューティングスター」

 大枠で言うとETです。こういう、すこしふしぎ要素を絡めた少女の成長譚みたいなのはYA路線だとむしろ定番くらいのアレなんですが、まだちょっとバラけている感じはありますね。どこがどう、という話ではなく、すべてがもうすこしずつカチッとハマればかなりいい感じになりそうな気がします。叩き台としては充分に魅力的なので、しばらくクーリング期間を置いてからリライトしてみるとよいのではないでしょうか。文字数上限もかなり窮屈そうに見受けられるので、最終的には中篇くらいの規模になりそう。やっていきましょう。

 こういったひと夏の出会いと別れの物語、とても好みです。ハートフルな交流に癒されました。Vtuber要素があるのも楽しい。喋るカモノハシ、モカくんのセリフ回しやキャラクターも好きでした。これはもう2万字の枠を取っ払って伸び伸びお書きになられた方が良いのではないでしょうか。ちなみに、章タイトルのセンスも個人的に好みです。

「焼死」がモットーの熱血少女が出会ったしゃべるカモノハシは、古代に地球に漂着した宇宙人だった!? 彼が故郷へ還る宇宙船を探す、ひと夏の冒険が始まる……というこのお話は「ライトノベル」や「ヤングアダルト」というより「ジュヴナイル」の響きがよく似合う。ジュヴナイルSFだ。ブイチューバーをやっている親友との百合っぽい友情、心が離れてしまった家族の再生、そして流星群と宇宙船……このすべての要素を丁寧に語ろうとしたら、そりゃ2万字では収まらないでしょう。だから少しずつ舌足らずなんですけど、キュンキュンする要素が満載なのは好感が持てます。心が洗われました。 

 

 

121. 芥島こころ 「天才エルフ魔法使いエリリエちゃん」

 滑り込みの常連、どスケベ女装ボディのどネニキです。冒頭からラストまでひたすらバカのバカっぽい主観記述でバカっぽいから読みにくいのなんのってそれはもうものすごく読みにくいんだけどなんかこの読みにくさが逆にクセになるみたいなところがあるんだよね。ない? いやわりとあると思います。めっちゃつらつらとしていて物語の主軸というのがないんだけれどなにしろそもそもバカが適当に喋っているだけだから主軸なんてものがないのも致し方なしって感じで実験的手法としては可能性を感じるのであとはこれがちゃんと物語として成立すればものすごい加点がついていましたが現状ではバカのバカ喋りがなんとなくクセになる~っていうだけでそこまで評価するわけにもいきませんけれど実験的手法としては可能性を感じるのでもうちょっと突き詰めてみてください。面白かったです。

 密度ある一人称のこの語り、はちゃめちゃに読みづらいのですけれども、私は好きです。ツイートを積み重ねて小説にしました、みたいな感触もありますね。ただ、文章に気を取られてしまう感じもあってストーリーとしてはもう少し洗練してほしいかもです。ですが、読んでいて楽しい文章でした。

 ひさびさにエルフ族の隠れ里までやってきた人間たちが、なんか高性能なマジックアイテムを持ってんだけど。あれ、長年「鎖国」してたうちに、エルフって世界から遅れを取ってね? 危機感をおぼえた主人公が諸国漫遊の旅に出かけるファンタジー。こういう「石板」文体の投稿作が複数あるコンテストですが、正直いって、適当に改行したほうが文章の格調を損ねないままリーダビリティが増すのでは……? という場合もある。この作品の「石板」は、必然性がありますね。分けようがない。内容も、ハイ・ファンタジーとしてのアイディアがふんだんに盛り込まれ、とても楽しく拝読しました。 

 

 

122. 三角ともえ 「ヒガン探偵エル 『ウマのクビ事件』」

 締め切り5分前の滑り込みで今回のブービー賞です。まさかどネニキよりも後に滑り込んでくる人がいるとは思いませんでしたよ。タイトルに探偵ってついているんですけれども、あまりミステリー要素はないですね。児童向けドタバタコメディてきなノリ。仕掛けはわりとガバいんですけれども、全体的にそんなカチッとした雰囲気ではなく勢い重視のスラップスティックなノリなので、あまり気になりません。オチはバレバレなので別にびっくりしたりはしないのですが、バレバレなのも含めてそういうものっぽいので別にいいのかな。盛り盛りの厨二要素もかっこよさっていうよりは「どうだ? かっこいいだろう?」とドヤッている滑稽さとか可愛らしさが主題っぽいので、これはこういうものなのでしょう。

 クスッと笑えるような小ネタが随所に仕込まれたコミカルな作品でした。「ベーカリー街」というギャグから膨らませたのでしょうか…?強いていうなら、エル以外のキャラクター達にももう少し個性がほしいかな、と思いましたが、ポップに楽しめる作品でした。しかしながらこのオチ、朗読だと成立しないのではないでしょうか!?

 イギリスで探偵を営む主人公は、いかにも探偵らしくふるまおうとするが、いまいち決まらない微妙な感じの日々。しかしその能力は特殊なもので、人外の幽霊や魔物が人間に脅かされている事件を解決するのだ……。軽快なエンタテイメント活劇です。ライトノベルと児童向け文庫の中間くらいの感じで、ビジュアライズしたら映える場面が多く、読んでいてほっこりしました。ゆるくてやさしい雰囲気が個性ではありましょうが、この設定やギミックなら、もっとキンキンの人間(人外)関係や、大スケールのアクションも見てみたいとは思う。ちなみに作者の方は「はだかのパン屋さん」という著作をお持ちで、この作品もパンが重要な要素になっている。パン、お好きなのでしょうか。

 

 

 

大賞選考

 というわけで、以上で全作品の講評が終わりました。最終的に応募総数は127作品、内レギュレーションを満たして講評の対象となっているのが122作品となりました。おおかた前回の倍ですね。死ぬかと思いましたよ。

 さて、それでは次に大賞の選定にうつりたいと思います。いつも通り、まずは闇の評議員の三名からそれぞれが大賞に推す作品を三つ出してもらって、そこから先はなんとなく合議で決めていく感じです。

 じゃあまずは、わたしの推しですが「CQ」「サンライズ・コーストライン」「女王と将軍と名もない娼婦」です!

 私は「八月のファーストペンギン」「CQ」「壱百日詣とプロポーズ」です!

 私は「CQ」「サッちゃん」「サンライズ・コーストライン」です!

 わー! これは!!!!

 満場一致!

 圧勝ですね。

 大賞は「CQ」で! 満場一致で一撃確定です!!!!

 結構序盤の作品でしたが印象に残りましたからね……!

 早い段階のエントリーで、その後もよい作品はたくさんあったのですが、このオリジナリティの衝撃は薄れませんでした。類似の作品がないの。凄い。

 すごい。今回は本当に推しの三作に選ばれてもおかしくない作品が10も20もありましたから、この環境下での満場一致というのは、やはり頭ひとつ抜けた出来だったのだと考えていいでしょう! そして、二票獲得が「サンライズ・コーストライン」だけなので、これも自動的に金賞で確定です! おめでとうございます! わたしはこっちの大賞も十分にあり得ると思っていました。

 私もかなり迷ったのですが、中盤のちょっとしたグロ展開が若干好みではなく……グロ展開というかイジメの描写ですかね……物語の深みを増すことには確実に寄与していましたがYouTubeの規約的にも……(ごにょごにょ) しかし、かっこいい作品でしたよね……!

サンライズ・コーストライン」は、なんでもないような簡潔な一文に篭められた感情や状況の濃さが凄い。全体的に饒舌な作品が目立つ中(それはそれでよいのですが)この凝縮された文章のちからに唸りました。

 ハードボイルドだよね。女の子を主役に据えるとどうしてもヌルく走りがちなんですけれども、最後の最後まで硬質なハードボイルドで貫き通してくれたのが爽快でした。わりとこの感触はありそうでなかった気がしますね。そしてやはり、ラストの愛だよ。わたしは最終的には愛の話にめっぽう弱いので。

 関係性、尊かったです。

 愛ですね。表層的なハッピーエンドとかバッドエンドとかを超えた、これしかないという感じの。

 わたしは「壱百日詣とプロポーズ」も最後まで迷ったんですけれども、自分てきに三作品の偏りを意識して外してしまった。あれも大賞だったとしてもおかしくない水準でした。ほんと、あのへんの摩訶不思議なフォームから魔球投げてくる人たち怖いです。

「壱百日詣とプロポーズ」を選んだのは、あの文章を朗読してみるのも楽しそうだな、と思ったからです。朗読といえば、「女王と将軍と名もない娼婦」も上手く調理すればとてつもなく朗読との相乗効果が期待できそうな作品でしたね。素人なので…む、難しい……。

「女王と将軍と名もない娼婦」はらのちゃんがひとつなにかの限界を突破する意味でもチャレンジしてみるのアリだと思う。朗読劇として、あんな難しい台本ないよねw

「壱百日詣とプロポーズ」は「サッちゃん」と「現代小説枠」で最後まで競いました。「壱百日詣」の「感情の赴くままの一人称の文体」は、同様の指向の作品の中で頭一つ抜けていた印象です。基本的な運動神経が凄いという感じ。あとは「サンライズ・コーストライン」と「人間のあなたはいつか、人間の私を食べる」のどちらを推すかも、最後まで迷いました。こちらは「ファンタジック・ハードボイルド枠」みたいな。

「人間のあなたはいつか、人間の私を食べる」も最高に尊かったですよね……。isakoさんは二作品とも異常にレベルが高くて、ほんと正体不明で怖いです。単純な小説としての地力という話でなら、今回のそうそうたる顔ぶれの中でもトップレベルだと思います。

「人間のあなたはいつか、人間の私を食べる」も筆力が巧みでした……尊かった……。「文化とは私たちの生活であり、営為であり、存在である。」も、非常に密度の高いディストピアもので印象深いです。

 個人賞みたいなのがあるなら@isakoさんは候補筆頭ですね。「「文化」とは私たちの生活であり、営為であり、存在である」という内容も文体も非常にピーキーな作品のあとで、「人間のあなたは~」のような読みやすさとエンタテイメント性も備えた作品が出てくる。意識的に書き分けられるんだ……ヤダこわい……と思った。

 @isakoさんは小説の地力は抜きんでているんですけれども、やはり短編小説賞としては綺麗にオチがついているものを評価したい気持ちがあって外したんですよね。たぶん、中~長編向きの方だと思うので「人間のあなたはいつか、人間の私を食べる」のほうはこのまま続きを書いていってもらいたいです。すごく読みたい。

 私はやはり、ラノベ読みなので、純文学的な感触のものよりもハッピーな気持ちにさせてくれる作品が好みで、「高校くらい出ないとダメだよ」「いとしのリノリウム」「マジックLOVEアワークライシス」「ねこのきもち」なども好きでした。

 そのへんも安定して面白かったですね。どれも、前回までの本物川小説大賞であれば賞レースに絡んできておかしくない水準だったんですけれども、やっぱ今回はちょっとおかしいですよ。そこからさらに頭ふたつくらい抜けてこないと賞レースまで届かない。どんな権威ある小説賞なんですかこれ。

「横からトラックが突っ込んでくる」っていう比喩、ほんとうにそうだと思って。こんな書き手が何人もどこに隠れていたんだ、なんで出てこないんだ、どうして出てくる場所にこの賞を選んだんだ、という(笑) 

 ほんと、モモモ大賞とかやっている場合じゃないので、さっさともっと名のある賞をとってきてほしいです。

 あ、本山らの賞は「八月のファーストペンギン」にしたいと思います。綺麗にまとまっているので万人受けもしてエンタメコンテンツとして上手く仕立てられそうなので。「女王と将軍と名もない娼婦」は配信外でゆっくり録ってどこかで公開したさも……あります……。あと、幻の本山らの賞うさぎやすぽん 著「だった、ラムネのビー玉」(怒怒怒)

 やすぽんくんはお説教対象です(怒怒怒) わたしももう読んで講評までつけてたのに引っ込められちゃったら全部タダ働きですからね!!!(怒怒怒怒) まあ最初からタダ働きなんだけど!!!!

 いちど投稿した作品を消去したり、内容が変わるほど大幅に改稿したりするのはご遠慮いただきたいですね。学校のテストで時間前にできたと思って提出して、あとから「あっ先生やっぱ返して」といっても、本来は通りません。

「八月のファーストペンギン」は、読んでくれるひとをおもてなしすることを考え抜いた、とてもやさしい小説でしたね。私の好みでどうしても強烈なのを選んでしまうのですけど、こちらもまた、受賞にふさわしい作品だと思います。

 短編小説というくくりで考えると、本当に100点満点ですよね。どこをとっても無駄がないギッチリの2万字というのは、他は海野ハルさんの「竜の啼く季節」くらいかな。どうしてもモモモ大賞は奇襲奇策が勝つ傾向がありますけれども、商業だと文字数の縛りって本当に絶対的なので、そこはやっぱプロの手つきだなぁという感じでした。2万字という枠を提示されて、きっちり2万字で過不足なく仕上げてくるっていうのは、もう書いてナンボの嗅覚なので、ポッと出の素人がセンスだけでやれるものではないっぽい。

 1万字書くのが大変で必死に場面を増やしたであろうもの、2万字を軽くオーバーしそうであわてて圧縮したであろうもの…… あと単純に、1万字で体力的・時間的に力尽きてエンドマークを打っちゃったであろうもの…… いろいろありました。総文字数を作品数で割った平均が14,000字くらいで、このあたりを目掛けていくと、誤差が出ても規定に収まるのでいいのかな、と思いました。

 これはこの設定のまま2万字という枠組みにとらわれずに伸び伸び書いてほしいなぁ……という作品も散見されたように感じました。

「さそり座の夜、あの屋上で」や「マジックLOVEアワー・クライシス」など、もっと長いほうが絶対におもしろい作品、ありますね。「マジック~」は「グラップラー刃牙」みたいに何十人も格闘女子が出てきてえんえん戦ってほしい。
 あ、そう。鍋島さんもすごくレベル高くて、でもどちらの作品も2万字の上限キャップが苦しそうでしたよね。モモモ大賞が終わったら、文字数上限を気にせずにリライトしてみるのアリだと思います。あれは2万字で制限しちゃうのもったいない。

「GHOST & SIMPLEX」は連載の1話目みたいな感じで来週も楽しみだな~みたいな気持ちにさせられましたね。 

 リライトは、もしよかったら、ぜひやってみてください。「一度発表した作品はいじってはいけない」みたいに思っている方もいらっしゃるでしょうけど、ぜんぜんいいんです。いくらでも直して再掲載すればいい。

 もともとが「とにかく書いてみよう! なんでもいいから書いて終わらせよう!」という目標を掲げて始めたモモモ大賞ですし、なんであれ書き上げるという経験は絶対に無駄にはならないから、今回1万字で苦しんだ人も、これを切っ掛けにもっと大きめの物語を取り回していくようにしてもらいたいですね。一度できたんだから、次も絶対にできる。そうやって執筆上の体力が身についていくので。こむらさきさんは本当に顕著なんですけれども、第一回からずっと参加し続けてくれていてグングン伸びているので、書けば書いただけうまくなるというのは真理なのだと思います。ほんとね、第一回からの作品ぜんぶ読んでみるといいですよ。見違えるくらい小説を書くようになりましたから。

 あと「海の底から愛を込めて」と「トイレは宇宙なり」も、ぶっちゃけ後半戦も後半戦で、はんぶん寝てるみたいな状態で白目剥きながら読んだんですけれど、一瞬で目が覚めましたからね。やはり面白いものを読まされるとギュンッ! と目が覚めます。

「トイレは宇宙なり」は朗読者に対する悪意のエンタメ昇華力が強くて笑いました。

 全体的にはまだまだ発展途上なんだけど、会話文にセンスがあるとか、どんでん返しのある構成がバシッと決まっているとか、ひとつ長所がある作品は、やはり印象に残ります。

 あのへんの会話文にセンスが光っている人は非常に強いので、今後もバシバシ狙いにきてほしいです。

「連載1話め」とか「本篇のある作品の外伝」とか、そういう感じの作品で、評価に苦しんだものもありました。鍋島さんの2作品は問題なかったけど。単品で読めて、ちゃんと一応の完結感が出るようにするのも、難しいものなのだね。

 さすがに「スピンオフです!」とか言われても、そっちまで読んでられないですからね……。単体で成立していれば問題ないんですけれども、当該のエピソードに必要のない裏設定はバリッと削ってほしいし、逆に必要なものは本文中にちゃんと埋め込んでおいてもらわないと。それとこう、疲労の極限状態で最後まで読んで「え?」ってなると、普段よりも三倍増しでイライラするのでよくないです。エキノコックスのことです。

 さすが私以上に少女小説読んでらっしゃるだけある……と思って読んでいたのに……あのオチ……。エキノコックスのことです。

 ふだん読んで評論なさる側の方が、実作をあんなふうに放り出してはいけない。エキノコックスのことです。あとは「完全に朗読狙いです!よろしく!」というひとの作品に限って「出来不出来以前にこの内容を読んでくれるときみはほんとうに思っているのか」という。そこまで含めたコンテストのお祭り感は楽しいですけど。 

 しぃるくんの悪口はやめるんだ。

 夢小説、私は読んでて楽しかったですよww

 まあでも無よりはずっといいので、せめて一太刀の精神は大事だと思いますね。今回はもうなにを書いても地力だけで面白い! みたいなモンスターがゴロゴロしているので、その中で文章力だけで頭ひとつ抜けて魅せていくとかほぼ無理ですから。その点は「鮎子ちゃんとながいともだち」みたいにポーン! と突き抜けているとインパクトがあるので、KUSO創作勢はそこに一球入魂でいくしかないです。ないものはないんだから、手持ちのカードの組み合わせで突き抜けていけ!

「鮎子ちゃんとながいともだち」は、とにかくおもしろい出来事が起こり続ける。あのサービス精神は素晴らしいです。

 鮎子ちゃんみたいに、序盤からヒキが強いとそのままの勢いで没入することができます……!スタートダッシュは大事!

 今回、評議員になって実感したのが、「KUSOを投げろ」「せめて一太刀」というスローガンの解釈から、もうレースは始まっているのだな……と。「プロ級の作品の完成度と競おうと思わない、プロもやらないような一点突破のインパクトを狙おう」と思った結果……過剰なバッドテイストになる方の多さ。

 鬱鬱とした話と死の話はほんとみんな好きですよね。これだけの数を立て続けに読んでいくという、わたしの特殊なコンディションの影響もあるとは思うのですが、ぶっちゃけて言うと「またか、勘弁してくれよ」ってなっちゃうところがあって。これもう勢いで名指しで言っちゃうんですけれど、今回だとぶいちさんと、紅哉朱さんと、起爆装置さんあたりかな。あのへんの露悪的で鬱々とした作風の人たち、やるならやるで、その筋一本で一田先生の二作品目越えられそう? みたいなのは自問してほしいです。やるにしても、あの水準で決めてこないと読者に傷すら残すことはできません。

 エログロ、鬱なお話は……そうだな……グロテスクな見た目の動物だけどお肉は意外とおいしい、そういう感じが理想ですね。最終的には、お肉を差し出してほしい。「どうだ、グロテスクだろ!」と脅かされるだけでは悲しい。

 もちろん創作で何を語るも自由ですし、書きたいものを書けばいいとも思うのですが、誰かに届けたいと思うのでしたら、ある程度の読者への配慮は欲しいです。
 いま挙がった方々、文章力は高いのです。だから、書けることは書きたくなってしまうという気持ちはわかる。でも「描写ができている=読んでおもしろい」ではないのですよね。そういうことまで考えて書くレベルに達している方々だと思うので、言わせてもらっています。「サンライズ・コーストライン」も、そういう陰鬱な暴力場面がありましたけど、描写に抑制が利き、次にくるカタルシスの前振りとして機能している。

 あとは社会風刺てきな欲求が真っ直ぐに出過ぎているものも、ちょっと引っ込めたほうがいいですね。「物理少女フィジカル☆アリサ」とか、勢いと設定はよかったんだけれども、そういうイデオロギッシュなところで読者層を狭めかねないし、やっぱお説教てきなノリでこられると、わたしなんかは問答無用でムカついちゃうので。語りたいことや主張したいことがなにもないのも困りものなのですが、飽くまで読者を楽しませようという、そこンところの意識が大事です。

 そのあたり、柚木さんの完璧な世界はメッセージ性とエンタメ性の両立が巧みだな、と思いました。

 えへ~(照) でも、あれも特に主張があるわけではなくて、問いかけているだけですから。あの中で出てくる人は、どれもわたしの代弁者というわけではないんです。わたしはあの三人、全員嫌いです。

 私たちは、全体的に「もっとサービス精神を、エンタテイメント性を、物語に起伏を」ということを講評で言ってきたと思います。どうか、これを「尖ったところは丸めた、お涙頂戴、クスクス笑える、明朗な作品じゃないとダメなのですね」みたいに思わないでください。そうではないのだ。抽象的な言葉遊びみたいになっちゃうけど……「尖り」は細いほうが刺さるわけで。ここ一番というタイミングで刺したほうが印象的です。

 商業フィルターにかけたら濾過されてしまうような「尖り」出していって欲しいです!

 まあでも、なんだかんだいって「書いたら書いたぶん上手くなる」以外の真実なんかほとんどなにもないので、最終的な結論としては「みなさんやっていきましょう!」と「次回も参加しようね!」ってところに落ち着くんですけれども。ほんと、毎回きっちり参加してくれている人はみなさん着実に成長を重ねていますからね。進捗は大正義です。

 私は今回は残念ながら参加出来なかったのですけれど、次の大賞時には書く方にも挑戦してみたいです!(退路を断っていく)

 お?

 この議長はいちど取った言質はぜったいに忘れない。

 えっと、それで銀賞の選定なんですけれども、今回はこれ一人一票ずつで完全に割れてしまっていて、何度決戦投票をやったところで決められないから、もう銀賞三本ってことでいいかなと思って(諦め)

 母数も大きいですし仕方ないんじゃないでしょうか……!

 これから3人で殴り合うのかと思って憂鬱だったので、英断だと思います。賛成です。

 いえーい! じゃあ大賞は「CQ」金賞が「サンライズ・コーストライン」本山らの賞が「八月のファーストペンギン」銀賞が「女王と将軍と名もない娼婦」「壱百日詣とプロポーズ」「サっちゃん」の三本で決定です! 受賞されたみなさん、おめでとうございます!!

 おめでとうございます!!

 おめでとうございます!!

 ただの読者としての感想ですので、ぼんやりはにゃはにゃした点も多々ある講評だったかとは存じますが、評議員の末席を務めさせていただきました……! いつもの皆さまからバーチャルな方々、プロの方まで沢山の方に参加していただき、様々な作品を読むことが出来て良い経験になりました……! でもちょっと大変だったのでおひねりとしてチャンネル登録していってくださると嬉しいです!(直球宣伝)

 わたしも今回はめちゃくちゃ頑張ったから10/1に出る新刊「君は世界災厄の魔女、あるいはひとりぼっちの救世主」みんな買ってね。こういうのは初動が大事ですからね? 分かりますね? ほんと頼みますよ??

 朗読配信は22日21時から当チャンネルで行われますので良かったらご覧ください!(今決めた)

 はやい。

 即断即決! 朗読、楽しみにしています。

 というわけで、第八回本山川小説大賞、過去最大最高レベルの大激戦を見事制したのは水瀬はるかなさんの「CQ」でした! おめでとうございます!!!! はいじゃあ、これにて闇の評議会、解散! 撤収~~!!!!

 

 

↓↓↓今回の闇の評議会の三人へのおひねりはこちら↓↓↓

 

 

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行き先は特異点 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)

 

 

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第八回本山川小説大賞 後半戦ピックアップ5選

 

 結果発表じゃないよ~。

 

 昨夜0時で締め切りとなった第八回本山川小説大賞、おかげさまで最終的な応募作品数は127、内、レギュレーションを満たして講評の対象となったのが122と、過去最大の規模になりました。かるく前回の倍ですね。死ぬかと思いましたよ。

 

 さて、結果発表なんですけれども、今回、闇の評議員をつとめてくださっている謎のサブカルクソ眼鏡先生が北海道在住で先日の地震でいろいろ大変なのでちょっと遅れそうです。なるべくがんばるのでもうちょっと待っててね。

 

 というわけで結果発表はまだなんだけど中間ピックアップに引き続き、後半組からわたしの独断だけで選んだ5作品を紹介しようと思いま~すいぇ~いドンドンパフパフ(ブオオオオオオオオオーーーーーン!!)←ブブゼラ

 

 このピックアップは完全にわたしひとりの独断で、大賞の選考は他ふたりの闇の評議員を交えてやりますから、ある程度は相関するかもしれませんが、これがこのまま大賞の選考に影響するということはないです。ではいってみましょ~。

 

 

@isako 『「文化」とは私たちの生活であり、営為であり、存在である。』

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 めちゃくちゃ質感の高いビッ! とキマッたディストピアものです。

 

ついに私は、頭蓋の小部屋にこの怪物を閉じ込めておくことができなかった。

 

 わりと既存のディストピアものというフォーミュラに忠実で、枠組を刷新するような新奇性などはなく、どこかで見たような設定、物語ではあるのですが、それでもガツンとくる圧倒的な筆力!! とくに目を引くようなわかりやすい仕掛けがあるわけでもないのに、ぐいぐいと読ませて面白かった~! と思わせてくれる不思議な作品です。もう本当に、筆力一本で圧してきていて概念的にはムキムキのマッチョマンにギリギリとアイアンクローされてるみたいな感じ。今回のモモモ大賞のために新規にアカウントを取得されたようで作者さんの情報や履歴が全然ないんですけれども、怖いですね。ひょっとしたら中身はどこかのプロなのかも。同じ作者さんの「人間のあなたはいつか、人間の私を食べる」も、面白いです。ディストピアものとかポストアポカリプスものとかが大好きな人はぜひ!

 

 

 

Veilchen 『女王と将軍と名もない娼婦』

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 なろうのほうで「雪の女王は戦馬と駆ける」という作品を書いている作者さんなんですけど、めっちゃ読んでました~ファンです。

 

ああ、私のファリアス将軍、忠実で清廉な方、私の大切な方――

 

 クソみたいな境遇に置かれながらも、あらゆる絡め手を利用して強かに生き抜く女性を描くのがものすごく上手なかたで、本作にもその魅力が如何なく発揮されています。完全に副賞のチャンラノ朗読を狙いにきた、女性の一人称語りオンリーの1万字で、まずこの縛りで読者をまったく退屈させずに1万字をぐいぐいと読ませる牽引力が素晴らしい。一場面限定なのにその中で二転三転する展開と、語り部である娼婦のキャラがとても魅力的でめちゃくちゃ面白いです。タフでストロングな性悪ガールが好きな人はぜひぜひ!

 

 

 

神崎赤珊瑚 『サンライズ・コーストライン』

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 ご本人曰く「女の子版俺たちに明日はない」らしいのですが、大筋ではまんまそんな感じです。

 

で、わたしの銃は六発なんだ

 

 端的でありながらも細やかなディティールの描写がぜんぶ最高で、丹念に積み上げたものがどわーっ! と雪崩れ込んでくるラストが本当に素晴らしい。たったの14000文字でここまでしっかりキャラを立てて関係性を描き、愛情と崇拝と失望がないまぜになったような捻くれた複雑な感情に読者をきっちりと引き込んで納得させる手腕が見事です。丹念に、丁寧にというのは、なにも文字数に正比例するものではないというのがよく分かります。この人、わたしも昔から知っているフォロワーさんで、ぜんぜん小説を書くイメージとかなかったんですけれども、そういう人がポッと書いてみてこういうのを出してくる展開がほんと好き。もうこれからは創作アカウントとしてバリバリやっていきましょう。今日から! お前は!! 創作アカウントだ!!!!

 

 

 

君足巳足 『壱百日詣とプロポーズ』

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 たぶんCQの水瀬はるかなさん方面からやってきてくれた人だと思うのですが、同じくあっち系(どっち系?)です。

 

わかってるじゃん。当たりだよ、嬉しい。

 

 セオリー無視で超個性的でギュウギュウのぐちゃぐちゃでとびきりリリカルでマジカルなんだけど、それで独りよがりに終わらずにちゃんと読者に対してパカッと開けている不思議な文体と作風で、めちゃくちゃ面白いんですけれどもなにが面白いんだか言語化しづらいです。狐につままれたみたい。そのうえこの人、絵もめちゃくちゃ上手いんだからずっこいですよね。滅多に活性化しないのだけが難点なので、もっとバリバリやっていきましょう!! 今日から! お前も!! 創作アカウントだ!!!! ほんと怖い界隈(界隈?)だよね、あのへんの魔法使いたち。

 

 

 

あさって 『海の底から愛を込めて』

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 締め切り30分前の滑り込み組ご新規さんです。土壇場までこういうのがあるから本当に油断がなりませんモモモ大賞。

 

私達の穴を、物理的にも比喩的にも、探ったのは貴方で39万9999人目です

 

 メインで取り扱っているテーマじたいは重いはずなのに、ギャグのセンスがよくて細かい部分でクスクスと笑いを稼いでいくのであまり重さを感じさせません。話を転がしながら読者に無理なく設定を飲み込ませていくのもとても上手で、このへんはついつい説明的になってしまいがちなSF勢には良いお手本になるのではないでしょうか。APTナントカとか受付嬢とかのキャラも立っていてとてもいいです。自分でもSFを書いてみたいぞ! って思っている人なんかはぜひぜひ!!

 

 

 

 

 以上、5作品。後半戦からピックアップしてみました。

 

 ROMの人とか、締め切りも過ぎたし他の参加者の作品も読んでみたいけどさすがに120以上もあるとどれから読んだらいいのか分かんないよ~って人は、まずはこのへんを読んでもらうと満足度が高いかなぁと思います。あとすべてはピックアップしきれないのですけれども、鍋島さんの「GHOST & SIMPLEX」とか、和泉真弓さんの「サッちゃん」とか、他にも面白いのいっぱい埋まっているので、各自じゃかじゃか掘り起こしてじゃかじゃかレビューしてじゃかじゃかシェアーしてあげてください。

 

 それでは、結果発表までもうしばらくお待ちください~。

 

 

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第八回本山川小説大賞 中間ピックアップ5選

 

 さすがに開催期間が一か月以上ともなると中ダルみが発生するので、テコ入れです(素直)

 

 おかげさまで、現状で参加作品数が60以上とたくさんの方にご参加いただいているのですが、そのせいもあって、「なんか面白そうなことやってるな~、どれか読んでみようかな~?」って通りすがりの人がきてもズラッと並んだ作品を前に「何を読んだらいいのか分からない~」という状況になっているのではないかと推測します。もう自分のを書き終わってそろそろ他の参加者のを読んでみようかな~って余裕かましている人も増えてきた頃合いでしょう。

 わたしは8/17現在でステータスが「完結済」になっている作品はすべて読んで講評もつけ終わっていますので、そんな人たちのために、現状の「完結済」48作品の中から「みんな~! これ面白いから読んで~!!」ってなった、個人的なおすすめ作品をピックアップしようと思います。

 ちなみにこのピックアップは完全にわたしひとりの独断なのですが、大賞の選考は他ふたりの講評員を交えて合議しますので、ある程度は相関するとは思いますが、これがそのまま大賞の選考に影響することはないです。ではいってみましょ~。

 

 

 

水瀬「CQ

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「みんなで楽しくうんこ投げ合って遊んでいたら横からいきなりトラックが突っ込んできた」みたいな感じで理不尽も甚だしい。めちゃくちゃ面白いです。けれど、これぞモノホ……本山川小説大賞の醍醐味でもある。毎回、横からトラックが突っ込んでくるんですよ。

 

オーロラになれた人の気持ちを、わたしはまだ知らない。

 

 はい。単体の文章として強すぎます。すき。え? それって具体的にはどういう状態になっているの? という説明は一切なく、想像力の限界を試されるような描写がひたすら続く不親切さなんですけれども、それなのになぜか読者に対して世界が開かれていて、置いてけぼりにされない。なんか分かっちゃう。とびきりにリリカルでマジカルで、油断すると読者を置き去りにして成層圏の彼方に飛び立ってしまいそうな暴れ馬をきっちりと抑え込む地力がものすごく高くて、概念的には筋肉ムキムキのマッチョマンの変態がパワーですべてをねじ伏せているといった趣。わたし個人の評価ですが、今のところ頭ふたつ飛び抜けているので、後半組はこれをブチのめすつもりで気合い入れて作品を放り込んできてください。間違いなく、大賞候補の一角です。

 

 

 

山本アヒコ「勇者にふさわしいあなた」

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 こちらも初参加のご新規さんですね。異世界から勇者を召喚して世界を救ってもらおうっていうテンプレに乗っかったうえで、そこにひとつ設定を足してツイストを効かせた、ちょっとブラックなコメディ作品。

 

…………結果から言うと、召喚されたのはまたもアキラさまでした。

 

 ジャンルてきには異世界ファンタジーになるんでしょうけれども、テイストとしては星新一ショートショートとか、筒井康隆藤子不二雄てきな社会風刺系のSF短編に通じるものがあるので、そういうのが好きな人にはバッチリはまるんじゃないでしょうか。もう散々やり尽くされた感のある異世界召喚フォーマットですけれど、やりようによってはまだまだできることはあるのだなぁと感心しました。これも、個人的には大賞候補の一角。

 

 

 

紺野天龍「八月のファーストペンギン」

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 こちらもご新規さん。超常要素のない完全な現代ベースの恋愛ものですが、よ~し僕様ちゃん純文学しちゃうぞ~みたいな肩肘をはった感じではなく、手触りはちゃんとライトノベルしていて、ラノベと一般文芸の中間くらいの印象です。

 

――ペンギノン、という有機化合物があるらしい。

 

 

 お話のはじまりかたと畳みかたが非常に技巧的で、ものすごく書き慣れているなぁという印象を受けました。と思ったらこの人プロじゃないですか。そりゃ巧いはずだわ。ボリューム感がとても適切で、2万字以内で終わらせるのにちょうどよいお話を、ちゃんと2万字以内で畳んでいます。寄り道とか脇道に思える要素も、ぜんぶが緩く作品のテーマやモチーフに絡んでいて、お話を前に進める機能を担っていて無駄がない。お話そのものの面白さももちろんですが、「2万字小説かくあるべし」という感じで、参考として他の参加者さんにも読んでもらいたいと思える作品でした。

 

 

 

双葉屋ほいる「鮎子ちゃんとながいともだち」

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 こちらもたぶん初参加のご新規さんですよね? 今回はなんだか新規勢の強さが目立ちます。古参のモノホン勢も負けずに頑張ってほしい。肩の力を抜いて、ちょっとしたものを読みたい人向けの、わははと気楽に読めるフレンドリーな作品です。

 

毛の一本一本が生きてるようなハリとツヤに! って書いてあったっけ。生きてるみたいな、っていうか一本一本生き始めちゃったじゃん。

 

 素早いロケットスタートから、そのままの勢いでポンポンポンと軽快にテンポよく読めて、ほどほどに笑いがありつつ各話の最後に毎回ちゃんと引きがあって、事件と爽快な解決とちょっとした伏線の収束と友情もあって、ボリュームに対してのまとまり感が非常によく、意外とやっていることのレベルが高い作品です。web小説に求められる要素が過不足なく盛り込まれているので、これも、これからためしに小説を書いてみようと思っている人には参考にしてもらいたい良作です。
 

 


吉野茉莉 「私たちは、何に怯えているのか?」

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 こちらもご新規さん。創作系の中でもひとつの巨大ジャンルである厨二病要素昇天ペガサス盛り! みたいな系統の最終進化版みたいな作品です。みんな、わりと好きだよね。死。ポエティックな描写がキレてるなぁと思ったらこの人もプロじゃないですか。いったいどうなっているんだモトンホホ大賞。KUSO創作勢、めっちゃ頑張れ。

 

「彼女は、そうです。微笑んでいました」

 

 ちょっと昔の閉鎖的なミッションスクールてきな、陰鬱な空気と死の気配とレズ。小説としては始まって終わるっていう感じで、中身のない完璧な額縁という趣なんですが、あとは中身(事件)だけちゃんと入れてしまえば完成なので、仮に改修するとしても、面倒なだけで、作業はむしろ簡単な部類でしょう。中身って意外となんでもいいんです。おそらく、書きたい雰囲気が先にあって、書きたいものをもう書いちゃったから満足したのかな? 今回のモモモ大賞にも、死が好きそうな厨二病要素昇天ペガサス盛り勢がわりと多いんですけれど、そういった人たちにはものすごく参考になると思います。ポエティックな描写力でコーナーで差をつけろ!

 

 


 以上、5作品。とりあえず中間報告としてピックアップしてみました。

 

 通りすがりのROMの人や、もう自分の作品を出しちゃって他の参加者の作品をなにか読んでみよ~って人は、まずはこのへんを読んでもらえば満足度が高いと思いますし、まだこれから書いてブチ込んでやるぜ! という人は、このへんの作品を打倒するつもりでやっていって頂ければと思います。見ての通り、今回めちゃくちゃレベル高いです。がんばれKUSO創作勢。

 

 それでは、締め切りの9/9まで、後半戦も引き続きやっていきましょ~~!

 

 

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本山らのPresents 第八回本山川小説大賞 概要

 

 お前のケツに火をつける。みなさんお待ちかね、伝統と格式のKUSO創作甲子園、本山川小説大賞の時期がやってまいりました。 本物川? いえ、知らない子ですね……。

 

 ガチ創作勢もプロの商業作家も小説なんか生まれてこのかた一度も書いたことがないという完全な素人も、小説を得物にウキウキ元気に同じ土俵でボコスカと殴り合う大乱闘創作スマッシュブラザーズだよ。

 

審査員

 本山川小説大賞ではすべての応募作品に対して、三名の闇の評議員による講評がつきます。また、闇の評議員の合議により、大賞および金賞各一本、銀賞二本、そして本山らの賞一本、その他ノリ次第で特別賞などを選出します。今回の闇の評議員は以下の三名です。


・謎の概念(闇の評議会議長):「n番線になにかくる」みたいなやつ、発売中!
・謎の狐娘(Vtuber):第二回V-1 ナントカ賞受賞!
・謎のサブカルクソ眼鏡(少女小説家):「眠り王子と幻書のアレ」「年刊日本nn傑作選」とかいろいろ発売中!


副賞 

 今回はなにが「本山らのPresents」なのかと言うと、副賞として「本山らのの朗読配信」がつきます。(ワーパチパチドンドンヒューヒュー!)

 

・大賞:本山らのによる朗読配信

    eryuによる表紙イラスト

    (大賞は闇の評議員三名の合議で一本選出します)

 

・本山らの賞:本山らのによる朗読配信

       (こちらは本山らのが独断で一本選出します)

 
・その他特別賞:有智子賞、あいこ賞、ゴム子賞など。ノリ次第でわりと簡単に増えます。長髪イケメンを出したりキラキラ少女漫画脳だったり鬱でエロっぽいのを書いたりすると特定の賞が狙いやすいようです。

 


レギュレーション

 

 今回の大会レギュレーションは以下のとおりです。

 

新規書き下ろし限定

 これは本山川小説大賞開催の目的が進捗ケツバットにあるからです。新作を書くということに意義があるので過去作の投稿はダメです。今から書いてください。今すぐ書き始めてください。

 

文字数は1万字以上、2万字以下

 あまり少ないと進捗ケツバットの意義がないし、かといって30万字は大変なので、このくらいがよろしいのでは? というアレです。おのれガンキャリバー。文字数はカクヨムのカウントに準拠します。

 

【重要】!!!!! 今回は女性一人称記述縛りです !!!!!

 本山らのPresentsということで、今回は朗読が前提となっていますので、女性一人称がいいな~ってことみたいです。はい、多少は縛りがあったほうがゲームもテクニカルになって楽しいですね?

 

!!!追記!!!

投稿はひとりにつき2作品までに限ります

 読むのも講評つけるのもリソースを消費しますので……。KUSOはKUSOでも自分で「これこそは!」と思うKUSOの中のKUSOを厳選して投稿してください。よろしくお願いします。

 

 

参加方法

「1万字以上、2万字以下」「女性一人称記述」の小説を今から新たに書き下ろしてカクヨムに投稿し、「自主企画」の項で「本山らのPresents 第八回本山川小説大賞」を選択してください。

 

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期間

 なう~9/9(日)深夜0時

 

結果発表

 締め切り後、なるべく早く。(平均的に締め切りから一週間程度で発表してますが、いろいろな塩梅次第なので保証するものではありません)

 


 初見のかたは以下のリンクを参考に過去の大賞の雰囲気を把握してください。基本的にはKUSOとKUSOのぬるぬるパンツレスリングです。

 

kinky12x08.hatenablog.com

 


 それではスタート~。

ロッキン神経痛 Presents 第七回 本物川小説大賞 大賞は不死身バンシィさんの「幻獣レース クリプテッド・スタリオン 第100回アルバトゥルス王国杯」に決定!

 

 

 平成29年11月中旬からクリスマスイブにかけて開催されました第七回本物川小説大賞は、選考の結果、大賞一本、金賞一本、銀賞二本、特別賞として有智子賞一本、あいこ賞一本、ゴム子賞一本が以下のように決定しましたので報告いたします。

 

大賞 不死身バンシィ 「幻獣レース クリプテッド・スタリオン 第100回アルバトゥルス王国杯」

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twitter.com

 

受賞者のコメント

 
えー、現在の心境を包み隠さず申し上げますと、「ついにやったぜ」という達成感と「本当に僕でいいのか」という困惑がごちゃ混ぜになっていて、一言にまとめると「マジで?」って感じです。本物川大賞もこれで七度目で、第一回から参加している身としては感無量です。思い返せばあの第一回本物川大賞は良くも悪くも本当にハチャメチャで「ゴリラ放し飼い動物園」みたいな様相を呈していました。しかしそこから回を重ねる毎に平均レベルが上っていき、常連参加者から商業デビュー者まで出て、その結果プロの方がプロを投げ込んでくるほどのイベントに成長しました。ゴリラは未だに放し飼いのままですが。そういうプロとベテランゴリラがハイクオリティ作品をどんどこぶん投げてくる場所で大賞を取れたのは本当に嬉しいし、ここまで続けていて良かったと心の底から思います。ありがとうございました!

 

 大賞を受賞した不死身バンシィさんには、副賞としてeryuさん画の表紙イラストが贈呈されます。好きに使ってもらっていいので勝手に出版してください。(検閲済) こちらは本大賞とはなんら関係のないなんらかのイラストです。かっこいいですね。

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金賞 偽教授 「針一筋」

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 金賞を受賞した偽教授さんには、副賞としてソーヤさんのイラストが贈呈されます。好きに使ってもらっていいので勝手に出版してください。(検閲済) ↓ こちらは本賞とは特に関係ありませんがなんらかのイラストです。かっこいいですね!

 

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銀賞 左安倍虎 「井陘落日賦」

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銀賞 ロッキン神経痛 「このイカれた世界の片隅に」

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有智子賞 こむらさき 「日呂朱音と怪奇な日常」

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あいこ賞 秋永真琴 「森島章子は人を撮らない」

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ゴム子賞 田中非凡 「君は太陽

 

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 というわけで、2017年を締めくくる伝統と格式の素人KUSO創作甲子園、第七回本物川小説大賞、モノホン大賞史上最高レベルの大激戦を制したのは、不死身バンシィさんの「幻獣レース クリプテッド・スタリオン 第100回アルバトゥルス王国杯」でした。おめでとうございます!

 

 

 以下、恒例の闇の評議会三名によるエントリー作 全作品講評、および大賞選考過程のログとなります。

 

 

全作品講評

 

 みなさん、あけましておめでとうございます。素人黒歴史KUSO創作甲子園の看板をかかげて始めた本物川小説大賞も七回目を数えまして、本物川小説大賞からプロ作家が排出されたりプロ作家が平然と参加してきたりと、ここにきて様相が変わってまいりました。まあ素人の看板は下げることになりそうですが、KUSO創作甲子園という本来のコンセプトは見失わないように、今後も矜持を持ってやってまいりたい所存でございます。

 さて、大賞選考のための闇の評議会ですが、今回はまたメンバーを入れ替えまして、謎のしいたけさんと、謎のバリ4さんにご協力いただいております。謎のしいたけさん、謎のバリ4さん、よろしくお願いします。

 謎のしいたけです。よろしくお願いします。

 謎のバリ4です。よろしくお願いします。

 謎のしいたけさんはnn文庫新人賞てきななにかを受賞したプロのラノベ作家てきななにか、謎のバリ4さんもnnインディーズコンテストで受賞して電書デビューを果たした作家さん、議長を務めますわたくし、謎の概念もn番線にアレが来るてきな本などを出している商業作家の端くれということで、肩書きだけ見るとかつてない豪華メンバーになってますね。

 ラノベ、ミステリー、文芸系と、それぞれの作風や趣味も大きく異なる三人による合議で進めてまいりますので、選考においてもある程度の公平性は担保できるものと思います。

 それでは、ひとまずエントリー作品を順番にご紹介していきましょう。

 

@otaku 「烙印」

 一番槍はご新規さんですね。「人工的な天才」というちょっとSFてきな設定の話です。設定に面白味はあるのですが、特に人工的な天才という設定が必要となるような物語上の要請はないように思いました。オチになる事件も「人工的な天才」が存在するゆえのものではなく、普遍的にいつの時代でもありそうな人間の感情なので、現代の大学組織を舞台にしても同じテーマ性の物語は書けそうです。せっかくの設定なので、その設定に固有の物語を取り回すことを意識してほしい。

 約五千字の短編。近未来の短寿命な半人工天才の日常を切り取ったお話。物語は会話主体に比較的淡々と進んである事件が起きた所で終わっています。余韻を残すラストは意図した演出だとは思いますが字数にまだゆとりもありますしそこからもう一転がし欲しかったです。物語の導入としては好きな雰囲気です。

 知能指数を向上させる手術に適正があるか否かで天才と凡人にわけられ、生後三日にして将来的な地位が明確にわけられてしまうという設定のディストピア系SF。内容としてはよくまとまっているものの、あらすじから想定される範囲であるため驚きは少なく、正直なところあまり印象に残らなかったです。イメージしたものをしっかりと書ける技量はお持ちのようですから、既存作品から着想を得て書くのならそこに新たな切り口を加えて、自分ならではの物語を作りあげてください。

 

うさぎやすぽん 「クリームソーダ理論と革命」

 二番手はなんと!(なななんと!!) スニーカー大賞特別賞受賞のうさぎやすぽん先生! ということで、いきなりプロ作家の登場です。死にたがりビバップ好評発売中! みんな買おうね。こんなところでKUSOの投げ合いに参加している場合なんでしょうか? 文字数に対する物語の収まり具合がとても良く、書き慣れているなという感じで、そのへんのバランス感覚はさすがプロ。ある種の成長譚なので、物語の要請として語り部 / 主人公の男の子が終盤まで独りよがりなタイプであるのは必然なんですけれども、ちょっと鼻につきすぎるところがあって、もうちょっと「鼻にはつくんだけれど共感してしまう。応援したくなる」くらいの調整ができると、もっと気持ちよく読めるのかなぁとかは思いました。

  文字通り物理学の天才少年の恋を書いた爽やかな短編。書きたいことが書きたいサイズ感できちんと書けている印象で、うさぎやすぽんさんの実力が伺えます。終わり方も個人的には好きですが、ヒロインが主人公に惹かれる動機にもう少し裏付けというかエピソードがあるとさらにスッキリした読後感が出たかも知れません。困った時の「○○理論」と「✖️✖️粒子」みたいなやり方はSF好きにはニヤリとさせられます。

 クリームソーダから爆弾を作る、というトンデモ科学理論からはじまるラブストーリー。『ぼくはヤクルトのカップで世界を変えることを決意した』という書きだしとそこから展開される主人公の饒舌な語りがとても魅力的で、序盤から物語に引きこまれます。作品全体に漂うシニカルでユーモラスな雰囲気と、中盤から後半にかけて展開されるヒロインとの甘酸っぱいドラマは個人的に好みでした。ラストもクリームソーダさながらに爽やかで読後感がよかったです。ただ「これクリームソーダ爆弾じゃなくても同じような作品を書けるよね?」という印象がぬぐえず、着想は面白いだけにストーリーに活かしきれていないのが残念でした。

 厳しいw 

 読ませる作品を書くというのはプロとしては最低限越えるべきラインで、目標のハードルは「やっぱプロは違うな……」と羨望のまなざしを浴びる、くらいのところにあります。その水準でみるとやや物足りない印象でした。

 まあ、闇の評議会、わりと平然とプロは逆差別する傾向がありますからね。すぽんくん懲りずにまた遊びにきてね!

 

ものほし晴 「木曜日に待ってる」

 ご新規参加のものほし晴さん。ものほし晴さんとは別人なので全然関係ないんですけどcomicoで藤のよう先生の 「せんせいのお人形」 が好評連載中です! みんな読もうね! すぽんくんに引き続き、いったいどうしたことでしょうか。KUSO創作甲子園の概念が乱れます。さて、内容としては最後にどんでん返しするプロットなのですが、アイデアや見せ方に特に斬新なところはなく、まあそれぐらいは思いつくよねって感じで意外性はそこまででもないです。でも、この物語のダイナミズムのエッセンスはそんなところに焦点があるわけではなく、自分を殺した相手のことを「すべて許した。今となっては愚カワイイ。好き」になる、そこの心理なんですね。どんでん返しなんて飾りです。偉い人にはそれが分からんのです。小説の完成度という点ではまだまだ粗は見えますが、自分が物語で描きたいこと、描くべきことにピントが合っている感じで、ストーリーテラーとしてのポテンシャルを感じます。

 叙述トリックの手法は色々ありますが、特に読者の印象に残るのは「やられた!」という感覚が生じた時だと考えます。その為には結末に至るまでに真相を匂わせるヒントの仕込みが有効です。「実はこうだよ」という最後のオチに繋がるヒントの伏線が沢山で大胆であればある程、オチを突き付けられた時の「やられた!」感が増すのですが、それは当然中途バレのリスクと背中合わせで、作者の腕の見せ所です。アイデアや挑戦は良いと思うので、次回同系統の作品にチャレンジする際は、如何にフェアな情報開示をしながら読者を騙すかみたいな面も意識してみてはどうでしょうか。

 『クラスメイトのキッタさんが私(主人公)を殺した』という黒板のイタズラ書きを発見するところからはじまるホラー調のミステリ。『木曜日に待ってる』というタイトルと全体に漂う雰囲気は好みなのですが、物語の軸となる仕掛けがあまりにも安直で、正直なところ冒頭だけで七割から八割くらいの読者がオチを読めてしまうのでは。仕掛けが読まれやすいことを逆に利用して、それをミスリードにしてもう一ひねり。意外なラストでアッと驚かせる……くらいまで考えられると小説として面白くなると思います。

 はい、偉い人には分からんのです。次いきましょう。

 

偽教授 「クロスステッチメトロノーム

 本物川さんの永遠のライバル【要出典】偽教授さんの参戦です。今度は創作にフィールドを移しての再戦ということで、感慨深いものがありますね。本作は小説というよりはプロットに多少肉付けしてもう走らせちゃったみたいなボリューム感。そのぶん疾走感があってグイグイ読めるし、粗さはあるもののところどころでオッと思うような表現も見られて、作者の根本的な筆力の高さが伺えます。それだけに、本気で取り組めばもっと面白くなるのではないかなという欲は出てしまいますね。

 思い切りのいいループもの。この「思い切り」は結構重要で、各所の思い切りの良さが気持ちよく、スルスル読み進めることができます。描写の量や設定の深さ浅さ全体的にお話の設計において良いバランス感覚だと思います。トリックが特殊な小道具頼みなところがやや残念に思いますが、作品のサイズを考えると妥当な線だと思いますし、やや強引な結末も個人的にハッピーエンド好きなのでアリです。調べたら小道具に使われてる弾丸は本当にほぼ無音で勉強になりました。

 クリスマスイブに何者かによって殺された主人公。しかしなぜか前日にループし、パソコンの画面に現れた謎めいた存在から『犯人を見つけて殺せ』と指令を与えられる。ただし巻き戻るたびに五感のうちひとつが削られていくペナルティがつく。失敗するたびに身体的ハンデを抱えてしまう主人公は、はたして死のループを抜けだすことができるのか?あらすじはめちゃくちゃ面白そう。ただ実際の内容はそんなでもない感じでした。セカイ系っぽいヒロインとの関係性や設定面の説明が不十分なためとっつきにくく、タイムリープや巻き戻るたびにハンデがつくとか、そういったギミックが展開にあまり活かされていないのが原因かと思います。思いついたからなんとなく書いて終わりというのではなく、タイムリープものの面白さを研究したうえで、ドラマをどう展開したら面白くなるかを考えつつ書いてみてください。

風祭繍 「畑の呼び声」

 いろいろと説明を差し置いていきなり話し始めるというのはわたしもよく使う手法なんですが、んーと、ちょっと設定を飲み込むのが難しかったというか、不親切かなという印象です。説明をしてないというよりは、説明されればされるほど謎が深まるばかりというか。もうすこしそのへんのバランス調整が必要かなと思います。

 小話の短編集。主題のお話はいいアイデアだとは思います。その他のお話はタイトルがオチだし元ネタを知らない層にはなんのことか分からないので、そこはもうそういうものと割り切ってらっしゃるのだとは思いますが大胆だなと感じます。台風の時の「畑の様子」はハウス栽培の作物や添え木で植わっている作物、また落実する性質の作物で生計を立てている農家さんに取っては死活問題ですし、「田んぼの様子」は持ち回りの水利責任者であったり、隣り合った田が他人の田んぼだった場合に畝が切れると流れ込んだ水で他人の作物をダメにする恐れがある為、見に行かざるを得ない立場の事もあるようです。魔術・錬金術工房の設定は必要だったんでしょうか。

 小説というよりプロットもしくはアイディアの断片に近い内容です。ラヴクラフト系の怪奇小説が好きそうなことは伝わるものの、そのうわべだけをなぞって満足しているような印象を受けました。全体的に及び腰というか、作品の中であえて茶化すことで「いや、本気でやってるんじゃないんですよ」的な逃げ道を用意しているようにも見受けられます。「畑が呼んでいる……」という着想そのものは魅力的なので、厨二病的な恥を捨てて全力で創作に打ちこんでみてください。

 

偽教授 「針一筋」

 今回のモノホン大賞にめっちゃ数をブチ込んできてる偽教授さんですが、その中ではやっぱりこれが一番かな。時代ものだし、それに合わせて文体もかなり堅めなんですけれども、不思議とスルスルと読める。一文が短くて、簡潔で硬質な文を重ねていくスタイルはわたしとは真逆で、そこもまた個人的にはアツい。やや淡白な感じもするラストも、全体の雰囲気とはマッチしていてむしろアリです。ほぼ文句のつけどころはないのですが、せっかく文字数に余裕があるのでもうちょっと書いてほしかった。

 文体の好みはあると思いますが唸るしかない見事な作品。きちんと規定の字数の中で類い稀な天才の物語を書き、主人公が天才であるが故の結末は冷たいようでどこか優しく、なんとも言えない余韻が残ります。個人的に欲を言えば、字数にゆとりもあることですし、後半クライマックスには敵の忍との知恵比べ技比べのバトルなどがあっても良かったかなと感じましたか、作者さんの出したい雰囲気とは相反するのかもしれません。個人的には白戸三平さんの短編集に収録されてそうな、商業レベルの掌編だと思います。

 天賦の才を持つ忍び。その武器はただの針でしかなかった。規格外の腕前を持ちながらも、それがあまりにも特殊な技能であるがゆえに、結局のところ己はなにも成しえないのではないか、という不安と葛藤を抱える主人公。時代小説風の文体で語られる物語は導入こそ古めかしい印象を与えるものの、その中には現代に通じる普遍的なテーマが内包されており、最後に提示される『救い』の美しさにハッとさせられました。どこに出しても恥ずかしくない完成度で、この出来映えであれば思わず唸る読者も多いことでしょう。個人的には大賞候補の一角です。

 

今村弘樹 「適当」

 本気でやってください。こっちは本気でやっています。

 ご本人も「適当」と書いてらっしゃるのですが、その通りだなと感じました。

 残念ながら心血を注いで書いている作品には思えませんでした。どうせ参加するなら本気でやったほうが得るものは多いですよ。

 

ヒロマル 「ぱかぱかさんが通る 〜マジシャン探偵 清水一角〜」

  モノホン大賞常連で、先日BWインディーズコンテストで受賞して電書デビューを果たしたヒロマルさんです。この調子でモノホン大賞からじゃかじゃか作家デビューしろ! ものほし晴さんのところでも少し触れたんですが、わたしは物語における仕掛けやトリックというのはオマケみたいなものだと思っていて、それを使っていかにキャラクターを描くか、というのが物語の本質だと思っているのですが(異論は認める)、その点で言うと本作は仕掛けのほうにばかり目がいってしまっているようなバランスの悪さを感じます。ミステリー小説というのはクイズではないので、問いがあり、答えがあればそれで成立するというものではありません。それを解き明かすまでの過程で語り部と探偵役とで絡みがあったり、衝突や差異があったり、人間的な成長や関係性の変化があったりといった部分こそが本質なので、そこがちょっとおざなりかなという印象を受けました。

 あー。

 ん? どうしたんですか謎のバリ3さん。

 いえ。えっと、実にスタンダードな学園ミステリ。ただそれだけに、どこかで見たような、ミステリのために書いたミステリのような印象は否めません。主役二人の関係性にもう少し焦点を当てるか、あるいは主人公が作中で何か変わる、成長するなどが盛り込めると、もっと血の通った印象深いお話にできると感じます。

  手品を題材にしつつお得意のオカルト要素も盛りこみ、学園ミステリとして手堅くまとめられています。自身の持ち味をフル動員しているため水準こそ満たしているものの、短編スタイルに慣れていないのか若干ごちゃっとした印象です。そのほかにもキャラクターが薄味であったり、トンデモなトリックもパワー不足というように、改善すべき点もまた浮き彫りになったかもしれません。どちらかというとトリック偏重型、逆にいえばキャラクターや人間ドラマに意識が向いていないようなので、今後はそういったところも研究して自分の武器を増やしてください。

 あー、はい。

 主人公にあまり役割が与えられてませんよね。探偵が登場して以降はわりとノリノリで勝手にやってくれるので、わたしだったら彼はもうすこしノリ気でないキャラにして、主人公に「探偵役を事件にコミットさせる」という役割を振るかなぁ。「同好の志に多少のアドバイスをするのはやぶさかではない」みたいな提案は、むしろ彼女のほうからさせる。理論派の探偵と、その探偵からも時に屁理屈で一本取るじゃじゃ馬気質、というのはバディものとしてもバランスが良くなると思います。

 なるほど。

 一見つれない態度を取りながらも、手品仲間ができるのはまんざらでもないみたいなデレが出てくると探偵のキャラももっと立つかも。

 

大澤めぐみ 「清潔なしろい骨」

 やや変則的ですが、基本型は「いつか王子様が」ですね。ただ不遇に耐えていたら、ある日王子様が現れて救われるというシンデレラストーリー。話の筋じたいで奇をてらわなくても、道具立てをちょっとズラすだけで新しい物語はできるわけです。

 世にも奇妙な物語的な展開の独特な雰囲気のお話。淡々と冷たく進むどこか無機的な主人公のお話の中で、死後の遺体の腐敗から生じる温もりがやけに生々しくピントが合ってとても印象に残ったのですが、実はこのシーンは主人公がここからまた無機的な存在になって行くターニングポイントで、お話の構造の設計にセンスを感じます。出来事だけを捉えると酷い目にしかあってない主人公ですが、結末がハッピーエンドに感じられる持って行きかたも巧みだと思いました。

 ネオメフィストポストゼロ年代めぐみ。薄幸の少女の耐えがたい日常が淡々と綴られたあと、一転して凄惨な事件が起こり、救いようのない結末がハッピーエンドとして語られる。作者の得意技でもある『ゲージをためて超必で仕留める』形式の短編で、名のあるプロでもなかなかこのレベルは書けないであろう水準。あえて重箱の隅をつつくなら序盤の展開がやはり冗長気味なので、後半のカタルシスが損なわれない程度に圧縮できるとより完成度があがると思います。本来であれば大賞に推すべき作品ではありますが、主催者みずから受賞となると茶番感がひどいので個人的にはナシです。殿堂入りという枠でも用意して大澤家の神棚にあげとけ。

 

 こむらさき 「Unbreakable~獣の呪いと不死の魔法使い~」

 もう好き。最初のセリフで勝ち確、ただし丸パクり! みたいな超絶卑怯な掴みかたなんですが、所詮は素人KUSO創作大賞なのでこういうのでいいのだ。自分が好きなもの、書きたいものだけを書いているっていう感じで、そのぶんピントの合っていない背景であるとか世界観、設定なんかはふわっとしているんですけれども、そんな粗もぜんぶ吹き飛ばす作者の「俺はこういうのが好きなんだよぉお!!!!」が最高です。今後も、粗を潰すよりは熱量で突き抜けていってほしい作者です。

 細かい技術的なことを言えば世界設定、例えば文明レベルがやや不明瞭な点(社会体制的には中世っぽいけど一般家庭に本が普及してる?)や、用語の使い方が一部独特で(「使い魔」が美少女妖精なのは最初に説明が欲しい)引っかかる点がないではないですが、作者さんが楽しんで書いているのが伝わって来て、その辺は突き抜けてこちらも楽しく読めました。自分の書くキャラクターが好き、そのキャラが巻き起こすシチュエーションが好きって言うのは書き手としては単純に強いな、と感じます。キャラクターを書く、ストーリーを書くは出来ているので、あとは想定した世界設定の掘り下げや自然な状況説明の技術に厚みが出るとすぐワンランクもツーランクもレベルアップする潜在能力を感じました。

 美女と野獣テイストの恋愛ファンタジー。最近だと『魔法使いの嫁』あたりが雰囲気的に近いかと思います。ファンタジーを書くうえで必要な表現力、恋愛ものを書くうえで必要なキャラクターの魅力と関係性の妙、エンタメ小説を書くうえで必要な構成力と、求められている要素をすべて満たしているため、作品の完成度が非常に高いです。とくに後半のどんでん返しが効果的に機能しており、短編ながら読み終わったあとに長編さながらのカタルシスが得られます。正直なところ普通にお金を取れるレベルなので、今後もこういった作品を書いていただけることを期待しています。惜しむらくはオリジナリティに乏しいこと。王道は王道で需要があるのでこのままでもいいのですが、既存の作品と明確に差別化できるような要素があったほうが好みです。たとえば世界観をアラビア風にしてみるとか、単純にそういったガワの部分を変えるだけでもよいので、なにかしらのスパイスを混ぜてみると新鮮な読み味になるかもしれません。

 

偽教授 「 No-Life-No-Smoking」

 ショートショートくらいの規模。たぶん本来的な文体がわりと堅いんだと思うのですが、堅い文体で頓狂なことを書くことで奇妙なおかしみが成立していて良いと思います。すごく笑ったりすごく面白いってやつじゃないんですけど、フフッと笑っちゃうくらいの英国式ジョークみたいなそういう趣。

 世界史における軍事力が力士だったら、という設定で一点突破した掌編。内容としては歴史の教科書のように淡々と相撲による覇権争いの説明が続くので抑揚に欠けるように思います。例えばこの作品がプロローグで、イラク戦争夏場所に参加する一力士の話になるとか、世界大戦の一番を仕切った行司の述懐が始まるとか、一歩先の展開も見て見たかったと思います。

 相撲SF。なぜかカクヨムはスモウネタが多い。架空歴史物めいた要素もあり、オチも風刺が効いていてよかったです。ただ如何せん小品というか、掌編くらいのスケールなのでインパクトに欠けます。ちょっと思いついたから書いてみたという感じなので、ここから物語をふくらませても面白いかもしれません。

 

アリクイ 「EMけんきゅうじょにようこそ!」

 そうそう、こういうのでいいんだよモノホン大賞ってのは。すぽんくんはこれでも読んで正気に戻ってください。ここは肥溜めの底よ。お前それがやりたかっただけやろ! 感が溢れる本作、やりたかったことはやりきったと思うので、きっと本人も悔いはないでしょう。おもしろかったです。

 さる計画によって生まれた天才モンキーたちの覇権争いの物語。クライマックスの必殺技の名前に全てが集約されてる印象です。本賞の性質を考えると、本来これくらいの軽いノリで書かれたお話がもっと並んでもいいかな? という気がします。面白かったです。

 星新一ショートショートめいたシニカルなユーモアと、読者の苦笑いを誘うクソみたいなオチ(褒めてます)の塩梅が絶妙で、これぞ本物川小説というべき内容。真面目に審査するような場ではなかなか評価されにくいとは思いますが、素人創作と割り切ってしまえばこれが正解。実際のところ短編としてよくまとまっています。このタイプの作品は「ワロスwww」くらいの反応が最大の賛辞になるでしょう。というわけでワロスwww

 

くさかべかさく 「あなたの心に直接」

 えっと、なんでしょうか。分かりませんでした。

 イデアは悪くないと思いますが、読ませ方はもう少し整理した方がいいんじゃないかと感じました。笑いのツボは人それぞれなので勿論これが面白い方もいるとは思いますが、バカらしい掛け合いの勢いイコール笑いではない、というのが僕の感覚です。ボケとツッコミがテンポよく連続する、そのこと自体は正だとしても、その内容とテンションが一様ならば緩急のないガナリのようになってしまいます。上げて落とす、ふと冷静になる、全く関係ない話を一度ぶち込むなど、現実の芸人の方々は複雑化のために実に計算された手続きを踏んでらっしゃいます。その上辺だけを真似しても思ったような効果が出ない場合もあるので、もう一度少し冷淡な目で自作を推敲なさってみてはいかがでしょうか。

  はじめて小説を書いた人なのでしょうか。実験的なことをやって終わり、というのではなく、きちんと物語に昇華したものを仕上げてください。身内であれば唐突な一発ギャグでも笑って許してくれるのかもしれませんが、面識のない相手にいきなりカマすとただのコミュ障になってしまいます。出版経験のない参加者がレベルの高い作品を投げてくる中、プロの肩書きを背負っている人間がド底辺のクオリティをぶちこんでくるというのは、なかなかツラいものがあります。

 

偽教授 「デウスエクス少女マキナちゃん」

 偽教授さんの他の作品に比べるとちょっとイマイチでした。着想のユニークネスと、それをでっち上げてしまう基本的な筆力、進捗力は大きな武器ですが、あとは腰を据えてもうひとツイスト入れる根気でしょうか。着想→進捗→ブン投げまでがシームレスに一直線すぎるので、もうひと頑張りお願いします。

 所謂メタ的な展開ですが、小説やシナリオを書く人向けに調整された作品。「デウスエクスマキナ」という用語自体はその語感から割と色んな作品の色んな用語として使われているのを見受けますが、本作ほど原義に忠実は使われ方は初めて見ました。「メアリー・スー」は物書きでもトレッキーでもない一般の方には知名度が少し低いでしょうが、本賞の性格を考えるとアリだと思います。作中作の途絶した小説の内、冒頭のさらっと書いたっぽい時代劇風小説のクオリティが他の二編に比べ頭一つ高く、作者さんの本来のフィールドを垣間見ました。

 エタった小説を供養するための作品というか没のリサイクルというか。表現したいことはなんとなく伝わるものの、作者本人にしか面白さが伝わらなさそうなネタばかりで読んでいてけっこうキツかったです。針一筋がよかっただけに残念。

 

田中非凡 「君は太陽

 好みはいろいろとあるでしょうが、本人が書きたいものをちゃんと書けているという印象を受けます。そういう意味ではすでに完成されているので、あまり言うべきこともないですね。筆力、構成力ともに非常に技量の高い作者です。あとは本人のスタンス次第ですが、ちょっと一般向けを意識するとバッとバズったりするんじゃないでしょうか。

 生き物を殺すことに魅了された中学生とその中学生に魅了された中学生の倒錯した愛の物語。思春期の、生命や死を徒らに強く意識してしまう気持ちが瑞々しく書かれており、事象としては異常な状況が書かれていても、登場人物視点からは自然なこととして読めるように描写されていて技術の高さを感じます。結末は好みが分かれるかも知れませんが、この結末のために書かれたお話だと思うので今の形以外はありえないでしょう。

 狂気の中に美しさを見いだしていくような百合小説。テーマは残酷な少女性、といったところでしょうか。個人的にはまったく共感できなかったものの、作者自身がイメージした物語をしっかりと書きあげられていますし、好きな人はとことん好きだろうな、というのも伝わります。ただもうちょっと緩急をつけるというか、女の子たちのほのぼのとした一面を描いてから、カウンターのようにゾッとする展開にもっていけると、より効果的に作品の魅力を演出できるのではないかと思います。最初から最後まで狂っていると次第に慣れてしまうので、油断しているときに猫の死体とかぶつけてきてほしいところ。

 

豆崎豆太 「うちのゴリラ知りませんか?」

 とにかく冒頭の掴みが強くて良いです。この作者の普段の作風を知っていると、このいい感じの抜け感にはすこし面食らうのではないでしょうか。とりあえずゴリラを出してみる、という創作メソッドがプラスの方向に作用した事例でしょう。今回の事例を受けて、適度な抜け感で次以降の創作にも生かしてもらえたらなと思います。ゴリラを出せば良いということではありませんので、エッセンスを拾ってください。

 最愛のゴリラに掛かった殺人容疑を晴らす為に奮闘する女子高生が主人公のライトなミステリ。ネタに走った出オチ小説と見せかけて事件の捜査自体の描写などはしっかりとした手順と妥当性で書かれていて、その地に足の着いた部分と、「親ゴリラ」「ゴリラテレパシー」などの突飛な用語やクライマックスのフィクションならではの熱い展開との振れ幅が、独特な魅力となっています。レビューにも書かれていましたが、主人公の、作者さんのゴリラ愛は読む側にも伝播し、読み終えた時にゴリラのローラが大好きになっていました。

 さも現代日本では一般的にゴリラを飼育していますよ、という雰囲気で語られるため、うっかりすると納得してしまいそうになりますが、どう考えてもおかしいです。そのうえ大まじめに推理がはじまるので、もしかすると地方によってはゴリラを飼育している学校があるのかな? と思いますが、やはりどう考えてもおかしいのであります。ラストになるとゴリラが普通に喋りはじめるので、まあそういうこともあるのかなという気分になってきて、些細なことはあまり気にならなくなってきます。美咲~!!! じゃねえよ!!!!! 誰かツッコミ入れろや!!!無駄にゴリラのうんちくが散りばめられているのもポイント高いですね。

 

@otaku虚数解の殺人」

 楽屋オチってやつ。うーん、ちょっとあんまり、面白くなかったかな。本作で一番の注目点はタイトルでしょう。虚数解の殺人っタイトルでモルグ街の殺人をモチーフにするというのは使い捨てにするには惜しい着想だと思います。

 小説への取り組み方や書きたい内容は人それぞれで、悪ふざけの方向性も千差万別あっていいのですが、個人的にはこのお話の方向性にはイマイチ馴染めませんでした。最後のメタネタでは落ちてないと思います。

 本格ミステリなのかな? と期待してしまうタイトルですが、冒頭から楽屋ネタで面食らいます。内容もチャットの文面を抜き出しただけの代物で、たいしたオチもなく終わってしまいます。審査する側としては「この作品にはなにかあるのかな」と探しながら読むわけで、とくになんもなかったりすると、単純にがっかりします。読み終わったあと数秒で忘れてしまうようなものを書いて満足してはいけません。どうせ参加するなら、なにか爪痕を残してやろうと考えましょう。

 

平山卓 「ステルス魔法少女ミキ」

 どうやら、これが人生初小説っぽい感じの作者さんなんですが、意外と悪くないです。文体じたいは好き。たぶんまだ気恥ずかしさがあってKUSO創作というのをエクスキューズにしてしまっているところがあるように思うのですが、KUSO創作は生き様だ舐めるんじゃねぇ。一度本気で思い切って本当に自分が書きたい小説を書いてみましょう。ひとつの作品を書ききれるだけのポテンシャルは充分にあると思いました。

 他の小説賞に参加されてる方や、所謂一般文芸的な作風で書いてる方には理解されづらいとは思うのですが、これくらいの奔放で荒削りな作品が「本物川小説賞らしい」という感覚があります。主人公の内観で突っ走るスタイルはどこか見慣れた親近感があります。ただやはり魔法少女というパワーある題材を活かしきれてないように見える点は少し残念なのと、テンション高めの女子中学生の内観なのに難しめの熟語がまあまあ出てくる点はやや気になりました。しかし全体にコミカルな空気感の醸成には成功してると思うので、次回作では読ませることを意識してもう少し時間を掛けて推敲するような書き方にもチャレンジして欲しいです。

 ちょっと変わった能力を持つ魔法少女もの。主人公の語り口が可愛い。本物川大賞の参加作品の中では珍しくラノベテイストで、事件そのものはしょうもないのですが、全体的にほほえましいお話で好印象。なんというかキャラクターの魅力的な描き方を『わかっている』感じで、もしかするとそれなりに書いている人なのかな? と当初は思ったのですが、プロフィールとか見るかぎりではそうでもなさそうな感じですね。素のポテンシャルが高いのかも。クソ創作よりも真っ当なラノベを書いたほうが伸びそうではあります。

 

語彙 「メソポタミアすごい。」

 そうだね×1

 メソポタミアのすごさは伝わりました。

 有名なコピペの改変ですね。次からは小説も書いてみましょう。

 

風祭繍 「Repl(a)y for…」

 畑の呼び声と同じで、まず読者との前提の共有がうまくいってないかなという感じで、正直よく分かりませんでした。

 会話形式と非人間の何かの独白?で構成されたお話なのですが、もう一つ何がやりたいのか伝わって来ません。全体に説明不足じゃないでしょうか。勿論全てを説明しつくす必要はなく、読者の想像に委ねる面があってもいいのですが、分からな過ぎては不親切ですし、不親切な相手の話に笑うほど読者は見ず知らずの作者さんに親切ではありません。

  日記はチラシの裏に書きましょう。それっぽいタイトルをつけて、小説を書いた気にならないでください。

 

ゴム子「女神と色男の狂想曲」

 いつも締め切り直前にRTAで駆け込んでくるゴム子さん、今回はちゃんと締め切りに余裕をもって仕上げてきてくれました。偉いですね。さて、もともと締め切り直前に駆け込んでくるせいで粗が目立つけれども、根本的な筆力は高いのだろうなぁとは思っていたのですが、実際その通りだったみたいです。今回のはかなり良いです。余裕のある進捗と推敲だいじ。話の筋じたいには目新しさは見られませんが、とにかく演奏シーンの筆力、文圧は圧巻です。時間に余裕を持ちさえすれば長編を書ききれる実力はすでに備わっていると思いますので、ぜひとも一度、計画的な執筆を。

 主人公に感情移入しやすいかどうかは読者さんの倫理観に左右される面があるかと思いますがその後の演奏や音楽の描写は貞操観念にうるさい人にも読んで欲しいです。残念ながら僕は音楽関係には疎いですが、それでも読中の心象には主人公によって奏でられるチェロの様子がありありと浮かびました。チェロの精の登場は物語の根幹を成す部分なのでその由来や設定にもう少し取材に基づいた裏付けがあると、物語が更に格調高くなると思います。アイルランドのリャナンシーを想起したのは私だけではないでしょう。主人公とヒロインの劇中の関係性の中で、主人公がきちんと変わってる、という部分も評価したいところ。面白かったです。

 チェロ奏者と楽器に宿った女神が織りなす恋愛ファンタジー。ラブコメ的な要素もありつつ、官能的な描写もありつつで、全体としてみるとややアダルティな内容。シナリオ単位で抜き出すとこれといって目新しい要素はないのですが、演奏パートがとにかくエロティックで、作品全体に独特の雰囲気を与えています。根幹のテーマが『セックスよりもきもちいいこと=演奏』なので、物語の描き方としてはこれで正解だと思います。ただラブコメパートが演奏パートに力負けしています。ライトな雰囲気を出して間口を広げようという狙いもわかりますが、この作品にかぎっては最初から全力でアダルティな方向に振り切ったほうが、持ち味を活かせたのではないかと。

 

ロッキン神経痛 「このイカれた世界の片隅に」

 いえ~いカクヨムコン大賞受賞おめでとう! ロッキン神経痛はモノホン大賞が育てた! 「限界集落オブ・ザ・デッド」絶賛発売中みんな読めよな!! そんなロッキン神経痛が、自分の好きなものをこれでもかとギュウギュウに詰め込んだっていう感じのスーパーハイカロリーな本作、徹底的に足し算の創作で、一般的に推奨されるようなメソッドではないのですが、それでいて破綻させずにラストシーンまで一気に走り抜けるそのギリギリのバランス感覚がすごい。最後の最後で「ここからやっと始まるんだ」みたいな含みのあるラストは個人的に大好きなのでもう最高でした。

 終末に向かいつつある世界の中でダラダラと日常を過ごしたいと願いつつもタガの外れてしまった世界で起きる事件に次々と巻き込まれる高校生二人の物語。冒頭、主人公のモノローグからなる世界観の説明は言葉選びの的確さもあってリアルで、一気に作品世界に引き込まれる感覚があります。そこからの荒唐無稽な出来事の数々という落として上げるお話の構造が、独特なトリップ感を生んでいて、作者さんの試みは成功していると思います。こうしたお話構造全体で意図した演出が意図しただろう効果を上げている作品は評価したいです。

 さすがにプロデビューを果たしただけあり、文章力は群を抜いています。冒頭を読んだだけでセンスがあるのがわかりますし、そのうえでほどよく肩の力も抜けているため、語り口に嫌みがありません。(この二つを両立するのは意外と難しいです)ただ内容としては書きたい場面をつぎはぎにした印象で、全体的に粗さが目立ちます。終末世界で日常系をやるというのがコンセプトで、難しい内容に挑戦していることも承知しているのですけど、ただ勢いに任せて書くのではなく、もうちょっと構成にも意識を向けてください。連続するエピソードに一貫性がないため、読了後の感想が「なんかすごいな」だけで終わってしまいます。すでにそういったハードルは越えている以上、目標とすべきは力任せに殴ることではなく、己の武器を極限まで磨きあげることです。インパクト勝負を続けているだけでは、いずれ淘汰されてしまいます。出版業界というイカれた世界の片隅にいるだけで満足せず、より大きなステージに立つためになにが必要なのかを考えてみましょう。

 

ボンゴレ☆ビガンゴ 「私が将来の夢を見つけるまでの些細な出来事の顛末と親友ができた話」

 うーん、ちょっと毎回ビガンゴ先生には辛辣になってしまいがちなの、好みの問題なのかもしれませんけど、なんていうか、思いついたアイデアをそのままお出ししてきてしまう傾向がありますよね。そこで一度踏みとどまって、もうすこしツイストの余地がないかって煮詰めてほしさがあります。あと、あまり素早いコール&レスポンスの流れの中で力を発揮するタイプではなさそうなので、あまり周囲に惑わされず自分の創作をしたほうがよいかもしれません。後半よりも、むしろ前半のなんてことのない丁寧な描写のほうが好きです。

 後半のトリッキーな展開に目を奪われがちですが、前半から中盤に文章や台詞がしっかり書けていてまともに小説してるからこそ、トリッキーが光っているように感じました。作者さんの書きたい内容が読者の読みたい内容とリンクした時、大きな力を発揮する作風かと思います。読んで行く先で期待を裏切って欲しい気持ちはありますが、多くの読者が期待する裏切り方までを裏切ってしまうと、作品へ込めた力の割に評価の手ごたえが付いてこないような状況もあるかも知れません。地力は見て取れますのでもう少し読者に向き合う勇気が加われば、色々噛み合って上手く回り出す面もあると思います。

 冒頭からスルスルと読めて「お?」と思うものの、最後のオチがいつものビガンコくんで肩すかしを食らいました。コンスタントに書き続けているだけあって文章力は着実に身についているのですが、同時に深く考えて書いていないことも伝わってきていろんな意味で惜しいです。この作品にかぎっていうと「ゴリラでなくても似たような話を書ける」の一言で終わります。流行にのって書くこと自体は悪くないのですが、そうであるのならゴリラである必然性を用意してください。そろそろステップアップしましょう。

 

語彙 「ナイチンゲール 1914型」

 わりと文体に個性があるというか、この簡潔な一文の積み重ねで素早く物語をドライブさせていくのはあまり見ない気がします。自分の個性を分析して武器に高められれば強いかも。作品としては、ちょっと規模も小さいし、もうちょっとかなって感じ。単純に、もう少し長いものを書いてみましょう。

 世にも奇妙な物語的な、戦場の医療アンドロイドのお話。二次大戦の西部戦線の雰囲気に医療アンドロイドを持ち込むのは面白い試みだとは思います。文章も設定も書きたいだろう内容を表現に昇華できているとは思いますが、オチがちょっと弱いかな、という気はしました。

  兵士の回想録の中で語られる、天使のようなアンドロイド。ところが視点が切り替わり、アンドロイド側の独白になると……というブラックSF。アイディア自体は目新しいものではないのですが、とにかく演出が巧いですね。一言で評すならスタイリッシュ。わずか2569文字の短編とは思えない満足度でした。

 

ユリ子 「茜より紅く」

 いきなり不可解な状況を提示して読者を引き込んでいく手腕とか、思春期に特有のねじくれた心理の描写など、非常に高い技量の断片が伺えるのですが、作品全体の完成度ではもう一歩かなという印象。とても好きな作風なので、ぜひ一度、腰を据えてある程度の長さの物語に取り組んでもらえたらなと思います。

 思春期特有の生命や死についての倒錯した興味関心をストレートに書いた作品。ただ、それがストレートに過ぎてもう一捻り欲しいかなという印象です。変わった幽霊のアイデアは面白いですが、人が死ぬそのこと自体をオチとしてインパクトを出すなら文章や展開にもう一工夫あって欲しいところです。

 幽霊ネタを絡めた学園ミステリ。伝統的ともいえる内容。こういう雰囲気の作品が好き、というのは伝わってきますし、イメージしたものを書くこともできているとは思いますが、独創性や新鮮さには欠ける印象です。これは単に物語の展開や軸となるギミックの良し悪しだけの話ではなく、キャラクターの台詞回しであるとか、地の文の描写においても言えることです。目指している作品の完成度をより高めるためには、キャラクターの息づかいであるとか、情景の臨場感が出てくるような描写を研究してみるといいかもしれません。拝読した印象としては、設定の独創性や驚きのあるトリックを考えていくより、表現力や台詞回しを磨いて、今ある持ち味を尖らせていったほうがよくなりそうです。

 

ポージィ 「微レ存」

 やりやがったなてめぇ! という気持ちでいっぱいです。うんやんのスピンオフみたいな作品。前半の流麗な文体が流麗であればあるほどオチのひどさが際立つ作品。そのぶん「ですます調」と「である調」の混在みたいな、文体の統一感でところどころ引っかかりを感じるところはありました。生成りでない文体を選択した場合は普段よりも推敲を慎重にしたほうがいいかもしれません。

 勿体ない! 終盤までの神話っぽいお話好きでした。アスタリスクで嫌な予感はしたんですが。勿体ない……!

 無駄に文章力の高いクソSF。荘厳な世界観からのクソみたいなオチ。読者に苦笑いさせるためだけにひねりだしたであろうことから、ある意味において本物川大賞の理念を体現する作品でもあるかと思います。ただちょっと力技すぎるというか、一発芸による単発攻撃なので、多段ヒットを狙ってくる海千山千のクソ創作マイスターたちに比べるとコンボ数で負けています。

 

田中非凡 「少女主義者」

 ウーン、同じ作者の「君は太陽」に比べるとちょっとイマイチ。描きたいテーマ性みたいなのが垣間見えないこともないのですが、物語としてはちょっと弱いですね。あと、細かいところですが三人称記述とはいえ視点を交替しながら進むので、「男③」において唐突に「玲美」という固有名詞が出てくると驚きます。距離感がバグるというか、男と玲美が既知の間柄であるような印象になってしまう。わたしが見落としているのでなければ男は彼女の名前を知らないはずなので、男のほうに視点が寄り添っている章では男が知らない情報はたとえ三人称記述であっても避けたほうが自然かな。

 えーと……これで終わりでしょうか。物語の冒頭部分としては良く書けていると思いますが、これで終わりなら尻切れトンボと言わざるを得ないです。

  既存作品のうわべをなぞっている感じで、ディティールが浅いですね。ガチのロリコンはもっとヤバいのでフィクションなのにリアルに負けている。いや、そういうテーマの作品じゃないとは思いますけど。

 

ユリ子 「Voodoo murder」

  なにかどこかに仕掛けがありそうな構成だったので何度か読み返してみたのですけれど、正直よく分かりませんでした。これまでいくつか読ませて頂いていて、筆者の中で書きたいモチーフやテーマはある程度固まっているのかなという印象。そして、それを書き上げる筆力はすでに十分に持っていると思います。ぜひ、中編~長編の規模にも取り組んでみてもらいたいです。

 シュールな歌のPVみたいな表現、と捉えたらいいのかな。個人的には起承転結のあるストーリーを読みたかったです。文章や表現はしっかりしていて読み応えがありました。

 ウーン、執拗に語るだけの文章力は充分ですが、斬新な切り口みたいなのには欠けますね。悪趣味なだけなのをインパクトだとか、オリジナリティ、リアリティみたいに勘違いするとあまり良くないです。

 

偽教授 「後宮絵師 」

 かなりゴージャスな文体と世界観で、作風てきにはライトに寄せたものよりもこれぐらいのもののほうがむしろ伸び伸びと書けているのかなという印象。偽教授さんは今回、かなりいろんな方向性で数を出してきてくれていて、どういうことができるのかっていう見本市みたいな感じなんですが、そういう観点で見ると、この後宮絵師、ないし針一筋みたいな方向性できちっと腰を据えた創作を見てみたいかなって思います。ステロタイプになりがちな非凡なキャラクターにも生々しさみたいなのがちゃんとあって、血を通わせるのが上手いですね。

 歴史ものを書く文体というかスタイルが確立されている感があります。架空の帝、架空の後宮だろうとは思いますが、官吏の役職の名前を始め状況説明にぽんぽん出てくる当時の用語の数々が歴史書を読んでいるような説得力を醸し出しています。その知識の厚みには敬意を表したいです。「天才」というテーマを扱うにあたりギラギラした俺様的なキャラクターでなく、どこかのんびりとした浮世離れした天才を選択しそれをきちんと書ききる実力には確かな研鑽の積み重なりを感じます。個人的に読点が多く感じたので、読点だけもう少し吟味して減らして貰えると更に読みやすかったです。

 現代ものだとそんなでもないのに、時代小説系の作品になるとやたら強い偽教授さん。絵画という一芸のみで認められ、天下人と対等の立場で語り合うに至る遊女。傍観者である宦官がなぜ最後に涙を流すのか、その理由をあえて語らないことで作品に深みを与えています。ていうかマジでそっち系の賞に出してみたらええねん。わりと書き手が不足しているのでおすすめですよ。

 

田中非凡 「ゴゴゴリラ」

 わりとワンアイデアでそのまま書ききってしまったという印象でツイスト不足の感じはありますが、ワンアイデアで20000文字完走できる体力は素晴らしいです。書くことじたいは得意なようなので、書きはじめるまでの工程に力を注ぐと良いものができそうですね。

 不条理な世界でゴリラと主人公の交流とその顛末を描いたお話。設定を一旦飲み込めば、筆力に下支えされた「僕」と「ゴリラ」との距離の縮まりが丁寧に書かれていて、気付けばゴリラに愛情を抱く「僕」に感情移入しています。悲しい結末なのはお話の要請上やむを得ない面もあると思いますが、似たような着想ならより難易度の高いハッピーエンドにもチャレンジして欲しいです。

 ゴリラが流行ってるみたいだからなんか書いてみよう……という発想のもと、手癖だけで書いたような短編。コメディなのかシリアスなのか、そのあたりのバランスがよくないためにどう読むべきかわからないうえに、やたらと長いのでけっこうしんどかったです。こういった作品でグロ描写が出てくると普通に引きますし、安直な感じがして苦手です。

 

ポージィ「天才と凡才」

 またやりやがったなこの野郎! またしてもまたしてもうんやんのスピンオフ!! KUSO小説とはそういうことではない……そういうことではないのだ……。記述のしかたが章によって一人称だったり三人称だったりでちょっと統一感がないかな。もちろん、章を切り替えているので問題ないといえば問題ないのですが、あまり文字数があるものでもないので、細かく切り替えるよりはあるていど統一感のある叙述で進めたほうがいい気がします。

 一見すると天才と凡才の非対称な友情物語に見えて、内実では逆転があり実は対等か逆向きに非対称であるというお話。二人の関係性を説明しただけで終わってしまっている印象で、ここからもう一転がしして欲しいです。

 ほぼ私小説。現代における天才の立場と凡才の立場をうまく風刺していて、短編としてのまとまりがあります。オチは内輪ネタすぎてアレでした。

 

偽教授「邪剣」

 キャプションにある通り、あるワンシーンだけを抜き出した習作ですね。ちょっと、他の作品に比べると句読点の打ちかたなどで読みにくかったかな。習作にしても推敲はしたほうがより得られるものが多いと思います。

 巌流島の決闘を武蔵視点で書いた短編。この時代の武蔵が次々と現れる挑戦者に対し奇策を重ねて倒していたことは様々なメディアで指摘されているので有名だとは思いますが、実は佐々木小次郎側も奇剣を用いる怪剣士だった、というアプローチは斬新で面白いです。読点が少し多く感じたので、音読してみて不要な点を整理してはいかがでしょうか。

  これはなんとか針一筋の中に混ぜて一本にしたほうが、より高まったんじゃないでしょうか。数を出すよりは精査してほしいです。

 

木賀触太「昼休みの幽霊」

 事件があって、それを解決するという基本的なミステリーのフォーマットなんですが、ものすごい勢いで要件こなしていくので見知らぬノベルゲーのRTA動画でも見ているようで、正直ポカーンとしてしまいます。ヒロマルさんのところでも言いましたが、ミステリーだからといって謎と解決を用意すればいいわけではなく、その過程でキャラクターを描いてもらいたいわけで、まだちょっと物語にまでは高まっていないかなという印象。これは一般にプロットとか呼ばれるようなものだと思います。単純に、もうちょっと文字数を費やしてみましょう。

 この字数できちんとミステリに挑戦したその意気は買います。ただ動機とトリックが今一つ。お話を書き、完結させるという字書きに取って一番大事な力はすでにあるので、アイデアの推敲、取材、短い文章で的確に言いたいことを言う説明力を意識して書き続けてもらいたいです。

 オーソドックスな学園ミステリ。ただ内容としては薄味でした。一番の問題は事件発覚から解決までが早すぎて、ダイジェスト感があることでしょう。ミステリの魅力は単にトリックや犯人当てを楽しむだけではなく、捜査の過程で容疑者や周囲の状況が二転三転と変化したり、キャラクターの心理を掘り下げることでドラマを生みだすことも含まれます。本物川大賞の二万文字はミステリを書く場合かなり短めの制限です。なのにこの作品は5288文字しかありません。内容を考えればもっと肉付けできたはずです。ドラマを展開させましょう。

 

語彙 「終末は君と二人で図書館で」

 ん~、やりたいことは分からないのではないのですが、まだ「こういう設定を思いつきました」という着想段階で、小説にはなっていないと思います。設定ではなく物語を見せていきましょう。

 世にも奇妙な物語がCMに入る時のアイキャッチのような掌編。書きたい内容は書きたいサイズで書けているようには見受けますが、その書きたい内容にパワー不足を感じます。逆にこの内容で読ませるなら、更に描写やキャラクター、状況の作り込みに工夫した方がより多くの読者に受け入れられやすいと思います。

 一場面だけを切り取ったような掌編。雰囲気はわりと好きなんだけど、断片的すぎるのでもうちょっと物語を膨らませてみては? と思いました。この短さであれば、よほど強烈なビジョンを見せてくれないと印象に残りづらいです。

 

バチカ 「光と影の兄弟」

 冒頭の戦闘シーンの描き方は上手いと思います。ただ、2話で急にいろんなことの説明がバーッと続くので、そこで折角掴んだ読者の心が若干離れちゃうかも。あまり説明的にならないように、なにかしら場面に動きを出しながら必要な情報を紛れ込ませて提示していけると良いかもしれません。

 血の繋がらない兄弟の活躍を描いたラノベらしいラノベ。ステータス振りとしてストーリーの魅力よりはキャラクター重視のお話かと思うので主役二人の描写……見た目の特徴や性格や癖など……をもう少し掘り下げると強みが増すんじゃないでしょうか。作者さんが楽しんで書いている感じが伝わって来て気持ちよく読めました。

 魔物を倒しつつ事件を解決していくタイプの小説で、世界観やキャラクターの描き方が丁寧でよかったです。こういうものが書きたい!という意思が伝わってくるのも好印象。しかし文章面に難があり、ぎこちない一人称や臨場感に欠けるバトルシーンなど、表現したい物語に筆力が追いついていないような印象を受けました。具体的に指摘するとキリがないのですが……例をあげると『あれ、それ、これ』『あの、その』と多用しすぎでわかりづらいです。とくに『あいつ』と書いた直後に『奴』と書いてしまうと、それが同じものを指しているのか、あるいは別のものを指しているのかと、いちいち考えてしまいます。細かいところではありますが、そういったところを改善するだけでも物語のテンポがよくなり、読んだあとの印象も変わってくるかと思います。

 

大澤めぐみ 「賢い犬ジェイク・シュナイダー」

 ジェイク頑張れ。ジェイク、頑張れ。

 良くある感動動物ものかと思いきや斜め前にジャンプする変わった読後感の作品。ゴールデンレトリバー寄りの雑種という設定が巧妙で、「ジェイク」の様々な目撃情報がまざまざと脳裏に再生されます。ジェイクはいずれ地球を飛び出し、時間すら超越して神話の世界すらニヒルな笑みで通り過ぎて行くのだろうな、とこちらの想像の翼をも拡がります。

 鬼スケの中で二作も書いてくる主催者の意地。ただ『清潔なしろい骨』と比べるとだいぶ力を抜いているようで、思いついたアイディアはさらっと仕上げたような感じ。ジェイクの活躍がどんどんエスカレートしていく様子はカモメのジョナサン的で面白いのですが、ラストはいまいち突き抜けられなかった印象。パリダカールラリー走破→グレートレースに参戦だとあまり変化が感じられないので、いっそ宇宙船で火星を目指すとか、それくらいぶっとんだ方向にジェイクを走らせたほうがクソ創作らしかったかもしれません。めぐみ頑張れ。めぐみ、頑張れ。

 

梧桐 彰「てっけん!」

 ご新規さんですね。女子空手部が舞台の日常もの。わりと文字数があるんですけどスルスルと読んでいたら読み終わっていて、読み終わってから「あっ、そんなに文字数あったんだ」っていう感じでした。掛け合いが軽快でとても読みやすい。内容としてはキャプションにあるとおり、本当になにも巻き起こさないので、あ、終わったなみたいな肩透かし感はあります。日常ものというジャンルがあることはわたしも承知してはいるのですが、せっかくなので日常の背後でもう少し規模の大きな出来事も動いてたりするともっと好みです。

 少し足りない空手部員と主将の会話主体に進むお話。会話のセリフやユーモアのセンスが卓越していて、その軽妙さは素直に上手いと思います。日常系だからと諦めてしまわずに彼女たちを主人公とした起伏のあるストーリーも読んで見たかったです。

  空手女子のほのぼの部活もの。真面目に空手をやるというよりは「クマを倒せ!」的なおバカ系のノリで、きらら系四コマの雰囲気に近いかも。基本的に会話劇がメインで、テンポよく進むため読みやすかったです。そこそこ楽しんで読めたものの爆発力はなく、後半になるとギャグも単調になってくるのでもうちょっと工夫が欲しかったです。空手を題材にしているわりに扱いが軽めというか、他の格闘技でも代入できそうなレベルだったのも個人的には大きなマイナス。四コマ漫画なら可愛いイラストの付加価値でカバーできるのですが、小説だとディティール面の浅さはけっこう気になります。特定のものを題材にするなら愛がビンビンに感じられるような作品にしてほしいところ。

 

語彙 「恋人脳」

 うーん、これもまだ着想っていう感じかな。客観的な視点からの記述だけなので、ふ~んってなってしまってあまり没入感がないです。同じネタでも見せ方を工夫すれば小説になるでしょう。

 哲学の分野で度々取り沙汰される「水槽の脳」を題材にした取り返しのつかない嫌がらせのお話。皮肉や残酷さを読み取ればいいのかも知れませんが、淡々とした描写はなんとなくそういったものも想起されづらく、あまり感想の残らない読後感でした。

 これまた一場面だけを切り取ったような掌編。同一の世界観のオムニバスにしたうえで投げてきていたら評価も変わってきたかな、と思います。形式というのは大事。

 

ナハト 「罠にバナナは使わない 」

 話の大筋としては(ハッピーエンドまで含めて)ナチュラルボーンキラーなんですけれど、ミッキーとマロリーはそのようになる必然性みたいなのがそこそこあったのに比べると、彼女たちは特になにもなく軽ーいノリでやっていて、そこがかえって現代的な感じでわたしはよかったです。モチーフになっているバナナがちゃんと回収されるのも、構成として◎。たぶん地力がけっこうあるので中編~長編を書いてみましょう。

 思春期特有の生命と死に対する異常な関心を百合テイストで仕上げたどこかポップな印象のお話。女子高生が大した理由もなく人を殺すお話は良く見かけますが、ブービートラップピタゴラスイッチ的に虐殺する、という点は新しいと感じます。折角なら全部とは言わないまでももう少しその具体的な手順について触れて欲しかったです。

 不幸な偶然の積み重ねを利用した、ピタゴラスイッチ的な暗殺計画。天才であるわたしは見事に全校生徒を殺害したはずだったが、実は一人だけ生き残っていて……という筋書きは独創的で面白かったです。キャラクターもいい具合に狂っていますし、バナナアレルギーの伏線も上手に回収しています。短編としてのまとまりもよく熟れた印象の作品。

 

藤原埼玉 「桃色遊戯ツイスター」

 キョン!AVを撮るわよ! に代表されるエロ同人誌1P導入てきな入りは話が早いですね。書きたかったものを書いたのだろうという感じなので、よろしいのではないでしょうか。

 古き良きエロゲのワンシーンのような作品。個人的には、女性読者視点を潔く切り捨ててエロに全振りした侠気は嫌いではないです。ただやはり需要としてはニッチなジャンルになってしまいますし、一線を超えない主人公の弱腰ぶりも評価の分かれるところでしょう。僕が同じシチュに陥ったら自己処理はトイレでします。

 その情報必要ですか?

 え?

 スケベなおっさんの妄想が炸裂!! 実用的なエロというよりは思わず笑ってしまう感じですね。作者のアホな欲望がビンビンに伝わってきてよかったです。ところどころ残念なセンス(褒めてます)も感じられるので、今後ものびのびと妄想を育んでいってほしいところ。ただし事案だけは発生させないように。しかし女の子に股間を握られて「ふぐりぃぃいっ!!」て叫ぶのほんとバカだな。バカだなあ……。

 

dekai3 「本物山小説大賞殺人事件」

 天地天命に誓って、てんどんは三回まで。これぞKUSO創作という感じでもう大好き。ツッコミ不在でひたすらにボケ倒すてんどん芸。終盤になってようやく語り部が冷静になってきて「ゴリラが多すぎる」とか、控えめなツッコミをしはじめるんですけど時すでに遅し、そしてあえなく規定文字数に到達といったフィニッシュ。なにがすごいって、このテンションを20000字もひたすら維持できるその体力ですよ。書くのって読むのに比べれば圧倒的に体力が必要なので、作者と読者で体力勝負して作者が勝つっていうのは、もうそれだけでもすごいことなのです。

 楽屋ネタからの叙述トリック。不思議な世界観でお話としてはユニークですが、未完というか、プロローグ部分だけを読んだような読後感です。字数制限ギリギリだから仕方ないと言えば仕方ないのですが、やはり起承転結があるお話を期待してしまうので食い足りない感じがします。沢山出てきたゴリラの種類にはゴリラに対する情熱を感じました。

 タイトルの時点で出オチ。お、内輪ネタで笑わせにきてんな? 闇の評議会はそんなに甘くはねえぞ? でもクソすぎて笑った。サブリミナルゴリラというべきか、主人公がモノローグで回想を語る中、ガヤで延々と様々なタイプのゴリラが受賞コメントを述べているため、そっちが気になってまったく話に集中できません。読者の心理をうまくコントロールした手法は見事の一言です。このサブリミナルゴリラだけで大賞級の貫禄があるものの、ラストでなにもなく終わってしまったのがとにかく惜しい。期待値が高かっただけにせめてもう一発くらいパワーのあるクソネタをぶつけてほしかったです。やはり手数が少ないと、歴戦のクソ創作マイスターにはなかなか勝てません。とくに今回はハイレベルなコンテストになっているため、メインのクソネタのほかに隠し球のクソネタが用意できていたら、大賞に推していたと思います。

 

畑の蝸牛 「才能は、使ってこその才能です!」

 えっと、未完でしょうか。ちょっとあっちにいったりこっちにいったりで、まだ話が動き出してもいないという感じで、2万字までの規模ではないかなという印象を受けます。2万字という制限はわりと寄り道をしている余裕はないので一点突破でズドンといきましょう。

 全編一人称で進んで行くお話。笑いのツボや面白いと思うことの方向性は人それぞれなので他の方の捉え方はまた違うと思いますが、個人的には正直全体的に少しくどく感じました。どこがか、と言えば出鼻で「教室がうるさいから放課後応接室にいる主人公」って部分で「うーん?」ってなってしまい、一度そうなるとそこから先は主人公の悪ふざけ思考→セルフツッコミの流れのほとんどをくどく感じました。相性の問題だとは思うのでこの講評はあまり気になさらず、他の方の意見を重視してください。

 他人の才能が見える、という才能をもつ高校生の話。設定の着想こそひねりが効いていて悪くないのですが、残念ながら内容の半分は駄文です。饒舌な語り口でライトノベル的な雰囲気を出そうという意図は伝わるものの、無理をしているのか空回り気味。総じて駄々滑りしています。そのうえ『正直にぶっちゃけて』というように意味が重複している文章があったり、物語の展開がごちゃついていたりと全体的に雑です。クソ創作とはいえ推敲はしましょう。

 

アリクイ 「聖夜なんてクソ喰らえ!」

 ひどいですね(褒め言葉でない)。わりと本文のテンションが高めなのですが、そこに読者を引き込みきれずに本文と読者の温度差というか、距離が開いてしまっているというか、ポカーンとしてしまいます。あとがきのあたりで苦笑いを通り越して頭を抱えました。まったくひどいKUSO創作だと思いますが、まあなんにせよ進捗することじたいは尊いのではないでしょうか。

 ちょっと間抜けた悪の科学者がヒーロー戦隊を敵に回したり味方に付けたりしながら、クリスマスを台無しにしようと奮闘するお話。軽妙な語り口でスルスル読めました。ツッコミどころはないではないですが、物語の力がそれを上回って最後まで読ませてくれます。だからこそ逆に最後の最後がいわゆる「くぅ〜つかコピペ」なのが若干残念です。作者さんの照れ隠しかな? より多くの方にネタとしてきちんと伝わることを祈るばかりです。

 悪の組織視点のヒーローもの。天才科学者の主人公がクリスマスをぶちこわしにする怪人を製作する、という設定そのものはありがちなんですが……まさか『大量のうんこをひねりだす怪人』を作って町を汚染しようとするとは思いませんでした。知能レベルが恐ろしく低い(褒めてます。リアルに想像するとこれほど悪質な嫌がらせがあるかよという謎の納得もあり、まさにクソ創作と呼ぶにふさわしい内容でした。クソだけに。いい歳こいた大人がこんなものを書いてくるというのがもう地獄というか、お仕事でストレスを抱えてるのかな? とか心配になってきます。ほとんど寝てないかお酒が入っているときに読んだらゲラゲラ笑えそうです。

 

綿貫むじな 「兄と僕のことについて」

 第一回からずっと参加してくれている作者さん。文章はかなりこなれてきていて、成長が見えます。継続は力なり。ただ、今回はお話としてちょっと地味ですね。お前の無自覚な邪悪を暴き出す! みたいなところはエモくてアツかったのですが、そこがピークになってしまっていて、それ以降最後まで結局カタルシスがなく、バランスとして頭が重くて尻すぼみなので、あまり良くない。たぶん、語り部がただ出来事に遭遇するだけの観測者になってしまっていて、なんら主体的な行動を起こしていないからではないでしょうか。出来事を受けて、語り部になにかの決断と行動をさせ、人間の変化や成長を描くと高まると思います。

 良くある才凡兄弟の話かと思いきや一捻り半してあって面白く怖く読めました。シーンの切り取りが上手いな、と思わせる描写が幾つかあったのですが、平凡な弟が天才選手の兄の甲子園での活躍を電器店に沢山並ぶテレビで観るシーンは特に印象に残りました。表現したい登場人物の対比を、言葉や台詞でなくシチュエーションで上手に表現できるのは強みだと思います。因果応報で主人公が酷い目に合うお話なのに、どこか淡々としたカラッとした文体が陰惨な感じを軽くしていて読みやすかったです。

 スポーツをやればなんでも活躍できる天才の兄と、凡人であるがゆえに比較され続けた弟。しかし交通事故によって兄が挫折したことで、二人の関係は大きく変わることになる。内容としては兄と弟(天才と凡人)の確執によって発生した復讐劇といったところ。中盤で明かされる弟の隠れた『才能』はなかなか皮肉が効いていてよかったと思います。ただ構成面に少々難があるというか、殴られて意識を失う→場面が変わるという演出を多用したせいで展開が単調になっていたり、物語のラストに仕掛けが用意されていないため、中盤以降になると変化が乏しく淡泊な終わり方になってしまっています。綿貫さんの作品は風景の描写や心の動きについてはよく意識されているものの、シナリオ面がおろそかになりがちです。読者を飽きさせないようなドラマ作りであったり、この作品を読んでよかったと思わせるようなカタルシスの作り方を研究してみてください。

 

いかろす 「何が彼女らに起こったか?」

 いきなり不可解な状況からバーン! とはじまって、つぎつぎと極端でゴージャスな属性のキャラがバーン! バーン! と出てきますが、こうまで飽和すると「そういうもんか」とすんなり受け入れてしまいます。完全に足し算の創作法で、比較的うまくいっている事例じゃないでしょうか。オチの抜け感も、まあこれくらいの規模ならこういう感じかなという納得もあり、嫌いではないです。同じ創作メソッドで長編いけそうですね。

 学園ミステリらしい学園ミステリ、と言ったらいいんでしょうか。ただこれは作者さんも分かってるとは思いますが学園ミステリの型枠をなぞり過ぎかな、とは思います。折角一本お話を書くのだからもっといかろすさんならではの味というか、ほかの学園ミステリに埋もれない何かを説得力ある形で盛り込めるようになると、グッと入賞などに近づきやすくなるんじゃないかと思います。

  書こうとしている内容こそなんとなく伝わるものの、全体的にとっちらかっているため、かなり読みにくかったです。文章そのものを抜きだした場合は問題がないので、説明すべき情報を提示する順番が整理しきれていないのだと思います。作者には全体像がわかっていても、読者はそうではありません。頭の中にあるイメージをどういう順番で、どう表現したらわかりやすく伝わるのかを、考えつつ書いてみてください。ミステリはとくに難しいジャンルですから、他の書きやすいジャンルで慣らして経験値を貯めてから、再挑戦してみるのもいいかもしれません。

 

アイオイ アクト 「W・ダブル」

 三角関係なんですけれども、ある情報を意図的にシールしたまま進行していきます。それゆえ、読む人によって解釈がわかれるだろうという、そういう仕掛けの作品。20000字という制限の中で作中作を盛り込むのはちょっとギチギチかなという感じはします。作中作のところでスピードダウンしてしまう感じがあるし、具体的に描くことで具体的に描かれてしまうという弱点もあるので、作中作のウェイトを絞ってでも本編のほうを厚くしたほうが読み心地はよかったかも。

 某特撮変身ヒーローがストーリー上大事なポジションで扱われていて、それの作品は僕も大好きなので親近感を覚えました。お話には実験的な試みがされていて、作者さんの着想の柔らかさには感心します。あまり具体的すぎると年代が特定できてしまい、物語自体が古く感じるデメリットはありますが、そこは折り込み済みなのでしょう。読む側からすると作中人物のビジュアルを想像しにくいのは読み進めて行く上で作品世界への没入に不便かなと感じました。また作中の演劇シーンが丸々収録されているのは少し冗長かも知れません。僕は元演劇部で、演劇部ネタは好意的に受け止めたいのですが、世の中には「演劇」というジャンル自体に対して受容体を沢山もつ方とそうでない方といます。舞台上の演劇シーンはさらっと触れるか大事なシーンのダイジェストとかの方が、より多くの人に取って読みやすくなるかも知れないな、と感じました。ただ、何となくありふれた杓子定規なお話を書くのではなく、何か新しいものを、今までにない読書体験を、と挑戦的に探って行く姿勢はキャリアを問わず我々物書きに共通して大切なことだと考えるので、その在り方は今後とも大事にしてほしいと思います。

 演劇部を舞台にした青春小説。脚本家の主人公、演出家のヒロイン、監督の先輩……の三角関係と演目の内容がシンクロし、切なくも甘酸っぱいラストに繋がっていきます。この空気感はいいですね。書きたいものをイメージしたように書けていて、確かな実力がうかがえます。オリジナリティやインパクトという面では若干の弱さがあるものの、そっち方面を伸ばしていくよりは地に足ついた作品を書き続けてほしいところ。こういう作風の場合、キャラの可愛さ(今作はやや個性に乏しいです)であるとか、読者の記憶に突き刺さるような心情描写を磨いていくと、さらに強くなると思います。

 

 ボンゴレ☆ビガンゴ 「【短編】蝉の声」

 ビガンゴくんも最後の一行で全てをひっくり返す技をとうとう覚えたか、という感じなんですが、なんていうかこう、そっち方向に発揮したかという感じで非常に神妙な顔になりますね。意図した効果は発揮していると思いますので、成功か失敗で言うと成功なんでしょうけれど、読後感はわりと最悪です。おそらく、作者が意図した通りに。

 ストーリーラインの練り方が優れていると感じました。特に最後のセリフでさくっと心を刺す感じは意地悪であり、巧みでもあります。似たモチーフのお話に比して、主人公視点のモノローグ形式が非常に活きており、またその主人公の辿る事件の顛末のシチュエーションが特異でありながら自然に展開されて行って、作者さんの設計の上手さを感じました。全編に通奏低音のように流れる物哀しい空気感は好きです。

 ……え? これをビガンコくんが書いたの? マジで? というのが率直な感想。ちゃんと考えて書けやお前! と別の作品で講評をつけたのに実はちゃんと考えた作品も出していた事実が判明してわりと困っています。終盤で判明する真相は意外性があり、そのうえ作品のテーマが同時に提示されるため納得度が高いです。ラストの台詞も切れ味があっていいですね。闇オブ闇という感じ。ていうかほんとにこれビガンコくんが書いたの? ぱおーん!とか言いながら? なにそれこわい。

 

こむらさき 「日呂朱音と怪奇な日常」

 あ~、いいですね! 好き! この作者さんにしては珍しい現代が舞台の怪奇もの。やはり文に現代的なセンスがあるタイプなので異世界ものよりは現代ベースのほうがしっくりハマる気がします。今までの作品の中では一番好き。オリジナリティには乏しいですが、そのぶん煩雑な説明などを回避して簡潔に済ませれるし、キャラクター造形も話の運びも一定の水準は超えていて、これはひとつなにかの壁を突破した感じがあります。基本の型に沿って物語を完結させる力は充分に備わっているので、あとは自分なりの個性をもっと強く出していけるとさらによくなるんじゃないでしょうか。今回の話でも多少片りんはありますけど、こむらさきさんは人間の暗部を描くのが本当に上手いので、つまり、胃壁がキュンシリーズとのハイブリッドですよ(ろくろを回す)。連載にも耐える設定なので、アレならこのまま続きを書いていってしまうのもいいんじゃないでしょうか。

 学園ミステリの導入から始まり怪奇ロマンな感じに着地するお話。怪異に対していわゆるチートな能力で圧倒するのではなく、三つの手掛かりがないと倒せない、というのはいいアイデアですね。オバケが出た→倒したという一本道じゃなくて物語に起伏やバリエーションが作れるし、例えばそこにヒロインなど他の人物を絡めて仕事をさせられる。またストレートに見た目がカッコいい主役を登場させているのも有効に働いていると思います。一つだけ、主人公が日常から怪異に踏み込む時、話の信じ方がスムーズ過ぎる気がするので一つ小さな怪異の証拠を挟むと日常から非日常への場面転換がシーンの一つとして活きるかなと思いました。

 冒頭で違和感なく設定が説明されているうえに、物語に引き込むことにも成功しています。こういうスタートが切れる作品はある程度の完成度が保証されるので、安心して読み進めることができました。とはいえ一定のまとまりこそあるものの、どことなく既視感を覚える読み味で期待していたほどの面白さではなかったです。これはこれで需要があるとは思いますが、クセのあるスパイスを混ぜたほうがより完成度の高い作品になるかもしれまん。地力はあると思いますので、今後は個性を磨いてみてはいかがでしょうか。

 

葛城 秋「K/冬の屍体」

 んー、ミステリーっぽいフォーマットではあるんですけれど、謎解きの要素はあまりないですね。強いて言うならフォーカスはワイダニットに合っているとは思うのですが、動機も極端ではあるものの「そうきたか」と思わされるような目新しさがあるわけでもなく、まだちょっとバラけている印象。現代風のガジェットを盛り込みつつ陰惨な事件をミステリーして青春小説として着地させる、という試みは本質的に水と油を混ぜようとしているわけで難易度は高いです。難易度が高いことに挑むなら覚悟を決めて腰を据えてやるしかないし、手に余るならもう少し手をつけられる題材からやっていったほうがいいかも。

 異常連続殺人の顛末をコンパクトにまとめたお話。字数に対してプロットが窮屈だったかな、という印象。殺人は件数を絞って、真相への伏線や犯人の異常さを丁寧に書いた方が一つ上のクオリティを目指せたのではないでしょうか。異常な犯人の書き方は色々な手法がありますが、安易なヒャハハ系に走らずに異常な人間の描写をもう一工夫すると更に印象深いお話になると思います。

 行方不明になったK。彼と関係のあった少女たちは次々と惨殺され、その身体にはKの肉体の一部が埋め込まれている。そして新たに容疑者として浮上するX……。最初のほうはかなり面白そうな雰囲気だったのですが、物語が進むにつれてシナリオが粗くなり、同時に文章も荒れていきます。後半になるとファンタジー設定まで飛びだすので、冒頭の期待値からすると消化不良感が残りました。やはりラストがよくないと評価も上がりづらいです。とはいえ全体的な質感であるとか、読者に興味を引かせるような導入はよかったので、伸びしろはまだまだありそうな印象。数をこなして完成度を上げていってください。

 

 姫百合しふぉん 「ブラックダイアモンド」

 安定のいつものしふぉんくん。ゴージャスで耽美な文体のちからは相変わらずで、非常に筆力の高い作者です。もうちょっと一般ウケも狙ってみては? みたいなことはずっと言っているのですが粛々と進捗し続けているのでたぶん言ってもダメなんでしょう。このままどこまでも突き進んでほしいと思います。

 文章を書く能力が高いのは一目見て分かりましたが、この技法は好みの分かれるところかと思います。食べる量の好みに似て、これくらいガツンとした文面が読み応えがあると感じる方もいれば、ちょっと胃に持たれるなぁと感じる方もいるのでは。それから比喩表現に少し力か入り過ぎかな、と感じたのですが、僕は一話目で主人公がソナタを弾いているのか、音楽を聴きながら絵を描いているのか本気で混乱しました。勿論これは僕の読解力に寄るところもありますが、読んで貰ってこその小説という面もあるので、読み易さを意識して文章や比喩の演出をもう一工夫すると、読み手の敷居は下がり、読み手の幅がグッと広がるかと思います。

 ザ・耽美。詩的であり官能的であり、文字の洪水のような語り口。そこから紡ぎ出される、身を焦がすような愛と憎悪。文体としてはかなりくどいものの、目指そうとしている作品に適した表現手法なのでこれはこれで正解だと思います。とはいえ最後まで同じリズムで進むため、やや単調になっています。だーっと長い文章が続いたあと、短い台詞をぽんと置いて止めるとか、なにかしらの変化がつけられるとなおよいのではないかと思いました。演奏もずっと音が続かせるわけではなく、『無音』の瞬間をアクセントとして使ったりします。そんなふうに行の余白をうまく利用してみると、面白い効果が得られるかもしれません。

 

不動 「先達」

 時代ものですね。歴史に詳しくないし、予備知識なく漫然と読んだので史実に忠実なのかどうなのかとかは分からないんですが、たぶん史実通りなのかな? なので、そんなに派手なことが起こるわけではないんですけど、ちゃんとキャラクターの成長も描いていて、面白かった~! っていう感じじゃないんですけど、読んで良かったなって思うような、そんな佳作です。中盤以降、現代風の言い回しが出てくるのは、わたしみたいな層には読みやすくて良いのですが、小童なみの感想、とかそういうのはどうなんだろう? バランス感覚が重要かも。

 今回講評をさせて頂くにあたり「学園ミステリとは」「天才とは」「笑える話とは」を考えさせられるお話は幾つがありましたが、「ラノベとは」を考えさせられた本格歴史小説にパラメータをほぼ全振りしたお話。所々に現代風の表現も散見されますが、ガチ過ぎて敷居が高いのは否めません。ただ、「俺の生き様を見よ」と言わんばかりの作風は、男気しか感じず、嫌いではないです。変に学園ハーレムとかにぶれずにこのまま突き進んで欲しいです。あ、でも逆に歴史美少女ハーレムものとかを書いて見たら持ち味と需要が噛み合ったりするかも知れないです。

 時代小説風の書きだしではじまったかと思いきや、次第に雲行きがあやしくなり、気がついたらラノベ風に文体が変わっている歴史絵巻。たぶん書いている途中で時代小説風の文体がしんどくなったのか面倒になったのか、とにかく最後までこらえられなかった作者の心情がビンビンに伝わってきます。内容自体はわりと好みだったので、ラノベ調の文体でないと速度が出ないなら改稿してそっちに統一するか、あるいは時代小説風とラノベ風の文体が入れ替わる前提で(そういった演出が活きてくるような)仕掛けを作ってみると面白いかもしれません。

 

warst 「木梨雄介はオカルトを信じない」

 ミステリーの皮を被せたラブコメ。トリックなんて飾りです! ってつねづねわたしが言っているのはこういうことですよヒロマルくん。人が死なない、いわゆるコージーミステリーで、解き明かされる謎じたいは「ああ~、そういうのあるある~」って拍子抜けしてしまうようなチープさなんですが、そこは主題ではないので、むしろ「ああ~、そういうのあるある~」であるほうが良いわけです。一話完結じゃなくて、複数話を使って徐々にもどかしい関係性を進展させていってほしいですね。

 ちょっとしたオカルティックな謎とその解明に絡めた実は割とストレートなラブコメ。主人公の合理主義者の朴念仁視点で物語は進んで行きますが、そんな彼に読者がヤキモキするという構造は視点人物の体たらくだけにより濃くヤキモキを感じることができます。個人的にはヒロインの描写にもう少し力を入れて、読者がよりヒロインを好きになれるとヤキモキの濃さも結末の痛快さも際立つかな、と感じました。

 オカルトを否定するためにオカルト研究部に所属している、というヒネくれた主人公の日常系ミステリ。ガチの怪奇現象もしくは事件解明系ではなく、実際にありそうなちょっとした不思議を解決していくタイプの作品。謎の規模や仕掛けは概ねスケールが小さめで、高校生の男女がわいわい探偵ごっこをしているような感じでニヤニヤできます。とくに相手役の女の子が魅力的で、かなりあざとい感じで主人公に好き好きアピールをしてきます。乾ききったおじさんの心と股間に響きました(最低の感想) Warstさんは女の子というか可愛い生きものを書くのが巧いので、今後もこんな感じでほんわかするような物語を書いていくとよいのではないでしょうか。

 

ひどく背徳的ななにか 「弑するニンフォマニア

 堅めの文体ですが読みやすく、文じたいがかなり上手いです。極端な属性を与えられているにも関わらず、人物にも生々しさがあって、ここも上手い。津村は悪の教典の蓮見を連想させる真性のサイコパスで、こういうキャラは安っぽさが垣間見えると一気に台無しなので扱いが難しいんですが、成功していると言えるでしょう。単純に、紙幅の都合でダイジェスト感があるので、中編~長編として再構成してみてもいいと思います。

 倒錯したヒロインと倒錯した同級生が犯す殺人の物語。主人公に変わった身体的特徴を持たせるのは勇気ある決断だと思いますが、この作品ではそれは成功していると思います。個人的にはどの人物にも感情移入し辛く、お話全体としても後味の悪さを感じましたが、そのあたりは作者さんの計算通りかと思います。文章も人物造形も上手なので、もう少し明るいモチーフの作品も読んでみたいです。

 男に触られただけで性的興奮を覚えてしまう女子高生。彼女はクラスメイトのサイコパスレイプ野郎に父親殺しの計画をもちかける。ニンフォマニアのわたしとゲスの極みボーイのおれの一人称が交互に入れ替わり、強姦、自殺、虐待、近親相姦と、闇系のイベントをこれでもかと見せつけつつ、意外性のあるラストを迎えます。このタイプの小説はいわゆるファッション感というか、『俺こういうの好きなんだぜえ狂ってるやろ、お?』みたいなドヤ顔と思慮の浅さが見え隠れして辟易することが多いのですが、この作品は地に足ついた闇系でよかったと思います。ただラストで描かれるサイコパス津村の動機であるとか、娘に暴行を働く父親のキャラクターはややベタな印象を受けました。読者を本気でゾッとさせる異質感というか、こいつマジでヤバいな……と感じさせるくらいの狂気を描ければなおよかったと思います。

 

海野ハル 「【新】わくわく☆ドリームランド R-15」

 手間の掛かったKUSO創作ですね。すべての漢字とカタカナに振られているルビ、唐突にブチ込まれるアスキーアート、登場キャラがすべてゲスな上に人間関係もドロドロという、もう本当にひどいKUSO創作です。この場合、KUSO創作とは褒め言葉です。最後まで苦笑いのまま駆け抜けました。なによりもこのテンションを最後までやりきった体力が素晴らしい。よくできました、偉いね~。

 一見するとネタに走ったおふざけ小説ですが、その実ミステリの作法をきちんと踏まえたおふざけ小説。作中の推理が進む中で容疑者が二転三転する展開のテンポの良さは気持ちよかったですし、作者さんのお話の設計の確かさが見て取れます。小説に書かされているのではなく、書きたい小説を計画通りきちんと書けている、パフォーマンスに再現性のある実力を感じました。

  あ、そうそう。再現性というのはプロを目指すなら重要な要素ですね。ノリでやっているように見せかけて、実はちゃんとプロトコルがある。

 児童文学風の文体で猟奇ミステリを書く、というクソみたいな発想で書かれた短編。ロケットスタートは切れたかなという感じはあるものの、後半はややごちゃっとしてしまった感じ。インパクトを重視する場合、シナリオはもうちょいシンプルにしたほうが面白くなったかも。評判をみるにクソめんどくさいルビ振りをやっただけの効果は得られたようですが、本物川大賞の上位に来そうな作品と比べるとスピード感で負けています。こういうものを計算で書いていると、思い切りよくぶっこまれるナチュラルクソ小説に勝てません。

 海野先生は根本的に生真面目だからね。

 テクニカルであるぶん、オミットされてしまうスピード感をどうカバーしていくか。それが今後の課題だと思います。 

 

5Aさん 「粗チン童貞と変態処女だけが世界を救う術を知る。」

 ひどいタイトルですね。しかし、非常にラノベてきなアプローチで、ラノベてきに上手に仕上がっていて、なんていうか意外に悪くないんですよ。文も詰まるところはないし、小まめにクスクス笑えるし、なんだかんだで最後まで一気に読んじゃったしで、たぶん普通に上手いのだと思います。でも、なにしろ話が話なので素直に褒めづらくて苦笑いするしかないみたいな。KUSO創作のお手本のようなKUSO創作でした。

 今回の並み居る実力派の作品の中で、「俺のラノベ」のど真ん中に投球している数少ない作品と感じました。エロ要素、バカバカし目の設定、そして秒速で出てくるメインヒロイン。個人的な物差しですが実にラノベらしいラノベとして書けていると思います。実はこれって結構重要なんじゃないかと僕は思っていて。テーマやお題に対して裏を搔こう裏を搔こうとする人もいますが発注に対して正しい出力ができる、と言うのは商業を意識するなら必要な能力だと考えるからです。勿論それだけじゃなく、正しい発注内容で出力した上でプラスアルファは必要ですが。下ネタ寄りですが変にやらしくなくて爽やかに読めたのは作者さんの持ち味だと思うので、今後もこの方向性を大切に頑張ってください。

 ザ・クソラノベ。クラスメイトの美少女に「ちんこみせろ」と強要される主人公。実は主人公のちんこは約束されし勝利のちんこ『えくすカリバー』であり、世界を滅ぼす存在である悪魔を倒すために伝説のちんこパワーを覚醒させなくてならなかったのだ……というクソみたいな内容。ただ悔しいことにあまりにもくだらなさすぎて笑ってしまうというか、語り口の軽妙さであったり、主人公どころかその母親までナチュラルに狂っていたりで、ただ「クソラノベを書いてみたよわあい」だけでは終わらない芯の通ったキマりかたをしています。正月になって病院が閉まる前に念のため頭の検査をしてみることをおすすめしますが、これはこれで本物川大賞らしい作品といえるでしょう。おじさんは好きだよ、こういうの。

 
左安倍虎 「井陘落日賦 」

 左安倍虎さんの得意な中国の歴史ものですね。安定して上手い作者です。こういうものとして読んだ場合、もう完成されているので特に言うべきことはないので、あとは本人の意向として、どこを主戦場にしていくのかとか、そういう話になってくると思います。ラノベ領域に食い込んでいこうとするなら調整が必要でしょうけれど、広義の文筆業はむしろ「安定して上手い」が求められる領域のほうが広いと思うので、うまく入り口を見つけてマッチングさえ上手くいけば、このままでも商業のお仕事ができそうです。

 ラノベの軍師・策士は上から目線のすごい知略を説明してる口調で、ひどく安易な伏兵や設置型の罠の説明をしたりするイメージがありますが、この作品の軍略家達の戦いは鎬を削る「人の心」の読み合いであり、お話を読み終えた後に一つ賢くなったような得したような読後感があります。作中キャラクターも実在の武人をモデルにしつつアレンジが施されていて、結末も血みどろの合戦の時代のお話の割には驚くほど優しく牧歌的で、作者さんの人柄が滲んでいるように感じます。個人的にはタイトルやあらすじ……勿論お話の内容に対し的確なタイトルやあらすじなのですが……で損をしてるかなと言う気が。難しい漢字の羅列になるのは仕方ないにしてももう少し敷居が低い感じにできたらな、みたいな。こう言う良くできたお話を今の若い方たちにもっと読んで貰いたいので、その辺りを一工夫すると急にPVが回り出したりしないかな。面白かったしサイズの中で良く書けているいいお話を読ませて頂きました。

 かの有名な『背水の陣』の、裏話的なエピソードを描いた短編。持ち前の知識を存分に発揮した本格派の時代小説でありながら、キャラクターの台詞回しにケレン味があり、万人に通じる面白さを備えています。なんでこんな格調高い作品がクソ創作コンテストに……という困惑すら抱く出来で、明らかにハイレベルであることは伝わるものの、こちらの勉強不足ゆえに評価しきれない側面もあり、審査する側としては心苦しいところ。やはりこの手の歴史絵巻のほうが持ち味が活かせると思うので、なんかそっち系の賞(よく知らない)にチャレンジしてみてもいいのではないでしょうか。

 
クロロニー 「人の嫌い方」

 この人もご新規さんですが、上手いですね。そして、新規の上手い勢がのきなみこの手の暗い話を書いてくるので、なにか共通の傾向でもあるのではないかといった別の興味が立ち上がってきます。主人公の体質は普通なら無関係の事件に主人公がコミットしていく理由付けなどに使われそうですが、これは逆で主人公の性質ゆえに成立した事件になってますし、「人を嫌う」というのが一種の成長として描かれているあたりもツイストがきいていて良いですね。これも中編~長編の規模で読みたいかな。

 連鎖する悪意が引き起こす不気味な出来事とそれが原因の殺人のお話。冷静に考えるとツッコミ所はあるはずなのに、文章や読ませ方の巧みさで「実際にありそうだな」と思わせる作者さんの技量には唸ります。個人的に僕自身が作中で「悪意」を扱うのが苦手で、そこが上手なのは羨ましいです。作中の出来事を通じて主人公に変化が起きた上での痛烈なラストにプロット段階のセンスの良さを感じます。後味悪い題材を扱いながら小気味良い文章と展開のテンポで気持ち良く読めました。

 人の死に引き寄せられる兄と、表情を失った妹。登校拒否、妊娠、赤子の遺棄、惨殺死体と、けっこう容赦のない展開。ダークな雰囲気をうまく表現していますし、全体的な完成度は高かったと思います。妹の話とクラスメイトの話が最後に交わるのですが、その繋ぎ方がけっこう強引な感じ。物語として破綻している、というレベルではないので文庫本一冊程度であれば気にならないかもしれませんが、短編の場合はクッションとなるエピソードがないため違和感が出てしまいます。二万字程度の分量であれば、どちらかのエピソードに絞ったほうがスマートだったかも。

 
有智子 「北斎の梯子」

 すっごい好き。なんだけど、わたしのこの評価は初見の人にはあまり共有されないかな? 種明かしをすると、実はこれ有智子ちゃんが書いてるメディエーターってシリーズの外伝に相当してるんですね。森博嗣とか上遠野浩平とかがよくやる、別シリーズと見せかけておいて実はクロスオーバーでした~ってやつなんです。実は加部谷でした~とか、実は練無くんでした~とか、実は睦子おばさんでした~とか。で、そういうのを抜きにしてコレ単品で考えると、ちょっとオチが唐突なのかなぁって感じはします。でもメディエーター読んでる前提だとほんとアレなので読もうね。

 冒頭から情感たっぷりにモノローグが綴られ、失踪した天才画家という謎を軸にした物語に引き込まれます。しかし肝心の真相が明かされる場面になって、唐突にファンタジー設定が出てくるので面食らってしまいました。これは本当にもったいなかったです。プロット単位で抜き出すと意外性もあって悪くないシナリオなのですが、如何せん料理の仕方を間違えた印象。この内容であれば、序盤から「ファンタジー的な要素もあるよ」ということを匂わせるべきです。たとえば主人公が『人には見えないものが見える』力をもっている設定を入れてみるとか、幽霊や怪異を交えた短いエピソードを加えてみるとか、結末にいたるまでの準備を前もって仕込んでおきましょう。そうすればぐっと読者に親切な設計になり、目指そうとした作品により近づくはずです。

 ああ、そう。なんの前提もないとそういう評価になるよね。メディエーターを先に読んでると「境界」という語が出てきた時点で「あっ! あ~~っ!!」ってなるんですけど、初見の人に対してはまったく機能しないので、これ単体で評価すると辛くならざるを得ない。

 最後まで読んで「そうかぁー、そっちかぁー」と真夜中に声を上げてしまいました。まず特筆したいのは作者さん自身の感覚の鋭敏さと、それを的確に言語化できる能力の高さ。それが文章に生き生きとした色彩で描かれていて、なんでもない地の文に感動する自分に気付いて敗北感があります。作中の「天才」の造形や描写も見事で、恐らくですがモデルにした実際の芸術家の方の数人分のエピソードで構成したのかな?とお見受けしました。「それなら誰にでも書けるじゃん」と思ったあなたは是非実施してください。確かな取材に基づいた人物造形を元に描かれたキャラクターの存在感や言動に血が通った感じは、頭で考えただけのそれとはやはり芯の通り方が違って見えます。そのやり方の編集というか匙加減がこの作者さんはとても上手い。だから、だから個人的には最後が。素敵なんですけど、最後の主人公と天才の対話とか分かるんですけど、個人的には最後まで人間ドラマで読ませて欲しかったと感じました。読書量と取材力、そして瑞々しい柔らかな感覚を合わせ持つ作者さんに素直に嫉妬する良作です。

 

Enju 「輝け!光線ガール!」

 前回の大賞では「コナード魔法具店にようこそ」で銀賞をとったEnjuさん。今回も短く、ライトで、スルスル読める、の三拍子が揃ったチャーミングな規模の物語です。序盤の掴みは最高ですが、中盤以降ひたすら肩透かしの連続なので、もうちょっと変化球もほしかったかな。何気にビームにもちゃんと理由付けがあったりして、このへんのアレをコレしてみたいな設定をうまくかみ合わせるのは上手っぽいので、さらに複雑なプロットにもチャレンジしてみてほしいです。

 お話を書く時には作品ごとに無意識にであれ意識的にであれリアルとエンタメのプライオリティのバランス調整が施されるものだと思うのですが、かなり思い切りエンタメ側にハンドルを切った作品。文章よりも映像……短編アニメなんかになると真価が発揮される作品かなと思いました。変に意外な展開を目指さずに、熱い王道クライマックスでも良かった気がします。後半繰り返し肩透かしされるのは一抹の寂しさがありました。

 胸からビームを撃てる女の子が地球を救うためにがんばる、ほのぼの日常もの。アイディアだけ抜き出すと高確率でスベりそうな雰囲気ですが、読んでみるとけっこう面白かったです。これは単純に作者にユーモアのセンスがあるからでしょう。ただ自分のセンスをうまくコントロールしきれていないというか、計算で笑わせるには今一歩足りていない印象も受けました。この辺りは書き慣れてくれば、自然と技量が上がってくるのではないかと思います。光るものがありそうなので、今後とも深く考えすぎず変なノリを突き詰めてみては。

 
@neora30 「異世界転生実況者」

 ん~、ロケットスタートは素晴らしかったのですが、話を膨らませる前から話をどう畳むのかに気を取られて体力が続かなかったような印象。物語というのは自分で100コントロールするよりも自走させつつギリギリ制動は保つくらいがドライブ感あって最高なので、まずは膨らませられるだけ膨らませてみましょう。

 着眼点はいいと思うんですが、アイデアを作品に昇華するに当たる手続きが充分に出来てないように感じます。米、ルー、牛肉じゃがいもニンジン玉ねぎがどんないい素材でも、生煮えで出されては美味しく頂けないように、アイデアという素材の味が最大限に活きるお話の構成を考えるのが我々物書きの腕の見せ所です。いい素材のパワーで押し切る方も中にはいますが、それは素材自体によっぽどのポテンシャルがないと使えないやり方なので、次回は設定やアイデアの魅せ方、活かし方を意識して書いてみてはどうでしょうか。

 アイディアは面白いのですが、それだけで終わっている印象。SF的な設定についてもどこかで見たような感じ(スピリットサークルあたり?)なので、オチも含めややパンチに欠けます。ユーチューバー的な実況形式を交えてなんかやろう、という心意気はよかったと思います。もう一回か二回お話を転がしてみるか、ラストに斬新な切り口を用意できていれば評価は変わったかもしれません。

 
ラブテスター 「空が帰って来た日」

 冒頭の世界滅亡のシーンは、この筆者が得意とするゴージャスな文体と合致していて非常に良いのですが、残念ながらそこが物語全体のピークになってしまっていて、それ以降、そこを超えるカタルシスがないように思いました。バランスが超絶竜頭蛇尾になってしまっている印象。描写において、花火のシーンが世界滅亡のシーンを超えている必要があるでしょう。また、「花火をあげる」→「空が帰ってくる」は即座にイコールで結ばれるものではなく、そのように考え得るロジックの提示が必要で、それが物語によって十分に成されていないように感じます。「花火をあげる」というミッションに対し、語り部が完全にただの観測者でこれといってコミットしておらず、また過程に障害もなにもないのも印象が薄い原因でしょうか。同じ設定で、行動に制約の多い少年少女を主人公に、空を取り戻すために花火をあげようとする物語だったら、冒険活劇に仕上げることもできたでしょう。

 終末に向かう閉塞した世界で、たった一人子供みたいな理屈の発明品を作る教授とその教え子の主人公のお話。このお話好きなんですけど、タイトルは違う方が良かったかも知れません。このタイトルなら、最後は暗雲を切り裂いて抜けるような青空がパッと広がって欲しかったし、多くの方がどこかでそう期待しながら読み進めるんじゃないでしょうか。想像の中の空が実際の空より美しい、という演出だとは思うのですが、小説という媒体を選んだ時点で劇中の風景は全て読者の想像の賜物になるわけで、素直に青空回復エンドか、花火に焦点を当てたタイトルかで良かったかも知れません。冒頭の神話のような終末描写は言葉選びが巧みでカッコ良かったし、全体に小説の作法にしっかり則っていて読みやすかったです。

 閉塞的な地下世界で生きる少年と、若者に希望を与えたいと願う老人の話。物語全体が一本の筋のようになっていて、すべてはラストの情景に向かって収束していく作りになっています。世界観もよく練られており「こういう設定であるのならこういうふうになるはずだ」というような描写が随所にみられ、物語に臨場感を出すために工夫しようという意識がうかがえました。とくによかったのは物語の鍵となるガジェットの選択でしょう。空への憧れ、閉塞感の打破、未来の希望、という作品テーマをうまく象徴していたと思います。あえて重箱の隅をつつくなら、冒頭の説明はなくてもよかったのではないでしょうか。読者に「ここはこういう世界なんだよ」と最初に提示しておくのは親切ではあるものの、この作品にかぎっては予備知識なしでぽんと放りだしたほうが効果的だった気がします。

 
@scoriac-pleci-tempitor 「バベルの天使」

 んーと、単純に短編のボリュームで収まる話ではないかなという印象。長編のプロットを見せられたような感じです。20000字はアレもコレもやるのには短すぎる制限なので、ちょっと詰め込み過ぎかな。文章を書く力じたいは高そうなので、もうちょっと一点突破型のプロットを組んで、そのぶん丁寧に描写を掘り下げると良いのではないかと思います。

 荒廃した近未来の現実と過去の現実、そして主人公の心象風景の鏡像である所の幻覚がおりなす不思議な雰囲気のお話。なんとなく読んでいて「沙耶の唄」を思い出しました。オチの真相に対するミスリードをもう少し工夫すると更に結末にインパクトが出たかもなと思います。文章自体は安定していて読みやすかったです。

 終末世界を舞台にした学園ミステリ。周囲が汚染され、幻覚作用のある薬を打たなければ死んでしまう環境の中にいてなお、平和だったころに犯した罪に縛られ続けている主人公の姿は哀愁を誘います。シナリオ単位でみると目新しさこそないものの、フォールアウト的な世界観でそれをやったことで不思議な読後感を生んでいます。薬の影響で現実と幻覚の境目が曖昧になっているのがとくによかったです。ただこの雰囲気であれば、物語の鍵となる天使が実在するのか、あるいは主人公が作り出した幻なのか、というところは最後まで語らないほうが情緒はあったと思います。

 

秋永真琴 「森島章子は人を撮らない」

 秋永さんは商業のほうでは主に少女向けを書いておられるのですが、webではもうすこし一般文芸寄りの作風ですね。別の短編「フォトジェニック」ともクロスオーバーしていて、そういうところもニヤっとします。もうわたしは秋永さんの文が好きすぎて小説として妥当に評価できない自信があるんですが、それくらい文じたいの居心地がよくてなんだかボーッと読んでいたくなるんですね。単純な文章力では間違いなくトップレベルでしょう。ただモノホン大賞においては文章の地力よりも、奇想天外な奇襲奇策不意討ち騙し討ちが評価される傾向にあるので、その点では厳しいかな。わりと「短編小説かくあるべし」みたいなフォーミュラにはまっている感じもあって、たぶん染みついた癖のようなものでしょうね、妙にお行儀がよいし、テーマ性もキャラクターの口から台詞として語られてしまっているので、すこしストレート過ぎる気もする。もっとはっちゃけたものも読んでみたいです。

 小説を書くに当たり大事なものは、という議論は掃いて捨てるほどあるわけですが取り分け「目」、世間や人や歴史や、ゼムクリップ一個でも、それらを見る「目」の感覚を蔑ろにする向きはないかと思います。このお話の主役の写真家少女からはその確かな目を持ち、鋭敏な感覚で持ってその見た事物を二次元に焼き付ける天才なわけですが、その才に小説家志望の主人公が嫉妬して打ちのめされるという物語の構造は、我々物書きには実感として真に迫る感覚があります。これは想像ですが、作者さんはこのお話に近い経験を実際になさっているのではないでしょうか。主役の二人をちょっと年の差のある女性二人にしたのも変に恋愛要素をねじ込まなかったのも正解で、すっきりした後味の清涼飲料水のように読み切ることができました。このお話好きです。

 冒頭だけで「ああ、この人はプロだな」とわかる文章力。うだつのあがらない女流小説家がアマチュアカメラマンの女子大生と出会い、若い才能に感化されて前向きに頑張ろうとする、てな感じの内容。若干の百合テイストを交えつつも、表現者として成長できない歯がゆさであるとか、若い才能に追い抜かれていく不安であるとか、プロとして生きるがゆえの苦悩や葛藤が情感たっぷりに描かれています。森島さんのキャラクターが『人当たりがよさそうなわりにけっこうズバズバ言ってくる』女の子なのが同時代性があってよかったです。最近の若い子はほんまこんな感じ。怖い。そのほか、コヅカくんの写真が代わり映えしないところに『表現者として停滞してしまう恐怖』が隠喩されていたりと、細部にいたるまで計算されています。ただ『一定の実力を備えたプロが磨きあげた武器を使って斬りつけてきた』というか、このレベルの人ならこれくらいの水準は当然のように越えてくるだろうなという感じで、思いのほか驚きは大きくありませんでした。今回はこれはこれで楽しませていただきましたが、個人的にはもっとチャレンジブルな作品も書いてほしいです。秋永先生のクソ創作が読みたいよお。大澤めぐみ農場を使って核実験しましょう、核実験。

 

不死身バンシィ 「幻獣レース クリプテッド・スタリオン 第100回アルバトゥルス王国杯」

 最高でした……。もうなんかね、源次郎よかったな、ハナコよかったな、ってなってマジで若干泣きました。わたしももう闇の評議会やって長いですけど、KUSO創作で本当に涙ぐんだのコレがはじめてですよ。タイトルがコミック枠っぽい雰囲気で油断していたところで不意打ちで泣かされると評価にバリバリ加点がつきますね。完全に使い捨てのネタだろうと思ってた源次郎が最後まで持ってくなんて思わないじゃないですか。そんなんでこっこが取り出せるか! っていうのが、本当に封じ込めた魂の奥底からのぼってくる感じで謎に感動的なんですよ。とても良かったです。

 「シネマ競馬」をファンタジー異世界でやる、というアイデアの勝利。実況と解説の二人の軽妙な掛け合いも面白く、特に実況の名調子には作者さんのセンスが光ります。登場キャラクターもどれも突き抜けて個性的で、おふざけネタ小説かと思いきや全ての伏線を回収しての意外な大団円に感動している自分に気付き、リアルで「くっそwwwこんなのでwww」といい意味で思わされてしまいました。こんな瞬間に立ち会えるとは、この仕事をやっていて本当に良かった!

  一言でいえば異世界モンスター競馬実況。モンスターたちが入り乱れてレースを行うという内容は、ファンタジー好きにも広く受け入れられそうですが、本物川大賞の理念であるクソ創作としての完成度も高かったです。ユニコーンケンタウロス、ドラゴン、アースワーム、そして田崎源次郎。クソ創作に慣れたマイスターであれば、ただのおっさんである源治郎が物語の鍵になることは容易に予想できるはずですが……レースの終盤、思いもよらない展開で源次郎は活躍します。予想していたのに、横っ面を思いっきり殴られる感覚。これはなかなか味わえるものではありません。そのうえ源次郎を中心としたドラマは感動的ですらあり、まごうことなくクソ創作であるにもかかわらず、読者の涙を誘います。正直なところ「負けた……」と思いました。それくらい完成度が高かったです。文句なしの大賞候補。

 
大村あたる 「魔女泣かせの魔法」

 第二回本物川小説大賞受賞者。以前から「ユニークで偏執的な愛のかたち」みたいなのを一貫してテーマにしているっぽさがあって、今回のもそのユニークさがあるにはあったんですけれど、正直、それ単品で勝負できるほどの独創性があるというわけではないので、もう少しプラスアルファの加点がほしい。複雑なプロットや大仕掛けなどよりも、細やかな描写に光るところのある作者さんなのですが、今回は単純にあまり時間を掛けられなかったのかなという印象。

 突如不条理に幽霊になってしまった「僕」と変わり者のオカ研の女先輩のお話。ラノベっぽい一捻りラブコメの体で進んでオチがいきなり重かったので、どこでフラグ立て間違えたかな?と思ってしまいました。この感じで進むなら、個人的には甘酸っぱいハッピーエンドでほっこりしたかったです。シチュエーション造形的に脱出ゲームみたいなアプローチでも面白かったかも知れませんね。

 幽霊になった後輩と、黒魔術にハマっている霊感少女『魔女先輩』の話。冒頭から中盤まではファンタジー要素ありの学園ミステリなのかな? と思いながら読んでいたのですが、後半になると物語が急展開し、バッドエンド的なラストが綴られます。しかし唐突感が否めないというか、中盤までの雰囲気と結末がまったくマッチしておらず、別の作品をつなぎ合わせたような印象でした。明るいテイストから一転、バッドエンド……という展開で意外性をもたせたかったのかもしれませんが、よほど丁寧にやらないと読者を裏切るだけで終わってしまいます。

 

myz 「エメラルドギロチン」

 異世界ファンタジーベースなんですけれど、お話の展開のしていきかたはなんとなくミステリーのフォーマットに則っている感じ。それでいて、最後に明かされる真相がそこまで驚くようなものでもないのは、諸々の前提の共有が読者とうまくいっていないからでしょうか。魔法のある世界でミステリーをやるなら、なにができてなにができないなどの諸々のルールの提示をして、まず読者に「不可解だ」と思わせる必要があると思います。

 変わった殺害方法の職業殺し屋魔法使いのお話。主役たる魔法使いがとてもユニークな造形なので、このキャラクターの活躍をもっと見たかったと感じました。具体的には傭兵団か巡視官かどちらかと一当てワンアクションあって欲しかったかな。個性的でありなおかつ魅力的なキャラクターを想起できるのは大切な能力なので、自らの書いたキャラクターに自信を持ってもっと堂々と推して書いていいと思いますよ。

 魔法が存在する世界が舞台のミステリ。たとえるなら異世界必殺仕事人みたいな。硬派かつ堅実な文体で、序盤から終盤にかけての雰囲気はかなりよかったです。ただ肝心のラストに肩すかし感があり、悪い意味で予想を裏切られたような印象です。物語の軸となるトリックを補強する設定が、ネタばらしと同時に出てくるのがいけなかったのだと思います。この展開であれば『この世界には結界が存在する』『魔法のパワーを決めるのは想像力』の二つは前半で入念に語っておかないと読者は置いてけぼりになってしまいます。エピソードの中で伏線となる情報を提示するイメージで、構成を見直してみましょう。それだけで完成度は劇的に上がると思います。

 

 

 大賞選考

 

 さて、じゃあ大賞の選考に移りましょう。いつもどおり、闇の評議員三名がそれぞれ三つの作品を推薦して、そこから先はなんとなく合議で決めていく感じです。

 では、まずわたしから。「幻獣レース クリプテッド・スタリオン 第100回アルバトゥルス王国杯」「君は太陽」「このイカれた世界の片隅に」の三つを推薦します。

 いろいろ迷いましたが「幻獣レース クリプテッド・スタリオン 第100回アルバトゥルス王国杯」「針一筋」「井陘落日賦」で。

 俺は「幻獣レース クリプテッド・スタリオン 第100回アルバトゥルス王国杯」「針一筋」「清潔なしろい骨」。

 オッ!

 これは……。

 大賞は文句なしで「幻獣レース クリプテッド・スタリオン 第100回アルバトゥルス王国杯」に決まりなんじゃないでしょうか!

 まあ、アレ出されたらもうね。

 パワーがあり、設計も巧みで、何より単純に面白かったです。正しく本物川小説大賞らしい作品と言える気がします。

 決して小説書きとしての地力で他のプロ勢に匹敵するってわけではないんですけれど、自分の武器を最大限に活かせる設定、構成、文体を選択してきていて「今あるものでどうにかしよう」の理想形だと思います。

 斬新な切り口のファンタジー、クソ創作、ラノベ(コメディ)、すべての要素を満たしたうえで完成度も高い。ポテンシャル的には冗談抜きで俺ラノ受賞すらあり得る。

 読者の誘導も上手で、如何にも「思いつきのネタ小説ですよ」みたいなノリでスタートしてレースが進むに連れて伏線が張られゴール間際でそれが怒涛のように回収されるという痛快さにはヤラレタ! という感じでした。

 じゃあ第七回本物川小説大賞、大賞は不死身バンシィさんの「幻獣レース クリプテッド・スタリオン 第100回アルバトゥルス王国杯」ということで! おめでとうございます!!

 おめでとう!

 ぱちぱちぱちぱち!!!

 次点は針になるのかな。

 そうですね。二票獲得は針一筋だけかな。じゃあ金賞は針一筋で決まりですね。

 天才に対する執着というか羨望や美学みたいなのが感じられて、テーマをよく描いていた。偽教授さんは現代物だとアレなのに時代小説系になると急に凄くなる。落差がすごい、あとは根気だけ。

 針一筋は逆に、文章書きとしての地力だけで押し込まれた感じありますよね。不死身さんとは対照的w

 コンパクトな分量の中に丁度いい配分で描写とストーリー展開が納まっていて、「天才」の描写の角度もありきたりより一つ上の切り口で、その満たされ方がまた一味にくい演出で、上手いなぁ!という感じでした。

 なにげに後宮絵師も好き。

 後宮絵師もよかったよね。このふたつが抜きんでていて、他はわりと苦笑いなのもあったので、もうこの路線で邁進するのが正解なのでは? とは思いました。

 良かったですね。あの女絵師の浮世離れ感。世話役の役人がただ泣いて終わるラスト。偽教授さんの作者としての知識や表現の貯蓄に厚みを感じました。

 偽教授さんは語りすぎないところに情緒があっていい。逆にクロノステッチだとそういうところが不親切で弱点になってる。

 さて、ここからが難しいんですけど。

 ですねw

  あと銀賞二本を選出しないといけなくて、得票一票は「君は太陽」「このイカれた世界の片隅に」「井陘落日賦」「清潔なしろい骨」かな。

 単純に俺は幻獣と針に並ぶ出来なのがしろい骨しかなかったから選んだ。次点は「空が帰ってきた日」と「Unbreakable~獣の呪いと不死の魔法使い~」と「蝉の声」かな。ビガンゴくんは最後まで選ぼうか迷ったけどしろい骨が邪魔をした。

 実はわたしも次点に針がいて、でもちょっと短いかな? というところで、評点シートで同点の「君は太陽」が抜けてきた。

 「森島章子は人を撮らない」もよかったんですけど。

 プロはマイナス査定からスタートするので、想定される完成度を超えてこないと選ばない。

 文章の地力は間違いなくトップレベルなんですけど、ちょっと喋り過ぎているかなって感じがしました。丁寧すぎるというか、ストレートすぎるみたいな。わたしは小説は伝えるものっていうよりも問うものだと思っていて、そういう意味ではちょっとくらい不親切でもいいんですよね。ポンと読者を放り出すような勇気があってもいいと思う。もちろん、秋永さんの水準なので求めてしまうことで素人が気安く手を出していい領域の話ではないですけど。

 クリームソーダは結構好きなんだけど、プロだからって理由でめっちゃディスってるみたいになる。

 まあ、まだ若いっぽいので、すぽんくんはこれからいろいろなことでヘコみながら逞しく育っていってほしいですね。まだまだ伸びしろに期待。あとはわたしの評点シートだと日呂朱音と怪奇な日常が僅差で次点にいる。

 あれもシリーズものの第一話としては良く書けてましたね。主人公の怪異への順応ぶりだけ気になりましたけど。

 たしかに、オリジナリティはまだいまひとつなんだけど、まずは型どおりのものを書けるってのが最初の一歩なので。しいたけさんは初見だからそうでもないと思うんですけど、こむらさきはもともと創作勢ってわけでもなくて、完全なモノホン大賞育ちなんですよね。わたしは最初から全部見てるので「とうとうここまで書けるようになったか」みたいな感慨もあります。

君は太陽」はなんというか登場人物も小説自体もその……昔の自分を見ているようで……なんかあるじゃないですかこういう時期。ないです?ニッチあるある?

 今回思ったんですけど「清潔なしろい骨」「君は太陽」「K /冬の屍体」「弑するニンフォマニア」「人の嫌い方」「木曜日に待ってる」「茜より朱く」「蝉の声」あたりの、ちょっとダークな作風。はっきりいって激戦区なので、かなり強く個性を主張していかないと、頭ひとつ抜けるのは難しいです。

 わかるー。

 そうなんですよ。倒錯した愛とその先の死は、創作畑ではいつか来た道でー。

 で、そのへんのカテゴリーから一本抜くなら「君は太陽」かなって感じだったんですけど、どっちみちその路線でいくならまだまだそれだけでは戦えませんよというのはありますね。さらなるツイストは必要だと思います。

 陰惨さやグロはインパクトありそうでないから独自の切り口がないと弱い。ビガンゴくんはいい線いってた。足りないのは情緒。

 「蝉」はストーリーテリングが上手でしたね。場面の移りかわりが読んでて楽しかった。

 で、そろそろ本当に銀賞二本を選ばないと。えっと、じゃあ「君は太陽」「このイカれた世界の片隅に」「井陘落日賦」「清潔なしろい骨」から各々一本を選んでもらって、せーの! で言う感じで。

 おk。

 了解です。

 じゃあ、せーの! 「このイカれた世界の片隅に」!

 「井陘落日賦」

 「井陘落日賦」

 おお~! というわけで、銀賞一本は「井陘落日賦」で決まりですね!! おめでとうございます!!

 ぱちぱちぱちぱち!!!

  議長、どんだけロッキン好きなの。

 えーだってわたしは本当にアレはギリギリで成立してる天才的なバランス感覚だと信じてるの。破綻してるっていう人もいるだろうってのは分かるけど、わたしはアレを評価したいの。

 ロッキンさんその辺の匙加減独特ですよね。

 ロッキンは天然の強さみたいなのがあって、型も基礎もなくてめちゃくちゃなのに、読める水準には仕上がっているっていう、それが不思議なんですよ。

 そうそう。自然体でさらっとセオリーにない動きをする。で、最後まで読めちゃう。なんなんでしょうww

 議長は粗さに優しいよね。

 粗を潰すよりは魅力を伸ばす方針。

 俺は粗さをカバーするために弱点を補強せよ、というスタンスなので評価軸が真逆。

 まあ、そのほうが公平な感じがしていいじゃないですか。あ、でもあと一枠だから自動的に銀賞二本目はロッキンで決まりだよ! やったね!

 あ、そうなるのか。

 議長の依怙贔屓の大勝利だ!

 ひどすぎる。

君は太陽」にも奨励賞とかあげたいなぁ。

君は太陽」は同じ方向性でいいと思うけど、さらに頭ふたつ抜けて次は大賞を狙いにきてほしいってことで、また次回がんばってね! 待ってるよ~~!! 

 じゃあそんなわけで! 第七回 本物川小説大賞 大賞は不死身バンシィさんの「幻獣レース クリプテッド・スタリオン 第100回アルバトゥルス王国杯」でした~~!! 闇の評議会これにて撤収! 解散!!

 おつかれさまでした~。

 おつかれさま~。

 

 あ、そうだ!(唐突) 今回の評議員は全員なにかしらの課金方法があるので、ロハで頑張ってくれた闇の評議員になにかおひねりしたいって人は遠慮せずにジャカジャカ課金していってね!!

 ↓↓入り口↓↓

 

 

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【非営利】ロッキン・非営利・神経痛 Presents 第七回 非営利川小説大賞【営利目的ダメ絶対】

 

 お前のケツに非営利目的で火をつける。みなさんお待ちかね、闇の素人KUSO創作甲子園、本物川小説大賞(非営利)をまたまた開催します(思い付きで)(非営利目的で)。

 

 ガチ創作勢も商業作家も小説なんか生まれてこのかた一度も書いたことがないという完全な素人も同じ土俵で小説で殴り合う創作バトルロイヤル(非営利)だよ。

 

審査員

 本物川小説大賞ではすべての応募作品に対して、非営利目的の三名の闇の評議員による講評がつきます。また、闇の評議員の合議により、非営利目的の大賞及び非営利目的の金賞、非営利目的の銀賞二本、その他ノリ次第で非営利目的の特別賞などを選出します。今回の非営利目的の闇の評議員は以下の三名です。

 

 謎の概念(非営利):「n番線に春がくる」みたいななにか、発売中!
 謎の羊(非営利):「nn文庫新人賞」みたいななにか、優秀賞受賞!
 謎のバリ3(非営利):「nnインディーズコンテスト」てきななにか、佳作受賞!

 

 


 初見のかたは以下のリンクを参考に本物川小説大賞(非営利)の雰囲気を把握してください。基本的には非営利目的のうんこ投げ合いパーティーです。

 

kinky12x08.hatenablog.com


 

 

概要

 今回は「スニーカー文庫《俺のラノベ》コンテスト」に(勝手に)(非営利目的で)便乗するかたちで開催しようと思います。レギュレーションが(相対的に言えば)多少複雑になりますので、ちゃんとこのエントリーを読んでしっかりと内容を理解してから非営利目的で参加して下さい。

 

 「スニーカー文庫《俺のラノベ》コンテスト」に関しては以下のリンク先を参照し内容を把握してください。

 

kakuyomu.jp


 

 俺のラノベコンテストは字数制限もなく公開済みの作品でも参加できますが、本物川小説大賞(非営利)としては字数2万字以下の未発表書き下ろし作品に限定させてもらいますので、こちらの三種類のテーマのうちいずれかを満たした2万字以下の作品を新たに書いて非営利目的で応募してください。


 本物川小説大賞(非営利)で三人の非営利目的の闇の評議員に読んでもらって非営利目的の講評をしてもらい、もののついででプロの編集者にも読んでもらってあわよくばなんか受賞してなんか起これみたいな非営利目的のアレです。

 俺のラノベコンテストには勝手に便乗しにいきますので、くれぐれも先方にご迷惑をお掛けすることのないように注意してください。

 

参加方法

1.「スニーカー文庫《俺のラノベ》コンテスト」の三種類のテーマのうちいずれかを満たした2万字以下の非営利目的の新作を書いてください。

2.カクヨムの作品編集画面の「コンテスト」の項で「スニーカー文庫《俺のラノベ》コンテスト」を選択してください。

3.その下の「自主企画」の項で「【非営利】ロッキン・非営利・神経痛 Presents 第七回 非営利川小説大賞【営利目的ダメ絶対】」を選択してください。

4.「学園青春ミステリー」への応募は「編集W」、「天才の話」への応募は「編集O」、「笑える話」への応募は「編集S」とタグ付けしてください。

 

期間

 なう~12/24

 

 

 それでは非営利目的でスタート~~~!!!

 

※諸般の事情により企画ページが吹き飛びましたのでお手数ですが参加者の方は再度「非営利】ロッキン・非営利・神経痛 Presents 第七回 非営利川小説大賞【営利目的ダメ絶対】」への登録をお願いします。

 

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第六回本物川小説大賞 大賞はたかたちひろさんの「明太子プロパガンダ」に決定!

 

 平成28年11月中旬から年末にかけて開催されました第六回本物川小説大賞は、選考の結果、大賞一本、金賞一本、銀賞二本が以下のように決定しましたので報告いたします。

 

大賞 たかたちひろ「明太子プロパガンダ  

 

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kakuyomu.jp

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 受賞者のコメント

 たかたです。たぶん、これがいわゆる明太子パワー、一粒でもピリリと辛いです。ありがとうございましたー!

 

 大賞を受賞したたかたちひろさんには、副賞としてeryuさんのイラストが贈呈されます。好きに使ってもらっていいので勝手に出版してください。

 

 

金賞 ボンゴレ☆ビガンゴ「世界が終わるその夜に」

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銀賞 ポージィ「うんやん」

kakuyomu.jp

 

 

銀賞 enju「コナード魔法具店へようこそ」

 

kakuyomu.jp

 

 

 というわけで、2016年を締めくくる伝統と格式の素人KUSO創作甲子園 第六回本物川小説大賞、地味な大激戦を制したのはたかたちひろさんの「明太子プロパガンダ」でした。おめでとうございます!

 

 

 以下、恒例の闇の評議会三名によるエントリー作 全作品講評、および大賞選考過程のログとなります。

 

 

全作品講評 

 みなさん、あけましておめでとうございます。素人黒歴史KUSO創作甲子園、本物川小説大賞も通算で第六回目となりました。前回は10,000字未満の短編縛りという設定でしたが、やはりちょっと窮屈に感じる方のほうが多いようだったので、今回は上限を20,000字まで拡大しての開催となりました。多少余裕ができたとはいえ、言っても短編の規模ですから、ひとつの主題にギュンとフォーカスして掘り下げていったほうがカチッとした質感に仕上がったのではないかと思います。

 さて、大賞選考のための闇の評議会ですが、今回はまたメンバーを入れ替えまして、謎のゾンビさんと謎のモッフル卿さんにご協力いただいております。おふたりとも、よろしくお願いします。

 謎のゾンビです、よろしくお願いします。

 謎のモッフル卿です、よろしくお願いします。

 議長は引き続き、わたくし謎の概念が務めさせて頂きます。さて、それではひとまずエントリー作品を順にご紹介していきましょう。

 

蒼井奏羅 「ハッピーエンドのそのあとに」

 蒼井奏羅さんはわりと毎回、雰囲気のあるゴシックな印象の文体であることが多いのですが、今回は語り部が子供なだけあって、スルスルとした文章が非常に読みやすくていいですね。形式としては一応ドンデン返し型のプロットで成立しているとは思うのですが、それにしては全部を丁寧に説明してしまっている感じで予想は容易なので、あまりドンデン返しの衝撃というのはないです。ドンデン返しを決めるには説明し過ぎてもダメだし、唐突すぎてもダメで、この塩梅というのはなかなか難しいものです。情報をもう少し絞るか、あるいは一人称でありながら比較的客観性の際立つ叙述になってしまっているので、語り部の主観にもっとダイブして認識自体を歪ませる、信頼できない語り部にするなどの工夫が必要かもしれません。もしくは、読者が容易に予測できることを囮にしてさらなる多段ドンデン返しを仕込む、なども有効かと思います。あとこれは個人的な印象なのですが、蒼井奏羅さんは文体と雰囲気にこそ魅力のある方だと思いますので、変に「お話」や「オチ」を意識せずに自由に書いてしまったほうが逆に良かったりするのではないか、みたいな予測もあります。もうちょっと純文っぽいというか文学っぽいというか、そういう系のも読んでみたいです。

 主人公視点で不安定な子供の感情を描き、怪しいオジサンが読者にとってもヒーローに見えてくる。善悪の価値基準の定まらない子供ならではの揺らぎに着目した作品です。主人公の心情風景の描写が上手く、読者にも社会悪とも言えるオジサンの行為を善であるように感じさせます。ただ、タイトルにもあるように最終話でそんな主人公と同化していた読者の気持ちをひっくり返す場面があるのですが、そこを乱暴に投げてしまった感があり惜しいと感じました。例えばもう一話オジサン視点の話をして、彼にとっての真実はこう、みたいなもう一捻りのどんでん返しがあるとか。もしくは、読者が「しぃ君、それ完全騙されてるよそれ!逃げて~~!」みたいな気持ちになる、ねっとりとしたオジサンの気持ち悪い描写を露骨に入れていくと化けると思います。 

 同じ作者さんのハローグッバイを読んだ後にこちらを読んだんですが、 こちらの方が断然いい。 たしかにオチ自体は、1話を読んだ次点でたぶんそうなるだろうなと思いましたが、そんな事がまったく気にならないのは、やっぱりきっちりラストがあるから。そしてその上で、グロテスクな真実があって、そちらはきっちり隠しているというのが良い。ああ、ハンバーグってそういう、と立ち戻ると、さらに最悪の読後感が味わえる。でも文字数が短いからさらりと読める。これはハローグッバイよりしっかり噛み合った感じがしました。 

 

蒼井奏羅 「ハロー、グッバイ」
 続けて蒼井奏羅さんです。こちらもプロットとしては成立しているのですが、かなり駆け足の印象が否めず、すごい速度であっという間にエンディングまで行ってしまうので喜劇的な印象が強くて、意図としてはたぶん悲劇であるはずのラストもわー思いっきりいいなーみたいな感想になってしまいました。単純に、もうちょっと全体の分量を増やして細部を描写して、読者を語り部にしっかり移入させたほうがいいのかなと思います。入りの数行は毎回すごく雰囲気いいので、課題はその雰囲気を維持しながら長距離を走れる体力と集中力でしょうか。同じプロットでも描写の解像度と文体の鮮やかさだけで魅せていくことは充分に可能なので、次に紹介する百合姫しふぉんさんの文章などはとても参考になるのではないかなと思います。

 同作者の応募作品「ハッピーエンドのそのあとに」と同じく、社会悪とされる人物の内面を被害者の立場から描き、それに読者を同調させていくという仕掛けがされてます。作者の文体は読みやすく、スラスラと筋書きが頭に入ってきます。ただ、書きたい事だけを流れるように並べてしまい、没入感がいまひとつ得られないまま終わってしまう点がもったいないので、加害者と被害者である二人の関係性が深まっていく描写をもっと足すなどして、女装がバレたら人生終わりっていう主人公の焦りの理由をもっと細かく描写すると、加害者が理解してくれた事への彼の幸福感も数倍増しでブワッと伝わってくるはずです。個人的には、今回応募された二つの作品の主人公を同一にして一つの作品にまとめるなどすると、ああもうこれたまんねぇなって感じになると思います。あと女装って良いものですよね(鼻息) 

 6300字で終わりまでもっていったのは素晴らしい。限界までそぎ落とした感じがあって、個人的にはすごく好き。正直、つけた点数以上に他の人達の作品よりよいと思っているんですが、その理由は、やっぱりラストがちゃんと描けている、これが終わりだよと読者に対して提示している(唐突でも)からだと思います。ただし、やっぱりラストの唐突さは否めないというか、もうちょっとエピソードがあってもいい。最終話の前に1話、唐突にさせない仕掛け(伏線?)が500字でも1000字でもあったら、僕は構成にかなり高い点入れてました。

 

 姫百合しふぉん 「星々」
 姫百合しふぉんさんもゴシックで重厚な雰囲気のある文体に定評があります。前回はちょっと捻りの効いた変化球でしたが、今回はまた原点回帰というか、従来通りの横暴な美少年に堕ちていく男の話です。騎士道などではゴシックな文体はそのままに絵的なコメディ要素が異物のように混入していて、なんとも言えない違和感を含んだおかしみがあったのですが、今回はそういった奇妙な異物感などもなくプレーンな美少年小説。賢者と王という設定のため、姫百合しふぉんさんがこれまでしつこいぐらいに描いてきた美が持つ理屈に対する優位性みたいなものをそのまま登場人物が議論するので、メッセージ性がかなり素直に出てきています。分かりやすくはあるのですが、個人的な好みとしては登場人物たちの議論によってそこが語られるよりは、蒐集癖の見せかたのほうが含みがあって好きかなぁ。

 美しくそれでいて流れるように読み進められる不思議な作品でした。賢者の一人称で進む固めの文体プラス作者の卓越した描写力によって一気に物語の世界観に引き込まれます。一見すると何も語られていないに等しいはずの国政に関する部分が、とにかく王によって成り立っているのだという謎の説得力は、作者の描写力のなせる賜物でしょう。一度作品世界に没入すれば、話はもう流れるように美しくも残酷な王によって、真面目な賢者である彼がどこまで変わっていくのか、二人の行く末を想像しつつワクワクしたまま読み進められます。文体と表現の幅の広さだけで既に勝っている作品です。ただ、一つの小説として冷静に見ると構造が単調に感じられたので、彼ら二人の関係の背後にもうワンフックでも仕掛けがあれば、ワンパン失神KOが狙える作品になると思います。 

 賢者の独白で始まるストーリー。自分の仕える王をもとめ出会ったのが凶王だった、戸惑いながらもその凶暴さの魅力から離れることができず、やがて……と言う話。王様のキャラクターは好み。王と賢者のみに肉薄したお話にしている構成もポイント高い。同性愛部分は苦手だけど、生々しい部分は好きな人にはたまらないと思う。文章の長い後半は賢者の独白、心理描写に偏りすぎているきらいがあると思う。個人的に同性愛セックスは苦手だけれど、その辺あと2000字~3000字くらい使って愛し合う部分をきっちり描いて振り切っちゃってもよかったのでは。(この辺はもう好みの世界なので、そうした意図や別の理由があれば申し訳ない)

 

 

大澤めぐみ 「ふわッチュ!」
 「ふわッチュ!」は芳文社まんがタイムオリジナルで連載中の漫画「部屋にマッチョの霊がいます」の1話の1コマ目に登場する架空の主人公の推しアニメです。漫画では作中作として主人公のセリフの中でちょいちょい登場するぐらいなのですが、せっかく絵があるのでどうせならなにか話を書いてみようみたいな企画。瓢箪から駒がどんどん出てくる。

 目に襲いかかる濁流、ぎっしりとした文字の嵐。もはや作者の名刺代わりになったこの作風が、本作でも上手く効いています。読者に考察の隙を与えずに、ダダダダとマシンガンのように脳直で打ち込まれる文字の弾丸。その為、読後に押し寄せる余韻の波の高さは相当なもので、今回も読んでいてブワワッと肌が粟立たされました。是非この技術は積極的に盗んでいきたいですね。人間無理部という、一見変わった部活動に所属する女の子三人。彼女らのふわふわ日常ものかな?という導入部を裏切るように、非日常がすんなり登場する急展開、そして彼女達にとっての日常光景が、テンポよくある意外性に向かってノンストップで進んでいき、読者の脳を気持ちよく揺らした所で突然、目の前であっさり終わってしまう物語の締めも美しかったです。個人的には、この話を導入とした彼らの日常ものとか読みたいなぁって思いました。むりぶっ! 

 濃い。相変わらずの濃密な文体。大澤文学の骨頂みたいなものを感じます。脂ののった安定した書きぶりには唸ることしきりですし、その反面、ストーリーもキャラクターもアッサリ目に作ってるのが、こうスープは豚骨コッテリだけどするっといける細麺とネギいっぱいが嬉しいっていうラーメンを食べてる感じがしました。ただ、これはそうだよと言われてしまえばその通りでしかなく、個人の好みの問題だけど、ぽんぽん謎の設定が飛び出していって、これは何だって思わせる暇も無くハイスピードで進めていくことの面白さは、何かの拍子で噛み合わなくなると「うん?」ってなって止まってしまう。つまり読み止めると何もかもが分からなくなる危うさがあって、実のところぼくは何度も何度も脱落して、そのたびに長い段落の最初から読み進める事を繰り返してしまい、そのたびにかなりのしんどさを伴うことになってしまいました。たとえば、キッチュなものが大好きなふわり、というところにフォーカスするのなら、どこの何がキッチュなのか、1段落使って語らせてもいいと思うんです。そういう所で段落を分けてほしいというか、おいしいラーメンなんだからちゃんと素材の紹介をしてほしい、「なるほどふわりはこういう女の子なんだ」という余裕を読者にくれるとスープや麺それぞれの味わいを自分のペースで噛みしめる事ができるんじゃないかと思いました。 

 

こむらさき 「お気持ち爆弾」

 胃壁がキュン! でおなじみのこむらさきさんです。今回も例の14歳年上の同性の彼女を持つミサキくんの話。「責任を取らないといけない」というミサキくんの呪縛に対して「責任取る必要なんかない」という気付きが与えられる、というところが今回の進展。その遅々とした進展(?)を除けば毎度のテンプレ展開ではあるので毎度毎度よく飽きないな……という感じになってしまいますが、実際飽きないというか懲りない人なんだろうな……。思うんですけど、このシリーズ一回エピソードを全部書き出してまとめて把握して中~長編としてイチから再構成したらかなり強度のあるものに仕上がるんじゃないかと。文体も当初に比べると格段にこなれていて小説らしくなってきているので、一度「初見の人でもコレだけ読めば全て分かる!」というような独立した小説に仕上げてみてはいかがでしょうか。テーマとしては文学にまで昇華しうるポテンシャルを持っている非常に強い作品だと思いますし、お気持ち爆弾という語も非常に力強く、ミサキくんの中にある爆弾の描写などをモチーフとしてフィーチャしていくと面白味がさらに出るのでは。ネタ枠といういつの間にか気付いてた自分らしさの檻をそろそろ壊すタイミングじゃないですかね。

  ミーくんとミカさんの胃痛爆弾物語です。ミサキくんの心情の描写は、まるで実際に体験してきたかのようなリアリティが溢れていますね(白目)。 彼の心の葛藤と苦悩がメインに描かれているので、読者はミサキくんと同化して苦しむ事だろうと思います。この後の二人の展開が大変気になる所です。どうか二人が無事着地点を見つけて、ハッピーエンドを迎えて欲しいものですが……。 一点気になる部分を挙げるとすれば、これは物語の性質上なのかもしれませんが、小説というよりはミサキくんの独白録の形式になっているので、例えば視点をミカさん視点に変えたりするなどして、二人に見えている別々の世界のギャップを見せつける等したら、小説として更に面白くなるかもしれません。過去の思い出の昇華だけでなく、そこから新しい何かを掘り出すなどして、作者自身の胃にも、思いもしなかった穴を開ける勢いで書いていくと、確実に面白くなると思います。それ以上は無理っていう展開をぶち込んで、読者の胃を穴だらけのザルにしてやりましょう。 

 こむさんの私小説、個人的には大好きだし、文章力もあってイメージしやすくて、キャラクターの濃さがあるんですが、リアルな人を登場させてどうしたいのか、というのは、根本としてある気がしています。お気持ちを爆発させるおかしな人がいる。その「おかしな人がいるよ!」という呼び込みのあと、読んでる人をどういう風に面白がらせたいのか、そういうコントロールをしてくれると、読者としても嬉しいです。踏み込んで言えば、これはこむさんというパーソナリティを知ってるからこそ面白いのであって、一見さんがフラっと読んだ時に「へー」っていう感想しか出て来ないんじゃ無いのかとおもう。そう考えたら、キャラクターはもっとデフォルメされていいと思うし、「実際にいた人」という前提を取っ払ったっていいと思いました。

 

 蒼井奏羅 「バブルガム」

 また蒼井奏羅さん。えっと、未完でしょうか。ちょっと現状ではまだなんとも言えない感じです。

 

 久留米まひろ 「そんな、わたしがしたいのは恋愛ファンタジーなのに・・・!」

 いったん投稿したものを気分次第で出したり引っ込めたりしないでください。闇の評議会はそれぞれに自分の作品の進捗も抱えている中で限られたリソースから捻出してあなたの作品を読み真摯に講評をつけています。人のリソースを無益に割く非常に不誠実な行為だと思います。以降の本物川小説大賞では一度投稿したものを取り下げることを禁止する条項を明記しようと思います。以上です。

 

 ヒロマル 「彼女が誰かと問われても彼は、サンタである彼女の本当の名前を知らない」

 不測の事故で撃墜してしまったのが実はサンタの女の子だったという定番ボーイミーツガール。以前の戦隊レッドの時もそうだったのですが、三連ミッション形式が好きですね。週間連載っぽさのある体裁。ただ、戦隊レッドの時は最初はぎこちなかったふたりの距離感が三連ミッションをこなすうちにだんだん近づいていく、という演出だったのに比べ、本作においては最初の時点でふたりの間にある程度の信頼関係が構築されており、本当にただ三連ミッションをこなしただけみたいな感じもあって、必然性みたいなのが弱いかなぁと思いました。今回は謎解き要素もありませんし、そういった点でも比較すると戦隊レッドのほうに軍配が上がる。ラストの「だ~れだ?」なども、もうちょっとサンタの女の子が世間知らずでマニュアルで対応してるんだよみたいな仕込みがあればさらに活きた気がします。充分完成度は高いのですが、作者の他の作品を知っているぶん、もっとできるだろうと欲が出てしまう感じ。起爆装置さんみたいなワンアイデアのエッジで勝負するタイプだと多少粗削りでもカバーできてしまうのですが、ヒロマルさんの場合はあまり尖ったプロットではないので完成度で勝負していく感じになってしまいますね。

 過去に本物川小説大賞の受賞経験もある、ヒロマルさんの作品です。完成度が高く、クリスマスを題材としてサンタクロースと主人公の心の交流を主軸に、プレゼントを各家に届ける彼らサンタクロースとしての任務が一話ずつ描かれています。ひとつずつの話を積み重ね、最後に二人の間に生まれた絆がどうなるのか、という構造です。何のストレスもひっかかりも無く読ませる軽妙な語り口は、流石に熟練のそれを感じさせます。ただ、読みやすいがゆえに更なる欲が出てくるのが読み手の心情というもの。取り扱う題材が分かりやすい為、読んでいてひっかかりがなく、綺麗にまとまりすぎている感があります。しかし逆に言えば、その一点さえ突破してしまえば、高い文筆力と相まって誰も追いつかない高みにスイスイ飛んでいく予感もします。そう、まるでサンタクロースのようにね。 

 ……(驚いたような顔でゾンビをじっと見る)

 作品として読みやすくて、しかも読後感が爽やか、という、短編小説としては本当にきっちり収まる所に収まった感じの作品でした。でもそれだけに、もっと読んでいたい、ミッションが過酷になるほど、寝てる子供との絡みとか、そういうエピソードが生きるだろうな……読んでみたいな……とか思いました。 

 

 ポージィ 「うんやん」

 うんこです。比喩や罵倒ではなく普通にうんこ。それも非常に高い知性と教養から繰り出される極めて画素数の高いうんこです。なんなんでしょうかコレは。一発ネタかと思いきや意外と世界観がしっかりしているし語り口も軽妙でヴィジュアルてきに不快であることを除けば読みやすいし正しい医学的知見もあるしで謎に筆者の学識の高さを感じさせます。でも本当に不快でしたね。なんでしょうか、これも闇の評議会を狙った新手の攻撃でしょうか。できれば本当に大賞取ったりとかはしてほしくないんですけど、ねえほんと、お願いしますよ。

 聞いて、これ凄い。何が凄いって、まず臭い。文字なのに、くっさい。あと汚い、文字なのに汚い。しかも喋る、臭くて汚い大便が喋る。もうこれだけで強い、全てにおいて圧倒的な強さを持ってる。最初のアイデアが既に狂っている。まずはアイデア勝利。しかし、これは大便の擬人化というだけのワンアイデア勝負ではないのだ。彼、主人公うんやんは、人間から排出された大便でありながら、自我を持ち、そして六道輪廻を繰り返している。更にその全てが大便に転生という運命にありながら、それを当たり前のものとして受け入れている。いや、楽しんでさえいるのだ。そのどうしようもなく絶望的な彼の境遇を独特の口調であっさりと描き、その終わらない大便としての無限の生を描く、作品の圧倒的なスケール感にまず脱帽だ。そして何よりも特筆すべきは、その描写力の高さ。一話のピーナッツの下りでは、僕の胃の中の麻婆丼を逆流させかける程の地獄のような光景が、丁寧に丁寧に、それは事細かに描かれており、心の底から作者の正気を疑った。うわ、今思い出しても鳥肌が立ってきた。あ^~本当最高。最高にクレイジー。輪廻転生する大便、その仕掛けを使った物語自体も、綺麗に一本道ならぬ一本糞にまとまっており、爆笑しながら読み終えました。皆さん、これぞ糞の投げ合いで世間を賑わす本物川KUSO創作界隈を象徴する作品ではないでしょうか。違いますか、そうですか。一旦トイレ行って、頭冷やしてきますね。 あ^~ 。 

 大賞です。

 勝手に決めないでください(激怒)

 本物川小説大賞の「KUSO小説」っていうのは、正直こんなクソみたいなっていうかまんまクソをクソ小説って言ってるわけじゃなくて、周りにはクソみたいなものかもしれないけど、自分にとっては最高だから読んでねという意味なのですが、ここまでクソというものをがっちりと構えて垂れ流したというこの作品の受け止め方がわかりませんでした。輪廻という謎な壮大さと、巡り巡ってみんなのウンコになるっていう下世話な話を謎の広島弁で語られていくストーリーは、喩えるなら、「最初の30秒読んで脳天をナタか何かでかち割られた後、もう自分としては死んでる、やめてくれと言ってもさらに獲物を求めて彷徨う全裸のおっさん」に出会ったとでも言うか、モリモリの設定なのに何も嫌味っぽくないしうんこくさくないこの筆力に思わず衝撃を受けました。正直、この感想を書いてるのが2017年のはじめての仕事だというのもかなりつらいのですが、これは衝撃でした。 

 

 左安倍虎 「黄昏の騎士」

 重厚で骨太な王道ハイファンタジーですね。魔法の興隆によって騎士による戦いが過去の遺物となった世界での騎士道の話。左安倍虎さんもヒロマルさんと同じで、あまりプロットてきに尖ったところはないので完成度で勝負していく感じになってしまうのですが、確かに完成度は高いんですけど、う~んみたいな。だいたい毎回、王道ファンタジー世界にひとつフックを入れてくる感じで、本作では魔法(呪法)のほうが優位の世界っていうのが特徴でしょうか。でも易水非歌の羽声や聖紋の花姫の調香に比べると画的にはちょっと地味かもしれないですね。聖紋の花姫はイラストの効果もあるのでしょうけど、画的な華やかさがあってよかったんですけど。言ってみればミサイル開発初期の戦闘機不要論みたいな話で、そこに旧来の戦闘スタイルにもまだ必要性があることを主張していく、みたいなのがメインのプロットかと思ったのですが、戦術論をマニアックに詰めるという感じではなく騎士の生き様みたいなところに回収されてしまったので、多少の延命がなされただけでこのままだとやっぱり騎士道じたいは先細りなのかなぁみたいな、モニョッとしちゃう。

 しっかりと練り込まれたファンタジーの世界。時代遅れの騎士団と、それに代わって台頭してくるイヤミな呪法使い達。彼らの微妙なパワーバランスを見せる所から始まる今作。物語の強度が非常に高く、出て来るキャラクターの個性もひとつひとつ立っており、登場人物達の普段の生活、立場や苦悩がひしひしと伝わってきます。騎士達が呪法使いをやっつける単なる勧善懲悪ものではなく、軽視されながらも、その名誉の為に最善を尽くし、自らの名誉も命も犠牲にして忠誠を誓う、高潔で尊い騎士道精神を物語の根幹として描いています。その主題を演出するのが、仲間の裏切りと攻城戦のくだりですが、二万字という制限を全く感じさせない濃密なもので驚きました。ここまでの世界観で、どの場面の解像度も落とさずに描ききる基礎力の高さは見事としかいいようがありません。物語を引き立てるサブキャラクター、二百番目の騎士の使い方も上手く、読後に良い作品を読んだという確かな満足感がありました。不安定な部分もなく、最後まで安心して読める良作です。 

 軽いめの話が続いたところで、硬派なファンタジー小説が来たので「おおっ」と前のめりになりました。左安倍さんの作風が光る感じ。やっぱり何度も読んでるひとの作品って違う内容でも分かるもんだなぁと。ストーリーも非常に楽しめました。ただやっぱり硬いというか、どこかでダレでも入れる入り口が欲しいとも思いました。たとえばビジュアルに訴えかけるシーンがあって欲しい。呪法のシーンももっと派手にやっても良かったかも。たぶん自分の評価では、20点台後半の人達って、もう実力としては十分にあって、あとは好みの問題だと思うんですが、そこから先、僕が気持ちとして評価するとしたら、これを誰かに読んで貰いたい、という気持ちにさせるところだと思うんです。画が浮かび上がるよとか、ワクワクするとか、泣いたとか。この「黄昏の騎士」も、そういうポテンシャルはまだまだいっぱいある。そういう心を動かすものがあって欲しいと思いました。

 

 ロッキン神経痛 「さきちゃんマジで神。」

 掴みの一文はすごく強いですね。ダラダラ喋る感じの思考垂れ流し系一人称は個人的に好みなのでそれだけで評価高いです。でももっとダイブできるよ。自分の自我を完全に解脱してもっとわたしになりきろう。ちょっと文字数に対してスケールが大きすぎた感じは否めず、それでいて前半の日常パートで結構な文字数を消費してしまっているのでさらに後半はバタバタしています。なんとか最後はしっかりと話を畳んではいるんですけれども、最後だけ視点がさきちゃんに移るのはちょっと唐突な感じが否めないかも。もうちょっと構成に工夫というか、単純に計画性があるとなお良いのかなと思います。プロット大事。でもラストの絵はかっちょよさがあっていいですね。ロッキン神経痛さんは本当にこういうところがあるんですけれど、ちょっとした欠陥もラストの華々しさで挽回しちゃうみたいな。右手のペンと左手のアップルをンン~ッ!ってアッポーペンするのが上手い感じ(伝われ)

 まず二万文字の規定に対して、物語が大きすぎます。思いついた世界観の一部を切り取って見せるならまだしも、強欲にも広い範囲を全部書こうとしているのでしょうか。完全にキャパシティオーバーで、後半の展開と場面の転換が粗く、駆け足感が目立っていました。ただ、さきちゃんという既存の作品概念に、ちょっと奇抜なアイデアを付け足して別物にする発想自体は面白かったので、これを一つの材料として、懲りずに次の作品に活かして頑張っていって欲しいと思いますね。はい、頑張っていきます。 

 作者を変えたさきちゃんシリーズ?なんですかね。1話の前半部分からグイグイ引っ張られる感じで、読み進める楽しさがあります。さきちゃんはさきちゃんだった~と比べると、ファンタジーの面白さの方に倒した上で怖い部分が圧倒的に薄れていて、ライトで好感の持てる作りという、なるほど似たような素材でも作者によって全然違うんだなという気持ちにさせてくれました。ハピネスでカプリコを選ぶシーンはたぶんこの作品の中でも一番印象に残りましたが、この手の改行せずにモリモリと書いていくスタイル、実は読みづらくて苦手なんですが、これはすっと読めた。この辺はやっぱり描写の妙味なんでしょうか。

 

 くすり。 「ちるちるみーちる」

 あ、つらい。コンチェルトどうなっているんでしょうか。ちるちゃんとみーちゃんの会話だけで構成された会話劇。特にこれといった展開もオチもなく、終始掛け合いだけで進んでいきます。なんていうか、はい、本当にそれだけです。僕はただただ悲しい。

 「何だこれは、これが名誉ある本物川大賞受賞者による作品だと言うのか。」ホンマタ・ノムワ三世(西暦一世紀前半~没年不明)

 まず、くすりちゃんさんは、文才が脳みそからところ天状にはみ出してそのまま農協に顔写真付きで出荷出来るくらいあるんですから、この作品を提出した事をちょっと反省してください。僕が言うまでもないとは思いますけど、糞創作の糞というのは一種の揶揄であって、肛門からひり出したそのまんまのホカホカの糞を「はい、糞を召し上がれ♪」って満面の笑みでお皿の上に盛ってこられてもですね、おおこれはこれは……糞でござるなヌホホ!としか言いようがないですよ。次回、ちゃんと講評できる糞創作、待ってます。 

 会話文でのスキット、寸劇を中心にした作品でのガールズトークくすりちゃんの得意分野なのかなーと思いながら読んでいましたが、ねっとりした描写をばっさり切り取り、会話で読ませる作りにしている。ただ、掛け合いのテンポはもっと気をつけた方がいいんじゃないのかなと思いました。敢えて言えば、ちょっと白々しい、上滑りな部分がどうしてもひっかかる。こういう軽い話を2000字ちょっとで終わらせるのって難しいけど、最初から滑ってしまった感がある。正直、惜しい。もっとやれたはずだろうに……とかも思っています。次出してもらえるのなら、是非期待したい。 

 

 黒アリクイ 「成長痛」

 親元から独り立ちした社会人が帰省するかどうかで悩む話。なんていうか、つらつらとしていてちょっとボケてしまっている感じはありますね。自分がそのテーマでどこにフォーカスしたいのかという意識をもう少し強く持つとクッキリとするのかも。こういった文芸的な題材はエンタメよりもさらに素の文章力や描写力というのが求められるので、単純に文字数が少ないといった問題もあります。もっと丁寧に語り部の心理に寄り添って描写していかないと、たんにこういうことがあったんだよねで終わってしまいます。

 帰省を題材にした、主人公の葛藤のお話。全体的に味付けが淡白で、小説というより日記に近いように感じました。描写力はあるので、起承転結の部分に思い切った調味料をごっそり入れて、読む人の舌にピリリと響く味付けをしていくと良いと思います。思い切り突飛な設定をねじ込んでみて、それをどうコントロールしていくか、など試行してみると、思いもしない金脈にぶち当たるかもしれません。今後に期待です。

 何気ない日常、何もない世界を「ものがたる」というとき、過剰に山や谷を付け足して、日常でなくしてしまうこと、あるいは作品よりも淡々とした雰囲気や、自分の頭の中に浮かんだ話でまとめてしまおうとすることで、作品としての転がし方に失敗して、日常を淡々と語るのではなく、平板にしてしまう、何の面白みもないものにしてしまうことはままあると思います。黒アリクイさんの「成長通」は、面白くする素材はいくらでもあると思う。帰省するかしないかを友人と友人の姉の二人に代弁させ、揺れ動く心と、その決断と顛末というアイデアはいいけど、もっと「主人公の決断」に対する心理の掘り下げ方があったんじゃないかなと思います。主人公がコイントスで決める事への決断があってもいいと思う。二人に言われた後にコイントスで決めたシーンがあっさりすぎるのはとても勿体ないと思う。もっと、エイヤで決める事への心理の移ろいみたいなものがあっても良かったと思います。 

 

 不動 「弓と鉄砲」

 立花宗茂黒田長政による弓と鉄砲での勝負の話を、昔話として立花宗茂が秀忠に話して聞かせているという体裁。実際の歴史的逸話をベースとしているのでコレといったエンタメ要素はないのですが、やさしい感じの語り口が軽妙で魅力的ですね。不動さんはだいたい毎回異常なまでの質感を持ったメシ描写で読むメシテロをブチ込んでくるのですが、今回はメシがないのでその加点がないです。習作としてはこういうのも良いと思うのですが、もうちょっと「ココを見せたいんだ!」ってところがクッキリしてるとよかったかも。

 弓と鉄砲の使い手同士の腕比べを描いた作品。かなり固めの文体ですが、その文筆力の高さもあり、映画を見ているかのように語り手と実際の腕比べの場面が交互に浮かびあがりました。ただ、物語の語り手が何度か交代する演出が見られるのですが、そこにあまり必然性が感じられず、ちょっとした違和感程度で終わってしまっています。話者を交代させるのであれば、彼らに関する描写(この物語を何故語り継いでいるのか等)があると更に良くなると思います。一連の話は結末も綺麗に収まっていたので、面白く読ませていただきました。  

 実際にあった立花宗茂黒田長政の弓と鉄砲の腕比べを換骨奪胎して、戦国武将達にその出来事を語らせる、という試みは大変面白かったと思います。文章もすっきりしてて読みやすい。構成と文体にリソースを割いておられたなら、まさに勝利だと思います。ちょっと惜しいなって思ったのは、1話と2話ではちゃんと語らせる戦国武将のキャラクター付けがあったんですが、3話からは語り口調を変えた程度に感じられて、もっとその辺は工夫できたというか、たとえば各キャラクターの気持ちや見方が分かるような「脱線」を入れても良かったのではないかと思います。(各武将は弓と鉄砲、どっち派だったか、とか) 

 

 たかた 「明太子プロパガンダ

 ご新規さんです。タイトルの語感がまずいいですね、明太子プロパガンダ。なにかあると思わせておいて明太子プロパガンダじたいは特に絡まないんですけど、なんか良い感じ。基礎的な文章力が非常に高いです。お話としては特にこれといったことはなく明太子売りの日常を綴っていっている感じで、いちおう職場の嫌な感じの上司が実は……みたいな展開もあるんですけれども、実は~が判明してもやっぱり普通に嫌なヤツなんですよね。別にそれで心象が良くなったりはしない。これだけの分量を割いて変化といえるのは「なんか分からんけど主人公が今の自分自身に対してちょっと肯定的になった」という半歩程度の緩やかなものなのですが、これぞ文芸という感じです。なにがきっかけで、などの明確な一対一の関係性で成り立っているものではないので、結局はそれを見せようと思うとこれだけの分量を使わざるを得ないのですね。黒アリクイさんのところでもうちょっと丁寧に分量多く、みたいな話をしましたが、それをきちんとやるとコレになります。じわっと来るようないぶし銀の良作。

 主人公の心情が丁寧に描かれ、彼女の抱える悩みとモヤモヤがそのままダイレクトに伝わってきます。何て事はない日常生活の中で起きた、ちょっとした事件とそれによる変化。彼女の視点になって読んでいると、自分の中にもある、もしくは必ず一度はあっただろう、自分とは何かという恒久的な問いを呼び起こさせられました。作中、イヤミで浅はかな人物として描かれる寺島さんというキャラクターの根幹を、全くブレさせる事無く別人のように感じさせる演出は、作者が高い技量を持っているからこそのもの。作品の解像度が高く、地力があると小さな日常をテーマにした作品も、こんな重厚なものになるんだなぁと感心させられました。奇をてらわない、真っ向勝負の良作です。  

 実は「日常系」、それも現実離れしたものをフックにしないものって、書くのがとても難しいと思っていますが、ちょっとおかしみのある文体で、とはいえ淡々と日常を描いていく中、明太子売りの女性の日々を描いて、最後までつっかかりもなく読み進めた上で、ちょっと面白さがあって、それでいて変に訴えるところがない。これがめちゃくちゃむずかしい。ちょっとすると変なテーマを入れたり、あるいはテンポ作りに失敗したり、山と谷を作るために妙にラッキーを作ったり主人公を無理に陥れたりする。そういうのをせず、ひたすら平板なのに、お酒を飲んだり、一人でさめざめ泣くだけの食品売り場のお姉ちゃんの日々を読むだけなのにどうしてこんなに面白いのか。それを実現されているたかたさんの作品は非常に文章力が高いと思っています。個人的に大好きな部類です。これはつらつら読んでいきたい。

 

 ボンゴレ☆ビガンゴ 「世界が終わるその夜に」

 ご新規さんのビガンゴ先生です。ネタとしては去年に大澤が書いた「クリスマスがやってくる」と完全にカブッていて真正面からのガチンコファイヤーボール対決に。同じネタとはいえ見せていきかたに違いがあるので、両者を比較してみるのも面白いのではないでしょうか。ビガンゴ先生は他の小説だとラノベを意識しているのか高校生ぐらいの年代を主人公にしたものが多い気がするのですが、こういった大人の恋愛を描かせたほうが上手くハマる感じがしますね。ツイーター上での芸風もピエロそのものですが、普通にオシャレな感性を持っているので自分では気障すぎるかなって思うくらいにカッコイイものを書いちゃっても全然大丈夫なんじゃないかと思います。上中下の三話構成で特に下に入ってからの語り部へのダイブ感がすごくて普通に心が揺さぶられました。ただ、あまりソリッドな質感を出すと色々と気になってしまうタイプの設定だと思うので、中の説明的な部分がちょっと余計だったかなと思わないでもない。語り部の性質的にもそのへんは曖昧にかっとばして終始もっと主観にダイブしていってもよかったかも。いずれにせよ間違いなく大賞候補の一角です。さすがビガンゴ先生!

 個人的に好きな終末世界を描いた作品の上、イキの良いジジイが出てくるので、なるべく冷静を心がけて評価したいと思います。まず、終末世界にありがちな、略奪・殺し・自殺などの、いわゆる闇の部分を描かないのが、作品にとても良い効果を出していると思います。少し関係の冷めた恋人同士、世界の終わりまで通常営業を続けるマスター、誰も居なくなった水族館で一人働くおじさん。どの登場人物も、何らかの葛藤が終わった後のさっぱりとした悟りの中にあり、絶望の中で絶望していません。だからこそ、舞台装置としての終末が存分に活きているのだと思いました。もしもこの中に、葛藤のまま終わりを迎えようとする人物が一人でも居たら、きっとこの作品の持つ空気は壊れてしまうことでしょう。だからこそ目立つのが、「中」でのとってつけたような世界観の説明の荒さです。恐らく、既に終末を受け入れ終わった、ある意味達観したキャラ達を動かして、台詞の一端で匂わすだけで、読者はその背後にあるものを汲み取ってくれるのではないかと思いました。あの説明をしている感が、作品にある終末の心地よい空気感をチープなものとしてしまっている点が、他が大変良いだけに気になりました。結末に至る部分は、その点を補って余りあるほど良かったです。あえてその後を書かないのも、美しい余韻となっていました。  

 実はボンゴレさんのは前もっていくつか読んでいたんですが、正直いって、どんなジャンルでも展開が淡々としてて、会話文も「読めなくはないけどただ続く」という印象が強くて、山や谷がない、「おっ?」と思わせるフックがない、話としては平板だなという印象でした。 ボンゴレさんは、「物語が予期しない方向へ転がしていくことを抑える」事がクセとしてあるんじゃ無いかと思ってました(僕も言っててなんですが、予期しない方に行くとお話が簡単に破綻してしまうから危険ではありますが)。それを前提にした上で、今回の「世界が終わる」という設定は、ボンゴレさんの文体とすごく合ってた。世界が終わる、という設定を最初に持って来たので、まず読者としては「本当に終わるのか?」「ハッピーエンドで終わらないのか? まさかハッピーエンドか?」という予想を立てながら読む、裏切られないかという緊張感が出る。だから一文ずつ集中し、その都度想像していく。没入感が出てくる。こうなると、文章が平坦でも、それが失ってしまう日常への寂寥やいとおしさみたいなものへと感じられてしまう。これはもう設定の完全勝利だと思います。ただ、敢えて言えば、今回の設定が意図したものであったとしても、平坦な文章をどう変えていくのか、という部分において、文章の地の力としては課題があると思ってます。 

 

 不死身バンシィ 「ホホホ銀行SF」

 みずほ銀行の勘定系新システムがいつまでたっても終わる見込みもなくて現代のピラミッド化している、というところから着想したSF小説横浜駅SFてきなレトロサイバーパンクな世界観なのかと思ったら完全に世紀末救世主のほうでちょっと戸惑いました。いちおう話の筋としてはパンクな世界の中で、世界がそのようになってしまった原因に行きつくという、それ自体はオーソドックスな形式なのですが、そもそもタイトルとあらすじ欄で銀行の合併のゴタゴタが原因で世界はこうなったっていうことは明かされているので、そこに帰納していく筋だと作中の登場人物にとっては意外な真相なのかもしれませんが、読者にとっては「お、そうだな」で終わってしまうところがあります。そこは演繹的な筋のほうが良かったんじゃないかなと。細やかなバカバカしいコメディ描写には定評のある作者なので今回も途中途中で細かく笑っちゃうところはあるのですが、物語の大枠の組み方をちょっと間違えたのかな? みたいな感じがあります。

 タイトルから、某メガバンクを連想させるSF作品です。三話で構成されており、荒廃しきった世界をそれぞれ別視点から描いています。独自設定のAIを持った戦うATMというアイデアが光っており、彼らと戦い地域を制圧、取り戻そうする傭兵達のキャラも良く、息をつく間もなく読み進められました。全てを犠牲にしながらも戦い続ける彼らの熱さが伝わり、とても良かったです。そして二話三話では、ホホホ公国について、この終末的状況に至るまでの経緯が語られるのですが、一話の世界の被支配者側から支配者側の視点に切り替わる為、作品の空気感が一転します。二万字の文字数内では、このテンションの上下が激しく感じてしまい、没入感の低下に繋がっていると思います。ただ、本気で書こうとすると短いですよね二万字って。対策としては、この際書きたい事は我慢して、地の文で世界観をサラリと説明しつつ、戦闘を濃密に描く等すると綺麗にまとまるかなと思います。 

 この作品は本当に読むのが難しかったです。たぶん不死身さんも迷ったんじゃないかなと思います。某駅のSFと某青い銀行のトラブルという素材を使ってパロディに行くのか、シリアスで行くのかの判断、その上での文章の量……そういうものを悩みながら進めて行くうち、オチに着地できずに終わってしまったという感じです。個人的に不死身さんはふだんから長い話をかける力量があると思ってますが、ここではむしろ、なまじ長い話なぶん、話がくどくて悪い方に作用してしまった感じ。パロディなら勢いだけにして短いお話ですっぱり切った方がよかったかもしれません。 

 

 今村広樹 「good-bye wonderland」

 えっと、ちょっと分かりませんでした。かなり特殊な叙述の仕方がなされているので、これによってなにか作者が狙っていることがあるのかもしれませんが、少なくとも僕には伝わってないです。僕が分かってないだけでなにかあるのかもしれませんから、それで即ち失敗とは言いませんけれども、なんなんでしょうか。

 全体的によく分かりません。単なるプロットの書きなぐりメモじゃなくて、人に見せる意識を持って書くと、やっと小説になると思います。身近な人に冷静な目で読んでもらうか、自分で音読してみて下さい(怒) 

 これもオムニバス形式で何かのテーマが浮かび上がってくる感じですが正直何を書きたいのか全然わかりませんでした……断片が断片過ぎて……。理解でなく感覚でつかんだ感想をするなら、ここまで文章を削ってもキャラクターが浮かんでくるというのは今村さんの潜在的なポテンシャルは高いとおもいます。何かの雰囲気をイメージとして浮かばせる事に成功した、次はストーリーを作って、ぜひ、このイメージの流れを作ってくれると嬉しいと思います。

 

 芥島こころ 「さきちゃんはさきちゃんだったって話」

 またさきちゃんです。さきちゃんがどんどん謎の象徴化していきますね。どんどんやっていきましょう(?)。体裁としては不思議の国のアリスてきな行きて戻りし物語で特筆すべきことのないプロットなんですが、さきちゃんシリーズのお約束みたいになっている不親切な女の子の完全主観一人称叙述で、ただでさえ不思議の国なのがさらに不思議度マシマシで不思議な感触です。特にどうという話でもなく変則的な一種の夢オチのようなものなので、お話として評価しようとすると難しいところもあるのですが、想像力の限界を試されているようななんとも言えない良さがあります。

 いつの間にか始まったさきちゃん二次創作シリーズの親、元祖さきちゃんの作者による新作さきちゃんです。前作のさきちゃんの続きだと思われます。突然神隠し的に、ファンタジーワールドに巻き込まれてしまう主人公が、妖精と一緒に現実世界に帰ろうと励むお話です。さきちゃんが直接出てくるのは、ほんの一部分だけなんですが、色々な所でさきちゃんを匂わせる演出がされていて、夢の中を泳ぐような独特の世界観に華を添えています。あと、さきちゃんの事で頭がいっぱいな主人公はサラッと受け入れていますが、迷子になってしまった彼女に妖精が提示する時間単位が500年だったりと、ゾクゾクさせられるホラーな展開が続きます。それでも安心しながら読めるのは、これもさきちゃんという概念が闇夜の灯台のように作品中に光っているからでしょう。作者の持つ特有の世界観を味わい尽くす、何とも不思議な冒険譚でした。 

 主人公がさきちゃんを探すストーリーが、なんていうかおとぎ話のようなんですが、ところが主人公がやたらサイコっぽいのでものすごい危険に思えてくる。いやホラーではなくてファンタジーなんですが、なんていうか、最初はメルヘンで可愛い話が、だんだん不条理で底の見えない話に変わって行くけれど、最後はやっぱりメルヘンで終わる、というのがあって、それがさきちゃんを探す「ゆきて帰りし物語」の中でアクセントになってて、本当にうまいなと感じるところでした。 

 

 宇差岷亭日斗那名 「今日も空は青かった。」

 基礎的な文章力は非常に高いのですが体力と集中力に難のある作者です。本作は典型的なラブコメてき設定から始まって急転直下でなんかよく分からない展開に。従来の作品よりも話に展開があるのでそこは良いと思いますし、やろうとしている足し算が成功すればかなり面白いものになりそうな予感はあるのですが、単純に分量と解像度が足りないかな。もう少し丁寧にやらないと読者がついていけずにポカーンとなっちゃうかも。一般には理解しがたいような屈折した感情の揺らぎのようなものを描こうとするのであれば、やはりそれなりに筋道を整えていかないと難しいと思います。うさみんていさんにもたかたさんの明太子プロパガンダが参考になるかもしれません。

 まず、面白かったです。宇差岷亭(読めない)さんが、前回応募された作品も拝見していましたが、回を重ねる毎にメキメキバリバリパワーを上げていると思います。流れるように、しかし丁寧に描写がされており、読んでいて何の抵抗も無く物語の世界に引き込まれました。そしてストーリーに没入したところで、突然オラシャ!ビッターン!と作者にグーパンで地面に叩きつけられる展開が待っています。その構造のひねくれっぷり、ジェットコースターのような急下降が面白く、同時に勝手にシンパシーを感じました。ただ、その急展開の部分については少々説明不足で意外性が空回りしている感も否めないので、彼等が突如その領域にいたるまでの必然性を物語の途中に隠しておけば、読者をショック死させられる程面白い作品になると思います。ただ好き同士だったという事以上の何かが欲しいところです。個人的には、是非その意外性の念能力を鍛えて、最強のトリックスターになって欲しいと思います。  

 内容的に好みだっただけに、結末の直前でよくわからない展開になっていたことが残念でした。「暴力を塗り替える暴力」を頭から否定しているわけではないのですが、でも、普通は「暴力を塗り替える暴力」は、ありえないはずです。だったら、主人公がヒロインの首に手をかけたときの「暴力」と、それを受け容れた時のヒロインのシーンで読者はそんなことがあるのかと疑念に思っているということをきっちり意識して欲しい。文章力もキャラクターの良さもあったのに、構成として、「暴力を塗り替える暴力」を彼女が受け容れてしまったのかがあっさりすぎた。そこは読者としては普通なら「なぜ」が生まれるところで、これをテーマにした以上は作者としてきっちり描ききって欲しい部分でした。ここからは勝手な想像ですが、いつもの彼女でない事を察した主人公が、彼女を殺す事で彼女を「いつもの彼女」に再生させようという思いがあった。しかしそれに主人公自身が気づき、その身勝手な行為に恐怖したとき、むしろ彼女が、自分を否定し再生させるためにそれを望んだ……という展開をとりたかったのかなと思いましたが、それならもっともっとこの点は掘り下げて欲しかった。主人公やヒロインの前フリとしての会話に、そうした再生を予感させる伏線なんかがあっても良かったでしょう。首に手をかけるシーンはもっと深くあってもよかったのではないかと思います。 

 

 綿貫むじな 「師走に死者は黄泉返る」

 死者の黄泉返りを主題にした作品。ホラージャンルになっていますが、あまりホラーな展開はないです。ホラー作品として見せようとするには説明が丁寧すぎるかなと思います。恐怖というのは基本的によく分からないもの、理屈のつかないものに対して感じるものなので、ここまで丁寧に説明してしまうとただの出来事になってしまいます。そこまで突飛な設定というわけでもないのでもっと出す情報を絞っても大丈夫でしょう。現状ではホラーというよりは死神のほうの子を主人公にした連載少年漫画の一話みたいな印象が強いですが、でもそれならそれで、ちょっと見せ方が中途半端というか、どちらを主役に据えたいのかが曖昧になっている感じ。もうすこしプロットを整理したほうがいいかもしれません。あと単純に「時々休日の度に」などの(?)となってしまう表現などがあったので推敲をもう少し重ねましょう。

 タイトルから想像していたのはゾンビものでしたが、作品に登場するのは単なるゾンビではなく、あの世の手違いによって蘇った死者であり、不本意にも生者の熱を奪わなければ消滅してしまう哀れな存在である、という工夫がされています。ゾンビの発生には理由や原因が明示されない事が多いのですが、この場合確かな加害者があの世にいる訳で、モンスターであるゾンビ達にも同情が出来る点が味となっていました。腐った死体ではない故に、蘇った故人と対話するというのも新しい。死神少女との今後も想像させる引きも、短編の締めとしては綺麗にまとまっていました。ただ、故人が蘇ったという衝撃の出来事に対して、主人公含む登場人物の反応がやけに淡白に感じ、そこで没入感が剥離してしまったので、彼らの感情の起伏をより激しく描くと更に良くなると思いました。 

 作品としてまとまりがあって、お話として完結しているのはあるので、楽しんで読めました。いくつか気になるというか、ぼく個人の好みなんでしょうが、やっぱり死、蘇りというテーマを扱うのなら、そこをもっと掘り下げて欲しいなと思わなくも無いです。むじなさんの作品は、アイデアが良くて、描写もそつないのがすごく好きなんですが、絶対もっとポテンシャルがあるという気がしています。抽象的な物言いで申し訳ないんですが、もっともっとキャラクターの心の奥深くを考えていって欲しい、作者本人が、作者の作り出した世界や人でもっと遊んで欲しいと言えばいいのか……そういうところで、もっと違う何かを取り出してくると嬉しいと思います。……何かというのが明確な言葉による心理描写なのか、別のものなのかは分からないけれど、きっとお話に深みが出てくるんじゃないかと思いました。 

 

 久留米まひろ 「時の祝福」

 色々と難がある作者なのですが、いちおう毎回なにかしらを出してくれていて、そして回数を重ねるごとにふつうに文章がうまくなってきていることがウケますね。やはり誰であれ書き続けていけば上達はするというのは当たり前の真理ではあるようです。ただ文章そのものは上達していますが相変わらず小説の体にはなっていませんし普通に気持ち悪いので困ったものですね。今回のは話の筋は飲み込めましたが、これでは結局たんに冒頭部分だけであってただの未完作品だと思います。2万字までの小説を出せという規定なので規定内の分量でちゃんと物語を畳んでください。いまの自分に取り回せない規模の物語を描こうとしても無理です。とりあえず上達はしてきているので引き続き頑張ってください。

 唐突に息子に謎の薬を飲ませようとする謎の父親に、黙ってそれを飲む主人公。目覚めると部屋にモデルガン風の実銃を持った謎の男が入ってきて、そこで主人公は謎の能力に目覚めて……。粗が目立ちますが、前回応募作である光の剣に比べると、確実に描写力は上がっていると感じました。後は作品中の違和感となる「なぜ」「どうして」という描写を客観的に分析していけば、違和感なく読める小説になると思います。あと、作者の何らかの性癖や嗜好が出てくるのもKUSO創作の大変面白いところなんですが、あまりそれを剥き出しにし過ぎるのは、その、どうかしてると思いますよ、はは。 

 厳しい言い方なのですが、正直、破天荒すぎて何が何やらわからないというのが正直な感想です……。序盤の薬を飲むシーンは違和感でしかないし、いきなり銃撃されるのも分からない。謎の薬、謎のナノマシン、謎の大澤めぐみ……。これがギャグだと言ってくれるならかなり難解なギャグだなと思うんですが、どうも読み進めていくとギャグじゃないらしいという事が分かって来て、さらにわけがわからなくなる……。「何故そんなことに」「何故そうなる」と思わず何度も口に出してしまいました。プロットを練って、誰かに読んで貰って、何か違和感がないかをまず考えてみるべきだと思います。文章がおかしいというわけでもないし、小説のお作法から大きく外れているわけでもないのに、話がよくわからない(不自然な)方向へ転がる、そしてちゃんと終わらせられないというのは、明らかに頭の中にある物語を持て余しているからだと思います。この辺はもっと誰かに話してみて、纏めるようにした方がよい。

 

 ラブテスター 「忘れな歌」

 文字数オーバーのためゼロ点です。読んでみた感じ、とてもではないが2500文字を削ることは不可能だ、とは思わなかったので単純に努力が足りません。仕様というのは決して曲がらない絶対的なものなので、たとえKUSO創作大賞と言えども2万字までという規定がある以上は2万字までです。実際に、もうすこしスマートにしたほうがもっと澄んだ読み味になると思います。現状ではちょっと主題があっちこっちにバラけていて、たくさんの登場人物が無駄に豪華な書割りという風情で厚みがなく、どこにフォーカスしたいのかが自分の中でも整理がついてなさそうな印象。狙いは分かりますし文体とホラーの相性は良さそうなので、ちゃんと狙い通りの効果を引き出せたら良いものになりそうなのですが、現状ではうまく機能しているとは言えないと思います。自分の中では意味があるのかもしれませんが、読者に伝わらない意味深なだけの意味のない演出というのは総合的に見るとマイナス点のほうが大きいと思います。傍点のことです。

 残念ながら文字数オーバーです。規定を守って楽しくデュエル! ガードレールから聞こえる不思議な歌をキーとして、様々な物語が進行していくお話です。以前の応募作でもある腕食いでもそうですが、作者の紡ぐ言葉の丁寧さと装飾の美しさには目を見張る物があります。ただ、今作においてはその文体の美しさが、聞こえる歌の謎、いわばオチに向かうまでの期待のハードルをかなり上げている印象があり、その期待に対して明かされる真実が弱いと感じました。その為、読後に物語の中心が結局何だったのかが掴みにくくなっています。あとは牽引力のある主軸さえあれば、最強です。 

 オムニバスな展開から、歌というテーマを浮かび上がらせようとするのは、とてもレベルの高い内容だと思うので、そこにチャレンジしたのは素直に賞賛するけど、読者にそれぞれのキャラクターを追っていかせるにはどうしたらいいか、という考え方をもっと強化して欲しかったです(好みもあると思うんですが……)。たとえば2話、高校生のT井の「ひどくさみしい」という言葉で表現できる心理があっさり終わっているのがとても惜しい。 父を亡くした高校生の男の子の心理にしては気恥ずかしいかもしれない。前段でていねいに情景を書いていたはずが、一番大事なキャラクターの気持ちのうつろいを「さみしい気持ちになっていた」で片付けてしまったのは、ぼくはすごく惜しいと思う。自分の将来に悶々としていた時、さみしいと思った時、そういうときの目に見える色んなものの見方は、ふだんとは変わるかもしれない。変わらないかもしれない。そういう心理状態のうつろいから見える情景描写が、僕は好きです(心の動きで1話ごとの起承転結にメリハリも生まれるし、テーマがくっきり浮かび上がると思うし) 

 

 綿貫むじな 「DJマオウ」

 この作者にしては珍しい100パーセントギャグ作品。たぶん、元ネタはDJラオウ(なつかしい)でしょう。魔王がDJの深夜ラジオという設定。設定じたいにおかしみがありますし、文体も軽妙で非常に読みすすめやすかったのですが、本当にクスクスとちょっと笑ってそれでおしまいという感じでもったいない感じがしますね。軽い設定とライトな読み味を絡め手にして、もっとすごいところまで話を展開させたりもできそうな気がします。本作単品で高く評価することは難しいですが、もうひとつふたつ足し算して上手く融合できたら大化けしそうなポテンシャルを感じます。クソネタとして使い捨てにせずにアイデアは心の隅にとっておいたほうがいいでしょう。

 まず言わせて下さい。この手があったか、と。本作はDJマオウによるラジオ形式の作品です。一体魔王はどうやって放送を発信してるんですかね、やっぱり魔界全土に発信される魔界アンテナがあるんでしょうか、もしくは子供の頃なら誰もが(?)やっただろう、一人DJごっこ……?なんとも夢が膨らむところです。また、ラジオ大好きっ子には堪らないのが、要所要所で挟まれるカギカッコの注釈。(トランペットを主旋律としたBGM)とか最高です。まさにwebならではの表現ですね。基本的に登場人物もマイクの前に座っているだけなので、余計な描写も不要でぎっしりと情報を詰め込める。面白い手法だと思います。  

 こういうテンプレファンタジーの枠を使いながら、枠を壊していく内容、すごく好きです。魔王がDJやってお葉書紹介やトークをやるっていう作りはアイデア勝利ですね。1話はグイグイ引き込まれる感じで最高でした。もっともっとアホな話やラジオあるあるで盛っていって欲しい。恋愛相談、渋滞情報(ダンジョン混雑情報?)、スジャータ時報、妙なジングル、放送作家、ありがとう浜村淳、深夜のリスナーポエムで感動して泣き出す(嘘泣き)声優……。そういうパロディやメタネタを盛り込めるなって思うと、まだまだ引き出し、ポテンシャルのある内容だと思います。

 

 鈴龍 「年末」

 うーんと、たぶん特に引っかけは仕込まれてないですよね? 普通につらつらとした日記調の文章です。柿の木を見たらなんかおじいちゃんを思い出して仏壇に手を合わせた。本当にそれだけの話。たぶん本人の中ではそれはあるていど意味のある大事な感情なのでしょうけれど、この分量でそれを伝えるのは難しいのではないかと思います。単純に、もっと文字数を使って解像度を上げていきましょう。

 ほのぼのとした、田舎の生活と思い出を描いた作品。個人的には、ジジイとババアが出てくるとそれだけで弱いです。泣ける。基本的に思い出を振り返りつつの日記風のお話になっており、読みやすいです。後は視点人物である”僕”の感情の起伏がなく、エピソードの割に味が淡白に感じられたので彼の心情風景をたっぷり見せるなどして、合間合間に思い出話を挟んでいくと、切なくて泣ける良い話になると思いました。 

 年末、帰省した実家で、ふと昔の出来事を思い出す……という話を膨らませていったお話。自分にもそういう事もあったな、と思えて、しかも心がほっとする、良い作品だったと思います。散策をしながら実家の身の回りのものを見つめ、そこから過去を思い出していく作りですが、私小説の体裁をとっているぶん、散文的な内容でもすっきりしている感じがします。(たぶんこれに描写を加えると、途端に作り話めいたものになるんでしょう)小さな話だとは思いますが、こういう小さな話があると、本当に心が安まります。 

 

 不死身バンシィ 「ベルリア魔鉱山採掘者ペイジの手記」

 17000文字未満という文字数なのに全17話というかなり小刻みなちょっと変わった構成。前回のでかいさんの箱庭的宇宙を彷彿とさせる体裁です。あちらはメールのやりとりでしたが、こちらは手帳に残されていた手記という設定。でかいさんの時もそうでしたが、この体裁は物語の隙間を細かくキングクリムゾン(ぶち飛ばす)できるので、少ない文字数でもかなり大きな物語を取り回すことができます。加えて、本作では短く端的な表現で文章に情報量を詰め込むことをかなり意識しているっぽくて、文字数あたりの情報量がほんとうに多く、読み終えてみると「これでたった17000文字なのか」とびっくりします。実質的なオチは蛇の月六日のたったの7文字でしょう。最後は爆発オチという感じなので微妙なのですが、この体裁はまだまだ可能性があると思うので、これも使い捨てにせずにいつか再構成してもらいたいですね。これで全体に張り巡らされていた謎がラストにギュッとくるような構成になっていたら満点でした。

 これ、世界観フェチにはたまらない一作です。設定は元から用意されていたのか、今回即興で作り上げたのか分かりませんが、当然顔で現れる現実感のあるファンタジー世界は、大変魅力溢れるものになっています。ホホホ銀行SFといい、作者の想像力に底知れぬ物を感じますね。実際の文字数の数倍以上にも感じられる読後感は、手記という形式による効果を最大に活かした結果でしょうか。どの場面転換にも違和感がありませんでした。一つ挙げるとするなら、最後の事件を具体的に予想させる伏線づくりがあると尚良かったと思います。読み返しても、想像の余地が随所に残されていて、読者の想像を掻き立てる、良い作品です。  

 ほほう、こう来たか……というのが正直な感想です。何気ない手記から始まり、これはどう終わらせるんだ? と思ったら、手記でオチをつけるのではなく日報として終わらせるのはすごくうまい。自分でもこの手の手記もの書いてますが、不死身さんの作品を読んで思うのは、「読者である自分が作者からの手がかりを得て想像する」楽しみ方ができるんですよね。手記だから、断片的でも読み飛ばしていけばいい(≒読み飛ばすしかない)部分もあるけど、だから伏線を張るのも楽しいし、あれこれの仕掛けが作れる。そして読者もまたもう一度読み直して、あっここ伏線だったんだなと思えてくる。あまり「書いた人しか知らない・分からない事」を盛り込みすぎると、これは自分が読むものではないと読者がわざわざ手記を書いた人間の中に入ろうと思えなくなるので、そこのくすぐりというか、多くの人が読みたくなる仕掛けがあってもいいと思います。大変面白く読ませて頂きました。 

 

 既読 「ビタミンC」

 本物川文芸勢で間違いなく最強の一角だと思うのですが、未だに無冠の既読さんです。この作者は限りなく研ぎ澄ませた一文に非常に強い力を持たせてくるのが上手い、居合抜きの達人のような技術を持っているのですが、本作においても「感情は完全にコントロールされている」という、それだけだとなんでもないような一文が主題として繰り返し提示され、読後にはこの一文がどれだけ研ぎ澄まされたものであったのかが分かるという感じがします。ミステリーということで、エンタメ的な謎は他にちゃんとあるのですが、僕はこの「感情は完全にコントロールされている」という一文の意味というか、重みのようなものが読んだ前と後で全然異なって感じられるこの効果こそがミステリーだなと。既に完成されている作者なので、僕から言えるようなことはなにもないです。

 上手い、上手いわー。いつも中長編で圧倒的戦闘力を見せつけていく既読さん。短編ならなんとかケチをつけられるだろうと思い、偏見の目をギラつかせつつ読んだんですけど特にこれと言った欠点は見当たりませんでした。とても悔しいです。ビタミンCという聞き慣れたワードや、合間合間に挟まれる「感情はコントロール出来ている。」というかっちょいい台詞は、しっかり読後感に紐付けされて、この作品の印象を強くしていると思います。描写表現は勿論の事、作者はマーケティング力にも優れていますね。是非そのやり方は盗んでいきたいです。  

 非常に安定している。なんていうか文章に風格があるというか、プロのような味わいを感じました。序盤のストーリーからビタミンCという単語をフックにしたまま、結末まで持っていく力に感心することしきりでした。なにより、結末。まさかこうなるとは思わなかったんですが、その思わない話へと持っていく力がある。今回、ぼくの評価軸に「キャラクター」を入れているんですが、これはキャラクターの個々の味付けがなくてもしっかり楽しめる作品なので、ちょっと後悔しています。正直、文句の付けようのない作品でした。 

 

 enju 「コナード魔法具店へようこそ」

 これは完全なダークホースでした。めっちゃいいです。好き。全7話で10000字程度と、かなり文字数は少ないのですが、ライトな読み味のわりに詰まってる情報量が多いというか、繰り出されるロジックが設定厨もニッコリの納得の出来でめっちゃコスパいいです。あ~ライトな感じなのねってサクサク読んでいたらウオオオンと唸らされてしまう感じ。読み味がライトなので人にもオススメしやすいですね。連載作品としてまったりと続いてくれたらうれしいかも。個人的には大賞候補の一角です。

 様々な魔法グッズを扱うお店のお話です。一風変わった魔法グッズの紹介を続けていくのかと思いきや、道具と共に物語の世界観を感じさせる情報を散りばめていき、徐々に彼らの関係性や物語の世界観を理解させていく仕組みがガッチリはまっています。また、説明臭さが全くないまま、読者を作品世界に引き込むその手腕は見事です。キャラも明るく魅力的で、提示された世界観の魅力には、今後の無限の可能性を感じました。

 Web小説っていうのは、媒体を選ばないものだと思っています。スマホタブレットなんかのモバイル、パソコン、あるいはテキストをコピーして印刷する。そうしたものの中では、「コナード魔法具店~」は、正しくモバイル向けの作品なんだな、と思いました。長ったらしい導入や描写や説明を排除して、短い話をテンポ良く進めて行く。実はこれ読んだ時に長い作品をいくつか読んでたのもあると思いますが、1話が数百~千ほどもいかない小さな話を、無理なくスイスイと読ませてくれたのは、正直な話、かなりほっとしました。けっこう好感が持てました。

 

 ゴム子 「おとぎ話のようになんて生きられない」

 ひとり小説RTA大賞やめなさい。大晦日に駆け込んできた安定の滑り込み組ゴム子さんです。もうちょっと計画性を持ってください。非常に高い文章力と独特なゴージャスな世界観をもった、個人的には非常に好きな作者なのですが、安定した執筆力に欠けるのが難点ですね。やはり計画性と安定した体力と集中力が大事。過集中状態でのキャラクターに対するダイブ能力が優れているのか、本作でも人物の描写の質感が非常に高いのですが、やはりプロットとしては導入の1エピソードという感じで、ピアッシングを一種の性的なメタファーと捉えるのもそこまで目新しいアイデアではありませんし、これ単体で出してこられてもなかなか厳しいものがある。締め切り直前のタイムアタックばかりでなく、一度、ちゃんとしたプロットを組んで腰を据えた作品の執筆に挑戦してもらいたいと思います。

 えっちな物書かせたら界隈No.1(当社比)のゴム子さんによる作品です。今回もまあ中々にえっちでした。とあるきっかけで拉致された芋OLと美人メンヘラの共依存関係。いいですよね~。とてもいいです。ゴム子さんのねっとりぐっしょりした描写にはもう何の文句もないのですが……強いて言うならもっと先が読みたかったですかね。是非次回は、コツコツ計画的に書いて、素晴らしくえっちな小説を見せて下さい。待ってます。  

 作品としての好みというのがあるので何とも言いづらいのですが、ちょっと苦手でした。たぶんこれは女性的な霊をイタコして読めばめちゃくちゃ面白いんだろうなと思うのですが、いかんせんイタコできないぼくが悪いんですが……正直、女性が読むとまた感想が変わるんだろうなと思う。ゴム子さんは文章力もあると思うんですけれど、全体にある危ない魅惑、エロチシズムというか、そういうものが自分とは違うんだな、という感じがしすぎて、どうしても最後まで乗りきれなかった。 

 

 兎渡幾海 「だ・かーぽ」

 前回の大賞受賞者のうさぎさんです。またなんか名前が変わってますがもうどんな名前になったところでうさぎさんで通します。こちらも既に作家としてほぼ完成されてしまっているので僕が言うことはほとんどなにもないですね。面白かったです。タイトルの意味てきにはこれもリボーンなのかな。象徴的に何度でも死んで生まれ直す。そういう前向きな精神的自殺の話。主人公と婚約者とのその後は語られないままですが、また死んで生まれ直した主人公のことですので、きっとなんとかしていくんだろうなというポジティブさが読み取れます。明確な言明なしにそれを感じさせる手腕はほんとうに見事。やや変則的でありながらも王道青春ロードムービーです。いちおうなにか言わないとカッコがつかないので言っておくと、形式的にはカギカッコの行頭はスペース入れないのが一般的なルールだと思います。

 最初から最後まで、本当に綺麗な作品でした。前回の大会覇者であるうさぎさんが、今回もその地力を十分に見せつけていった形になります。彼は作品の骨組みをしっかりバッチリ作ってくるので、読む側も常に安心して脳を空っぽにして任せる事が出来ますね。衝撃的な事件を起こす主人公と、訳ありの美容師。二人の登場人物の背景にある旅の動機も、月日が経ってからのあのラストに繋がる事で物語に何とも言えない説得力をもたらしています。やはり大賞受賞者は見せつけてくれますね!  あ、そうだ。くすりちゃーん!うふふ、呼んでみただけ^^  

 親を殺してしまった主人公と、ワケありの女性が二人、宗谷岬へ逃避行をするという話。導入からグイグイと引っ張るような展開で、1話の引っ張り方は最高。「よくある構成の仕方をきっちり描くテクニック」があることは本当に強い。うなることしきりといった感じでした。ただ、結末までの後半部分があきらかに急ぎ足で、最初ほど練り込まれてない。終わりかたも唐突だし、ロードムービーというか、逃亡劇の面白さが描けてない気がする。なにより、明らかに2万字という文字数では全然足りてない感じを受けました。序盤のハイスピードな展開が面白かっただけに、惜しくて惜しくて仕方ない。1話と同じくらいに練り込んだら、たぶん文句なしに大賞に推してました。

 

 でかいさん 「シン・ネン」

 ズモーン!!!!! これぞクソ小説。そうそう、こういうのでいいんだよ本物川小説大賞っていうのは。こんなクソ小説企画にそんなマジになっちゃってどうするの? しかしこれはクソ小説とはいえケツアナからエエイ!!!! とひり出された一本クソではなく、クソを丁寧に捏ねて作られた見事な美しい三段クソです。冒頭の勢いを出すことは迷いを振り切ってしまいさえすればそれほど難しいことではありませんが、17000文字以上もこのクソバカテンションを維持したまま走り抜けることは並大抵のことではありません。もう大好き。まさにクソ小説界に燦然と輝くマイルストーン。合間合間に挿入される半角の擬音がなんとも言えない独特のおかしみと共にアイキャッチの効果も兼ねていて、ダレることなくラストまで読み進めさせられてしまいます。個人的には頭ひとつ抜けた高評価。

  ペタタタタタタタタタンペタタタタタタタタタンバッバッバッバッバッバッバッバッバ!ギュイーーーーーーーーーン ヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂ!

 要所要所挟まれる擬音がたまらない。作中に現れるのは違法改造されたペッパーくん。町中に溢れる餅、餅、餅。それに立ち向かう人々の希望は……やたらバイトの経験が豊富な主人公、いっぴーくん。戦え!餅と!そして新年、あけましておめでとうございます!何だこれは、何だこれは、と思っている内に物語に飲み込まれていく不思議な作品。そうか、これが僕達の原点なんだ。創作って、自由なんだね!僕分かった、分かったよ、いっぴー君。脳みそと口を繋いでみたら、こんなものが出来ちゃいましたー!みたいな文章で綴られる物語は無条件で笑顔になれるので、お仕事に疲れたサラリーマンにおすすめです。 

 お餅特撮。話の筋はいわゆるシンゴジを踏まえながら進んでいくので目立った部分はないけれど、おかげでいろんなものを身構えて読まなくていいというか、さらさらっと読んで、ふふっと笑って、それでいて物語としてちゃんと完結していて後腐れが無く読後感が良い。大好きです。お正月にぼけーっとしながら読むには確かに丁度良いくらいのまとまり感でした。 

 

 大村あたる 「押しかけミニスカサンタクロース」

 こちらも安定した高い筆力を持った作者です。なんかこう、分かりやすいテンプレラブコメを書いてやろうという意志はひしひしと伝わってくるのですが、ほらこういうのを書けばいいんだろう? ほらほら、みたいな上から目線をそこはかとなく感じてしまって(被害妄想)なんとなく入り込めませんでした。自分は好きでコレを書いているんだというような熱いパッションがないぶん、逆に実用的にはできているのでしょうし、スラスラと読めてしまうところは根本的に文章が上手いんだろうけど、う~ん。中くらいのところに一番良いバランスがあるはずなので、そのへんを探っていってもらいたいですね。

 クリスマスにミニスカサンタがやってくるという少年漫画を思わせる展開。あえてベタな題材に挑戦したと思われる今作。描写も相変わらず上手く、綺麗にまとまっており、作者の狙い通りのものが出来ているのではないでしょうか。あとは、基本理由なく結ばれていいのがラブコメなのですが、マッハで恋に落ちる彼女にもうちょい説得力のある理由か、面白いオチがあればいいかなと思いました。 

 いわゆる「男の主人公が何故か女の子と同居する」みたいな、古くはうる星やつら、ああっ女神様っ!とかの系譜だと思うんですが、この辺のやつは、僕個人の好みも大いにありますが「欲望に素直な奴が勝利」だと思うのです。そういう意味では、大村さんの作品は、サンタさんが女の子で、その女の子に奉仕的に言い寄られるわけですが、大村さんの好きなシチュエーションをもっともっと全開でも良かったのではないかとか思うわけです。たとえばサンタさんにもフェチっぽいシーン(18禁レベルかは置いとくとして)を入れるとか。 

 

 豆崎豆太 「病」

 う~ん、なんでしょう。文章そのものにちょっとした個性が光っていて、非常に高い筆力のある作者だと思うのですが、歩み寄りの姿勢が見られないというか、言いたいことを一方的に言われただけみたいな感じがあって腹が立ちますね。この手の物語にある種のうっとおしさとか鼻につく感じがつきまとうのは仕方ない部分があるのですが、もうちょっと調整のしようがあるように思います。描きたいことの主題ははっきりしているようですので、それを一方向から照らすのではなく双方向てきカンバセーションによって明らかにしていってほしいなと。なんか小説というよりは長ったらしい演説を読まされた気分で、今回は僕としてはあまり評価は高くないです。たんに僕が萩野きらいなだけかも。

 恋愛を書けない自称作家の恋のお話。登場人物の書き分けも風景描写も上手く、それぞれの場面が頭にしっかりと浮かびました。ただ、短編としては何ら進展のないまま終わってしまった感が強く、僕として心残りな印象です。せっかく魅力的なキャラクターが配置されているのに、このまま終わってしまうとなると、ウジウジとした男がただウジウジとしただけって話になっってしまうので、もう少し展開が欲しいところです。  

 今回というか、自分もそうだった時がありますが、寸劇というか、何かのワンシーンを抜き出したものを見かけます。出来事をならべて、何か始まったのか終わったのかよくわからないまま唐突に途切れる、そうした作品。それが絶対に悪いわけではないですが、やっぱり2万字というボリュームを使うならもっとあれこれ出来ると思うし、短いなら、短いなりの読者への楽しませ方みたいなものがあってもいいのでは……と思ったりもしていました。だからこそ、そういう中で、ちゃんと話があって、終わりまで描いて、余韻が残る小説というのは、読んでいて満足感がある。そういう意味では豆崎さんの「病」は、ちゃんとお話があって、結末がある小説で、しっかり満足できました。個人的にはストーリーとしてもうひと転がしあっても面白いな、と思いもしましたが、それはつまり、先行きがある終わりかただということで、これもまた読者としては印象に残ったということでしょう。このキャラクターたちで(秋元さん含め)、次回また機会があれば読ませて欲しいなと思える作品でした。 

 

 maple circle 「人の角」

 詩、童話、その他、というカテゴリで投稿されているので、なにかそういう類のものなのでしょう。なんらかの寓意のありそうな話なのですが、はっきりとは分かりませんでした。たぶん、もわんとそういうものなんだなと解釈すればいいのだと思いますけど。文章としてはとても読みやすく、また読み進めさせるための鼻先にぶら下げるニンジンというのか、インセンティブ設計もしっかりしているので上手な方なのだと思います。オチについては、エンタメてきなすっきりするものではありませんので、そこのところの評価は難しいですね。本物川小説大賞の趣旨的にマッチする類のものではありませんが、良さがあります。

 人の頭に生える角、主人公だけに見えるそれが一体何であるのか、いくつか何か匂わす描写がありますが、今一歩踏み込めていない印象を受けました。ただ、設定は面白いのでもったいないです。是非もう一度練ってみて下さい。角が霊的な何かなのか、ファンタジー的な何かなのか、どんな風にでも展開出来る、面白いアイデアだと思います。  

 第1話、と銘打っていて、第2話が出ないということは、未完であり、評価しづらいというか……物語として終わっているのか? というのは、正直なところ、ちゃんと明示して欲しいと思いました。イメージできるものがあって、話が面白いし、これから色々転がっていくんじゃないかと思ったところでぷつっと切れているのは、非常に惜しいと思います。

 たぶん第1話になっているのはカクヨムの仕様に不慣れなだけであって、これはこれで完結しているのでは? 新規作成画面を開くとタイトルが自動的に第1話ってなるんですけど、あれを消せることに気付くのに僕もだいぶ時間が掛かりました。

 

 起爆装置 「ビガンゴ☆王」

 さて、大トリは本物川創作勢いちばんの問題児、起爆装置さんです。今回もやってくれました。えっと、ちょっと裏話を明かすんですけど、これ起爆装置さんに「なにかお題を出してくれ」と言われて僕が「お財布を無くしたことに気が付いたのはタクシーを降りようとしたときのことだった」から始まる小説っていうお題を出したんですよ。わかります? この身近に起こり得そうでありながらもそこからいくらでも人間ドラマが拡がりそうな極限状況てき絶妙なお題(自画自賛)。そこからデュエル始まるとか普通思わないじゃないですか? なに食って生きてたらこういう発想に至るんでしょうね? これこそまさにケツからエエイ!!! とひりだした一本グソですよ。特にコメントはないです。やっていってください。ドン☆

 ドン☆  文脈の分かる人には堪らない一作。ほとんどが台詞で構成されていますが、遊◯王の骨組みを借りているせいで、すんなりと作品世界に入っていけます。文体も読みやすく、あまりカードゲーム及び遊◯王の知識の無い僕でも十分に楽しめました。また作者のボンゴレ☆ビガンゴ愛と大澤めぎぃみ(誤字)愛が十二分に伝わってきますね。これぞ本物川KUSO創作の原点といったところでしょうか。この世で数人に伝われば良し、という潔い作品です

 小説で読むカードゲーム……なんですが、ビガンゴ先生のキャラクターで全部押し切った感じ。とにかく速度(勢い)で書き上げた感があって、粗さが目立つので作品としては出来の善し悪しで言えばまだまだだと思うけれど身内のネタ、楽屋ネタでしかないんですが、ビガンゴ先生や大澤めぐみさんを知ってれば思わずクスクス笑いたくなる展開。無茶な話なのに読んで突っかからせない、するすると読める展開はやっぱり起爆くんらしいというか、安心感があると思います。ストーリーとしては何の決着もしてないし、バトルして終わり、という展開なので、多くを望んではいけないのでしょうけれど、小さく纏まっていて読みやすく感じられました。 

 

 大賞選考

 さて、続きまして大賞の選定に移りたいと思います。いつもと同じように闇の評議員三名からそれぞれ推し作品を三つ出してもらって、そこから先はなんとなく合議で決めていく感じです。

 まず僕の推しですが「コナード魔法具店へようこそ」「シン・ネン」「世界が終わるその夜に」の三作品になります。

  僕は「うんやん」「明太子プロパガンダ」「世界が終わるその夜に」の三作品です。

 僕は「明太子プロパガンダ」「うんやん」「だ・かーぽ」の三つ。 

 割れましたね……w

 割れたねぇ……。

 えっと、「明太子プロパガンダ」と「うんやん」「世界が終わるその夜に」がそれぞれ2ポイント。「コナード魔法具店へようこそ」「シン・ネン」「だ・かーぽ」がそれぞれ1ポイントですね。大賞は2ポイントの三作品の中から選ぶ感じかな。

 じゃあ僕は敢えてここでコナードを持ってくる。

 や、そういうのをやり始めると本当に決まらないので。最初に推しを三作品出す時点でどうしても運の要素はあるんですけれども、運も実力のうちってことでそこはひとつご了承していってもらわないと。大賞は2ポイントの中から選びます。

 不死身バンシィさんの「ベルリア魔鉱山採掘者ペイジの手記」が好きでしたね、三本に入れようか最後まで迷った。

 良かったですよね。急あつらえなので構造的な強度はまだイマイチですが、ポテンシャルは感じました。あれは続編というよりも、同じアイデアでもう一度練り直してみてほしいなという感じです。

 新しい鉱脈を発掘した成果は大きい。

 DJマオウも同じですね。切り口はいい。でもまだアイデア段階なので、作品としての強度を高める感じで、もう一度イチから取り組んでほしい。

 二人ならきっとできるできる。

 とくに綿貫むじなさんは、わりと自分で丁寧にギャップをならしてしまって、手間をかけて作品を平凡にしてしまうようなところがあって、上手いんだけどウーン……みたいな部分が少なからずあったんですけど、今回はひとつなんらかの突破口になり得るのじゃないかなという予感がありました。そこ、もうちょっと掘ってみてほしいです。

 大賞は……エッジが効いてるのはうんやんだけど、作品の完成度っていうところで言うとやっぱり明太子かなぁ。

 うん、明太子は完成度が高かった。そういう意味では、うんやんはやっぱり個人的には……がついちゃう。

 前回みたいにイラスト化したときの見栄えみたいな話をすると、明太子はどうやっても地味なのでそこは世界が終わるその夜になんですが、やはり講評でも指摘があったように(中)での急に説明的なところがどうしても気になってしまう。

 あれ、勿体ないですよねぇ……。

 ビガンゴ先生は正直ここで取るんじゃなくてここから次どうなるか見てみたい。

 なんていうか、こう言ってはナンなんですけど、今回のビガンゴ先生のかなりラッキーパンチ感はあるんですよね。安定して出せるようになってもらいたいのもあって、これを教訓に次でガッチシ大賞を狙いにきてほしいなっていう。

 そうそう。指摘を反映した次の作品をすごく見てみたい。

 ということはやはり大賞はうんやんか……!

 隙あらばねじ込もうとしないでください(激怒)

 僕としてはここで明太子が大賞を持っていってしまうと、また前回に引き続き「普通に完成度が高い」ものが勝ってしまうことになるので、KUSO小説大賞のアイデンティティてきに「シン・ネン」みたいなのを推していきたいなというのがあって。でも明太子はやはり次点には入っていたし強いので、明太子なら大賞異存なしです。

 シンネンも面白かったけど、途中途中、振り落とされて真顔になっちゃった。ロデオマシーンみたいな作品。

 シンネンはまさに本物川小説!っていう、「速とパワー」っていう感じがあふれてるんだけど、正直、速とパワーだけでいうなら、うんやんで完全に脳天割られちゃった。

 読者と作者で体力勝負して作者が勝っちゃうってすごいことだと思うんですよシンネン。

 明太子はとにかくなんていうか、切実な気持ちみたいなのがしんみり伝わるんすよ。女性の気持ちなのに。

 では、第六回本物川小説大賞、大賞はたかたさんの明太子プロパガンダということでFA?

 ファイナルアンサー。

 ファイナルアンサーです。

 わー! というわけで、第六回本物川小説大賞はたかたさんの「明太子プロパガンダ」で決まりです! おめでとうございます!! パチパチドンドンヒューヒュー!!!!(ブオオオオオオオーーーーーン!!!!)←ブブゼラ

 おめでとうございます!

 おめでとうございます~!

 じゃあ、あとは世界とうんやん、どっちかが金賞でどっちかが銀賞なんですけど。

 うんやんか……!

 勝手に決めないでください(激怒)

 僕はビガンゴ先生。

 僕はうんやんかな。

 僕もうんやんは回避したいのでビガンゴ先生ですね……。では2対1で金賞はボンゴレ☆ビガンゴさんの「世界が終わるその夜に」ということで。

 パチパチパチパチ~

 パチパチ! おめでとうございます!

 そして自動的に銀賞一本はポージィさんの「うんやん」に決まりました。おのれバルタザールにカスパール。

 いえーーい!!(?)

 惜しくも最後で漏れちゃったか……。

 ……。(じっと見る)

 すみませんすみませんすみません。

 あと残り一本の銀賞を選定していくわけですが、僕としては「コナード魔法具店へようこそ」が本当に良かったなと思っていて。意外とこれまでの本物川小説大賞になかったタイプだと思うんですよね。すごく気楽に読めてサクサクしてて、でもちゃんと一定の満足感がある。これぞweb小説って感じで、すごくコスパいいんですよ。

 「入り口が重い戸になってない作り」というか、ウェルカムしてくれる作品。

 そうそう。やっぱ他人の創作を読むのって、ある程度その人の庭の中に入っていくみたいな感じがあって、それなりに心構えと言うか、覚悟みたいなのは求められるじゃないですか? そういうのが一切なくて、なんかすごく優しいんですよね。

 優しい、分かります。読みやすくてキャラクターもみんな嫌味がない。

 本物川小説大賞ってどんなのかな? って、書いたこと無い人が読んだ時、文学性の高さで困るわけでもなく、結末が難しくて首捻るわけでもなく、あっこういうのなら俺も書けそう、っていうのがあるとすごくいいと思う。もちろん槐さんのコナードは実はあれ書いてみれば分かるけど、めちゃくちゃ高度な事やってると思うけど、入り口でウェルカムしてくれる。

 そう、やろうと思うとめちゃくちゃ難しいんですけど、でもなんか、自分も書いてみたいなって思わせるようなそういう効果もありますよね。肩肘はらずに、一緒に遊ぼうよ? って誘われているようなフレンドリーな空気感がとてもいいです。明太子プロパガンダはなんだかんだいってムキムキのマッチョがいきなり殴りかかってきたみたいなところありますからね……。あとは筆力で言うと既読さんのビタミンCもムキムキマッチョマンなんですけど、なんか当たり前のように強すぎて逆差別みたいになってるところありますよね……。

 うさぎさんの「だ・かーぽ」とかもそうっすね。

 あげるタイミングを逃し続けているというか、ここまで来るともう既読さんにはこの水準ではあげられないみたいな。正直、あのふたりはもうレベルが違うのでそろそろ出禁ですよ。

 出禁!?

 えっと……卒業?

 ビタミンCもだ・かーぽも、最初の1話は文句なしの最の高だったけど、逆に完全にハードル上がって、ラストでこれならもうちょっとやれたじゃないか……とか無茶な気持ちになってしまったし。

 普通に売ってる小説を読む気分で読んじゃってますよね。だかーぽすごく良かった。移動の暇つぶしに適当に買った短編アンソロジーなんかにアレが載ってたら絶対得した気分になる(伝われ)

 あとは常連勢に関しては、書くことに慣れてると、どうにも本大会を舐めてかかってしまう事があるので気をつけたいところ。もっと本気でぶつかってこいと言いたい。

 それ。いくらクソ小説とはいえね。ほらきばりんさいや!

 ゴム子さんとかこむらさきさんも、本気で腰を据えて取り組めばものすごいポテンシャルを持っているとは思うんですが、まあお二人とも創作アカウントというわけでもないですし、投入できるリソースも人それぞれあるでしょうから、自分の生活を優先してマイペースにやっていってもらえばいいのかなと。こむらさきさんは確実に前進はし続けていて停滞や後退はしていないので、地味にでも続けていけば必ずなにかに到達すると思うんですよ。まずそれを自分で信じてほしい。自分自身でネタ枠みたいなところに自分を規定することをしないでほしいです。

 自分の癒し、楽しいな~っていうところじゃなくて、主人公の気持ちに仮託して「だからぼくはこれでいい」みたいな気持ちで書くことからそろそろ次のステージに挑戦してほしいって人がたくさんいました。

 うさみん(読めない)さんも他人には出せない味や思いつかないアイデアを絶対に持っていると思うので、何とかそれを昇華させて欲しいという思いでいっぱいになりました。

 今回はかなり野心的なプロットだったんですけど、やっぱちょっと体力不足かな。まだ大賞はあげられないけれど、確実に良くはなり続けている。

 あの人は面白くなる。化ける。

 しふぉんさんも、僕は実はBL表現ってめっちゃ苦手なんだけど、これは結構なるほどと思っちゃって。

 しふぉんさんは初登場時点でムキムキマッチョだったんですけど、やっぱ見慣れちゃうというのはあるので、もうちょっと違ったプロットに取り組んでほしさなどはあります。

 とても綺麗で文句の付け所がないんだけど、次のステップにいけるんじゃないかとおもう。

 前回の「天使」はそういう意味では野心的だったんですけど、ワンアイデア止まりなので、なんかこう、渾身の一撃を見たいというか(ふわふわ)

 超個人的な好みとしては、やっぱちゃんと完結してほしい。作品として自分はもっといけるって思ってるなら、ぜひ一回くらい、落ちというか、「これで終わりです」っていうところをきっちりつけてくれるとうれしい。誰かにこれ面白いよとか言いやすくなる。

 もう少しエンタメ方向に歩み寄ってみて、みたいな。

 お話って、作者ですら困惑するような爆弾放り込んだあと、どうやってこれを爆発させないまま処理するか、あるいは爆発させちゃうのか、っていうの全力の戦いみたいなのがあって、それが物語の緊張感を生む。ちょっと安定させるとすぐ守りに入ったオチや、よくわからない結末でぼやかしてしまって、読者としてもそれはけっこうひしひしと伝わるんですよね。

 その点ビタミンCは爆弾をうまくまとめてましたね。

 それが爆弾だったことに後で気付かされるパターン。感情は完全にコントロールされている。

 忘れな歌も、大きな爆弾が一つあればきっと化けてたと思う。

 この場合の完成度っていうのは、あえて言えば、「作者がコントロールできると思ってるくらいのまとまり感」でしかなくて、実は読者が許せるまとまり感って、まだまだ広いんだから、突拍子もないことや、腹の立つこと、汚いもので、あっと驚かして欲しいのはある。「弓と鉄砲」とか「黄昏の騎士」とか、ジャンルとしてはなかなかない所なので応援してるし、好きな人が絶対いるから紹介できるんですけど、やっぱそういう意味では爆弾がない。えっどうなるのこれ、みたいなのがない。

 うんやん、シンネン、DJマオウみたいに、尖ったワンアイデアでぶん殴るっていう作品は、今後も読みたいし評価していきたい。尖ったアイデアが出せるっていうのは、もうその時点で一歩抜きん出てると思うから。完成度を高めるっていうのはゆっくりやれば皆出来る。

 あとビガンゴ☆王も。

 彼は天才なんですけど才能を無駄遣いしかしないんですよ。

 さて、そろそろ銀賞一本の選定なんですが、わりと横並びなのでもうせーの!でそれぞれ言ってみる感じにしませんか?

 はーい!

 はい。

 じゃあいいですか? 決まりましたね? いきますよ……せーの!

 コナード魔法具店へようこそ!

 コナード魔法具店へようこそ!

 コナード魔法具店へようこそ!

 わ~!! 満場一致!!!!

 おめでとうございますー!

 おめでとうございますううううう

 というわけで、2016年最後の素人KUSO小説甲子園、第六回本物川小説大賞、大賞はたかたちひろさんの「明太子プロパガンダ」、金賞はボンゴレ☆ビガンゴさんの「世界が終わるその夜に」、銀賞はポージィさんの「うんやん」と、enjuさんの「コナード魔法具店へようこそ」に決まりました!!!!

 

 

 宣伝

 

 あと、せっかくなので最後にちょっと宣伝させてもらいたいんですけど。

 ほお。

 いまカクヨムで第二回webコンテストが開催中なんですが、枯れ木も廃村の賑わいといった感じでしてね……。

 ああ……。

 本物川女装創作団からも今のところ三人が出ているので、ちょっとその紹介をさせてください……。ずっと1位に居るんですけど、本当にPVが回らなくて……。

 まずは本物川女装創作団主席概念、大澤めぐみの「でも助走をつけて」1/2現在で恋愛部門の第一位にいます。いちおー第一部が完結済みで、続きは二月頃に更新の予定です。

 

kakuyomu.jp

 

 次に、ロッキン神経痛さんの限界集落オブ・ザ・デッド【長編】」。これも現在ホラー部門1位。すでに完結済みの旧作のリライト版になります。旧版はもう本当にめちゃくちゃ面白くて、これも当然、絶対に面白くなるはずなので応援していきましょう。

 

kakuyomu.jp

 よろしくお願いしまーす、星ください!

 あと、本物川女装創作団のジェイガン。ムキムキマッチョマンの既読先生の「ニャクザ ~RISING~」。こちらはやや層の厚い現代ファンタジー部門なので現在5位。既に二部まで完結済みの東京ニャクザ興亡禄の第三章になります。こちらも展開が早くて面白いのでオススメです。

 

kakuyomu.jp

 外部からお客さんを呼んでこないとランキングの1位に居ても一切恩恵ないから頼むよほんと。

 コンテストだしてないけど僕の小説も読んで! お願い!

 モッフル卿はまずコンスタントな更新をがんばっていこうね……。

 はい……(しおしお)

 

 はい! というわけで2016年を締めくくる素人KUSO創作甲子園、第六回本物川小説大賞、大賞はたかたさんの「明太子プロパガンダ」でした! それではみなさん、またいつか次の本物川小説大賞でお会いしましょう! 以上、闇の評議会議長、謎の概念でした!

 楽しかったです~、規定は守ろうな~!

 ルールを守って楽しくデュエル!

 おつかれさまでした~!

 おつかれさま~! 闇の評議会解散!! 撤収!!!!

 あと彼女! 彼女募集中です!!!!

 ……?

 ……?

 

 

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