第六回本物川小説大賞 大賞はたかたちひろさんの「明太子プロパガンダ」に決定!

 

 平成28年11月中旬から年末にかけて開催されました第六回本物川小説大賞は、選考の結果、大賞一本、金賞一本、銀賞二本が以下のように決定しましたので報告いたします。

 

大賞 たかたちひろ「明太子プロパガンダ  

 

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 受賞者のコメント

 たかたです。たぶん、これがいわゆる明太子パワー、一粒でもピリリと辛いです。ありがとうございましたー!

 

 大賞を受賞したたかたちひろさんには、副賞としてeryuさんのイラストが贈呈されます。好きに使ってもらっていいので勝手に出版してください。

 

 

金賞 ボンゴレ☆ビガンゴ「世界が終わるその夜に」

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銀賞 ポージィ「うんやん」

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銀賞 enju「コナード魔法具店へようこそ」

 

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 というわけで、2016年を締めくくる伝統と格式の素人KUSO創作甲子園 第六回本物川小説大賞、地味な大激戦を制したのはたかたちひろさんの「明太子プロパガンダ」でした。おめでとうございます!

 

 

 以下、恒例の闇の評議会三名によるエントリー作 全作品講評、および大賞選考過程のログとなります。

 

 

全作品講評 

 みなさん、あけましておめでとうございます。素人黒歴史KUSO創作甲子園、本物川小説大賞も通算で第六回目となりました。前回は10,000字未満の短編縛りという設定でしたが、やはりちょっと窮屈に感じる方のほうが多いようだったので、今回は上限を20,000字まで拡大しての開催となりました。多少余裕ができたとはいえ、言っても短編の規模ですから、ひとつの主題にギュンとフォーカスして掘り下げていったほうがカチッとした質感に仕上がったのではないかと思います。

 さて、大賞選考のための闇の評議会ですが、今回はまたメンバーを入れ替えまして、謎のゾンビさんと謎のモッフル卿さんにご協力いただいております。おふたりとも、よろしくお願いします。

 謎のゾンビです、よろしくお願いします。

 謎のモッフル卿です、よろしくお願いします。

 議長は引き続き、わたくし謎の概念が務めさせて頂きます。さて、それではひとまずエントリー作品を順にご紹介していきましょう。

 

蒼井奏羅 「ハッピーエンドのそのあとに」

 蒼井奏羅さんはわりと毎回、雰囲気のあるゴシックな印象の文体であることが多いのですが、今回は語り部が子供なだけあって、スルスルとした文章が非常に読みやすくていいですね。形式としては一応ドンデン返し型のプロットで成立しているとは思うのですが、それにしては全部を丁寧に説明してしまっている感じで予想は容易なので、あまりドンデン返しの衝撃というのはないです。ドンデン返しを決めるには説明し過ぎてもダメだし、唐突すぎてもダメで、この塩梅というのはなかなか難しいものです。情報をもう少し絞るか、あるいは一人称でありながら比較的客観性の際立つ叙述になってしまっているので、語り部の主観にもっとダイブして認識自体を歪ませる、信頼できない語り部にするなどの工夫が必要かもしれません。もしくは、読者が容易に予測できることを囮にしてさらなる多段ドンデン返しを仕込む、なども有効かと思います。あとこれは個人的な印象なのですが、蒼井奏羅さんは文体と雰囲気にこそ魅力のある方だと思いますので、変に「お話」や「オチ」を意識せずに自由に書いてしまったほうが逆に良かったりするのではないか、みたいな予測もあります。もうちょっと純文っぽいというか文学っぽいというか、そういう系のも読んでみたいです。

 主人公視点で不安定な子供の感情を描き、怪しいオジサンが読者にとってもヒーローに見えてくる。善悪の価値基準の定まらない子供ならではの揺らぎに着目した作品です。主人公の心情風景の描写が上手く、読者にも社会悪とも言えるオジサンの行為を善であるように感じさせます。ただ、タイトルにもあるように最終話でそんな主人公と同化していた読者の気持ちをひっくり返す場面があるのですが、そこを乱暴に投げてしまった感があり惜しいと感じました。例えばもう一話オジサン視点の話をして、彼にとっての真実はこう、みたいなもう一捻りのどんでん返しがあるとか。もしくは、読者が「しぃ君、それ完全騙されてるよそれ!逃げて~~!」みたいな気持ちになる、ねっとりとしたオジサンの気持ち悪い描写を露骨に入れていくと化けると思います。 

 同じ作者さんのハローグッバイを読んだ後にこちらを読んだんですが、 こちらの方が断然いい。 たしかにオチ自体は、1話を読んだ次点でたぶんそうなるだろうなと思いましたが、そんな事がまったく気にならないのは、やっぱりきっちりラストがあるから。そしてその上で、グロテスクな真実があって、そちらはきっちり隠しているというのが良い。ああ、ハンバーグってそういう、と立ち戻ると、さらに最悪の読後感が味わえる。でも文字数が短いからさらりと読める。これはハローグッバイよりしっかり噛み合った感じがしました。 

 

蒼井奏羅 「ハロー、グッバイ」
 続けて蒼井奏羅さんです。こちらもプロットとしては成立しているのですが、かなり駆け足の印象が否めず、すごい速度であっという間にエンディングまで行ってしまうので喜劇的な印象が強くて、意図としてはたぶん悲劇であるはずのラストもわー思いっきりいいなーみたいな感想になってしまいました。単純に、もうちょっと全体の分量を増やして細部を描写して、読者を語り部にしっかり移入させたほうがいいのかなと思います。入りの数行は毎回すごく雰囲気いいので、課題はその雰囲気を維持しながら長距離を走れる体力と集中力でしょうか。同じプロットでも描写の解像度と文体の鮮やかさだけで魅せていくことは充分に可能なので、次に紹介する百合姫しふぉんさんの文章などはとても参考になるのではないかなと思います。

 同作者の応募作品「ハッピーエンドのそのあとに」と同じく、社会悪とされる人物の内面を被害者の立場から描き、それに読者を同調させていくという仕掛けがされてます。作者の文体は読みやすく、スラスラと筋書きが頭に入ってきます。ただ、書きたい事だけを流れるように並べてしまい、没入感がいまひとつ得られないまま終わってしまう点がもったいないので、加害者と被害者である二人の関係性が深まっていく描写をもっと足すなどして、女装がバレたら人生終わりっていう主人公の焦りの理由をもっと細かく描写すると、加害者が理解してくれた事への彼の幸福感も数倍増しでブワッと伝わってくるはずです。個人的には、今回応募された二つの作品の主人公を同一にして一つの作品にまとめるなどすると、ああもうこれたまんねぇなって感じになると思います。あと女装って良いものですよね(鼻息) 

 6300字で終わりまでもっていったのは素晴らしい。限界までそぎ落とした感じがあって、個人的にはすごく好き。正直、つけた点数以上に他の人達の作品よりよいと思っているんですが、その理由は、やっぱりラストがちゃんと描けている、これが終わりだよと読者に対して提示している(唐突でも)からだと思います。ただし、やっぱりラストの唐突さは否めないというか、もうちょっとエピソードがあってもいい。最終話の前に1話、唐突にさせない仕掛け(伏線?)が500字でも1000字でもあったら、僕は構成にかなり高い点入れてました。

 

 姫百合しふぉん 「星々」
 姫百合しふぉんさんもゴシックで重厚な雰囲気のある文体に定評があります。前回はちょっと捻りの効いた変化球でしたが、今回はまた原点回帰というか、従来通りの横暴な美少年に堕ちていく男の話です。騎士道などではゴシックな文体はそのままに絵的なコメディ要素が異物のように混入していて、なんとも言えない違和感を含んだおかしみがあったのですが、今回はそういった奇妙な異物感などもなくプレーンな美少年小説。賢者と王という設定のため、姫百合しふぉんさんがこれまでしつこいぐらいに描いてきた美が持つ理屈に対する優位性みたいなものをそのまま登場人物が議論するので、メッセージ性がかなり素直に出てきています。分かりやすくはあるのですが、個人的な好みとしては登場人物たちの議論によってそこが語られるよりは、蒐集癖の見せかたのほうが含みがあって好きかなぁ。

 美しくそれでいて流れるように読み進められる不思議な作品でした。賢者の一人称で進む固めの文体プラス作者の卓越した描写力によって一気に物語の世界観に引き込まれます。一見すると何も語られていないに等しいはずの国政に関する部分が、とにかく王によって成り立っているのだという謎の説得力は、作者の描写力のなせる賜物でしょう。一度作品世界に没入すれば、話はもう流れるように美しくも残酷な王によって、真面目な賢者である彼がどこまで変わっていくのか、二人の行く末を想像しつつワクワクしたまま読み進められます。文体と表現の幅の広さだけで既に勝っている作品です。ただ、一つの小説として冷静に見ると構造が単調に感じられたので、彼ら二人の関係の背後にもうワンフックでも仕掛けがあれば、ワンパン失神KOが狙える作品になると思います。 

 賢者の独白で始まるストーリー。自分の仕える王をもとめ出会ったのが凶王だった、戸惑いながらもその凶暴さの魅力から離れることができず、やがて……と言う話。王様のキャラクターは好み。王と賢者のみに肉薄したお話にしている構成もポイント高い。同性愛部分は苦手だけど、生々しい部分は好きな人にはたまらないと思う。文章の長い後半は賢者の独白、心理描写に偏りすぎているきらいがあると思う。個人的に同性愛セックスは苦手だけれど、その辺あと2000字~3000字くらい使って愛し合う部分をきっちり描いて振り切っちゃってもよかったのでは。(この辺はもう好みの世界なので、そうした意図や別の理由があれば申し訳ない)

 

 

大澤めぐみ 「ふわッチュ!」
 「ふわッチュ!」は芳文社まんがタイムオリジナルで連載中の漫画「部屋にマッチョの霊がいます」の1話の1コマ目に登場する架空の主人公の推しアニメです。漫画では作中作として主人公のセリフの中でちょいちょい登場するぐらいなのですが、せっかく絵があるのでどうせならなにか話を書いてみようみたいな企画。瓢箪から駒がどんどん出てくる。

 目に襲いかかる濁流、ぎっしりとした文字の嵐。もはや作者の名刺代わりになったこの作風が、本作でも上手く効いています。読者に考察の隙を与えずに、ダダダダとマシンガンのように脳直で打ち込まれる文字の弾丸。その為、読後に押し寄せる余韻の波の高さは相当なもので、今回も読んでいてブワワッと肌が粟立たされました。是非この技術は積極的に盗んでいきたいですね。人間無理部という、一見変わった部活動に所属する女の子三人。彼女らのふわふわ日常ものかな?という導入部を裏切るように、非日常がすんなり登場する急展開、そして彼女達にとっての日常光景が、テンポよくある意外性に向かってノンストップで進んでいき、読者の脳を気持ちよく揺らした所で突然、目の前であっさり終わってしまう物語の締めも美しかったです。個人的には、この話を導入とした彼らの日常ものとか読みたいなぁって思いました。むりぶっ! 

 濃い。相変わらずの濃密な文体。大澤文学の骨頂みたいなものを感じます。脂ののった安定した書きぶりには唸ることしきりですし、その反面、ストーリーもキャラクターもアッサリ目に作ってるのが、こうスープは豚骨コッテリだけどするっといける細麺とネギいっぱいが嬉しいっていうラーメンを食べてる感じがしました。ただ、これはそうだよと言われてしまえばその通りでしかなく、個人の好みの問題だけど、ぽんぽん謎の設定が飛び出していって、これは何だって思わせる暇も無くハイスピードで進めていくことの面白さは、何かの拍子で噛み合わなくなると「うん?」ってなって止まってしまう。つまり読み止めると何もかもが分からなくなる危うさがあって、実のところぼくは何度も何度も脱落して、そのたびに長い段落の最初から読み進める事を繰り返してしまい、そのたびにかなりのしんどさを伴うことになってしまいました。たとえば、キッチュなものが大好きなふわり、というところにフォーカスするのなら、どこの何がキッチュなのか、1段落使って語らせてもいいと思うんです。そういう所で段落を分けてほしいというか、おいしいラーメンなんだからちゃんと素材の紹介をしてほしい、「なるほどふわりはこういう女の子なんだ」という余裕を読者にくれるとスープや麺それぞれの味わいを自分のペースで噛みしめる事ができるんじゃないかと思いました。 

 

こむらさき 「お気持ち爆弾」

 胃壁がキュン! でおなじみのこむらさきさんです。今回も例の14歳年上の同性の彼女を持つミサキくんの話。「責任を取らないといけない」というミサキくんの呪縛に対して「責任取る必要なんかない」という気付きが与えられる、というところが今回の進展。その遅々とした進展(?)を除けば毎度のテンプレ展開ではあるので毎度毎度よく飽きないな……という感じになってしまいますが、実際飽きないというか懲りない人なんだろうな……。思うんですけど、このシリーズ一回エピソードを全部書き出してまとめて把握して中~長編としてイチから再構成したらかなり強度のあるものに仕上がるんじゃないかと。文体も当初に比べると格段にこなれていて小説らしくなってきているので、一度「初見の人でもコレだけ読めば全て分かる!」というような独立した小説に仕上げてみてはいかがでしょうか。テーマとしては文学にまで昇華しうるポテンシャルを持っている非常に強い作品だと思いますし、お気持ち爆弾という語も非常に力強く、ミサキくんの中にある爆弾の描写などをモチーフとしてフィーチャしていくと面白味がさらに出るのでは。ネタ枠といういつの間にか気付いてた自分らしさの檻をそろそろ壊すタイミングじゃないですかね。

  ミーくんとミカさんの胃痛爆弾物語です。ミサキくんの心情の描写は、まるで実際に体験してきたかのようなリアリティが溢れていますね(白目)。 彼の心の葛藤と苦悩がメインに描かれているので、読者はミサキくんと同化して苦しむ事だろうと思います。この後の二人の展開が大変気になる所です。どうか二人が無事着地点を見つけて、ハッピーエンドを迎えて欲しいものですが……。 一点気になる部分を挙げるとすれば、これは物語の性質上なのかもしれませんが、小説というよりはミサキくんの独白録の形式になっているので、例えば視点をミカさん視点に変えたりするなどして、二人に見えている別々の世界のギャップを見せつける等したら、小説として更に面白くなるかもしれません。過去の思い出の昇華だけでなく、そこから新しい何かを掘り出すなどして、作者自身の胃にも、思いもしなかった穴を開ける勢いで書いていくと、確実に面白くなると思います。それ以上は無理っていう展開をぶち込んで、読者の胃を穴だらけのザルにしてやりましょう。 

 こむさんの私小説、個人的には大好きだし、文章力もあってイメージしやすくて、キャラクターの濃さがあるんですが、リアルな人を登場させてどうしたいのか、というのは、根本としてある気がしています。お気持ちを爆発させるおかしな人がいる。その「おかしな人がいるよ!」という呼び込みのあと、読んでる人をどういう風に面白がらせたいのか、そういうコントロールをしてくれると、読者としても嬉しいです。踏み込んで言えば、これはこむさんというパーソナリティを知ってるからこそ面白いのであって、一見さんがフラっと読んだ時に「へー」っていう感想しか出て来ないんじゃ無いのかとおもう。そう考えたら、キャラクターはもっとデフォルメされていいと思うし、「実際にいた人」という前提を取っ払ったっていいと思いました。

 

 蒼井奏羅 「バブルガム」

 また蒼井奏羅さん。えっと、未完でしょうか。ちょっと現状ではまだなんとも言えない感じです。

 

 久留米まひろ 「そんな、わたしがしたいのは恋愛ファンタジーなのに・・・!」

 いったん投稿したものを気分次第で出したり引っ込めたりしないでください。闇の評議会はそれぞれに自分の作品の進捗も抱えている中で限られたリソースから捻出してあなたの作品を読み真摯に講評をつけています。人のリソースを無益に割く非常に不誠実な行為だと思います。以降の本物川小説大賞では一度投稿したものを取り下げることを禁止する条項を明記しようと思います。以上です。

 

 ヒロマル 「彼女が誰かと問われても彼は、サンタである彼女の本当の名前を知らない」

 不測の事故で撃墜してしまったのが実はサンタの女の子だったという定番ボーイミーツガール。以前の戦隊レッドの時もそうだったのですが、三連ミッション形式が好きですね。週間連載っぽさのある体裁。ただ、戦隊レッドの時は最初はぎこちなかったふたりの距離感が三連ミッションをこなすうちにだんだん近づいていく、という演出だったのに比べ、本作においては最初の時点でふたりの間にある程度の信頼関係が構築されており、本当にただ三連ミッションをこなしただけみたいな感じもあって、必然性みたいなのが弱いかなぁと思いました。今回は謎解き要素もありませんし、そういった点でも比較すると戦隊レッドのほうに軍配が上がる。ラストの「だ~れだ?」なども、もうちょっとサンタの女の子が世間知らずでマニュアルで対応してるんだよみたいな仕込みがあればさらに活きた気がします。充分完成度は高いのですが、作者の他の作品を知っているぶん、もっとできるだろうと欲が出てしまう感じ。起爆装置さんみたいなワンアイデアのエッジで勝負するタイプだと多少粗削りでもカバーできてしまうのですが、ヒロマルさんの場合はあまり尖ったプロットではないので完成度で勝負していく感じになってしまいますね。

 過去に本物川小説大賞の受賞経験もある、ヒロマルさんの作品です。完成度が高く、クリスマスを題材としてサンタクロースと主人公の心の交流を主軸に、プレゼントを各家に届ける彼らサンタクロースとしての任務が一話ずつ描かれています。ひとつずつの話を積み重ね、最後に二人の間に生まれた絆がどうなるのか、という構造です。何のストレスもひっかかりも無く読ませる軽妙な語り口は、流石に熟練のそれを感じさせます。ただ、読みやすいがゆえに更なる欲が出てくるのが読み手の心情というもの。取り扱う題材が分かりやすい為、読んでいてひっかかりがなく、綺麗にまとまりすぎている感があります。しかし逆に言えば、その一点さえ突破してしまえば、高い文筆力と相まって誰も追いつかない高みにスイスイ飛んでいく予感もします。そう、まるでサンタクロースのようにね。 

 ……(驚いたような顔でゾンビをじっと見る)

 作品として読みやすくて、しかも読後感が爽やか、という、短編小説としては本当にきっちり収まる所に収まった感じの作品でした。でもそれだけに、もっと読んでいたい、ミッションが過酷になるほど、寝てる子供との絡みとか、そういうエピソードが生きるだろうな……読んでみたいな……とか思いました。 

 

 ポージィ 「うんやん」

 うんこです。比喩や罵倒ではなく普通にうんこ。それも非常に高い知性と教養から繰り出される極めて画素数の高いうんこです。なんなんでしょうかコレは。一発ネタかと思いきや意外と世界観がしっかりしているし語り口も軽妙でヴィジュアルてきに不快であることを除けば読みやすいし正しい医学的知見もあるしで謎に筆者の学識の高さを感じさせます。でも本当に不快でしたね。なんでしょうか、これも闇の評議会を狙った新手の攻撃でしょうか。できれば本当に大賞取ったりとかはしてほしくないんですけど、ねえほんと、お願いしますよ。

 聞いて、これ凄い。何が凄いって、まず臭い。文字なのに、くっさい。あと汚い、文字なのに汚い。しかも喋る、臭くて汚い大便が喋る。もうこれだけで強い、全てにおいて圧倒的な強さを持ってる。最初のアイデアが既に狂っている。まずはアイデア勝利。しかし、これは大便の擬人化というだけのワンアイデア勝負ではないのだ。彼、主人公うんやんは、人間から排出された大便でありながら、自我を持ち、そして六道輪廻を繰り返している。更にその全てが大便に転生という運命にありながら、それを当たり前のものとして受け入れている。いや、楽しんでさえいるのだ。そのどうしようもなく絶望的な彼の境遇を独特の口調であっさりと描き、その終わらない大便としての無限の生を描く、作品の圧倒的なスケール感にまず脱帽だ。そして何よりも特筆すべきは、その描写力の高さ。一話のピーナッツの下りでは、僕の胃の中の麻婆丼を逆流させかける程の地獄のような光景が、丁寧に丁寧に、それは事細かに描かれており、心の底から作者の正気を疑った。うわ、今思い出しても鳥肌が立ってきた。あ^~本当最高。最高にクレイジー。輪廻転生する大便、その仕掛けを使った物語自体も、綺麗に一本道ならぬ一本糞にまとまっており、爆笑しながら読み終えました。皆さん、これぞ糞の投げ合いで世間を賑わす本物川KUSO創作界隈を象徴する作品ではないでしょうか。違いますか、そうですか。一旦トイレ行って、頭冷やしてきますね。 あ^~ 。 

 大賞です。

 勝手に決めないでください(激怒)

 本物川小説大賞の「KUSO小説」っていうのは、正直こんなクソみたいなっていうかまんまクソをクソ小説って言ってるわけじゃなくて、周りにはクソみたいなものかもしれないけど、自分にとっては最高だから読んでねという意味なのですが、ここまでクソというものをがっちりと構えて垂れ流したというこの作品の受け止め方がわかりませんでした。輪廻という謎な壮大さと、巡り巡ってみんなのウンコになるっていう下世話な話を謎の広島弁で語られていくストーリーは、喩えるなら、「最初の30秒読んで脳天をナタか何かでかち割られた後、もう自分としては死んでる、やめてくれと言ってもさらに獲物を求めて彷徨う全裸のおっさん」に出会ったとでも言うか、モリモリの設定なのに何も嫌味っぽくないしうんこくさくないこの筆力に思わず衝撃を受けました。正直、この感想を書いてるのが2017年のはじめての仕事だというのもかなりつらいのですが、これは衝撃でした。 

 

 左安倍虎 「黄昏の騎士」

 重厚で骨太な王道ハイファンタジーですね。魔法の興隆によって騎士による戦いが過去の遺物となった世界での騎士道の話。左安倍虎さんもヒロマルさんと同じで、あまりプロットてきに尖ったところはないので完成度で勝負していく感じになってしまうのですが、確かに完成度は高いんですけど、う~んみたいな。だいたい毎回、王道ファンタジー世界にひとつフックを入れてくる感じで、本作では魔法(呪法)のほうが優位の世界っていうのが特徴でしょうか。でも易水非歌の羽声や聖紋の花姫の調香に比べると画的にはちょっと地味かもしれないですね。聖紋の花姫はイラストの効果もあるのでしょうけど、画的な華やかさがあってよかったんですけど。言ってみればミサイル開発初期の戦闘機不要論みたいな話で、そこに旧来の戦闘スタイルにもまだ必要性があることを主張していく、みたいなのがメインのプロットかと思ったのですが、戦術論をマニアックに詰めるという感じではなく騎士の生き様みたいなところに回収されてしまったので、多少の延命がなされただけでこのままだとやっぱり騎士道じたいは先細りなのかなぁみたいな、モニョッとしちゃう。

 しっかりと練り込まれたファンタジーの世界。時代遅れの騎士団と、それに代わって台頭してくるイヤミな呪法使い達。彼らの微妙なパワーバランスを見せる所から始まる今作。物語の強度が非常に高く、出て来るキャラクターの個性もひとつひとつ立っており、登場人物達の普段の生活、立場や苦悩がひしひしと伝わってきます。騎士達が呪法使いをやっつける単なる勧善懲悪ものではなく、軽視されながらも、その名誉の為に最善を尽くし、自らの名誉も命も犠牲にして忠誠を誓う、高潔で尊い騎士道精神を物語の根幹として描いています。その主題を演出するのが、仲間の裏切りと攻城戦のくだりですが、二万字という制限を全く感じさせない濃密なもので驚きました。ここまでの世界観で、どの場面の解像度も落とさずに描ききる基礎力の高さは見事としかいいようがありません。物語を引き立てるサブキャラクター、二百番目の騎士の使い方も上手く、読後に良い作品を読んだという確かな満足感がありました。不安定な部分もなく、最後まで安心して読める良作です。 

 軽いめの話が続いたところで、硬派なファンタジー小説が来たので「おおっ」と前のめりになりました。左安倍さんの作風が光る感じ。やっぱり何度も読んでるひとの作品って違う内容でも分かるもんだなぁと。ストーリーも非常に楽しめました。ただやっぱり硬いというか、どこかでダレでも入れる入り口が欲しいとも思いました。たとえばビジュアルに訴えかけるシーンがあって欲しい。呪法のシーンももっと派手にやっても良かったかも。たぶん自分の評価では、20点台後半の人達って、もう実力としては十分にあって、あとは好みの問題だと思うんですが、そこから先、僕が気持ちとして評価するとしたら、これを誰かに読んで貰いたい、という気持ちにさせるところだと思うんです。画が浮かび上がるよとか、ワクワクするとか、泣いたとか。この「黄昏の騎士」も、そういうポテンシャルはまだまだいっぱいある。そういう心を動かすものがあって欲しいと思いました。

 

 ロッキン神経痛 「さきちゃんマジで神。」

 掴みの一文はすごく強いですね。ダラダラ喋る感じの思考垂れ流し系一人称は個人的に好みなのでそれだけで評価高いです。でももっとダイブできるよ。自分の自我を完全に解脱してもっとわたしになりきろう。ちょっと文字数に対してスケールが大きすぎた感じは否めず、それでいて前半の日常パートで結構な文字数を消費してしまっているのでさらに後半はバタバタしています。なんとか最後はしっかりと話を畳んではいるんですけれども、最後だけ視点がさきちゃんに移るのはちょっと唐突な感じが否めないかも。もうちょっと構成に工夫というか、単純に計画性があるとなお良いのかなと思います。プロット大事。でもラストの絵はかっちょよさがあっていいですね。ロッキン神経痛さんは本当にこういうところがあるんですけれど、ちょっとした欠陥もラストの華々しさで挽回しちゃうみたいな。右手のペンと左手のアップルをンン~ッ!ってアッポーペンするのが上手い感じ(伝われ)

 まず二万文字の規定に対して、物語が大きすぎます。思いついた世界観の一部を切り取って見せるならまだしも、強欲にも広い範囲を全部書こうとしているのでしょうか。完全にキャパシティオーバーで、後半の展開と場面の転換が粗く、駆け足感が目立っていました。ただ、さきちゃんという既存の作品概念に、ちょっと奇抜なアイデアを付け足して別物にする発想自体は面白かったので、これを一つの材料として、懲りずに次の作品に活かして頑張っていって欲しいと思いますね。はい、頑張っていきます。 

 作者を変えたさきちゃんシリーズ?なんですかね。1話の前半部分からグイグイ引っ張られる感じで、読み進める楽しさがあります。さきちゃんはさきちゃんだった~と比べると、ファンタジーの面白さの方に倒した上で怖い部分が圧倒的に薄れていて、ライトで好感の持てる作りという、なるほど似たような素材でも作者によって全然違うんだなという気持ちにさせてくれました。ハピネスでカプリコを選ぶシーンはたぶんこの作品の中でも一番印象に残りましたが、この手の改行せずにモリモリと書いていくスタイル、実は読みづらくて苦手なんですが、これはすっと読めた。この辺はやっぱり描写の妙味なんでしょうか。

 

 くすり。 「ちるちるみーちる」

 あ、つらい。コンチェルトどうなっているんでしょうか。ちるちゃんとみーちゃんの会話だけで構成された会話劇。特にこれといった展開もオチもなく、終始掛け合いだけで進んでいきます。なんていうか、はい、本当にそれだけです。僕はただただ悲しい。

 「何だこれは、これが名誉ある本物川大賞受賞者による作品だと言うのか。」ホンマタ・ノムワ三世(西暦一世紀前半~没年不明)

 まず、くすりちゃんさんは、文才が脳みそからところ天状にはみ出してそのまま農協に顔写真付きで出荷出来るくらいあるんですから、この作品を提出した事をちょっと反省してください。僕が言うまでもないとは思いますけど、糞創作の糞というのは一種の揶揄であって、肛門からひり出したそのまんまのホカホカの糞を「はい、糞を召し上がれ♪」って満面の笑みでお皿の上に盛ってこられてもですね、おおこれはこれは……糞でござるなヌホホ!としか言いようがないですよ。次回、ちゃんと講評できる糞創作、待ってます。 

 会話文でのスキット、寸劇を中心にした作品でのガールズトークくすりちゃんの得意分野なのかなーと思いながら読んでいましたが、ねっとりした描写をばっさり切り取り、会話で読ませる作りにしている。ただ、掛け合いのテンポはもっと気をつけた方がいいんじゃないのかなと思いました。敢えて言えば、ちょっと白々しい、上滑りな部分がどうしてもひっかかる。こういう軽い話を2000字ちょっとで終わらせるのって難しいけど、最初から滑ってしまった感がある。正直、惜しい。もっとやれたはずだろうに……とかも思っています。次出してもらえるのなら、是非期待したい。 

 

 黒アリクイ 「成長痛」

 親元から独り立ちした社会人が帰省するかどうかで悩む話。なんていうか、つらつらとしていてちょっとボケてしまっている感じはありますね。自分がそのテーマでどこにフォーカスしたいのかという意識をもう少し強く持つとクッキリとするのかも。こういった文芸的な題材はエンタメよりもさらに素の文章力や描写力というのが求められるので、単純に文字数が少ないといった問題もあります。もっと丁寧に語り部の心理に寄り添って描写していかないと、たんにこういうことがあったんだよねで終わってしまいます。

 帰省を題材にした、主人公の葛藤のお話。全体的に味付けが淡白で、小説というより日記に近いように感じました。描写力はあるので、起承転結の部分に思い切った調味料をごっそり入れて、読む人の舌にピリリと響く味付けをしていくと良いと思います。思い切り突飛な設定をねじ込んでみて、それをどうコントロールしていくか、など試行してみると、思いもしない金脈にぶち当たるかもしれません。今後に期待です。

 何気ない日常、何もない世界を「ものがたる」というとき、過剰に山や谷を付け足して、日常でなくしてしまうこと、あるいは作品よりも淡々とした雰囲気や、自分の頭の中に浮かんだ話でまとめてしまおうとすることで、作品としての転がし方に失敗して、日常を淡々と語るのではなく、平板にしてしまう、何の面白みもないものにしてしまうことはままあると思います。黒アリクイさんの「成長通」は、面白くする素材はいくらでもあると思う。帰省するかしないかを友人と友人の姉の二人に代弁させ、揺れ動く心と、その決断と顛末というアイデアはいいけど、もっと「主人公の決断」に対する心理の掘り下げ方があったんじゃないかなと思います。主人公がコイントスで決める事への決断があってもいいと思う。二人に言われた後にコイントスで決めたシーンがあっさりすぎるのはとても勿体ないと思う。もっと、エイヤで決める事への心理の移ろいみたいなものがあっても良かったと思います。 

 

 不動 「弓と鉄砲」

 立花宗茂黒田長政による弓と鉄砲での勝負の話を、昔話として立花宗茂が秀忠に話して聞かせているという体裁。実際の歴史的逸話をベースとしているのでコレといったエンタメ要素はないのですが、やさしい感じの語り口が軽妙で魅力的ですね。不動さんはだいたい毎回異常なまでの質感を持ったメシ描写で読むメシテロをブチ込んでくるのですが、今回はメシがないのでその加点がないです。習作としてはこういうのも良いと思うのですが、もうちょっと「ココを見せたいんだ!」ってところがクッキリしてるとよかったかも。

 弓と鉄砲の使い手同士の腕比べを描いた作品。かなり固めの文体ですが、その文筆力の高さもあり、映画を見ているかのように語り手と実際の腕比べの場面が交互に浮かびあがりました。ただ、物語の語り手が何度か交代する演出が見られるのですが、そこにあまり必然性が感じられず、ちょっとした違和感程度で終わってしまっています。話者を交代させるのであれば、彼らに関する描写(この物語を何故語り継いでいるのか等)があると更に良くなると思います。一連の話は結末も綺麗に収まっていたので、面白く読ませていただきました。  

 実際にあった立花宗茂黒田長政の弓と鉄砲の腕比べを換骨奪胎して、戦国武将達にその出来事を語らせる、という試みは大変面白かったと思います。文章もすっきりしてて読みやすい。構成と文体にリソースを割いておられたなら、まさに勝利だと思います。ちょっと惜しいなって思ったのは、1話と2話ではちゃんと語らせる戦国武将のキャラクター付けがあったんですが、3話からは語り口調を変えた程度に感じられて、もっとその辺は工夫できたというか、たとえば各キャラクターの気持ちや見方が分かるような「脱線」を入れても良かったのではないかと思います。(各武将は弓と鉄砲、どっち派だったか、とか) 

 

 たかた 「明太子プロパガンダ

 ご新規さんです。タイトルの語感がまずいいですね、明太子プロパガンダ。なにかあると思わせておいて明太子プロパガンダじたいは特に絡まないんですけど、なんか良い感じ。基礎的な文章力が非常に高いです。お話としては特にこれといったことはなく明太子売りの日常を綴っていっている感じで、いちおう職場の嫌な感じの上司が実は……みたいな展開もあるんですけれども、実は~が判明してもやっぱり普通に嫌なヤツなんですよね。別にそれで心象が良くなったりはしない。これだけの分量を割いて変化といえるのは「なんか分からんけど主人公が今の自分自身に対してちょっと肯定的になった」という半歩程度の緩やかなものなのですが、これぞ文芸という感じです。なにがきっかけで、などの明確な一対一の関係性で成り立っているものではないので、結局はそれを見せようと思うとこれだけの分量を使わざるを得ないのですね。黒アリクイさんのところでもうちょっと丁寧に分量多く、みたいな話をしましたが、それをきちんとやるとコレになります。じわっと来るようないぶし銀の良作。

 主人公の心情が丁寧に描かれ、彼女の抱える悩みとモヤモヤがそのままダイレクトに伝わってきます。何て事はない日常生活の中で起きた、ちょっとした事件とそれによる変化。彼女の視点になって読んでいると、自分の中にもある、もしくは必ず一度はあっただろう、自分とは何かという恒久的な問いを呼び起こさせられました。作中、イヤミで浅はかな人物として描かれる寺島さんというキャラクターの根幹を、全くブレさせる事無く別人のように感じさせる演出は、作者が高い技量を持っているからこそのもの。作品の解像度が高く、地力があると小さな日常をテーマにした作品も、こんな重厚なものになるんだなぁと感心させられました。奇をてらわない、真っ向勝負の良作です。  

 実は「日常系」、それも現実離れしたものをフックにしないものって、書くのがとても難しいと思っていますが、ちょっとおかしみのある文体で、とはいえ淡々と日常を描いていく中、明太子売りの女性の日々を描いて、最後までつっかかりもなく読み進めた上で、ちょっと面白さがあって、それでいて変に訴えるところがない。これがめちゃくちゃむずかしい。ちょっとすると変なテーマを入れたり、あるいはテンポ作りに失敗したり、山と谷を作るために妙にラッキーを作ったり主人公を無理に陥れたりする。そういうのをせず、ひたすら平板なのに、お酒を飲んだり、一人でさめざめ泣くだけの食品売り場のお姉ちゃんの日々を読むだけなのにどうしてこんなに面白いのか。それを実現されているたかたさんの作品は非常に文章力が高いと思っています。個人的に大好きな部類です。これはつらつら読んでいきたい。

 

 ボンゴレ☆ビガンゴ 「世界が終わるその夜に」

 ご新規さんのビガンゴ先生です。ネタとしては去年に大澤が書いた「クリスマスがやってくる」と完全にカブッていて真正面からのガチンコファイヤーボール対決に。同じネタとはいえ見せていきかたに違いがあるので、両者を比較してみるのも面白いのではないでしょうか。ビガンゴ先生は他の小説だとラノベを意識しているのか高校生ぐらいの年代を主人公にしたものが多い気がするのですが、こういった大人の恋愛を描かせたほうが上手くハマる感じがしますね。ツイーター上での芸風もピエロそのものですが、普通にオシャレな感性を持っているので自分では気障すぎるかなって思うくらいにカッコイイものを書いちゃっても全然大丈夫なんじゃないかと思います。上中下の三話構成で特に下に入ってからの語り部へのダイブ感がすごくて普通に心が揺さぶられました。ただ、あまりソリッドな質感を出すと色々と気になってしまうタイプの設定だと思うので、中の説明的な部分がちょっと余計だったかなと思わないでもない。語り部の性質的にもそのへんは曖昧にかっとばして終始もっと主観にダイブしていってもよかったかも。いずれにせよ間違いなく大賞候補の一角です。さすがビガンゴ先生!

 個人的に好きな終末世界を描いた作品の上、イキの良いジジイが出てくるので、なるべく冷静を心がけて評価したいと思います。まず、終末世界にありがちな、略奪・殺し・自殺などの、いわゆる闇の部分を描かないのが、作品にとても良い効果を出していると思います。少し関係の冷めた恋人同士、世界の終わりまで通常営業を続けるマスター、誰も居なくなった水族館で一人働くおじさん。どの登場人物も、何らかの葛藤が終わった後のさっぱりとした悟りの中にあり、絶望の中で絶望していません。だからこそ、舞台装置としての終末が存分に活きているのだと思いました。もしもこの中に、葛藤のまま終わりを迎えようとする人物が一人でも居たら、きっとこの作品の持つ空気は壊れてしまうことでしょう。だからこそ目立つのが、「中」でのとってつけたような世界観の説明の荒さです。恐らく、既に終末を受け入れ終わった、ある意味達観したキャラ達を動かして、台詞の一端で匂わすだけで、読者はその背後にあるものを汲み取ってくれるのではないかと思いました。あの説明をしている感が、作品にある終末の心地よい空気感をチープなものとしてしまっている点が、他が大変良いだけに気になりました。結末に至る部分は、その点を補って余りあるほど良かったです。あえてその後を書かないのも、美しい余韻となっていました。  

 実はボンゴレさんのは前もっていくつか読んでいたんですが、正直いって、どんなジャンルでも展開が淡々としてて、会話文も「読めなくはないけどただ続く」という印象が強くて、山や谷がない、「おっ?」と思わせるフックがない、話としては平板だなという印象でした。 ボンゴレさんは、「物語が予期しない方向へ転がしていくことを抑える」事がクセとしてあるんじゃ無いかと思ってました(僕も言っててなんですが、予期しない方に行くとお話が簡単に破綻してしまうから危険ではありますが)。それを前提にした上で、今回の「世界が終わる」という設定は、ボンゴレさんの文体とすごく合ってた。世界が終わる、という設定を最初に持って来たので、まず読者としては「本当に終わるのか?」「ハッピーエンドで終わらないのか? まさかハッピーエンドか?」という予想を立てながら読む、裏切られないかという緊張感が出る。だから一文ずつ集中し、その都度想像していく。没入感が出てくる。こうなると、文章が平坦でも、それが失ってしまう日常への寂寥やいとおしさみたいなものへと感じられてしまう。これはもう設定の完全勝利だと思います。ただ、敢えて言えば、今回の設定が意図したものであったとしても、平坦な文章をどう変えていくのか、という部分において、文章の地の力としては課題があると思ってます。 

 

 不死身バンシィ 「ホホホ銀行SF」

 みずほ銀行の勘定系新システムがいつまでたっても終わる見込みもなくて現代のピラミッド化している、というところから着想したSF小説横浜駅SFてきなレトロサイバーパンクな世界観なのかと思ったら完全に世紀末救世主のほうでちょっと戸惑いました。いちおう話の筋としてはパンクな世界の中で、世界がそのようになってしまった原因に行きつくという、それ自体はオーソドックスな形式なのですが、そもそもタイトルとあらすじ欄で銀行の合併のゴタゴタが原因で世界はこうなったっていうことは明かされているので、そこに帰納していく筋だと作中の登場人物にとっては意外な真相なのかもしれませんが、読者にとっては「お、そうだな」で終わってしまうところがあります。そこは演繹的な筋のほうが良かったんじゃないかなと。細やかなバカバカしいコメディ描写には定評のある作者なので今回も途中途中で細かく笑っちゃうところはあるのですが、物語の大枠の組み方をちょっと間違えたのかな? みたいな感じがあります。

 タイトルから、某メガバンクを連想させるSF作品です。三話で構成されており、荒廃しきった世界をそれぞれ別視点から描いています。独自設定のAIを持った戦うATMというアイデアが光っており、彼らと戦い地域を制圧、取り戻そうする傭兵達のキャラも良く、息をつく間もなく読み進められました。全てを犠牲にしながらも戦い続ける彼らの熱さが伝わり、とても良かったです。そして二話三話では、ホホホ公国について、この終末的状況に至るまでの経緯が語られるのですが、一話の世界の被支配者側から支配者側の視点に切り替わる為、作品の空気感が一転します。二万字の文字数内では、このテンションの上下が激しく感じてしまい、没入感の低下に繋がっていると思います。ただ、本気で書こうとすると短いですよね二万字って。対策としては、この際書きたい事は我慢して、地の文で世界観をサラリと説明しつつ、戦闘を濃密に描く等すると綺麗にまとまるかなと思います。 

 この作品は本当に読むのが難しかったです。たぶん不死身さんも迷ったんじゃないかなと思います。某駅のSFと某青い銀行のトラブルという素材を使ってパロディに行くのか、シリアスで行くのかの判断、その上での文章の量……そういうものを悩みながら進めて行くうち、オチに着地できずに終わってしまったという感じです。個人的に不死身さんはふだんから長い話をかける力量があると思ってますが、ここではむしろ、なまじ長い話なぶん、話がくどくて悪い方に作用してしまった感じ。パロディなら勢いだけにして短いお話ですっぱり切った方がよかったかもしれません。 

 

 今村広樹 「good-bye wonderland」

 えっと、ちょっと分かりませんでした。かなり特殊な叙述の仕方がなされているので、これによってなにか作者が狙っていることがあるのかもしれませんが、少なくとも僕には伝わってないです。僕が分かってないだけでなにかあるのかもしれませんから、それで即ち失敗とは言いませんけれども、なんなんでしょうか。

 全体的によく分かりません。単なるプロットの書きなぐりメモじゃなくて、人に見せる意識を持って書くと、やっと小説になると思います。身近な人に冷静な目で読んでもらうか、自分で音読してみて下さい(怒) 

 これもオムニバス形式で何かのテーマが浮かび上がってくる感じですが正直何を書きたいのか全然わかりませんでした……断片が断片過ぎて……。理解でなく感覚でつかんだ感想をするなら、ここまで文章を削ってもキャラクターが浮かんでくるというのは今村さんの潜在的なポテンシャルは高いとおもいます。何かの雰囲気をイメージとして浮かばせる事に成功した、次はストーリーを作って、ぜひ、このイメージの流れを作ってくれると嬉しいと思います。

 

 芥島こころ 「さきちゃんはさきちゃんだったって話」

 またさきちゃんです。さきちゃんがどんどん謎の象徴化していきますね。どんどんやっていきましょう(?)。体裁としては不思議の国のアリスてきな行きて戻りし物語で特筆すべきことのないプロットなんですが、さきちゃんシリーズのお約束みたいになっている不親切な女の子の完全主観一人称叙述で、ただでさえ不思議の国なのがさらに不思議度マシマシで不思議な感触です。特にどうという話でもなく変則的な一種の夢オチのようなものなので、お話として評価しようとすると難しいところもあるのですが、想像力の限界を試されているようななんとも言えない良さがあります。

 いつの間にか始まったさきちゃん二次創作シリーズの親、元祖さきちゃんの作者による新作さきちゃんです。前作のさきちゃんの続きだと思われます。突然神隠し的に、ファンタジーワールドに巻き込まれてしまう主人公が、妖精と一緒に現実世界に帰ろうと励むお話です。さきちゃんが直接出てくるのは、ほんの一部分だけなんですが、色々な所でさきちゃんを匂わせる演出がされていて、夢の中を泳ぐような独特の世界観に華を添えています。あと、さきちゃんの事で頭がいっぱいな主人公はサラッと受け入れていますが、迷子になってしまった彼女に妖精が提示する時間単位が500年だったりと、ゾクゾクさせられるホラーな展開が続きます。それでも安心しながら読めるのは、これもさきちゃんという概念が闇夜の灯台のように作品中に光っているからでしょう。作者の持つ特有の世界観を味わい尽くす、何とも不思議な冒険譚でした。 

 主人公がさきちゃんを探すストーリーが、なんていうかおとぎ話のようなんですが、ところが主人公がやたらサイコっぽいのでものすごい危険に思えてくる。いやホラーではなくてファンタジーなんですが、なんていうか、最初はメルヘンで可愛い話が、だんだん不条理で底の見えない話に変わって行くけれど、最後はやっぱりメルヘンで終わる、というのがあって、それがさきちゃんを探す「ゆきて帰りし物語」の中でアクセントになってて、本当にうまいなと感じるところでした。 

 

 宇差岷亭日斗那名 「今日も空は青かった。」

 基礎的な文章力は非常に高いのですが体力と集中力に難のある作者です。本作は典型的なラブコメてき設定から始まって急転直下でなんかよく分からない展開に。従来の作品よりも話に展開があるのでそこは良いと思いますし、やろうとしている足し算が成功すればかなり面白いものになりそうな予感はあるのですが、単純に分量と解像度が足りないかな。もう少し丁寧にやらないと読者がついていけずにポカーンとなっちゃうかも。一般には理解しがたいような屈折した感情の揺らぎのようなものを描こうとするのであれば、やはりそれなりに筋道を整えていかないと難しいと思います。うさみんていさんにもたかたさんの明太子プロパガンダが参考になるかもしれません。

 まず、面白かったです。宇差岷亭(読めない)さんが、前回応募された作品も拝見していましたが、回を重ねる毎にメキメキバリバリパワーを上げていると思います。流れるように、しかし丁寧に描写がされており、読んでいて何の抵抗も無く物語の世界に引き込まれました。そしてストーリーに没入したところで、突然オラシャ!ビッターン!と作者にグーパンで地面に叩きつけられる展開が待っています。その構造のひねくれっぷり、ジェットコースターのような急下降が面白く、同時に勝手にシンパシーを感じました。ただ、その急展開の部分については少々説明不足で意外性が空回りしている感も否めないので、彼等が突如その領域にいたるまでの必然性を物語の途中に隠しておけば、読者をショック死させられる程面白い作品になると思います。ただ好き同士だったという事以上の何かが欲しいところです。個人的には、是非その意外性の念能力を鍛えて、最強のトリックスターになって欲しいと思います。  

 内容的に好みだっただけに、結末の直前でよくわからない展開になっていたことが残念でした。「暴力を塗り替える暴力」を頭から否定しているわけではないのですが、でも、普通は「暴力を塗り替える暴力」は、ありえないはずです。だったら、主人公がヒロインの首に手をかけたときの「暴力」と、それを受け容れた時のヒロインのシーンで読者はそんなことがあるのかと疑念に思っているということをきっちり意識して欲しい。文章力もキャラクターの良さもあったのに、構成として、「暴力を塗り替える暴力」を彼女が受け容れてしまったのかがあっさりすぎた。そこは読者としては普通なら「なぜ」が生まれるところで、これをテーマにした以上は作者としてきっちり描ききって欲しい部分でした。ここからは勝手な想像ですが、いつもの彼女でない事を察した主人公が、彼女を殺す事で彼女を「いつもの彼女」に再生させようという思いがあった。しかしそれに主人公自身が気づき、その身勝手な行為に恐怖したとき、むしろ彼女が、自分を否定し再生させるためにそれを望んだ……という展開をとりたかったのかなと思いましたが、それならもっともっとこの点は掘り下げて欲しかった。主人公やヒロインの前フリとしての会話に、そうした再生を予感させる伏線なんかがあっても良かったでしょう。首に手をかけるシーンはもっと深くあってもよかったのではないかと思います。 

 

 綿貫むじな 「師走に死者は黄泉返る」

 死者の黄泉返りを主題にした作品。ホラージャンルになっていますが、あまりホラーな展開はないです。ホラー作品として見せようとするには説明が丁寧すぎるかなと思います。恐怖というのは基本的によく分からないもの、理屈のつかないものに対して感じるものなので、ここまで丁寧に説明してしまうとただの出来事になってしまいます。そこまで突飛な設定というわけでもないのでもっと出す情報を絞っても大丈夫でしょう。現状ではホラーというよりは死神のほうの子を主人公にした連載少年漫画の一話みたいな印象が強いですが、でもそれならそれで、ちょっと見せ方が中途半端というか、どちらを主役に据えたいのかが曖昧になっている感じ。もうすこしプロットを整理したほうがいいかもしれません。あと単純に「時々休日の度に」などの(?)となってしまう表現などがあったので推敲をもう少し重ねましょう。

 タイトルから想像していたのはゾンビものでしたが、作品に登場するのは単なるゾンビではなく、あの世の手違いによって蘇った死者であり、不本意にも生者の熱を奪わなければ消滅してしまう哀れな存在である、という工夫がされています。ゾンビの発生には理由や原因が明示されない事が多いのですが、この場合確かな加害者があの世にいる訳で、モンスターであるゾンビ達にも同情が出来る点が味となっていました。腐った死体ではない故に、蘇った故人と対話するというのも新しい。死神少女との今後も想像させる引きも、短編の締めとしては綺麗にまとまっていました。ただ、故人が蘇ったという衝撃の出来事に対して、主人公含む登場人物の反応がやけに淡白に感じ、そこで没入感が剥離してしまったので、彼らの感情の起伏をより激しく描くと更に良くなると思いました。 

 作品としてまとまりがあって、お話として完結しているのはあるので、楽しんで読めました。いくつか気になるというか、ぼく個人の好みなんでしょうが、やっぱり死、蘇りというテーマを扱うのなら、そこをもっと掘り下げて欲しいなと思わなくも無いです。むじなさんの作品は、アイデアが良くて、描写もそつないのがすごく好きなんですが、絶対もっとポテンシャルがあるという気がしています。抽象的な物言いで申し訳ないんですが、もっともっとキャラクターの心の奥深くを考えていって欲しい、作者本人が、作者の作り出した世界や人でもっと遊んで欲しいと言えばいいのか……そういうところで、もっと違う何かを取り出してくると嬉しいと思います。……何かというのが明確な言葉による心理描写なのか、別のものなのかは分からないけれど、きっとお話に深みが出てくるんじゃないかと思いました。 

 

 久留米まひろ 「時の祝福」

 色々と難がある作者なのですが、いちおう毎回なにかしらを出してくれていて、そして回数を重ねるごとにふつうに文章がうまくなってきていることがウケますね。やはり誰であれ書き続けていけば上達はするというのは当たり前の真理ではあるようです。ただ文章そのものは上達していますが相変わらず小説の体にはなっていませんし普通に気持ち悪いので困ったものですね。今回のは話の筋は飲み込めましたが、これでは結局たんに冒頭部分だけであってただの未完作品だと思います。2万字までの小説を出せという規定なので規定内の分量でちゃんと物語を畳んでください。いまの自分に取り回せない規模の物語を描こうとしても無理です。とりあえず上達はしてきているので引き続き頑張ってください。

 唐突に息子に謎の薬を飲ませようとする謎の父親に、黙ってそれを飲む主人公。目覚めると部屋にモデルガン風の実銃を持った謎の男が入ってきて、そこで主人公は謎の能力に目覚めて……。粗が目立ちますが、前回応募作である光の剣に比べると、確実に描写力は上がっていると感じました。後は作品中の違和感となる「なぜ」「どうして」という描写を客観的に分析していけば、違和感なく読める小説になると思います。あと、作者の何らかの性癖や嗜好が出てくるのもKUSO創作の大変面白いところなんですが、あまりそれを剥き出しにし過ぎるのは、その、どうかしてると思いますよ、はは。 

 厳しい言い方なのですが、正直、破天荒すぎて何が何やらわからないというのが正直な感想です……。序盤の薬を飲むシーンは違和感でしかないし、いきなり銃撃されるのも分からない。謎の薬、謎のナノマシン、謎の大澤めぐみ……。これがギャグだと言ってくれるならかなり難解なギャグだなと思うんですが、どうも読み進めていくとギャグじゃないらしいという事が分かって来て、さらにわけがわからなくなる……。「何故そんなことに」「何故そうなる」と思わず何度も口に出してしまいました。プロットを練って、誰かに読んで貰って、何か違和感がないかをまず考えてみるべきだと思います。文章がおかしいというわけでもないし、小説のお作法から大きく外れているわけでもないのに、話がよくわからない(不自然な)方向へ転がる、そしてちゃんと終わらせられないというのは、明らかに頭の中にある物語を持て余しているからだと思います。この辺はもっと誰かに話してみて、纏めるようにした方がよい。

 

 ラブテスター 「忘れな歌」

 文字数オーバーのためゼロ点です。読んでみた感じ、とてもではないが2500文字を削ることは不可能だ、とは思わなかったので単純に努力が足りません。仕様というのは決して曲がらない絶対的なものなので、たとえKUSO創作大賞と言えども2万字までという規定がある以上は2万字までです。実際に、もうすこしスマートにしたほうがもっと澄んだ読み味になると思います。現状ではちょっと主題があっちこっちにバラけていて、たくさんの登場人物が無駄に豪華な書割りという風情で厚みがなく、どこにフォーカスしたいのかが自分の中でも整理がついてなさそうな印象。狙いは分かりますし文体とホラーの相性は良さそうなので、ちゃんと狙い通りの効果を引き出せたら良いものになりそうなのですが、現状ではうまく機能しているとは言えないと思います。自分の中では意味があるのかもしれませんが、読者に伝わらない意味深なだけの意味のない演出というのは総合的に見るとマイナス点のほうが大きいと思います。傍点のことです。

 残念ながら文字数オーバーです。規定を守って楽しくデュエル! ガードレールから聞こえる不思議な歌をキーとして、様々な物語が進行していくお話です。以前の応募作でもある腕食いでもそうですが、作者の紡ぐ言葉の丁寧さと装飾の美しさには目を見張る物があります。ただ、今作においてはその文体の美しさが、聞こえる歌の謎、いわばオチに向かうまでの期待のハードルをかなり上げている印象があり、その期待に対して明かされる真実が弱いと感じました。その為、読後に物語の中心が結局何だったのかが掴みにくくなっています。あとは牽引力のある主軸さえあれば、最強です。 

 オムニバスな展開から、歌というテーマを浮かび上がらせようとするのは、とてもレベルの高い内容だと思うので、そこにチャレンジしたのは素直に賞賛するけど、読者にそれぞれのキャラクターを追っていかせるにはどうしたらいいか、という考え方をもっと強化して欲しかったです(好みもあると思うんですが……)。たとえば2話、高校生のT井の「ひどくさみしい」という言葉で表現できる心理があっさり終わっているのがとても惜しい。 父を亡くした高校生の男の子の心理にしては気恥ずかしいかもしれない。前段でていねいに情景を書いていたはずが、一番大事なキャラクターの気持ちのうつろいを「さみしい気持ちになっていた」で片付けてしまったのは、ぼくはすごく惜しいと思う。自分の将来に悶々としていた時、さみしいと思った時、そういうときの目に見える色んなものの見方は、ふだんとは変わるかもしれない。変わらないかもしれない。そういう心理状態のうつろいから見える情景描写が、僕は好きです(心の動きで1話ごとの起承転結にメリハリも生まれるし、テーマがくっきり浮かび上がると思うし) 

 

 綿貫むじな 「DJマオウ」

 この作者にしては珍しい100パーセントギャグ作品。たぶん、元ネタはDJラオウ(なつかしい)でしょう。魔王がDJの深夜ラジオという設定。設定じたいにおかしみがありますし、文体も軽妙で非常に読みすすめやすかったのですが、本当にクスクスとちょっと笑ってそれでおしまいという感じでもったいない感じがしますね。軽い設定とライトな読み味を絡め手にして、もっとすごいところまで話を展開させたりもできそうな気がします。本作単品で高く評価することは難しいですが、もうひとつふたつ足し算して上手く融合できたら大化けしそうなポテンシャルを感じます。クソネタとして使い捨てにせずにアイデアは心の隅にとっておいたほうがいいでしょう。

 まず言わせて下さい。この手があったか、と。本作はDJマオウによるラジオ形式の作品です。一体魔王はどうやって放送を発信してるんですかね、やっぱり魔界全土に発信される魔界アンテナがあるんでしょうか、もしくは子供の頃なら誰もが(?)やっただろう、一人DJごっこ……?なんとも夢が膨らむところです。また、ラジオ大好きっ子には堪らないのが、要所要所で挟まれるカギカッコの注釈。(トランペットを主旋律としたBGM)とか最高です。まさにwebならではの表現ですね。基本的に登場人物もマイクの前に座っているだけなので、余計な描写も不要でぎっしりと情報を詰め込める。面白い手法だと思います。  

 こういうテンプレファンタジーの枠を使いながら、枠を壊していく内容、すごく好きです。魔王がDJやってお葉書紹介やトークをやるっていう作りはアイデア勝利ですね。1話はグイグイ引き込まれる感じで最高でした。もっともっとアホな話やラジオあるあるで盛っていって欲しい。恋愛相談、渋滞情報(ダンジョン混雑情報?)、スジャータ時報、妙なジングル、放送作家、ありがとう浜村淳、深夜のリスナーポエムで感動して泣き出す(嘘泣き)声優……。そういうパロディやメタネタを盛り込めるなって思うと、まだまだ引き出し、ポテンシャルのある内容だと思います。

 

 鈴龍 「年末」

 うーんと、たぶん特に引っかけは仕込まれてないですよね? 普通につらつらとした日記調の文章です。柿の木を見たらなんかおじいちゃんを思い出して仏壇に手を合わせた。本当にそれだけの話。たぶん本人の中ではそれはあるていど意味のある大事な感情なのでしょうけれど、この分量でそれを伝えるのは難しいのではないかと思います。単純に、もっと文字数を使って解像度を上げていきましょう。

 ほのぼのとした、田舎の生活と思い出を描いた作品。個人的には、ジジイとババアが出てくるとそれだけで弱いです。泣ける。基本的に思い出を振り返りつつの日記風のお話になっており、読みやすいです。後は視点人物である”僕”の感情の起伏がなく、エピソードの割に味が淡白に感じられたので彼の心情風景をたっぷり見せるなどして、合間合間に思い出話を挟んでいくと、切なくて泣ける良い話になると思いました。 

 年末、帰省した実家で、ふと昔の出来事を思い出す……という話を膨らませていったお話。自分にもそういう事もあったな、と思えて、しかも心がほっとする、良い作品だったと思います。散策をしながら実家の身の回りのものを見つめ、そこから過去を思い出していく作りですが、私小説の体裁をとっているぶん、散文的な内容でもすっきりしている感じがします。(たぶんこれに描写を加えると、途端に作り話めいたものになるんでしょう)小さな話だとは思いますが、こういう小さな話があると、本当に心が安まります。 

 

 不死身バンシィ 「ベルリア魔鉱山採掘者ペイジの手記」

 17000文字未満という文字数なのに全17話というかなり小刻みなちょっと変わった構成。前回のでかいさんの箱庭的宇宙を彷彿とさせる体裁です。あちらはメールのやりとりでしたが、こちらは手帳に残されていた手記という設定。でかいさんの時もそうでしたが、この体裁は物語の隙間を細かくキングクリムゾン(ぶち飛ばす)できるので、少ない文字数でもかなり大きな物語を取り回すことができます。加えて、本作では短く端的な表現で文章に情報量を詰め込むことをかなり意識しているっぽくて、文字数あたりの情報量がほんとうに多く、読み終えてみると「これでたった17000文字なのか」とびっくりします。実質的なオチは蛇の月六日のたったの7文字でしょう。最後は爆発オチという感じなので微妙なのですが、この体裁はまだまだ可能性があると思うので、これも使い捨てにせずにいつか再構成してもらいたいですね。これで全体に張り巡らされていた謎がラストにギュッとくるような構成になっていたら満点でした。

 これ、世界観フェチにはたまらない一作です。設定は元から用意されていたのか、今回即興で作り上げたのか分かりませんが、当然顔で現れる現実感のあるファンタジー世界は、大変魅力溢れるものになっています。ホホホ銀行SFといい、作者の想像力に底知れぬ物を感じますね。実際の文字数の数倍以上にも感じられる読後感は、手記という形式による効果を最大に活かした結果でしょうか。どの場面転換にも違和感がありませんでした。一つ挙げるとするなら、最後の事件を具体的に予想させる伏線づくりがあると尚良かったと思います。読み返しても、想像の余地が随所に残されていて、読者の想像を掻き立てる、良い作品です。  

 ほほう、こう来たか……というのが正直な感想です。何気ない手記から始まり、これはどう終わらせるんだ? と思ったら、手記でオチをつけるのではなく日報として終わらせるのはすごくうまい。自分でもこの手の手記もの書いてますが、不死身さんの作品を読んで思うのは、「読者である自分が作者からの手がかりを得て想像する」楽しみ方ができるんですよね。手記だから、断片的でも読み飛ばしていけばいい(≒読み飛ばすしかない)部分もあるけど、だから伏線を張るのも楽しいし、あれこれの仕掛けが作れる。そして読者もまたもう一度読み直して、あっここ伏線だったんだなと思えてくる。あまり「書いた人しか知らない・分からない事」を盛り込みすぎると、これは自分が読むものではないと読者がわざわざ手記を書いた人間の中に入ろうと思えなくなるので、そこのくすぐりというか、多くの人が読みたくなる仕掛けがあってもいいと思います。大変面白く読ませて頂きました。 

 

 既読 「ビタミンC」

 本物川文芸勢で間違いなく最強の一角だと思うのですが、未だに無冠の既読さんです。この作者は限りなく研ぎ澄ませた一文に非常に強い力を持たせてくるのが上手い、居合抜きの達人のような技術を持っているのですが、本作においても「感情は完全にコントロールされている」という、それだけだとなんでもないような一文が主題として繰り返し提示され、読後にはこの一文がどれだけ研ぎ澄まされたものであったのかが分かるという感じがします。ミステリーということで、エンタメ的な謎は他にちゃんとあるのですが、僕はこの「感情は完全にコントロールされている」という一文の意味というか、重みのようなものが読んだ前と後で全然異なって感じられるこの効果こそがミステリーだなと。既に完成されている作者なので、僕から言えるようなことはなにもないです。

 上手い、上手いわー。いつも中長編で圧倒的戦闘力を見せつけていく既読さん。短編ならなんとかケチをつけられるだろうと思い、偏見の目をギラつかせつつ読んだんですけど特にこれと言った欠点は見当たりませんでした。とても悔しいです。ビタミンCという聞き慣れたワードや、合間合間に挟まれる「感情はコントロール出来ている。」というかっちょいい台詞は、しっかり読後感に紐付けされて、この作品の印象を強くしていると思います。描写表現は勿論の事、作者はマーケティング力にも優れていますね。是非そのやり方は盗んでいきたいです。  

 非常に安定している。なんていうか文章に風格があるというか、プロのような味わいを感じました。序盤のストーリーからビタミンCという単語をフックにしたまま、結末まで持っていく力に感心することしきりでした。なにより、結末。まさかこうなるとは思わなかったんですが、その思わない話へと持っていく力がある。今回、ぼくの評価軸に「キャラクター」を入れているんですが、これはキャラクターの個々の味付けがなくてもしっかり楽しめる作品なので、ちょっと後悔しています。正直、文句の付けようのない作品でした。 

 

 enju 「コナード魔法具店へようこそ」

 これは完全なダークホースでした。めっちゃいいです。好き。全7話で10000字程度と、かなり文字数は少ないのですが、ライトな読み味のわりに詰まってる情報量が多いというか、繰り出されるロジックが設定厨もニッコリの納得の出来でめっちゃコスパいいです。あ~ライトな感じなのねってサクサク読んでいたらウオオオンと唸らされてしまう感じ。読み味がライトなので人にもオススメしやすいですね。連載作品としてまったりと続いてくれたらうれしいかも。個人的には大賞候補の一角です。

 様々な魔法グッズを扱うお店のお話です。一風変わった魔法グッズの紹介を続けていくのかと思いきや、道具と共に物語の世界観を感じさせる情報を散りばめていき、徐々に彼らの関係性や物語の世界観を理解させていく仕組みがガッチリはまっています。また、説明臭さが全くないまま、読者を作品世界に引き込むその手腕は見事です。キャラも明るく魅力的で、提示された世界観の魅力には、今後の無限の可能性を感じました。

 Web小説っていうのは、媒体を選ばないものだと思っています。スマホタブレットなんかのモバイル、パソコン、あるいはテキストをコピーして印刷する。そうしたものの中では、「コナード魔法具店~」は、正しくモバイル向けの作品なんだな、と思いました。長ったらしい導入や描写や説明を排除して、短い話をテンポ良く進めて行く。実はこれ読んだ時に長い作品をいくつか読んでたのもあると思いますが、1話が数百~千ほどもいかない小さな話を、無理なくスイスイと読ませてくれたのは、正直な話、かなりほっとしました。けっこう好感が持てました。

 

 ゴム子 「おとぎ話のようになんて生きられない」

 ひとり小説RTA大賞やめなさい。大晦日に駆け込んできた安定の滑り込み組ゴム子さんです。もうちょっと計画性を持ってください。非常に高い文章力と独特なゴージャスな世界観をもった、個人的には非常に好きな作者なのですが、安定した執筆力に欠けるのが難点ですね。やはり計画性と安定した体力と集中力が大事。過集中状態でのキャラクターに対するダイブ能力が優れているのか、本作でも人物の描写の質感が非常に高いのですが、やはりプロットとしては導入の1エピソードという感じで、ピアッシングを一種の性的なメタファーと捉えるのもそこまで目新しいアイデアではありませんし、これ単体で出してこられてもなかなか厳しいものがある。締め切り直前のタイムアタックばかりでなく、一度、ちゃんとしたプロットを組んで腰を据えた作品の執筆に挑戦してもらいたいと思います。

 えっちな物書かせたら界隈No.1(当社比)のゴム子さんによる作品です。今回もまあ中々にえっちでした。とあるきっかけで拉致された芋OLと美人メンヘラの共依存関係。いいですよね~。とてもいいです。ゴム子さんのねっとりぐっしょりした描写にはもう何の文句もないのですが……強いて言うならもっと先が読みたかったですかね。是非次回は、コツコツ計画的に書いて、素晴らしくえっちな小説を見せて下さい。待ってます。  

 作品としての好みというのがあるので何とも言いづらいのですが、ちょっと苦手でした。たぶんこれは女性的な霊をイタコして読めばめちゃくちゃ面白いんだろうなと思うのですが、いかんせんイタコできないぼくが悪いんですが……正直、女性が読むとまた感想が変わるんだろうなと思う。ゴム子さんは文章力もあると思うんですけれど、全体にある危ない魅惑、エロチシズムというか、そういうものが自分とは違うんだな、という感じがしすぎて、どうしても最後まで乗りきれなかった。 

 

 兎渡幾海 「だ・かーぽ」

 前回の大賞受賞者のうさぎさんです。またなんか名前が変わってますがもうどんな名前になったところでうさぎさんで通します。こちらも既に作家としてほぼ完成されてしまっているので僕が言うことはほとんどなにもないですね。面白かったです。タイトルの意味てきにはこれもリボーンなのかな。象徴的に何度でも死んで生まれ直す。そういう前向きな精神的自殺の話。主人公と婚約者とのその後は語られないままですが、また死んで生まれ直した主人公のことですので、きっとなんとかしていくんだろうなというポジティブさが読み取れます。明確な言明なしにそれを感じさせる手腕はほんとうに見事。やや変則的でありながらも王道青春ロードムービーです。いちおうなにか言わないとカッコがつかないので言っておくと、形式的にはカギカッコの行頭はスペース入れないのが一般的なルールだと思います。

 最初から最後まで、本当に綺麗な作品でした。前回の大会覇者であるうさぎさんが、今回もその地力を十分に見せつけていった形になります。彼は作品の骨組みをしっかりバッチリ作ってくるので、読む側も常に安心して脳を空っぽにして任せる事が出来ますね。衝撃的な事件を起こす主人公と、訳ありの美容師。二人の登場人物の背景にある旅の動機も、月日が経ってからのあのラストに繋がる事で物語に何とも言えない説得力をもたらしています。やはり大賞受賞者は見せつけてくれますね!  あ、そうだ。くすりちゃーん!うふふ、呼んでみただけ^^  

 親を殺してしまった主人公と、ワケありの女性が二人、宗谷岬へ逃避行をするという話。導入からグイグイと引っ張るような展開で、1話の引っ張り方は最高。「よくある構成の仕方をきっちり描くテクニック」があることは本当に強い。うなることしきりといった感じでした。ただ、結末までの後半部分があきらかに急ぎ足で、最初ほど練り込まれてない。終わりかたも唐突だし、ロードムービーというか、逃亡劇の面白さが描けてない気がする。なにより、明らかに2万字という文字数では全然足りてない感じを受けました。序盤のハイスピードな展開が面白かっただけに、惜しくて惜しくて仕方ない。1話と同じくらいに練り込んだら、たぶん文句なしに大賞に推してました。

 

 でかいさん 「シン・ネン」

 ズモーン!!!!! これぞクソ小説。そうそう、こういうのでいいんだよ本物川小説大賞っていうのは。こんなクソ小説企画にそんなマジになっちゃってどうするの? しかしこれはクソ小説とはいえケツアナからエエイ!!!! とひり出された一本クソではなく、クソを丁寧に捏ねて作られた見事な美しい三段クソです。冒頭の勢いを出すことは迷いを振り切ってしまいさえすればそれほど難しいことではありませんが、17000文字以上もこのクソバカテンションを維持したまま走り抜けることは並大抵のことではありません。もう大好き。まさにクソ小説界に燦然と輝くマイルストーン。合間合間に挿入される半角の擬音がなんとも言えない独特のおかしみと共にアイキャッチの効果も兼ねていて、ダレることなくラストまで読み進めさせられてしまいます。個人的には頭ひとつ抜けた高評価。

  ペタタタタタタタタタンペタタタタタタタタタンバッバッバッバッバッバッバッバッバ!ギュイーーーーーーーーーン ヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂ!

 要所要所挟まれる擬音がたまらない。作中に現れるのは違法改造されたペッパーくん。町中に溢れる餅、餅、餅。それに立ち向かう人々の希望は……やたらバイトの経験が豊富な主人公、いっぴーくん。戦え!餅と!そして新年、あけましておめでとうございます!何だこれは、何だこれは、と思っている内に物語に飲み込まれていく不思議な作品。そうか、これが僕達の原点なんだ。創作って、自由なんだね!僕分かった、分かったよ、いっぴー君。脳みそと口を繋いでみたら、こんなものが出来ちゃいましたー!みたいな文章で綴られる物語は無条件で笑顔になれるので、お仕事に疲れたサラリーマンにおすすめです。 

 お餅特撮。話の筋はいわゆるシンゴジを踏まえながら進んでいくので目立った部分はないけれど、おかげでいろんなものを身構えて読まなくていいというか、さらさらっと読んで、ふふっと笑って、それでいて物語としてちゃんと完結していて後腐れが無く読後感が良い。大好きです。お正月にぼけーっとしながら読むには確かに丁度良いくらいのまとまり感でした。 

 

 大村あたる 「押しかけミニスカサンタクロース」

 こちらも安定した高い筆力を持った作者です。なんかこう、分かりやすいテンプレラブコメを書いてやろうという意志はひしひしと伝わってくるのですが、ほらこういうのを書けばいいんだろう? ほらほら、みたいな上から目線をそこはかとなく感じてしまって(被害妄想)なんとなく入り込めませんでした。自分は好きでコレを書いているんだというような熱いパッションがないぶん、逆に実用的にはできているのでしょうし、スラスラと読めてしまうところは根本的に文章が上手いんだろうけど、う~ん。中くらいのところに一番良いバランスがあるはずなので、そのへんを探っていってもらいたいですね。

 クリスマスにミニスカサンタがやってくるという少年漫画を思わせる展開。あえてベタな題材に挑戦したと思われる今作。描写も相変わらず上手く、綺麗にまとまっており、作者の狙い通りのものが出来ているのではないでしょうか。あとは、基本理由なく結ばれていいのがラブコメなのですが、マッハで恋に落ちる彼女にもうちょい説得力のある理由か、面白いオチがあればいいかなと思いました。 

 いわゆる「男の主人公が何故か女の子と同居する」みたいな、古くはうる星やつら、ああっ女神様っ!とかの系譜だと思うんですが、この辺のやつは、僕個人の好みも大いにありますが「欲望に素直な奴が勝利」だと思うのです。そういう意味では、大村さんの作品は、サンタさんが女の子で、その女の子に奉仕的に言い寄られるわけですが、大村さんの好きなシチュエーションをもっともっと全開でも良かったのではないかとか思うわけです。たとえばサンタさんにもフェチっぽいシーン(18禁レベルかは置いとくとして)を入れるとか。 

 

 豆崎豆太 「病」

 う~ん、なんでしょう。文章そのものにちょっとした個性が光っていて、非常に高い筆力のある作者だと思うのですが、歩み寄りの姿勢が見られないというか、言いたいことを一方的に言われただけみたいな感じがあって腹が立ちますね。この手の物語にある種のうっとおしさとか鼻につく感じがつきまとうのは仕方ない部分があるのですが、もうちょっと調整のしようがあるように思います。描きたいことの主題ははっきりしているようですので、それを一方向から照らすのではなく双方向てきカンバセーションによって明らかにしていってほしいなと。なんか小説というよりは長ったらしい演説を読まされた気分で、今回は僕としてはあまり評価は高くないです。たんに僕が萩野きらいなだけかも。

 恋愛を書けない自称作家の恋のお話。登場人物の書き分けも風景描写も上手く、それぞれの場面が頭にしっかりと浮かびました。ただ、短編としては何ら進展のないまま終わってしまった感が強く、僕として心残りな印象です。せっかく魅力的なキャラクターが配置されているのに、このまま終わってしまうとなると、ウジウジとした男がただウジウジとしただけって話になっってしまうので、もう少し展開が欲しいところです。  

 今回というか、自分もそうだった時がありますが、寸劇というか、何かのワンシーンを抜き出したものを見かけます。出来事をならべて、何か始まったのか終わったのかよくわからないまま唐突に途切れる、そうした作品。それが絶対に悪いわけではないですが、やっぱり2万字というボリュームを使うならもっとあれこれ出来ると思うし、短いなら、短いなりの読者への楽しませ方みたいなものがあってもいいのでは……と思ったりもしていました。だからこそ、そういう中で、ちゃんと話があって、終わりまで描いて、余韻が残る小説というのは、読んでいて満足感がある。そういう意味では豆崎さんの「病」は、ちゃんとお話があって、結末がある小説で、しっかり満足できました。個人的にはストーリーとしてもうひと転がしあっても面白いな、と思いもしましたが、それはつまり、先行きがある終わりかただということで、これもまた読者としては印象に残ったということでしょう。このキャラクターたちで(秋元さん含め)、次回また機会があれば読ませて欲しいなと思える作品でした。 

 

 maple circle 「人の角」

 詩、童話、その他、というカテゴリで投稿されているので、なにかそういう類のものなのでしょう。なんらかの寓意のありそうな話なのですが、はっきりとは分かりませんでした。たぶん、もわんとそういうものなんだなと解釈すればいいのだと思いますけど。文章としてはとても読みやすく、また読み進めさせるための鼻先にぶら下げるニンジンというのか、インセンティブ設計もしっかりしているので上手な方なのだと思います。オチについては、エンタメてきなすっきりするものではありませんので、そこのところの評価は難しいですね。本物川小説大賞の趣旨的にマッチする類のものではありませんが、良さがあります。

 人の頭に生える角、主人公だけに見えるそれが一体何であるのか、いくつか何か匂わす描写がありますが、今一歩踏み込めていない印象を受けました。ただ、設定は面白いのでもったいないです。是非もう一度練ってみて下さい。角が霊的な何かなのか、ファンタジー的な何かなのか、どんな風にでも展開出来る、面白いアイデアだと思います。  

 第1話、と銘打っていて、第2話が出ないということは、未完であり、評価しづらいというか……物語として終わっているのか? というのは、正直なところ、ちゃんと明示して欲しいと思いました。イメージできるものがあって、話が面白いし、これから色々転がっていくんじゃないかと思ったところでぷつっと切れているのは、非常に惜しいと思います。

 たぶん第1話になっているのはカクヨムの仕様に不慣れなだけであって、これはこれで完結しているのでは? 新規作成画面を開くとタイトルが自動的に第1話ってなるんですけど、あれを消せることに気付くのに僕もだいぶ時間が掛かりました。

 

 起爆装置 「ビガンゴ☆王」

 さて、大トリは本物川創作勢いちばんの問題児、起爆装置さんです。今回もやってくれました。えっと、ちょっと裏話を明かすんですけど、これ起爆装置さんに「なにかお題を出してくれ」と言われて僕が「お財布を無くしたことに気が付いたのはタクシーを降りようとしたときのことだった」から始まる小説っていうお題を出したんですよ。わかります? この身近に起こり得そうでありながらもそこからいくらでも人間ドラマが拡がりそうな極限状況てき絶妙なお題(自画自賛)。そこからデュエル始まるとか普通思わないじゃないですか? なに食って生きてたらこういう発想に至るんでしょうね? これこそまさにケツからエエイ!!! とひりだした一本グソですよ。特にコメントはないです。やっていってください。ドン☆

 ドン☆  文脈の分かる人には堪らない一作。ほとんどが台詞で構成されていますが、遊◯王の骨組みを借りているせいで、すんなりと作品世界に入っていけます。文体も読みやすく、あまりカードゲーム及び遊◯王の知識の無い僕でも十分に楽しめました。また作者のボンゴレ☆ビガンゴ愛と大澤めぎぃみ(誤字)愛が十二分に伝わってきますね。これぞ本物川KUSO創作の原点といったところでしょうか。この世で数人に伝われば良し、という潔い作品です

 小説で読むカードゲーム……なんですが、ビガンゴ先生のキャラクターで全部押し切った感じ。とにかく速度(勢い)で書き上げた感があって、粗さが目立つので作品としては出来の善し悪しで言えばまだまだだと思うけれど身内のネタ、楽屋ネタでしかないんですが、ビガンゴ先生や大澤めぐみさんを知ってれば思わずクスクス笑いたくなる展開。無茶な話なのに読んで突っかからせない、するすると読める展開はやっぱり起爆くんらしいというか、安心感があると思います。ストーリーとしては何の決着もしてないし、バトルして終わり、という展開なので、多くを望んではいけないのでしょうけれど、小さく纏まっていて読みやすく感じられました。 

 

 大賞選考

 さて、続きまして大賞の選定に移りたいと思います。いつもと同じように闇の評議員三名からそれぞれ推し作品を三つ出してもらって、そこから先はなんとなく合議で決めていく感じです。

 まず僕の推しですが「コナード魔法具店へようこそ」「シン・ネン」「世界が終わるその夜に」の三作品になります。

  僕は「うんやん」「明太子プロパガンダ」「世界が終わるその夜に」の三作品です。

 僕は「明太子プロパガンダ」「うんやん」「だ・かーぽ」の三つ。 

 割れましたね……w

 割れたねぇ……。

 えっと、「明太子プロパガンダ」と「うんやん」「世界が終わるその夜に」がそれぞれ2ポイント。「コナード魔法具店へようこそ」「シン・ネン」「だ・かーぽ」がそれぞれ1ポイントですね。大賞は2ポイントの三作品の中から選ぶ感じかな。

 じゃあ僕は敢えてここでコナードを持ってくる。

 や、そういうのをやり始めると本当に決まらないので。最初に推しを三作品出す時点でどうしても運の要素はあるんですけれども、運も実力のうちってことでそこはひとつご了承していってもらわないと。大賞は2ポイントの中から選びます。

 不死身バンシィさんの「ベルリア魔鉱山採掘者ペイジの手記」が好きでしたね、三本に入れようか最後まで迷った。

 良かったですよね。急あつらえなので構造的な強度はまだイマイチですが、ポテンシャルは感じました。あれは続編というよりも、同じアイデアでもう一度練り直してみてほしいなという感じです。

 新しい鉱脈を発掘した成果は大きい。

 DJマオウも同じですね。切り口はいい。でもまだアイデア段階なので、作品としての強度を高める感じで、もう一度イチから取り組んでほしい。

 二人ならきっとできるできる。

 とくに綿貫むじなさんは、わりと自分で丁寧にギャップをならしてしまって、手間をかけて作品を平凡にしてしまうようなところがあって、上手いんだけどウーン……みたいな部分が少なからずあったんですけど、今回はひとつなんらかの突破口になり得るのじゃないかなという予感がありました。そこ、もうちょっと掘ってみてほしいです。

 大賞は……エッジが効いてるのはうんやんだけど、作品の完成度っていうところで言うとやっぱり明太子かなぁ。

 うん、明太子は完成度が高かった。そういう意味では、うんやんはやっぱり個人的には……がついちゃう。

 前回みたいにイラスト化したときの見栄えみたいな話をすると、明太子はどうやっても地味なのでそこは世界が終わるその夜になんですが、やはり講評でも指摘があったように(中)での急に説明的なところがどうしても気になってしまう。

 あれ、勿体ないですよねぇ……。

 ビガンゴ先生は正直ここで取るんじゃなくてここから次どうなるか見てみたい。

 なんていうか、こう言ってはナンなんですけど、今回のビガンゴ先生のかなりラッキーパンチ感はあるんですよね。安定して出せるようになってもらいたいのもあって、これを教訓に次でガッチシ大賞を狙いにきてほしいなっていう。

 そうそう。指摘を反映した次の作品をすごく見てみたい。

 ということはやはり大賞はうんやんか……!

 隙あらばねじ込もうとしないでください(激怒)

 僕としてはここで明太子が大賞を持っていってしまうと、また前回に引き続き「普通に完成度が高い」ものが勝ってしまうことになるので、KUSO小説大賞のアイデンティティてきに「シン・ネン」みたいなのを推していきたいなというのがあって。でも明太子はやはり次点には入っていたし強いので、明太子なら大賞異存なしです。

 シンネンも面白かったけど、途中途中、振り落とされて真顔になっちゃった。ロデオマシーンみたいな作品。

 シンネンはまさに本物川小説!っていう、「速とパワー」っていう感じがあふれてるんだけど、正直、速とパワーだけでいうなら、うんやんで完全に脳天割られちゃった。

 読者と作者で体力勝負して作者が勝っちゃうってすごいことだと思うんですよシンネン。

 明太子はとにかくなんていうか、切実な気持ちみたいなのがしんみり伝わるんすよ。女性の気持ちなのに。

 では、第六回本物川小説大賞、大賞はたかたさんの明太子プロパガンダということでFA?

 ファイナルアンサー。

 ファイナルアンサーです。

 わー! というわけで、第六回本物川小説大賞はたかたさんの「明太子プロパガンダ」で決まりです! おめでとうございます!! パチパチドンドンヒューヒュー!!!!(ブオオオオオオオーーーーーン!!!!)←ブブゼラ

 おめでとうございます!

 おめでとうございます~!

 じゃあ、あとは世界とうんやん、どっちかが金賞でどっちかが銀賞なんですけど。

 うんやんか……!

 勝手に決めないでください(激怒)

 僕はビガンゴ先生。

 僕はうんやんかな。

 僕もうんやんは回避したいのでビガンゴ先生ですね……。では2対1で金賞はボンゴレ☆ビガンゴさんの「世界が終わるその夜に」ということで。

 パチパチパチパチ~

 パチパチ! おめでとうございます!

 そして自動的に銀賞一本はポージィさんの「うんやん」に決まりました。おのれバルタザールにカスパール。

 いえーーい!!(?)

 惜しくも最後で漏れちゃったか……。

 ……。(じっと見る)

 すみませんすみませんすみません。

 あと残り一本の銀賞を選定していくわけですが、僕としては「コナード魔法具店へようこそ」が本当に良かったなと思っていて。意外とこれまでの本物川小説大賞になかったタイプだと思うんですよね。すごく気楽に読めてサクサクしてて、でもちゃんと一定の満足感がある。これぞweb小説って感じで、すごくコスパいいんですよ。

 「入り口が重い戸になってない作り」というか、ウェルカムしてくれる作品。

 そうそう。やっぱ他人の創作を読むのって、ある程度その人の庭の中に入っていくみたいな感じがあって、それなりに心構えと言うか、覚悟みたいなのは求められるじゃないですか? そういうのが一切なくて、なんかすごく優しいんですよね。

 優しい、分かります。読みやすくてキャラクターもみんな嫌味がない。

 本物川小説大賞ってどんなのかな? って、書いたこと無い人が読んだ時、文学性の高さで困るわけでもなく、結末が難しくて首捻るわけでもなく、あっこういうのなら俺も書けそう、っていうのがあるとすごくいいと思う。もちろん槐さんのコナードは実はあれ書いてみれば分かるけど、めちゃくちゃ高度な事やってると思うけど、入り口でウェルカムしてくれる。

 そう、やろうと思うとめちゃくちゃ難しいんですけど、でもなんか、自分も書いてみたいなって思わせるようなそういう効果もありますよね。肩肘はらずに、一緒に遊ぼうよ? って誘われているようなフレンドリーな空気感がとてもいいです。明太子プロパガンダはなんだかんだいってムキムキのマッチョがいきなり殴りかかってきたみたいなところありますからね……。あとは筆力で言うと既読さんのビタミンCもムキムキマッチョマンなんですけど、なんか当たり前のように強すぎて逆差別みたいになってるところありますよね……。

 うさぎさんの「だ・かーぽ」とかもそうっすね。

 あげるタイミングを逃し続けているというか、ここまで来るともう既読さんにはこの水準ではあげられないみたいな。正直、あのふたりはもうレベルが違うのでそろそろ出禁ですよ。

 出禁!?

 えっと……卒業?

 ビタミンCもだ・かーぽも、最初の1話は文句なしの最の高だったけど、逆に完全にハードル上がって、ラストでこれならもうちょっとやれたじゃないか……とか無茶な気持ちになってしまったし。

 普通に売ってる小説を読む気分で読んじゃってますよね。だかーぽすごく良かった。移動の暇つぶしに適当に買った短編アンソロジーなんかにアレが載ってたら絶対得した気分になる(伝われ)

 あとは常連勢に関しては、書くことに慣れてると、どうにも本大会を舐めてかかってしまう事があるので気をつけたいところ。もっと本気でぶつかってこいと言いたい。

 それ。いくらクソ小説とはいえね。ほらきばりんさいや!

 ゴム子さんとかこむらさきさんも、本気で腰を据えて取り組めばものすごいポテンシャルを持っているとは思うんですが、まあお二人とも創作アカウントというわけでもないですし、投入できるリソースも人それぞれあるでしょうから、自分の生活を優先してマイペースにやっていってもらえばいいのかなと。こむらさきさんは確実に前進はし続けていて停滞や後退はしていないので、地味にでも続けていけば必ずなにかに到達すると思うんですよ。まずそれを自分で信じてほしい。自分自身でネタ枠みたいなところに自分を規定することをしないでほしいです。

 自分の癒し、楽しいな~っていうところじゃなくて、主人公の気持ちに仮託して「だからぼくはこれでいい」みたいな気持ちで書くことからそろそろ次のステージに挑戦してほしいって人がたくさんいました。

 うさみん(読めない)さんも他人には出せない味や思いつかないアイデアを絶対に持っていると思うので、何とかそれを昇華させて欲しいという思いでいっぱいになりました。

 今回はかなり野心的なプロットだったんですけど、やっぱちょっと体力不足かな。まだ大賞はあげられないけれど、確実に良くはなり続けている。

 あの人は面白くなる。化ける。

 しふぉんさんも、僕は実はBL表現ってめっちゃ苦手なんだけど、これは結構なるほどと思っちゃって。

 しふぉんさんは初登場時点でムキムキマッチョだったんですけど、やっぱ見慣れちゃうというのはあるので、もうちょっと違ったプロットに取り組んでほしさなどはあります。

 とても綺麗で文句の付け所がないんだけど、次のステップにいけるんじゃないかとおもう。

 前回の「天使」はそういう意味では野心的だったんですけど、ワンアイデア止まりなので、なんかこう、渾身の一撃を見たいというか(ふわふわ)

 超個人的な好みとしては、やっぱちゃんと完結してほしい。作品として自分はもっといけるって思ってるなら、ぜひ一回くらい、落ちというか、「これで終わりです」っていうところをきっちりつけてくれるとうれしい。誰かにこれ面白いよとか言いやすくなる。

 もう少しエンタメ方向に歩み寄ってみて、みたいな。

 お話って、作者ですら困惑するような爆弾放り込んだあと、どうやってこれを爆発させないまま処理するか、あるいは爆発させちゃうのか、っていうの全力の戦いみたいなのがあって、それが物語の緊張感を生む。ちょっと安定させるとすぐ守りに入ったオチや、よくわからない結末でぼやかしてしまって、読者としてもそれはけっこうひしひしと伝わるんですよね。

 その点ビタミンCは爆弾をうまくまとめてましたね。

 それが爆弾だったことに後で気付かされるパターン。感情は完全にコントロールされている。

 忘れな歌も、大きな爆弾が一つあればきっと化けてたと思う。

 この場合の完成度っていうのは、あえて言えば、「作者がコントロールできると思ってるくらいのまとまり感」でしかなくて、実は読者が許せるまとまり感って、まだまだ広いんだから、突拍子もないことや、腹の立つこと、汚いもので、あっと驚かして欲しいのはある。「弓と鉄砲」とか「黄昏の騎士」とか、ジャンルとしてはなかなかない所なので応援してるし、好きな人が絶対いるから紹介できるんですけど、やっぱそういう意味では爆弾がない。えっどうなるのこれ、みたいなのがない。

 うんやん、シンネン、DJマオウみたいに、尖ったワンアイデアでぶん殴るっていう作品は、今後も読みたいし評価していきたい。尖ったアイデアが出せるっていうのは、もうその時点で一歩抜きん出てると思うから。完成度を高めるっていうのはゆっくりやれば皆出来る。

 あとビガンゴ☆王も。

 彼は天才なんですけど才能を無駄遣いしかしないんですよ。

 さて、そろそろ銀賞一本の選定なんですが、わりと横並びなのでもうせーの!でそれぞれ言ってみる感じにしませんか?

 はーい!

 はい。

 じゃあいいですか? 決まりましたね? いきますよ……せーの!

 コナード魔法具店へようこそ!

 コナード魔法具店へようこそ!

 コナード魔法具店へようこそ!

 わ~!! 満場一致!!!!

 おめでとうございますー!

 おめでとうございますううううう

 というわけで、2016年最後の素人KUSO小説甲子園、第六回本物川小説大賞、大賞はたかたちひろさんの「明太子プロパガンダ」、金賞はボンゴレ☆ビガンゴさんの「世界が終わるその夜に」、銀賞はポージィさんの「うんやん」と、enjuさんの「コナード魔法具店へようこそ」に決まりました!!!!

 

 

 宣伝

 

 あと、せっかくなので最後にちょっと宣伝させてもらいたいんですけど。

 ほお。

 いまカクヨムで第二回webコンテストが開催中なんですが、枯れ木も廃村の賑わいといった感じでしてね……。

 ああ……。

 本物川女装創作団からも今のところ三人が出ているので、ちょっとその紹介をさせてください……。ずっと1位に居るんですけど、本当にPVが回らなくて……。

 まずは本物川女装創作団主席概念、大澤めぐみの「でも助走をつけて」1/2現在で恋愛部門の第一位にいます。いちおー第一部が完結済みで、続きは二月頃に更新の予定です。

 

kakuyomu.jp

 

 次に、ロッキン神経痛さんの限界集落オブ・ザ・デッド【長編】」。これも現在ホラー部門1位。すでに完結済みの旧作のリライト版になります。旧版はもう本当にめちゃくちゃ面白くて、これも当然、絶対に面白くなるはずなので応援していきましょう。

 

kakuyomu.jp

 よろしくお願いしまーす、星ください!

 あと、本物川女装創作団のジェイガン。ムキムキマッチョマンの既読先生の「ニャクザ ~RISING~」。こちらはやや層の厚い現代ファンタジー部門なので現在5位。既に二部まで完結済みの東京ニャクザ興亡禄の第三章になります。こちらも展開が早くて面白いのでオススメです。

 

kakuyomu.jp

 外部からお客さんを呼んでこないとランキングの1位に居ても一切恩恵ないから頼むよほんと。

 コンテストだしてないけど僕の小説も読んで! お願い!

 モッフル卿はまずコンスタントな更新をがんばっていこうね……。

 はい……(しおしお)

 

 はい! というわけで2016年を締めくくる素人KUSO創作甲子園、第六回本物川小説大賞、大賞はたかたさんの「明太子プロパガンダ」でした! それではみなさん、またいつか次の本物川小説大賞でお会いしましょう! 以上、闇の評議会議長、謎の概念でした!

 楽しかったです~、規定は守ろうな~!

 ルールを守って楽しくデュエル!

 おつかれさまでした~!

 おつかれさま~! 闇の評議会解散!! 撤収!!!!

 あと彼女! 彼女募集中です!!!!

 ……?

 ……?

 

 

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