第八回本山川小説大賞 後半戦ピックアップ5選

 

 結果発表じゃないよ~。

 

 昨夜0時で締め切りとなった第八回本山川小説大賞、おかげさまで最終的な応募作品数は127、内、レギュレーションを満たして講評の対象となったのが122と、過去最大の規模になりました。かるく前回の倍ですね。死ぬかと思いましたよ。

 

 さて、結果発表なんですけれども、今回、闇の評議員をつとめてくださっている謎のサブカルクソ眼鏡先生が北海道在住で先日の地震でいろいろ大変なのでちょっと遅れそうです。なるべくがんばるのでもうちょっと待っててね。

 

 というわけで結果発表はまだなんだけど中間ピックアップに引き続き、後半組からわたしの独断だけで選んだ5作品を紹介しようと思いま~すいぇ~いドンドンパフパフ(ブオオオオオオオオオーーーーーン!!)←ブブゼラ

 

 このピックアップは完全にわたしひとりの独断で、大賞の選考は他ふたりの闇の評議員を交えてやりますから、ある程度は相関するかもしれませんが、これがこのまま大賞の選考に影響するということはないです。ではいってみましょ~。

 

 

@isako 『「文化」とは私たちの生活であり、営為であり、存在である。』

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 めちゃくちゃ質感の高いビッ! とキマッたディストピアものです。

 

ついに私は、頭蓋の小部屋にこの怪物を閉じ込めておくことができなかった。

 

 わりと既存のディストピアものというフォーミュラに忠実で、枠組を刷新するような新奇性などはなく、どこかで見たような設定、物語ではあるのですが、それでもガツンとくる圧倒的な筆力!! とくに目を引くようなわかりやすい仕掛けがあるわけでもないのに、ぐいぐいと読ませて面白かった~! と思わせてくれる不思議な作品です。もう本当に、筆力一本で圧してきていて概念的にはムキムキのマッチョマンにギリギリとアイアンクローされてるみたいな感じ。今回のモモモ大賞のために新規にアカウントを取得されたようで作者さんの情報や履歴が全然ないんですけれども、怖いですね。ひょっとしたら中身はどこかのプロなのかも。同じ作者さんの「人間のあなたはいつか、人間の私を食べる」も、面白いです。ディストピアものとかポストアポカリプスものとかが大好きな人はぜひ!

 

 

 

Veilchen 『女王と将軍と名もない娼婦』

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 なろうのほうで「雪の女王は戦馬と駆ける」という作品を書いている作者さんなんですけど、めっちゃ読んでました~ファンです。

 

ああ、私のファリアス将軍、忠実で清廉な方、私の大切な方――

 

 クソみたいな境遇に置かれながらも、あらゆる絡め手を利用して強かに生き抜く女性を描くのがものすごく上手なかたで、本作にもその魅力が如何なく発揮されています。完全に副賞のチャンラノ朗読を狙いにきた、女性の一人称語りオンリーの1万字で、まずこの縛りで読者をまったく退屈させずに1万字をぐいぐいと読ませる牽引力が素晴らしい。一場面限定なのにその中で二転三転する展開と、語り部である娼婦のキャラがとても魅力的でめちゃくちゃ面白いです。タフでストロングな性悪ガールが好きな人はぜひぜひ!

 

 

 

神崎赤珊瑚 『サンライズ・コーストライン』

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 ご本人曰く「女の子版俺たちに明日はない」らしいのですが、大筋ではまんまそんな感じです。

 

で、わたしの銃は六発なんだ

 

 端的でありながらも細やかなディティールの描写がぜんぶ最高で、丹念に積み上げたものがどわーっ! と雪崩れ込んでくるラストが本当に素晴らしい。たったの14000文字でここまでしっかりキャラを立てて関係性を描き、愛情と崇拝と失望がないまぜになったような捻くれた複雑な感情に読者をきっちりと引き込んで納得させる手腕が見事です。丹念に、丁寧にというのは、なにも文字数に正比例するものではないというのがよく分かります。この人、わたしも昔から知っているフォロワーさんで、ぜんぜん小説を書くイメージとかなかったんですけれども、そういう人がポッと書いてみてこういうのを出してくる展開がほんと好き。もうこれからは創作アカウントとしてバリバリやっていきましょう。今日から! お前は!! 創作アカウントだ!!!!

 

 

 

君足巳足 『壱百日詣とプロポーズ』

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 たぶんCQの水瀬はるかなさん方面からやってきてくれた人だと思うのですが、同じくあっち系(どっち系?)です。

 

わかってるじゃん。当たりだよ、嬉しい。

 

 セオリー無視で超個性的でギュウギュウのぐちゃぐちゃでとびきりリリカルでマジカルなんだけど、それで独りよがりに終わらずにちゃんと読者に対してパカッと開けている不思議な文体と作風で、めちゃくちゃ面白いんですけれどもなにが面白いんだか言語化しづらいです。狐につままれたみたい。そのうえこの人、絵もめちゃくちゃ上手いんだからずっこいですよね。滅多に活性化しないのだけが難点なので、もっとバリバリやっていきましょう!! 今日から! お前も!! 創作アカウントだ!!!! ほんと怖い界隈(界隈?)だよね、あのへんの魔法使いたち。

 

 

 

あさって 『海の底から愛を込めて』

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 締め切り30分前の滑り込み組ご新規さんです。土壇場までこういうのがあるから本当に油断がなりませんモモモ大賞。

 

私達の穴を、物理的にも比喩的にも、探ったのは貴方で39万9999人目です

 

 メインで取り扱っているテーマじたいは重いはずなのに、ギャグのセンスがよくて細かい部分でクスクスと笑いを稼いでいくのであまり重さを感じさせません。話を転がしながら読者に無理なく設定を飲み込ませていくのもとても上手で、このへんはついつい説明的になってしまいがちなSF勢には良いお手本になるのではないでしょうか。APTナントカとか受付嬢とかのキャラも立っていてとてもいいです。自分でもSFを書いてみたいぞ! って思っている人なんかはぜひぜひ!!

 

 

 

 

 以上、5作品。後半戦からピックアップしてみました。

 

 ROMの人とか、締め切りも過ぎたし他の参加者の作品も読んでみたいけどさすがに120以上もあるとどれから読んだらいいのか分かんないよ~って人は、まずはこのへんを読んでもらうと満足度が高いかなぁと思います。あとすべてはピックアップしきれないのですけれども、鍋島さんの「GHOST & SIMPLEX」とか、和泉真弓さんの「サッちゃん」とか、他にも面白いのいっぱい埋まっているので、各自じゃかじゃか掘り起こしてじゃかじゃかレビューしてじゃかじゃかシェアーしてあげてください。

 

 それでは、結果発表までもうしばらくお待ちください~。

 

 

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