第八回本山川小説大賞 中間ピックアップ5選

 

 さすがに開催期間が一か月以上ともなると中ダルみが発生するので、テコ入れです(素直)

 

 おかげさまで、現状で参加作品数が60以上とたくさんの方にご参加いただいているのですが、そのせいもあって、「なんか面白そうなことやってるな~、どれか読んでみようかな~?」って通りすがりの人がきてもズラッと並んだ作品を前に「何を読んだらいいのか分からない~」という状況になっているのではないかと推測します。もう自分のを書き終わってそろそろ他の参加者のを読んでみようかな~って余裕かましている人も増えてきた頃合いでしょう。

 わたしは8/17現在でステータスが「完結済」になっている作品はすべて読んで講評もつけ終わっていますので、そんな人たちのために、現状の「完結済」48作品の中から「みんな~! これ面白いから読んで~!!」ってなった、個人的なおすすめ作品をピックアップしようと思います。

 ちなみにこのピックアップは完全にわたしひとりの独断なのですが、大賞の選考は他ふたりの講評員を交えて合議しますので、ある程度は相関するとは思いますが、これがそのまま大賞の選考に影響することはないです。ではいってみましょ~。

 

 

 

水瀬「CQ

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「みんなで楽しくうんこ投げ合って遊んでいたら横からいきなりトラックが突っ込んできた」みたいな感じで理不尽も甚だしい。めちゃくちゃ面白いです。けれど、これぞモノホ……本山川小説大賞の醍醐味でもある。毎回、横からトラックが突っ込んでくるんですよ。

 

オーロラになれた人の気持ちを、わたしはまだ知らない。

 

 はい。単体の文章として強すぎます。すき。え? それって具体的にはどういう状態になっているの? という説明は一切なく、想像力の限界を試されるような描写がひたすら続く不親切さなんですけれども、それなのになぜか読者に対して世界が開かれていて、置いてけぼりにされない。なんか分かっちゃう。とびきりにリリカルでマジカルで、油断すると読者を置き去りにして成層圏の彼方に飛び立ってしまいそうな暴れ馬をきっちりと抑え込む地力がものすごく高くて、概念的には筋肉ムキムキのマッチョマンの変態がパワーですべてをねじ伏せているといった趣。わたし個人の評価ですが、今のところ頭ふたつ飛び抜けているので、後半組はこれをブチのめすつもりで気合い入れて作品を放り込んできてください。間違いなく、大賞候補の一角です。

 

 

 

山本アヒコ「勇者にふさわしいあなた」

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 こちらも初参加のご新規さんですね。異世界から勇者を召喚して世界を救ってもらおうっていうテンプレに乗っかったうえで、そこにひとつ設定を足してツイストを効かせた、ちょっとブラックなコメディ作品。

 

…………結果から言うと、召喚されたのはまたもアキラさまでした。

 

 ジャンルてきには異世界ファンタジーになるんでしょうけれども、テイストとしては星新一ショートショートとか、筒井康隆藤子不二雄てきな社会風刺系のSF短編に通じるものがあるので、そういうのが好きな人にはバッチリはまるんじゃないでしょうか。もう散々やり尽くされた感のある異世界召喚フォーマットですけれど、やりようによってはまだまだできることはあるのだなぁと感心しました。これも、個人的には大賞候補の一角。

 

 

 

紺野天龍「八月のファーストペンギン」

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 こちらもご新規さん。超常要素のない完全な現代ベースの恋愛ものですが、よ~し僕様ちゃん純文学しちゃうぞ~みたいな肩肘をはった感じではなく、手触りはちゃんとライトノベルしていて、ラノベと一般文芸の中間くらいの印象です。

 

――ペンギノン、という有機化合物があるらしい。

 

 

 お話のはじまりかたと畳みかたが非常に技巧的で、ものすごく書き慣れているなぁという印象を受けました。と思ったらこの人プロじゃないですか。そりゃ巧いはずだわ。ボリューム感がとても適切で、2万字以内で終わらせるのにちょうどよいお話を、ちゃんと2万字以内で畳んでいます。寄り道とか脇道に思える要素も、ぜんぶが緩く作品のテーマやモチーフに絡んでいて、お話を前に進める機能を担っていて無駄がない。お話そのものの面白さももちろんですが、「2万字小説かくあるべし」という感じで、参考として他の参加者さんにも読んでもらいたいと思える作品でした。

 

 

 

双葉屋ほいる「鮎子ちゃんとながいともだち」

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 こちらもたぶん初参加のご新規さんですよね? 今回はなんだか新規勢の強さが目立ちます。古参のモノホン勢も負けずに頑張ってほしい。肩の力を抜いて、ちょっとしたものを読みたい人向けの、わははと気楽に読めるフレンドリーな作品です。

 

毛の一本一本が生きてるようなハリとツヤに! って書いてあったっけ。生きてるみたいな、っていうか一本一本生き始めちゃったじゃん。

 

 素早いロケットスタートから、そのままの勢いでポンポンポンと軽快にテンポよく読めて、ほどほどに笑いがありつつ各話の最後に毎回ちゃんと引きがあって、事件と爽快な解決とちょっとした伏線の収束と友情もあって、ボリュームに対してのまとまり感が非常によく、意外とやっていることのレベルが高い作品です。web小説に求められる要素が過不足なく盛り込まれているので、これも、これからためしに小説を書いてみようと思っている人には参考にしてもらいたい良作です。
 

 


吉野茉莉 「私たちは、何に怯えているのか?」

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 こちらもご新規さん。創作系の中でもひとつの巨大ジャンルである厨二病要素昇天ペガサス盛り! みたいな系統の最終進化版みたいな作品です。みんな、わりと好きだよね。死。ポエティックな描写がキレてるなぁと思ったらこの人もプロじゃないですか。いったいどうなっているんだモトンホホ大賞。KUSO創作勢、めっちゃ頑張れ。

 

「彼女は、そうです。微笑んでいました」

 

 ちょっと昔の閉鎖的なミッションスクールてきな、陰鬱な空気と死の気配とレズ。小説としては始まって終わるっていう感じで、中身のない完璧な額縁という趣なんですが、あとは中身(事件)だけちゃんと入れてしまえば完成なので、仮に改修するとしても、面倒なだけで、作業はむしろ簡単な部類でしょう。中身って意外となんでもいいんです。おそらく、書きたい雰囲気が先にあって、書きたいものをもう書いちゃったから満足したのかな? 今回のモモモ大賞にも、死が好きそうな厨二病要素昇天ペガサス盛り勢がわりと多いんですけれど、そういった人たちにはものすごく参考になると思います。ポエティックな描写力でコーナーで差をつけろ!

 

 


 以上、5作品。とりあえず中間報告としてピックアップしてみました。

 

 通りすがりのROMの人や、もう自分の作品を出しちゃって他の参加者の作品をなにか読んでみよ~って人は、まずはこのへんを読んでもらえば満足度が高いと思いますし、まだこれから書いてブチ込んでやるぜ! という人は、このへんの作品を打倒するつもりでやっていって頂ければと思います。見ての通り、今回めちゃくちゃレベル高いです。がんばれKUSO創作勢。

 

 それでは、締め切りの9/9まで、後半戦も引き続きやっていきましょ~~!

 

 

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